黄振鳴氏医案 脾腎不足 湿瘀互結型案
女性32歳。
初診:1991年3月12日
病歴:近年1年間ぐらい月経時に腰部のだるさや痛みと、下腹部の下垂感を伴う張痛が出現した。1990年10月に、閉経2ヶ月のために、某病院受診し、尿蛋白(3+)を指摘され、その後の検査の後で「隠匿性腎炎」の診断を受けた。服薬治療を受けたが根治せず、来診となった。
検査:血圧16.6/10kPa(126/75mmHg),面色は暗く艶が無く、耳垢が黒く、唇色は紫暗、舌暗、舌辺に瘀点があり、苔は白?、脈は細渋であった。末梢血液検査で、白血球7000、血小板14000(かなり低い、出血傾向が出現するレベルまで到達している。全身性に紫斑が出現しても不思議の無いレベルです。原文では14x10の9乗/Lになっています。或いは誤植かも知れません。):BUN 7mml/L(42mg/dl), Cre110μmol/L(1.24mg/dl)(クレアチニン濃度に比較してBUNが上昇している体内での出血機序が考えられる)炭酸ガス結合力30mmol/L(原文を直訳したのですが、炭酸ガス結合力の意味付けと評価が私には不明です。)
弁証:脾腎不足 湿瘀互結
治則:補腎健脾 袪湿化湿(袪湿と化湿はほぼ同意ですので、前後の文脈から判断して袪瘀化湿あるいは袪湿化瘀の誤植でしょう。)
方剤:補腎化瘀湯加減 黄蓍24g丹参18g 崩大碗24g赤小豆30g川紅花12g鉄樹根15g牡丹皮12g茯苓18g熟地黄24g土狗干12g 以上が煎じ薬
黄氏本院作成の消蛋白食毎日2回 そのつど煎じ薬を飲む。
(黄氏の消蛋白食は黄耆30g薏苡仁30g赤小豆30g米30gに水を1500ml加え煮て粥にしたもので日に3度、一回2碗を食する、を原則としたものです。)
再診:1991年3月20日。7剤を服薬後、面色は暗く艶が無く、耳垢は黒く、舌暗、舌辺に瘀点あり、苔白、脈弦細。尿蛋白(1+)。上方から、崩大碗を去り、菟絲子15gを加え、さらに30剤を連服させる。消蛋白食は継続。
(血小板数が14000ですと即入院し血液学的な検査が必要になりますので、原文は14万であったろうと思います。製本の段階での誤植でしょう。)
三診:1991年4月21日。面色紅潤、舌紅苔白。脈弦細。尿検査正常。
上方と消蛋白食2ヶ月継続。6回の尿検査は正常。さらに1年後再発無し。
補足 鉄樹の功能
性味:甘、平、渋,有小毒。
功用:葉は収斂薬で止血の功能がある。花は鎮咳鎮痛の功能がある。根には強壮薬としての功能があり,最近抗癌作用が注目されています。私は現物を見たことも無ければ使用経験もありません。
仏教用語での「鉄樹開花」の意味:仏教語で「鉄樹」は鉄でできた木。また、広西に産し、六十年に一度、花が咲くという木のこと。ありえないこと、また、めったに来るものではないことの意味と、あり得ないことも「起き得る」の意味があるらしいです。
評析
本案の患者には腰酸腹張、面色は暗く艶が無く、耳垢が黒く、唇色は紫暗、舌暗、舌辺に瘀点があり、苔は白?、脈は細渋であったことを結合すると、脾腎両虚、湿熱内蘊の他に、血瘀の証が比較的明らかである。故に、方中、黄蓍、熟地黄、赤小豆の補益脾腎、利水袪湿の剤の他に、先ず丹参、紅花などの活血化瘀の品を用いることによって、治療効果に万意を得たのである。
ドクター康仁の印象
再び、崩大碗 土狗干さらには鉄樹根も新登場してきて、黄氏の独壇場の
様相です。
さて32歳女性の生理はまた来たのでしょうか?何の記載もありませんね。
評析も深い考察がありません。真似が出来ず、誤植の多い黄氏医案と
薄っぺらな評析からは、しばらく遠ざかるのが、時間と体力のロスを未然に
防ぐために賢明な策と言えます。
次回からはいわゆる「慢性腎炎」の医案解析に移りたいと思います。
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