人参を癌の患者さんに処方することが多い。自問自答である。効くのであろうかと。西洋抗がん剤の副作用を軽減するには野山人参がいいことは経験的に理解している。ところが直接的な抗癌作用があるのかないのかという問題となるとまだ自信がないのが実情である。そこで基礎実験のデータをあつめてみると、
1.実験的にマイトマイシンなどの抗がん剤の作用を増強させ、
抗がん剤による白血球減少などの副作用を有意に改善する。
つまり、人参成分には西洋抗がん剤の効能を高め、かつその副作用である白血球減少などを防止できるということはたしかである。癌治療において、西洋と東洋の知恵を一緒にすることが現在求められている理由である。
2.実験的に、異物を貪食する大食細胞を活性化するとともに、
リンパ球のナチュラルキラー活性を増強する。
がん細胞を生体にとっての異物として、がん細胞を攻撃する細胞性免疫機能を、人参は活性化するということであり、その抑癌効果ががん防止につながると考えられているわけだ。今流行の活性化リンパ球移入療法や樹状細胞免疫療法と一脈を通じる作用がある。
疫学調査によると、平素人参を愛飲している人達では、がんの発生率が低いといわれていることも大事なデータである。
3. 放射線療法に伴う骨髄抑制を防止する。
これまた、抗がん剤や放射線療法と併用して人参を服用することが推奨される理由です。
4.癌腫瘍内の血管の内皮細胞の増殖を抑え、癌組織の血管新生を抑制することによって、癌組織を栄養不足に陥らせ癌組織の発育増殖を阻止する。
以上ように、抗腫瘍効果や、西洋抗がん剤の作用を増強させる効果、西洋抗がん剤、放射線療法の副作用を防止する効果、がん組織を縮小させる効果などは、
人参の癌治療における幅広い有効性を側面から証明するデータは多い。しかし、いわゆる西洋抗がん剤のような試験管内での細胞障害性を立証するデータは無いようだ。