コタツ評論

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よせやぃ。

2007-10-28 00:17:45 | 新刊本
吉本 隆明 ウェイツ

よせやぃ。に。を付けたセンスが光る。
モーニング娘。なくしてはこのタイトルは没となったろう。

江戸っ子の吉本らしい口跡に、軽い断念と眉間を広げるような展望を込めた、名タイトルである。

単著のようで、最近の吉本本の例の漏れず聞き書きだが、異例なことに聞き手は研究者や学者ではなく市井の生活者たちだ。

隠居した恩師に不惑になったが惑いつつ生きているかつての学生が、これだけは聞いておこうというようなまっすぐな姿勢に好感が持てる。吉本も平易に明快に、そして親切に応えている。

ある世代にとって、やがて吉本が老人の指標となるだろう。爺さんといえば笠智衆を想い出すように、下町の長屋に座っているような吉本の職人顔を懐かしく脳裏に映すことになるだろう。

それは誰にとっても幸福なことだろうと思う。
(敬称略)