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脱毛ほど悲しいものはない 続編

2012-08-02 13:35:36 | アンチエイジング

老いを感じさせる脱毛 健康保険内での治療とは?

56歳 女性 手 後頚部を合併する脱毛症例

介護職に就いている。手掌、後頚部の痒みと脱毛を主訴に来院された。手掌にはいわゆる角化の目立つ主婦湿疹と後頚部には赤みを伴う腫れ、表面の軽度の落屑を伴う湿疹が見られる。頭皮には軽度の痒みが出現することがある。

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初診時 主婦湿疹と後頚部湿疹

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康仁堂風止痒方 養陰清熱潤膚方により2ヶ月後には痒みや湿疹は治まった。

各方についての説明は本稿の目的ではないので省略する。

さて問題は脱毛である。保険内診療を希望された。

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初診時頭部所見 頭頂部を中心に脱毛が広がっている。頭皮には若干の赤みがある。

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2ヵ月後の頭部所見 痒みは収まっているものの脱毛は進行している

老いをどう捉えるか?日本漢方は「瘀血」という観点から捉えることが多い。中国医学では「腎虚」として捉える。前稿で紹介した康仁堂28味生髪方を再度記載する。

Jpeg 康仁堂28味生髪方

杜仲 桑寄生 菟絲子 肉蓯蓉 枸杞子 何首烏 熟地黄 当帰 白芍 川芎 桑椹子 益智仁 酸棗仁 五味子 黄耆6g 桂枝4.5g 竜眼肉 側柏葉 補骨脂 女貞子 旱蓮草 茯苓6g 白朮4.5g 遠志 牡蠣 丹参 山薬 大棗6g

熟地黄 当帰 白芍 川芎 丹参は養血活血に作用する。「瘀血」の観点を考慮したものだ。杜仲 桑寄生 菟絲子 肉蓯蓉 枸杞子 何首烏 桑椹子 益智仁 竜眼肉 補骨脂 女貞子 旱蓮草などは補腎陰陽 補肝陰を目的にしている。生薬の個々の説明は後稿で行うつもりだが、つまり生体のエネルギー的根源の「虚」とも言うべき「腎虚」を考慮したものだ。腎と肝は平たく言えば親戚関係である。相生関係という。したがって、補肝腎作用を持つ生薬を配合している。古来からの言い回しで補腎肝とは言わない。補肝腎と言う。

保険の効く方剤には補肝腎作用のある適当な方剤がない。そもそも脱毛が保険適応になる方剤が皆無なのだ。そこで、次善の策として人参養栄湯を選択した。

人参養栄湯(にんじんようえいとう栄養を逆さまに養栄と書く。ツムラの番号で言えば108番で、出典は和剤局方である。

十全大補湯(八珍湯+黄耆肉桂)から川芎を除き遠志 五味子 陳皮を加えたものである。党参 茯苓 白朮 炙甘草 当帰 熟地 白芍 黄耆 肉桂 遠志 五味子 陳皮が組成である。

「保険診療の手引き」には、虚症、寒症に用い、病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血とあり、呼吸困難は適応外とある。どこにも脱毛は出てこない。」

ところで、中国医学では慢性疲労は気血が不足するため起きるという因果律を持つ。「脾は後天の元であり、気血を生化し、四肢を主る」という。慢性疲労は脾気虚と関係が深く、脾気虚は「清陽不升 濁陰不降」の病態を起こす。脾気虚が進行すると、腎に波及し治りにくくなり、久病及腎となる。さらに「久病挟瘀」「痰成怪病」の表現にあるように、瘀血や痰飲などの病理産物が体にたまってきて病状が悪化する。脾気を補い清気を上昇させる必要がある。一般的に、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)加減を行う。補中益気湯(脾胃論):組成は黄耆1530人参白朮炙甘草6 柴胡3升麻3 当帰陳皮6 効能は補中益気 昇陽挙陥 甘温除大熱である。

康仁堂28味生髪方に黄耆が配合されているのは、「気は血を生む」の基礎理論による。黄耆と当帰の組み合わせは当帰補血湯にある。髪は「血余(けつよ)」と言う。生髪には養血が必要であるという経験的根拠を示すのが「血余」である。ただし補中益気湯には安神剤の配合が無い。

人参養栄湯には精神安定作用のある遠志や五味子が配合されているのがいい。康仁堂28味生髪方には、酸棗仁や牡蠣をくわえさらに安神作用を強化している。補肝腎薬、補陽補陰薬に欠ける人参養栄湯ではあるが治療経過を観察する。

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6ヵ月後 広がった脱毛部位に生髪が観察される。

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写真 直近の頭皮 脱毛はほぼ止まり、ゆっくりであるが生髪が続いている。

人参養栄湯の生髪効果はいまいちの感がぬぐえない。

康仁堂の基本生髪治療方針:補肝腎陰血 養陰血祛風 重鎮養心安神 活血化瘀作用を同時に有する保険方剤はない。


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