コタツ評論

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原稿は長けりゃいいってものじゃない

2008-09-16 01:06:05 | ブックオフ本
『家族の標本』(柳 美里 角川文庫)

「家族の想い出」が近いが、これではタイトルにはならない。すばらしい。
一読、読者手記かと思わせる平明さだが、朝日新聞が日曜日に「大型連載」している「家族」と読み比べれば、どれほど凄いかわかる。「家族」は社会面のほとんどを占める長文にして、手練れの記者がじゅうぶんな時間をかけた取材に基づき書いているはず。『家族の標本』は原稿用紙4枚ほどに過ぎず、周囲から聞きかじった柳美里は執筆時30歳。才能の違いではない。そういうあやふやなことではなく、決定的な差異がある。立って歩いている人と寝転がっている人の違いくらいの。柳美里の書いたものにも、その人にも興味がなかったが、食わず嫌いを反省。ただし、週刊現代連載の柳美里小説はまったくいただけなかった。

(敬称略)