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尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 8(腎病漢方治療 379報)

2014-06-07 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

本日は初老男性、糖尿病患者に合併した尿路結石症の治療例をご紹介します。2002年の症例で比較的近年であり、糖尿病は経口降糖剤でコントロールされている症例です。方薬に海金沙(邦名 海金砂 甘寒 利水通淋 利水消腫:カニクサ科カニクサの成熟胞子)が登場します。張琪氏の医案では95年以降に登場して来るようです。<o:p></o:p>

 

患者:王某 49歳 男性 党幹部 初診年月日200234<o:p></o:p>

 

病歴:糖尿病歴有り、経口降糖剤で空腹時血糖7.3mmol/L131.4m/dL)程度にコントロール中、尿潜血3+、超音波検査にて右腎泥砂様結石あり。<o:p></o:p>

 

初診時所見:小便量少なく不爽、色深黄、舌苔白少澤(湿り気が少ない)、脈象沈滑<o:p></o:p>

 

中医弁証:湿熱蘊結、気滞血瘀、気化障害にして結石下行が不能<o:p></o:p>

 

西医診断:右腎結石<o:p></o:p>

 

治法:清熱利湿消堅、活血化瘀法<o:p></o:p>

 

方薬瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 車前草(清熱解毒利水)30g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 白茅根凉血止血、清熱利尿30g 海金沙(布包)30g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 益母草(活血利水消腫)30g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 水煎、一日一剤、2回に分服<o:p></o:p>

 

二診511日。上方服用7剤で、尿量が約2000mlに増加、尿の沈殿物は泥砂状。尿RBC満視野/HP、砂石排出の兆候。上方加減を継続。<o:p></o:p>

 

方薬:金銭草30g 海金沙3020g 車前草30g 瞿麦20g 萹蓄20g 赤芍15g 桃仁20g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 石葦20g 白茅根30g 益母草30g 牡丹皮15g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 側柏葉(涼血止血)20g 甘草(調和諸薬)15g<o:p></o:p>

 

三診526日。上方服用14剤経過中、最初の7剤で砂石の排出が多く、続く7剤で、小便は微黄になった、まだ極少量の砂石の排出あり。尿検査:潜血3+、RBC1015/HP。脈象滑。砂石の残余未浄を考慮し、上方を継続し、治療効果を固めた。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

二診では初診時方薬に滑石 側柏葉が加味されました。この医案には「三金湯(さんきんとう)」の鶏内金 海金沙 金銭草 石葦 冬葵子 瞿麦のうち冬葵子(とうきし 甘寒 アオイ科フユアオイの成熟種子 利水通淋)を除いて全て配伍されています。鶏内金は化堅消石の作用が、尿路結石、胆石などによく使用され、金銭草、海金沙と配合して、有名な「三金湯」という結石に有効な経験方があります。本案は一点突破、14剤で見事な治療効果でした。<o:p></o:p>

 

2006年の症例:急性腎不全 急性間質性腎炎 張琪氏漢方医案3(腎病漢方治療325報)http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140414 では、両則腎尿管結石治療に「三金湯」の三金が使用されていたことをご紹介しました。もう一度、興味のおありになる方は御覧下さい。「金(きん)は石より強し」ですね。三金湯を使って治療した腎結石の経験がありますが、効果抜群です。<o:p></o:p>

 

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201467日(土)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 7(腎病漢方治療 378報)

2014-06-06 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

前案より1年後の1981年の症例をご紹介します。近年の消堅排石湯に配伍される鶏内金が登場してきます。丹参や紅花なども配伍されるようになり、より近年の消堅排石湯組成に近づいて来ています。<o:p></o:p>

 

患者:孫某 初診年月日1981715<o:p></o:p>

 

病歴:患者は北京で在学中であったが、突然610日に左側腰部の激痛が生じ、某病院で検査をしたところ、腎盂に結石が一塊あり、中薬を20剤服用したが、結石は排出されなかった。ハルピン市に氏の治療を求め来院。小便黄を除いて他に異常所見無し。<o:p></o:p>

