本日も升陽益胃湯による慢性糸球体腎炎の治療を紹介します。
患者:林某 45歳 男性
初診年月日:記載がありませんでした。
病歴:
慢性糸球体腎炎歴二年余。嘗て中西薬物療法を受けたが、完全緩解に到らず、2ヶ月前感冒をきっかけに全身浮腫が生じた。
初診時所見:
全身浮腫、乏力、腹張、食少納呆、舌質淡紅、苔薄白、脈沈濡。尿蛋白2+、RBC15~20個/HP、顆粒円柱0~1個/LP、血清アルブミン2.9g/dL。
中医弁証:脾胃虚弱、湿熱留恋
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:升陽健脾祛湿
方薬:昇陽益胃湯加減:
黄耆25g 党参20g 白朮20g 茯苓15g 半夏15g 川黄連10g 澤瀉20g 陳皮15g 防風10g 独活10g 柴胡10g 山薬20g 生姜10g 大棗5個
水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
経過:
連続服用10剤で浮腫全消、食納転佳、腰酸、乏力が残存。尿蛋白+、RBC5~10個/HP、アルブミン3.2g/dL。薬既見効、原方に金桜子20g 五倍子(固渋収斂止血)20g 芡実15gの固腎の剤を加味、一ヵ月後、尿検査正常、体力増加、上述症状消失。更に10余剤服用するように話し、治療効果を固めた。
ドクター康仁の印象:
古典的升陽益胃湯+山薬 生姜 大棗+金桜子*芡実(水陸二仙丹)+五倍子による素晴らしい治療効果でしたね。
これで、市民講座「慢性腎炎の升陽益胃湯加減による治療」を終わりにします。
臨床経験ほど貴重なものはありませんね。
「全身浮腫(他覚症状)、乏力(自覚症状)、腹張(他覚自覚症状)、食少納呆(自覚症状)、舌質淡紅、苔薄白(他覚症状)」この辺までくると、経験豊かな漢方医は升陽益胃湯の方証だと気が付くのです。
気が付かなければそれまでです。要は観察力と丁寧さが肝腎ということです。
記憶の連鎖の問題でもあります。
2014年2月20日(木)
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