管??氏医案 肝腎陰虚兼挟湿熱案
(?西中医 2000年 第4期より)
患者:?某、28歳 女性
初診年月日:1996年8月12日
病歴:
多飲多尿尿頻口渇を繰り返すこと10年、嘗て、入院し、2型糖尿病、糖尿病性腎症と確定診断を受け、二甲双胍(ビグアナイド系経口糖尿病薬 メトフォルミン)、糖适平(スルフォニルウレア系経口糖尿病薬 グリキドン)などの薬剤を服用していたが、血糖値のコントロールは理想的ではなかった。
初診時所見:
顔面潮紅、体痩便結、夜尿5~7回、視物昏花、腰膝酸軟、舌暗紅少津、苔薄黄膩、脈弦細数。
弁証:
証は肝腎陰虚兼挟湿熱
治法:
滋補肝腎 兼清利
処方
生地黄 熟地黄各20g 山薬 山茱萸各12g 牡丹皮 枸杞子各15g 茯苓 澤瀉 菊花 黄柏 知母各10g 烏梅 冬瓜仁各30g 丹参20g 広木香6g
経過:
服薬1週後、煩渇は著明に減軽、夜尿減少。継続服用3ヶ月で、血糖は基本的に正常、以後は豚の膵臓粉を加えて丸剤を作成、継続服用にて治療効果を固めることにした。
評析
糖尿病の病機は多くは“陰虚燥熱”であり、陰虚が本、燥熱が標であり、互いに因果関係を形成し、発病は五臓に関係するが、主要な臓器は肺、脾(胃)、腎の三臓であり、腎を主とする。「丹台玉案 三消」に言う如く:“腎水が虚すれば、余火を制することが出来ず、火旺は消滅せず、臓腑は熱で損傷し、火により水が涸れるとますます陰水は欠乏し、水が涸れ火の勢いが増せばますます陰虚が進み、陽盛陰衰がこの証を構成し、三消の証がますます悪化する。”
糖尿病性腎証は糖尿病の失治の変証の一つである。故に、滋腎清熱が治本の法である。
本案では知柏地黄湯にて滋腎陰、清虚熱、枸杞子、菊花を配伍して補肝腎清肝熱、烏梅にて斂肺生津、冬瓜仁にて清肺熱、丹参にて活血化瘀と腎血流量の増加、木香にて行気し胃の滋膩を防止する。
現代の薬理研究では、熟地 枸杞子 山薬 冬瓜は血糖降下作用があるとされ、諸薬を配合し滋陰清熱、活血斂津収渋降糖、つまり標本兼治の効能となる。
豚の膵臓粉は伝統的な臓器療法であり、材料も入手しやすく、後期の併用は治療効果を固め、その意味で特色を持つ。実際の治療の運用では、肺 脾 腎の三臓兼証の相違点を注意しながら、糖尿病性腎症に対して六味地黄湯加味系列により治療することは、多数の中医の意見を総括すると、臨床上有効なことであると言える。
ドクター康仁の印象
血圧 体重 血糖値 HgA1値(糖化ヘモグロビン値) 尿蛋白の量 血糖値のコントロールは不理想的、ではどのくらいであったのか?網膜症の有無は?腎機能は?
1996年初診ですから極近代ですが、全てが不明で記載無しの典型的中医案です。
枸杞子、山薬も過剰に摂取すれば当然血糖値は上昇しますのでご注意ください。
本案の救いといえば、患者の自覚症状が軽減したことでしょう。
本案の主旨は糖尿病あるいは糖尿病性腎症の陰虚燥熱証は悪循環になるので滋陰清熱すべしということです。牡丹皮 丹参のような涼血活血化瘀剤も見逃せない生薬です。
2013年7月10日(水) 記
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