 

方薬金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 丹参20g 瞿麦20g 萹蓄20g 赤芍15g 鶏内金15g 紅花15g 牡丹皮15g 甘草10g 水煎、112回に分服<o:p></o:p>

 

経過:連続して上方服用30剤で結石が一塊排出された。小豆大で表面は光滑であった。この後、治癒と判定した。<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

短い医案でしたが、私が注目したのが、排出された結石の表面が滑らかで光沢があったという記載です。尿路結石は成分分析から、大まかに尿酸結石、シスチン結石、リン酸結石、シュウ酸結石などに分類されますが、小豆大で表面が、光沢があり滑らかな結石は稀です。自然排出された標本は数多く見てきたつもりですが、本案の医案の形状を示す結石はまず稀です。殆どが、表面が棘状になっているか、凸凹のある結石でした。本案では前医の処方も含め、計50剤の中薬治療が行われています。そこで、あくまで想像ですが、結石を溶解する成分が含まれていたのではないかと思います。375報には「小豆大の排石があり、尖端は既にバター状で、溶解を示していた」との記載があります。しかし375報の方薬には鶏内金の配伍はありません。375報(1978年の症例)の方薬は、金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)50g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 三棱(活血化瘀)15g 丹参(活血化瘀)20g 車前子(清熱利水)15g 川木通(苦/寒 泄熱利水通淋)15g 莪朮(活血化瘀)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 甘草(調和諸薬)10gであり、本案の方薬組成との違いは、本案には鶏内金、紅花の配合有り、木通 車前子の配合無しです。短絡的に、鶏内金には結石の溶解作用は無いとは言えないでしょうね。諸薬が体内で代謝され尿中に排泄されるのですから、もっと疫学的な統計処理が判断上欠かせませんね。<o:p></o:p>

 

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201466日(金)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 6(腎病漢方治療 377報)

2014-06-05 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

80年代初頭の32歳男性でインポテンツを併発した尿路結石症の症例をご紹介します。<o:p></o:p>

 

患者:宋某 32歳 男性 工場職人 初診年月日1980216<o:p></o:p>

 

病歴:素体健康、肥満、2ヶ月来腰部の酸痛を自覚、気に止めなかった。突然214日、両側の腎区に絞痛出現。<o:p></o:p>

 

初診時所見:発作時汗出が止まらず、腎盂造影は受けなかった。小便は濃い茶の如くで、舌紅苔膩、脈滑実。<o:p></o:p>

 

西医診断:腎及び尿管結石の疑い<o:p></o:p>

 

方薬消堅排石湯金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)50g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 甘草(調和諸薬)10g 水煎、毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

二診321日。2剤服用後絞痛がすぐに緩解;4剤服用までに、コウリャン大の結石が2塊排出された。さらに継続服用したところ、マッチ棒の頭大の結石が20余塊連続して排出され、両則の腎区痛は完全に消失した、但し腰両側の酸軟があり、小便色気。患者が述べるには、結石症を患ってから、性欲が減退し、勃起しなくなったと。<o:p></o:p>

 

中医弁証:湿熱が肝経に蘊し、(前陰は肝経の聚するところ)、肝腎陰欠、湿熱下注の証である。<o:p></o:p>

 

治法:補肝腎、清熱利湿<o:p></o:p>

 

方薬莵絲子(補腎陽)20g 枸杞子(補陰)20g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)30g 山茱萸(補腎陰 収斂固渋)15g 龍胆草(清熱解毒燥湿 瀉肝火)10g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 柴胡(疏肝理気 清熱 升陽)15g 金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 黄芩(清熱解毒利湿)10g 生甘草(清熱)10g 水煎 毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

三診410日。上方服用6剤、性欲及び性行為は全て回復、病は治癒したと告げた。<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

