脱毛と色素沈着を防止しつつ苔癬化アトピーを治療していくには?
症例に入ります。ブログ容量の関係で、写真サイズのビット数を減少させましたので、写真をクリックしていただけたら、ホップアップウインドウで詳細がご覧いただけます。
患者:S.W 37歳7女性 初診年月日:2012年3月19日 主訴:皮膚の乾燥とアトピー性皮膚炎の遷延化 病歴:小児期からアトピー性皮膚炎があり、一度は落ち着いていたが、22歳ごろからアトピーが再燃、抗アレルギー剤、ステロイド外用薬で治療を続けてきたが病状は思わしくなく、皮膚の乾燥と痒み、局所的な脱毛も生じてきたために当院受診。
初診時所見:前額部 両側頬部、特に右鼻翼に近い皮膚、口周囲から下顎にかけて乾燥した痒疹と苔癬化が目立つ。(写真下)
同様の後頸部から背部にかけての皮膚病変、色素沈着。(写真下)
肘内側部の湿疹と色素沈着、前腕部にも湿疹がある。(写真下)
頭皮のやや発赤を伴う脱毛局面。他にも有り。(写真下)
漢方(中医学)の考え方:赤みは熱と、痒みは「風(ふう)」と捉えます。皮膚の赤みを除くためには、清熱剤が有効ですが、清熱解毒薬に分類されている生薬は殆ど「燥湿」の性質を持つために漫然と使用していますと、皮膚の乾燥が進む弊害があります。従って、配伍するにしても少量にする必要があります。
皮膚の乾燥とは陰血による皮膚の濡養が不十分であると捉えます。従って陰血を養い皮膚を潤す(養陰血潤膚)必要があります。中医学では「肺は皮毛をつかさどる」という考えがあります。直接的な養陰剤と共に肺陰を補う必要が生じます。
次に、痒みですが、祛風(きょふう)剤の配伍が必要になってきます。いわゆる祛風止痒(風を除き痒みを止める意味)が治療法の選択肢です。但し、「治風先治血、血行風自滅」(風を治するには先ず血を治する、血が巡れば風は自ずから消失する)の原則に従います。養陰血祛風止痒潤膚になります。「血虚生風」という中医学用語も存在します。
さて、頭皮のやや発赤を伴う脱毛は、実熱にせよ虚熱にせよ熱邪は上炎する性質がありますが、本症例は虚熱(あるいは虚火)が頭皮に上炎と「感覚的」に判断して、潤燥退虚熱を治療原則としました。総合すれば、清熱解毒/養血生津(しょうしん)・祛風止痒/養陰潤膚・滋陰降火・退虚熱が治則となります。(面倒な中医学用語で恐縮です。患者さん個人別に生薬そのものや、生薬の配伍比率が異なりますので詳細は省略させていただきます)
治療開始半年後の治療効果をご覧ください。皮膚病変は面倒な中医理論を振り回すより、ビジュアルな結果から治療効果を判定できます。
2013年9月21日(第七診)顔面の苔癬化アトピーはほぼ消失。(写真下)
頭皮の発赤を伴う脱毛病変の縮小。(写真下)
直近2014年8月2日の所見。顔面の苔癬化アトピーの消失。皮膚に潤いが出現し、肌の乾燥感も消失。前額部には皮脂による艶も出ている。(写真下)
順に肘部、前腕部、後頸部/背部の写真上3枚。色素沈着を残すことなく、アトピー性皮膚病変は寛解しています。 経過順調、病情寛解です。一目瞭然ですね。 弁証論治 随症加減もありますが、人体の自然治癒力には驚かされますね。 ドクター康仁 2014年8月6日(水)
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