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尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 3(腎病漢方治療 374報)

2014-06-02 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

本日も消堅排石湯加減弁治を紹介します。高齢かつ水腎症を伴い、手術をためらい、2ヶ月余の中薬治療で遂に完治した症例です。それでは医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:張某 71歳 男性 初診年月日1996817<o:p></o:p>

 

病歴:患者は4年前、突然に腎絞痛が出現、西医の診断では、左腎と尿管中段に結石あり、左腎積液を伴う。患者は高齢で体虚の為に出術にむかないと判断、中医に治療を求め受診。<o:p></o:p>

 

初診時所見:患者腰酸痛、倦怠乏力、排尿時に排尿が中断する減少がある、尿検査:WBC812/HPRBC510/HP、舌質淡苔白厚膩、脈沈にして無力;超音波検査:左腎盂結石一塊、直径3.5mm。左側尿管中上段に結石二塊:直径1.3mm1.4mm<o:p></o:p>

 

中医弁証:腎陽不足 正気虚衰 湿熱薀蓄 血絡瘀阻<o:p></o:p>

 

西医診断:左腎及び尿管上中段結石、左腎積液を合併。<o:p></o:p>

 

治法:温腎助陽気化、清熱解毒利湿、通絡排石<o:p></o:p>

 

方薬<o:p></o:p>

 

烏薬(温腎散寒 行気止痛)20g 白芷解表 祛風燥湿 消腫排膿 止痛)15g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 海金沙(利水通淋)20g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 車前子(清熱利水)30g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 威霊仙15g(袪風除湿、通絡止痛、消痰逐飲、軟堅散結) 桂枝(通陽)15g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 甘草(調和諸薬)15g 以上水煎服用、11剤 2回に分服<o:p></o:p>

 

経過:患者は服薬70余剤、結石全部排出、超音波検査で積液消失。追跡調査1年余状態穏定再発なし。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

見事な治療結果でした。白芷は恐らく今までの張琪氏の腎病医案では最初に登場ししたと思います。(風寒)頭痛によく効く生薬です。川芎茶調散は有名な白芷が配伍された方剤です。本案では「消腫排膿」の効能に着目したのでしょう。前報(373報)に続いて、威霊仙が再び出現しましたね。中国の民間療法では、硬い魚の骨が咽や食道に刺さった場合に威霊仙を煎じて飲むと骨が溶けるとされます。軟堅散結消腫作用は、特殊な腎病に対して、あるいは抗癌生薬として用いられています。鶏内金は鶏の砂嚢の内膜ですが、近年価格が高騰しています。当医院の趙博士のお話では、鶏内金は威霊仙と同じ発想で、抗癌生薬として注目され、抗癌製剤に多く配合される生薬の一つになったのが価格高騰の理由だとのことです。私は、焼き鳥の砂肝(すなぎも)人気のためかと漠然と勘違いをしていたのですから、世事に疎かった訳です。<o:p></o:p>

 

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201462日(月)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 2(腎病漢方治療 373報)

2014-06-01 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

患者:于某 35歳 男性 初診年月日:1995年7月24日<o:p></o:p>

 

病歴:2年前検診時に、超音波検査で右腎盂に直径2.5mmの小結石を発見されるが、無症状のために放置。1ヶ月前腰痛出現、針で刺されるような痛みで、超音波検査で右腎盂の結石は4~5塊、直径2.95.6mm、右腎盂積液が確認された。西洋治療が奏功無く、ウラリット、ウロカルンを服用するも、効果は無い。<o:p></o:p>

 

初診時所見:頻尿、尿意切迫、双下肢酸軟無力を自覚、尿黄赤、舌苔白やや膩、舌質紫、脈沈滑。尿RBC2530/HPWBC1520/HP<o:p></o:p>

 

中医弁証:腎陽不足 血絡瘀阻 西医診断:右腎結石 右腎積液<o:p></o:p>

 

治法:活血化瘀 利尿痛淋 温腎助陽<o:p></o:p>

 

方薬三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 海金沙(利水通淋)15g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)15g 皂角刺(解毒活血消瘀)10g 穿山甲(薬用部分はウロコ部分 活血破瘀通経、下乳、消腫排膿5g 王不留行(苦/平 おうふるぎょう 活血化瘀 通経 下乳)30g 玄明粉(=芒硝 泄熱通便 軟堅潤燥 単包、冲服)7g 大黄(活血通腑泄濁)7g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)7g 益智仁(温脾開胃摂唾、温腎固精縮尿)20g 桂枝(通陽)15g 橘核(行気散寒止痛)20g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)20g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 威霊仙(袪風除湿、通絡止痛、消痰逐飲、軟堅散結)15g 甘草(調和諸薬)10g 以上水煎服用、毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

二診:服薬7剤後、患者は腰痛が顕著に減軽するのを感じ、尿路症状は顕著に改善した。尿検査:RBC58/HPWBC23/HP、体力は明らかに増強した。<o:p></o:p>

 

