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再度の御返事 漢方市民講座

2012-08-30 01:00:00 | 漢方市民講座

生真面目すぎる「熱心な漢方研究者」に対しての再度の御返事

先日、私の「白虎湯」に対するご意見をいただいて、それに対してお返事を差し上げた。再度 以下の様な御返事と質問があった。再びご返事する。

前回のやり取り:緑(質問者)青(私の回答)

> 粳米をもち米と定義してあるのは間違いではありませんか?
> 粳米は玄米、お米、うるち米だと聞いています。

この質問に対して「確かにご指摘のようにウルチ米であろう。」との回答を頂きました。これだけで十分だったのです。

> まして白虎湯に含まれるとすれば清熱作用を期待してのこと。

それをいらぬ事まで書いてしまいました。これは勇み足でした。石膏中の微量元素を安定させ薬湯に留める働きが粳米にあるわけで、」との事、了解です。

これからが今回の質問になる。

ついでに話題を少し広げますが、ある研究者は石膏からのコロイド状カルシウム自体が有効成分ではないかと云っています。それならばと石膏を超微粒子に粉砕してそのまま服用させればという事も考えておられます。これについてどう思われますか?私には納得できないのですが。

> もち米だと温性があります。玄米、お米、うるち米だと聞いています。これなら凉性で

これは小さな範囲内での比較です。薬草の持つ薬効とはレベルが違います。無視してください。考えたことも無かったのが私です。

> 粳米は玄米、お米、うるち米だと聞いています。これなら凉性で白虎湯と合います。

小さな温凉の差でも、もち米よりもお米の方が処方の統一性からはふさわしく思います。→処方の統一性という言葉は軽々しく使うべきではありません。

> 「リポステロイド」の如き、成分の閉じ込め作用がある

リポステロイドとは何か、もう少し説明が聞きたいものです。

私の再度の返答  以下

コロイド状カルシウムですか?貴方の知り合いの研究者であれば、「研究を続けなさいよ そのうち(ブレイク スルー)するまで」と言ってあげてください。昔からありましたよ「コロイド状カルシウム」の類は、私も飲んでいたことがあります。勿論清熱目的ではなくカルシウム補給骨成長促進剤として親に出されたものをいやいやながらね。私自身が興味を持つとすれば、カルシウムではなくコロイドの方で、膠質でもいいけれど興味はあります。そもそも石膏(せっこう)といっても、日本では卑弥呼時代にあたる大陸の張仲景時代の天然のそれであって、天然の二水石膏であり、天然物であるが故に、純粋の硫酸カルシウム2水和物ではなくケイ素、アルミニウム、鉄などなどの化合物が少量含まれているのです。竹葉石膏湯、防風通聖散、桔梗石膏湯などの石膏は純粋なCaSO4ではありません。私が微量元素に言及したのはそういう背景があります。ある研究者は石膏からのコロイド状カルシウム自体が有効成分ではないかと云っています。それならばと石膏を超微粒子に粉砕してそのまま服用させればという事も考えておられます。これについてどう思われますか?私には納得できないのですが。

返答続く

納得するもしないのも研究成果次第でしょうね。大昔には物理的に石膏を超微粒子に出来なかったわけですから。おそらくその研究者は親水性を狙っているのでしょう。大昔の白虎湯は加水熱処理をして、その上澄みを飲んだわけですから、そのまま砕いたいわゆる溶けない石膏では効果が無いことは承知していたでしょう。ですからコロイドという発想があるのです。マクロモルキュール(巨大分子)のコロイド化学の研究分野に近いですね。

でもね、それを実験で証明するとなると、まずは石膏の加水熱処理により、上澄みにコロイド液に特有な物理現象が見られるかどうかを証明する必要がありますね。次ぎにその分子解析をしなくてはならないでしょう。カルシウムだけなのか、他の微量元素も関係してくるのかです。

