本日も無菌性膀胱炎の医案を紹介します。
患者:劉某52歳 女性 初診年月日:2005年6月23日
主訴:頻尿 尿灼熱十余日
病歴:反復性尿路感染十余年、十余日前から誘因無く頻尿 尿灼熱出現。尿検査正常。抗生物質点滴静注十日、症状好転無く、入院治療となった。
初診時所見:頻尿 尿灼熱 腰酸痛、倦怠乏力、下腹部冷感、舌淡、苔薄白、脈沈細
中医診断:労淋(久病腎虚 湿熱内蘊)
西医診断:尿道総合症
方薬:
黄耆30g 党参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓20g 澤瀉20g 懐牛膝20g車前子15g 土茯苓50g 薏苡仁25g 益母草30g 白茅根30g 石葦20 萹蓄20g 甘草15g 十剤、水煎服用、1日1剤、2回に分服。
経過:服薬10剤で腰痛、倦怠乏力軽減、但し頻尿、尿灼熱、下腹部冷感あり、舌淡、苔薄白、脈沈細、以前よりは有力である。張教授が診察、中医の寒淋に属すると判断、腎陽不足、温化固渋に欠くと弁証。益気升陽、温腎固渋で治療する。
方薬;
桑螵蛸15g 益智仁15g 竜骨20g 亀板15 黄耆30g 太子参15g 白芍20g 桂枝25g 牡蠣20g 天花粉15g 知母15g 附子10g 甘草15g 七剤、水煎服用、1日1剤、2回に分服。
経過:服薬7剤で、腰酸痛、倦怠乏力、頻尿改善、僅かに尿熱がある、下腹部は転暖し、苔薄白、脈緩。尿検査異常なし。更に7剤継続服用、患者症状消失退院となる。
ドクター康仁の印象
陽虚の「程度の差」で、強い印象ならば、桂枝、附子を使用し(参耆で益気補中し)、陽虚の「程度が軽い」印象ならば、巴戟天 淫羊藿 仙茅を用い、陰中求陽、陰陽調和を図るのが張琪氏のやり方ですね。清熱利湿痛淋の剤は陽気を傷つけるので、一切使用していませんね。尿道の収縮感を伴えば芍薬甘草湯の配伍になるわけです。亀板は陰中求陽の陰に相当します。桑螵蛸、益智仁はそれぞれ、咸、補腎助陽、固精粛尿、辛温、温腎助陽、固精縮尿に作用し、まず、桑螵蛸 益智仁 竜骨を配伍してから、陽虚の度合いをみるのが、氏の定法でしょうか。
それにしても、知母の意味(役割)はなんでしょうかね。尿の灼熱感の改善がいまいちでしたので、知母を加え、清下焦熱の意味を持たせたののでしょうね。天花粉の配伍にせよ張琪氏の心中ではある程度の道筋が出来ているのでしょうね。
2014年5月26日(月)
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