三診:患者は都合5回再診し、方薬は上方加減を以ってした。計40余剤の服用にて、経過中4塊の排石があり、超音波検査にて結石は消失していたが、まだ積液は存在した。患者は腰酸を自覚し、舌質淡、苔白、脈沈滑、温陽痛絡、清熱利湿法を継続し、積液は除かれた。<o:p></o:p>

 

方薬附子10g 桂枝15g 丹参20g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 赤芍15g 牡丹皮15g 石葦15g 白茅根30g 薏苡仁25g 敗醤草30g 金銀花30g 連翹20g 甘草15g 以上水煎服用 毎日1剤。<o:p></o:p>

 

経過:上方服用20余剤、患者の自覚症状は全て除かれ、超音波検査にて腎積液は既に消失、半年後再検し再発は無し。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

本案の方剤は前報372報の消堅排石湯の腎陽不足案の加減になりますが、本案の初診時処方には桃核承気湯の配伍がありますね。破血化瘀の目的だったのでしょう。そして、三診の方薬をよく眺めてみれば、前前報371報の薏苡附子敗醤散加味方になっているのに気が付きます。<o:p></o:p>

 

中医の活血化瘀法はあらゆる場面に使える治療法です。中医の一大特徴とも言えるでしょう。<o:p></o:p>

 

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201461日(日)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 1(腎病漢方治療 372報)

2014-05-31 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

消堅排石湯は張琪氏の自創方であり、組成は金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)5070g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 紅花(温経活血)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 車前子(清熱利水)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15gから成ります。それでは、医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:趙某 初診年月日2001424<o:p></o:p>

 

病歴:三ヶ月前、明らかな誘因もなく、突然腰痛が出現、痛みに耐えかねず、某医院受診、超音波検査にて左側腎盂内に直径6.2mm6.6mm2個の結石、右側腎盂内に直径4.8mmの結石が発見された。平滑筋弛緩薬、止痛薬、抗生物質、ウラリット等治療を受け、絞痛発作はおさまったが、結石そのものに変化無く、遂に張氏の病院を受診。<o:p></o:p>

 

初診時所見:患者腰酸痛、尿黄便干、舌苔黄、脈滑<o:p></o:p>

 

中医診断:湿熱蘊結下焦 西医診断:双腎結石<o:p></o:p>

 

治法:清利湿熱 行気活血 軟堅化石<o:p></o:p>

 

方薬消堅排石湯金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 牡丹皮15g 瞿麦20g 萹蓄20g 滑石20g 車前子15g 桃仁15g 以上水煎服用 12回に分服<o:p></o:p>

 

二診200158日。上方12剤服用にて、二塊の結石が排出された。尿RBC5~7個/HP、超音波検査にて左側腎盂にはまだ直径5mmの結石が残存しており、腰酸痛、舌苔黄、脈滑数。前方を継続する。<o:p></o:p>

 

三診2001523日。服薬14剤で腰酸痛減軽、超音波検査で腎盂結石は消失しており、尿RBC13/HP、停薬した。日常水分を多く飲むように言い、10月再度超音波検査施行、結石の再発は無し。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

消堅排石湯の主薬は金銭草ですが、文献上はじめて記載されたのが「本草綱目拾遺」であり、性は微寒とされますので金銭草と色分けしなくてはなりませんが、近年の清書では平とされていますのでグリーンに表記してきました。「本草綱目拾遺」では「祛風治湿熱」「治白濁熱淋玉茎腫痛」と効能が記載されており、「清熱解毒利尿排石、活血散瘀」の尿路結石治療効果が確認されたのは近代になってからです。<o:p></o:p>

 

私個人では58歳男性の「白濁熱淋玉茎腫痛」に著効した経験があります。<o:p></o:p>

 

三棱 莪朮 鶏内金は軟堅行気に、赤芍 牡丹皮 丹参 紅花は化瘀散痛消腫に、萹蓄 瞿麦 滑石 車前子は清熱利湿に作用し、協調し溶石、排石の効果をもたらします。<o:p></o:p>

 

結石が大きく排出困難な場合には、穿山甲 皂角刺を加味し、病程が長く、腎陰虚の証を合併すれば、熟地黄 枸杞子 山茱萸等を、腎陽不足には肉桂 附子 茴香を、気虚には黄耆 党参を加味すると排石が可能になる場合があります。<o:p></o:p>

 

病程が長く、反復感染を起こすものは、多くは腎陽不足、気化効能不足、湿熱毒邪薀蓄不除によるものであり、消堅排石湯を基礎にして、附子 桂枝 肉桂を加味し温陽を以って気化を助け、薏苡仁 敗醤草 金銀花 連翹等の利湿清熱解毒の剤を加味すると良い結果が得られると張琪氏は述べています。<o:p></o:p>

 

「清熱利湿」「活血行気」「軟堅化石」は結石の基本治療と言えるでしょう。本案は基本に忠実な典型例です。<o:p></o:p>

 

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2014531日(土)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 薏苡附子敗醤散(よくいぶしはいしょうさん)による治療 (腎病漢方治療 371報)