そして、いよいよ分離できたらの話ですが、出来るだけ純粋なカルシウムコロイド液を飲ませるなりして(腹腔内注射とかは避けなければなりませんね)動物実験を行い、赤外線カメラなどで体温降下作用を確認するという具合にね。

実験でネガティブデータがでたらやり直しです。他の微量元素のコロイド現象の確認。出来なかったら、もしもの話ですよ、まあ純粋なカルシウムコロイドには眼をつぶり、上澄みの、ある意味で雑多なコロイド液で実験しなおすということになります。ここでの実験対照群は古来の白虎湯を服用させる群は勿論のこと、知母、生甘草、粳米を一つ一つ除いた群、組み合わせた群、量的変化群が必要です。

莫大な時間をかけて実験解析を行い、カルシウムコロイドが有意に解熱作用に優れるという結果になったらあなたも納得するでしょうし、その研究者が挫折すれば、あなたは納得しないまま真相をしらないままになるのです。

思うに、その研究者が一生かかってもなかなかこれだ!と思える成果にはならないかもしれません。研究とはそんな具合で「道半ば」にして研究者の「死屍累々」に繋がります。

後漢時代の試行錯誤の末の白虎湯の解熱作用という発見を、白虎湯投与群 非投与群で実験して清熱作用を確認しても後漢時代から一歩も前に進んでいないことになることはあなたにも御理解いただけると思います。

小さな温凉の差でも、もち米よりもお米の方が処方の統一性からはふさわしく思います。→処方の統一性という言葉は軽々しく使うべきではありません。

あなたは「生真面目」ですね。でもね、仮にですよ、張仲景時代の弟子の誰かが、お米の代わりにもち米を間違っていれた結果、よい清熱効果が得られたという可能性もあるわけで、発見というのはこうした間違いから生まれることが多いんですが、処方の統一性なんて言葉はやや政治用語に近いですね。

私自身はもち米でも米でも山芋でもあるいはコーンスターチ(これは言いすぎか?)何でもいいだろうと感じています。要は「のり」ですよ。物と物をくっつける「のり」なんです。膠質(コロイド)の膠(にかわ)も「のり」なんです。

白虎湯は4味から成り立ちますが、これを弦楽四重奏とすれば、あなたの統一性に欠けるというご指摘は、演者の奏でる音楽よりも、その中の一人の氏素性を問題にしているようなものです。稲作が大陸から伝わったとは云え、1000年近くも前の、張仲景の周りで入手しやすかったものが、今のジャポニカ米じゃないことは確かであり、大陸の気候から判断して、北方の麦は手に入りにくかったかもしれないし、果たして玄米だったのか白米だったのか、精米の程度も確定もされていないんですよ。

納得なされないなら御自分で実験なさればよい。精米度を変えた実験群を作ってです。

古典の記載の正確度を云々するのはわかりますが、米の統一性なんていうほどの問題を白虎湯は抱えていないんです。漢方の初学者が陥りやすい罠ですね。原則に忠実な日本式(脱亜入欧)思考で柔軟性に欠けますよ。数学の世界じゃないんですから。

薬湯は口から飲むんです。噛まずに飲んでも消化酵素が必ず絡んできます。石膏成分は消化できませんが、粳米成分は必ず消化酵素の作用を受けます。消化、吸収、酵素の問題が出てきますね。きりが無いですね。澱粉そのものじゃないんです。加水加熱した多糖類として捉えなければなりません。(薬湯作成時点では酵素は関係ないということは御存知ですね)だからと言っては強引なのかも知れませんがムコ多糖でも代用が効く訳で、山芋でも代用可能と言及したのです。ムコ多糖も「のり」になるんです。昔私がこだわったグリコサミノグリカン糖蛋白じゃ飛躍しすぎかな?

