補腎陽、補腎陰、填精のバランスを考えることが必要
中国上海や広州の大都市では離婚原因の半数近くが性生活の調和が取れていないことだと報告がある。殆どが男性側の精力不足、ED、早漏が原因という。漢方伝統のお国であるから、種々の強壮剤がある。
専門中医学者(漢方医)が注意を喚起しているのが、EDや早漏の際に「補陽薬(ほようやく)に偏り過ぎてはいけない」ということだ。補陽薬に偏りすぎると体内に熱を持つようになり、その熱と過度な性行為は陰を傷つけ、精血を消耗させ早死にの原因となると説く。腎陰 腎陽 肝血 腎精の補い方のバランスを欠いた「薬剤への依存」は却って未病(みびょう)(将来に発生する可能性の高い病気)を発生させると説く。
ED治療: 補陽の「祖」といわれる五子衍宗丸(ごしえんそうがん)
腎陽虚のED、遺精、早漏などの方薬として有名な五子衍宗丸(ごしえんそうがん)がある。出典は明代の「証治準縄」である。古くから中国では「五子壮陽、六味滋陰」(五子衍宗丸は壮陽効果、六味地黄丸は滋陰効果)と言われている。唐代の宮廷貴族が日常的に服用した保健薬でもある。菟?子(としし) 枸杞子(くこし) 覆盆子(ふくぼんし) 五味子(ごみし) 車前子(しゃぜんし)の五子からなる方剤である。
薬性は比較的穏やかで、いわゆる「即効性」には欠けるが老年期に差し掛かってきたころの腰痛、夜間頻尿、尿漏れ、足腰の冷えなどを伴う精力減退に適する。配合生薬を解説してみよう。
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覆盆子(ふくぼんし) 帰経: 肝 腎
益腎固精 固精縮尿 益肝明目
ED 早漏に特に効果がある。夜間頻尿や尿失禁にも効果がある。老年性視力減退にも効果がある。
中国産はゴショウイチゴ(写真上)の完熟直前の実を乾燥させて薬用とする。(写真下)味は甘酸っぱく「酸甘化陰」の理論に一致し、陰液を増やすことにもなり精液の量も多くする。薬性も微温であるので陰を傷つけることも無く長期に服用が可能である。小説 「宮廷女官 チャングムの誓い」の中で「クマイチゴ」として紹介されているものに相当するが、小説文中「毎晩一粒ずつ食べる」と記載されている。そのような少量では目に見える効果があるかどうかは疑問である。
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菟? 子(としし)帰経: 肝 腎 脾
効能: 補腎陽 益精 固精縮尿
ネナシカズラの成熟種子で、辛 甘 微温(清書によっては平性)である。
腎陽虚のED 早漏に効果がある。また尿に精液が混じる精液尿や、夜間頻尿、尿失禁にも奏効が認められる。
婦人科領域では、菟? 子の補肝腎作用は安胎(あんたい)作用につながり、古来より胎動不安がある流産の防止薬としても有名である。腎陽虚、胃腸虚弱の下痢に対する治療薬として、同じく補肝腎薬である補骨脂(ほこつし)仙茅(せんぼう)と共に止瀉(ししゃ: 下痢を止める)作用が利用される。古来より「燥にも?にも偏らず、補陽すると同時に益精に働く良薬」とされる。また養肝明目に働きエイジング(老化)による目のかすみに効果がある。
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枸杞子(くこし) 帰経: 肝 腎 肺
効能: 補益肝腎 明目 滋陰潤肺
中国では寧夏(ねいか 中国名ミンシャ)産の枸杞子が有名である。 寧夏の枸杞子の薬酒 寧夏紅(ねいかこう ちゅうごくめいミンシャホン)は古来より長寿をもたらす薬酒として有名。肝腎陰虚による眩暈、視力減退、目の乾燥感、腰痛などに使用される。上海地区の目を酷使するタクシーのドライバーやコンピューター従事者の間では中国茶に枸杞子を入れて持ち歩く携帯用のお茶ボトルが人気である。六味地黄丸に菊花と枸杞子を加味した杞菊地黄丸は腎陰虚に伴う目の疲れや高血圧の合併などに使用される。肺腎陰虚の切れにくい痰や慢性の咳に対して貝母 沙参 麦冬などと共に使用される。同様の作用をもつ生薬として女貞子(じょていし)がある。
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五味子(ごみし) 帰経: 肺 心 腎
効能: 斂肺益腎 固渋止瀉 養心益気 収斂固渋 生津止渇 斂汗
効能は烏梅と共通する部分が多いが、烏梅が平薬であるのに対し五味子は温薬である。腎経に作用する五味子の特徴として補腎固精作用があり腎虚の早漏や遺精に効果がある。心経に対する作用として養心安神作用があり、不眠症にも有効である。斂汗(れんがん)作用とは異常な発汗である自汗や寝汗(盗汗)を抑える作用を意味する。
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車前子(しゃぜんし) 帰経: 肝 腎 肺 小腸
効能: 清熱利水 滲湿止瀉 清肝明目 化痰止咳
清熱利水(せいねつりすい)作用は膀胱炎に対して主として利用される。滲湿止瀉(しんしつししゃ)作用とは、尿量を増加させることによって水様便を固くさせる作用を指し、この作用を中医学では「利小便実大便」と言う。高血圧症に伴う眼球結膜の発赤(目赤)や緑内障にも効果があり、肝火、肝熱を清し眼症状を軽減することから「清肝明目」作用があると言われる。呼吸器感染症による膿性痰や咳嗽に桔梗紫菀などとともに使用される。EDに対する直接的な効果は無いと判断できるが、陰部の痒みを伴う場合などの「湿熱」が関与する場合などには効果があると推定される。
以上のように五子衍宗丸に配合される生薬は薬性から判断すれば、微温薬である覆盆子 菟? 子 平薬である枸杞子、温薬である五味子と反対の寒薬である車前子の配合であり、全体として平~微温の構成になっている。補陽といわれているものの枸杞子などの補陰薬の配合もなされている。このため長期にわたって服用しても安全である。現代西洋のED治療薬は単一成分の錠剤である。西洋と東洋の医学体系の発達の違いが存在するにせよ、中国人の「安全性に対する伝統」と「生薬の配合の妙」を再認識させる事例でもある。
続く、、
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