本日は初老男性、糖尿病患者に合併した尿路結石症の治療例をご紹介します。2002年の症例で比較的近年であり、糖尿病は経口降糖剤でコントロールされている症例です。方薬に海金沙(邦名 海金砂 甘寒 利水通淋 利水消腫:カニクサ科カニクサの成熟胞子)が登場します。張琪氏の医案では95年以降に登場して来るようです。<o:p></o:p>
患者:王某 49歳 男性 党幹部 初診年月日:2002年3月4日<o:p></o:p>
病歴:糖尿病歴有り、経口降糖剤で空腹時血糖7.3mmol/L(131.4mg/dL)程度にコントロール中、尿潜血3+、超音波検査にて右腎泥砂様結石あり。<o:p></o:p>
初診時所見:小便量少なく不爽、色深黄、舌苔白少澤(湿り気が少ない)、脈象沈滑<o:p></o:p>
中医弁証:湿熱蘊結、気滞血瘀、気化障害にして結石下行が不能<o:p></o:p>
西医診断:右腎結石<o:p></o:p>
治法:清熱利湿消堅、活血化瘀法<o:p></o:p>
方薬:瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 車前草(清熱解毒利水)30g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 白茅根(凉血止血、清熱利尿)30g 海金沙(布包)30g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 益母草(活血利水消腫)30g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 水煎、一日一剤、2回に分服<o:p></o:p>
二診:5月11日。上方服用7剤で、尿量が約2000mlに増加、尿の沈殿物は泥砂状。尿RBC満視野/HP、砂石排出の兆候。上方加減を継続。<o:p></o:p>
方薬:金銭草30g 海金沙30→20g 車前草30g 瞿麦20g 萹蓄20g 赤芍15g 桃仁20g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 石葦20g 白茅根30g 益母草30g 牡丹皮15g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 側柏葉(涼血止血)20g 甘草(調和諸薬)15g<o:p></o:p>
三診:5月26日。上方服用14剤経過中、最初の7剤で砂石の排出が多く、続く7剤で、小便は微黄になった、まだ極少量の砂石の排出あり。尿検査:潜血3+、RBC10~15個/HP。脈象滑。砂石の残余未浄を考慮し、上方を継続し、治療効果を固めた。<o:p></o:p>
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>
二診では初診時方薬に滑石 側柏葉が加味されました。この医案には「三金湯(さんきんとう)」の鶏内金 海金沙 金銭草 石葦 冬葵子 瞿麦のうち冬葵子(とうきし 甘寒 アオイ科フユアオイの成熟種子 利水通淋)を除いて全て配伍されています。鶏内金は化堅消石の作用が、尿路結石、胆石などによく使用され、金銭草、海金沙と配合して、有名な「三金湯」という結石に有効な経験方があります。本案は一点突破、14剤で見事な治療効果でした。<o:p></o:p>
2006年の症例:急性腎不全 急性間質性腎炎 張琪氏漢方医案3(腎病漢方治療325報)http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140414 では、両則腎尿管結石治療に「三金湯」の三金が使用されていたことをご紹介しました。もう一度、興味のおありになる方は御覧下さい。「金(きん)は石より強し」ですね。三金湯を使って治療した腎結石の経験がありますが、効果抜群です。<o:p></o:p>
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2014年6月7日(土)<o:p></o:p>
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