それでも処方の統一性を主張されるなら、一つ方剤を紹介します。

へきうんたん辟瘟丹

羚羊角 朴硝 牙皂 広木香 黄柏 茅朮 茜草 黄金 姜半夏 文蛤 金銀花 川連 犀角 川朴 川烏 玳瑁 大黄 香 玄精石 郁金 茯苓 香附子 桂心 赤小豆 降香 鬼箭羽 朱砂 毛茨茹 大棗 甘遂 大戟 桑皮 千金霜 桃仁霜 檳榔 蓬莪朮 胡椒 葶藶子 牛黄 巴豆霜 細辛 白芍 公丁香 当帰 禹余粮 滑石 山豆根 麻黄 麝香 菖蒲 水安息 干姜 蒲黄 丹参 天麻 升麻 柴胡 紫蘇 川 草河車 壇香 桔梗 白  芫花 雄黄 琥珀 冰片 陳皮 腰黄 斑 蜈蚣 石龍子

暇があるときに考えてみてください。こうなると弦楽四重奏じゃなくて、下手な交響楽みたいでしょう?

> 「リポステロイド」の如き、成分の閉じ込め作用がある

リポステロイドとは何か、もう少し説明が聞きたいものです。

リポステロイドはもうお亡くなりになってしまいましたが元聖マリアンナ医科大学の水島教授の発明(考案)によるもので、リポプロスタグランジン発展の基礎となったものです。両者ともに、特に前者は、私も日常診療で使います。グーグルなどで、御自分で検索されてみてください。これからはカーボンナノチューブが注目されるでしょう。エマルジョンとかアジュバントなんかも関連のキイワードです。

細部にこだわるというのは研究者には必要な資質であると思います。しかし膨大な中国漢方の世界で細部にこだわっていると、大局を見逃すことになりかねないんです。トラップ(罠)に陥ることにもなります。良きことは取り入れ、疑問なところは心にとどめ置き、全体像を見るのが良い臨床医になるための王道だと思います。(貴方が医師であることの事実認定は無いのですが)

  

正体のわからぬ質問者へ 最後に

細部にこだわり「ブレイクスルー」を目指した自分自身もありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7277783

http://www.springerlink.com/content/67g1167j14331142/?MUD=MP

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6391765

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1440-1827.1984.tb07584.x/abstract?systemMessage=Wiley+Online+Library+will+be+disrupted+on+25+August+from+13%3A00-15%3A00+BST+%2808%3A00-10%3A00+EDT%29+for+essential+maintenance

などなど

すったもんだで、額に汗した臨床もありました。

http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902076655405109

などなど

そして、膨大な漢方医学に迷い込んでいる現在の自分があります。

24歳で研究生活に入りましたが、「セブンティーン アゲイン」ならぬ「24アゲイン」には戻れません。もう61歳ですから。細部にこだわる研究者が漢方の世界に出現してくれることを期待するのみです。

付録誰かはしらねど、○○カルシウムコロイド研究者へ助言。石膏もいいですが滑石についても御考慮ください。天然磁石、竜骨とか牡蠣なんかも対象にすれば面白いですよ。NSAID分野では「解熱鎮痛」の用語が出てきますが、中国漢方の世界では「清熱」と「鎮痛」は別物の感がありますね。これも研究対象になさると面白いですよ。

八月二十五日 記

ながら族元祖

飲酒運転ならぬ飲酒ブログであり、深夜番組を横目にしながらの「ながら族」になっています。

ぷはァ もっと苦くて昔のようにコクのあるビールが無いのだろうか?

へたが青臭く、昔の(熟した部分に濃厚なアミノ酸を感じた)トマトってどこにある?

おいおいそんな山奥の渓流まで登りつめ 岩魚を釣るんじゃないって!

環境保護を考えろよな 釣り上げたブラックバスは元に戻すんじゃない!

吉行和子はいい 浅岡ルリ子はいい マリリンもいいなァ

男優はほとんど死んでるじゃないか、女はしぶといなァ 

俺のリリーちゃんどこ行った?(迷い猫のリリー 気が向くと忍び込んでくる)

モコ(昔の愛犬)が死んでから何年になるんだろう?

鹿肉のステーキかァ 旨そうだなァ 真っ青

奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき

古今集 猿丸太夫より


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