2014-05-30 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

今回から尿路結石症の症例を計10例紹介します。実は私自身も2回、尿路結石を患い、肉眼的血尿を伴う腰痛発作に悩まされたことがありますが、手持ちの生薬と西洋薬で何とか急場をしのぎ、ここ数年は無症状になり、尿検査も正常です。2回とも排石に成功しました。医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 


患者
:丁某 39歳 男性 初診年月日199274<o:p></o:p>

 

病歴:腰痛を主症状として6ヶ月前に発症、超音波検査にて右側腎杯部に2個の結石(直径2.6mm3.2mm)と腎盂拡大(水腎症初期)が発見される。(超音波検査で確認不能な腎盂から尿管にかけての下部尿路結石が存在したのでしょう。)嘗て、ウラリットを用い、1個の結石を排出したが、腎盂拡大は治らず、尿検査ではWBCが満視野/HP、某病院に入院し、抗生物質治療を受けたが、尿中WBCは消失せず、腎盂の積液も好転が無いために治療を求めて張氏の病院を受診した。(原文では消石素とありますが、日本での商品名はウラリットです。主成分はクエン酸カリウム クエン酸ナトリウムで、体内でクエン酸回路によって代謝されて重炭酸イオンを生成し、体内で塩基として働き、尿や体液をアルカリ側にすることから酸性尿改善薬とされます。通常は尿酸系結石に効果があるとされますが、尿酸値の記載は医案にはありませんでした。似たような商品名でウロカルンがありますが、成分は別物で、ブナ科のウラジロカシのエキス剤です。結石排出促進剤と記載されている清書がありますが、動物実験で結石形成抑制作用、溶解作用が認められ、長期投与によって尿中のカルシウム、リンは増加傾向を示すという報告があります。)
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初診時所見:腰酸痛、両腿酸軟無力、小便黄、舌苔白膩、脈象数。<o:p></o:p>

 

中医弁証:腎陽不足 正気虚衰 湿熱蘊蓄 血絡瘀阻<o:p></o:p>

 

西医診断:右腎結石 右腎盂積液<o:p></o:p>

 

治法:温腎助陽気化 清熱解毒利湿 通絡排石、正邪兼顧
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方薬薏苡附子敗醤散加味:附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 敗醤草(清熱解毒利湿、排膿破血30g 薏苡仁(健脾利水滲湿)30g 金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)30g蒲公英(清熱解毒利湿)30g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 連翹20g(清熱解毒利湿) 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 丹参(活血化瘀)20g 澤瀉(利水滲湿 泄腎濁)20g 桂枝(通陽)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 甘草(調和諸薬)15g 水煎服用、毎日2回に分服。<o:p></o:p>

 


二診
1992717日。服薬後、血塊が一つ小便に排泄され、尿中WBCは転陰し、尿RBC3~5個/HP、尿色転淡、食欲及び精神ともに良好、ただしまだ腰酸痛あり、脈象滑、舌苔白、上方を加減し継続した。<o:p></o:p>

 

方薬:上方の丹参20g15g、萹蓄を去り、石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20gを加味<o:p></o:p>

 


三診
199283日。服薬14剤後、尿中のWBC転陰、RBC57/HP、心身ともに好転、超音波検査にて腎盂の積液減少、尿管拡張は顕著に縮小、脈象滑、舌苔白、前方加減を継続した。<o:p></o:p>

 

方薬:上方より蒲公英を去り、茯苓(健脾利水)20g 三棱(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 青皮疏肝破気、散結消滞)15gを加味。<o:p></o:p>

 


四診
1992819日。服薬15剤。服薬中に一時的に血尿悪化、尿RBC満視野/HP、結石が一塊排出され、尿RBCは消失した。腰やや酸、温陽通絡、清熱利湿を継続する。<o:p></o:p>

 

方薬:薏苡仁を25gに減量、白茅根凉血止血、清熱利尿30g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15gを加味。<o:p></o:p>

 


五診
199295日。服薬15剤、超音波検査にて腎積液消失、症状消除、快癒した。
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

薏苡附子敗醤散の原典は「金匱要略」の「腸」の方剤で、寒湿瘀血互結による腸癰(ちょうよう)蓄膿を治すものです。薏苡仁 附子 敗醤草の三薬からなります。脈数であるが、発熱なしは内有癰膿(ようのう)の証であるとされます。本案も脈象は数でしたね。
薏苡仁は敗醤草と協力し、排膿破血を果たし、辛熱の附子は薏苡仁を手伝って散寒湿、行鬱滞気をするとされます。本案では附子 桂枝が通して使用されました。発熱を伴わない慢性の尿路感染症を併発しており、抗生物質も尿中のWBCの軽減に効果が薄かったのですから、ためらうことなく薏苡附子敗醤散加味方を張氏は採用したわけです。まさに異病同治に近い手法でしたね。<o:p></o:p>

 

「腎結石 腎盂積液 感染合併」を「腸癰」の証とする弁証論治が見事に奏功したわけです。日本ではなかなか経験できない症例です。

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2014530日(金)<o:p></o:p>