尿路結石症のみならずインポテンツまで完全に回復させたのですから見事な治療結果でした。足の蕨陰肝経の経絡は、内踝上5寸から起こり睾丸や陰茎を巡ります。中青年で大酒を飲み厚味の肉食等を好む者の性欲不振、インポテンツの原因は殆どが湿熱蘊于肝経、湿熱下注が原因であると申し添えます。<o:p></o:p>

 

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201465日(木)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 5(腎病漢方治療 376報)

2014-06-04 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

前案375報よりさらに古い1977年の症例をご紹介します。患者の職業は奇しくも前案と同じ党幹部です。方薬には石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)車前草(清熱解毒)が配伍されています。<o:p></o:p>

 

患者:李某 54歳 男性 党幹部 初診年月日1977610<o:p></o:p>

 

病歴:平素健康、1997年新年会で突然右腰から右下腹部にかけて引っ張られるような激痛が生じた。耐え難いような激痛発作は毎回20分ほど続き、排尿困難もあった。当時の尿検査では赤血球(RBC)満視野/HP。ハルピン市某病院でのレントゲン撮影で、右腎盂に2.0mm3.5mmの結石陰影があった。患者は手術に同意せず、張琪氏外来を受診した。<o:p></o:p>

 

初診時所見:患者の体質は比較的健康、高血圧やその他の疾患の病歴無し。舌質淡紅苔薄苔、脈象沈滑。<o:p></o:p>

 

中医弁証:湿熱薀積下焦、尿液を灼焼し、凝結成石<o:p></o:p>

 

西医診断:左腎盂結石<o:p></o:p>

 

治法:清熱利湿、消堅排石<o:p></o:p>

 

方薬金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)75g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20g 車前草(清熱解毒)15g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 甘草(調和諸薬)10g 以上 水煎、毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

二診625日。服薬15剤で、著明な症状は無かった。6月の初発から今まで腎区の絞痛の発生は無く、小便は平時やや量が増加し、絞痛発作が無いために仕事に復帰して休息は取らなかった。前方を継続服用。<o:p></o:p>

 

三診720日。さらに服薬20剤で、腎区の周囲の絞痛発作があり、小便に砂石の小塊が数個排出し、疼痛消失、小便通利となった。レントゲン検査で結石陰影は消失、停薬するように言った。当年117日再診したが、再発は無し。<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

前報(375報)と比較してみると、体質的に問題が少ないこともありますが、使用生薬数が少なく、9生薬となっています。372報(2001年)の消堅排石湯金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 牡丹皮15g 瞿麦20g 萹蓄20g 滑石20g 車前子15g 桃仁15g14生薬(甘草を加えて)に比較すれば、年代が近年に近づくにつれ生薬数が多くなっていますね。本案では鶏内金 三棱 莪朮 丹参 牡丹皮の配伍がありません。単純明快な処方ですね。<o:p></o:p>

 

石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)は氏が消堅排石湯と銘打っている自創方には配伍されていないようです。しかし、本案(376報)にも前案(371報 373報)にも配伍されていますので、加減の範囲なのでしょう。<o:p></o:p>

 

本案では車前子(清熱利水通淋)ではなく車前草(清熱解毒 利水滲湿薬に分類)15gが配伍されていますね。オオバコの成熟種子が車前子、全草が車前草です。氏の消堅排石湯は当初は車前草で、後に車前子に進化したのかと思いました。<o:p></o:p>

 

しかし、つじつまが合わないことには、中国語で「按」と表記される「小解説」には車前草ならず車前子とあるのです。どちらを信用すればいいのでしょうね。<o:p></o:p>

 

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201464日(水)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 4(腎病漢方治療 375報)

2014-06-03 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

古い医案をご紹介します。木通(苦/寒 泄熱利水通淋)15gが配伍されています。木通の大量60g程度の長期服用、例えば淋病(免疫が出来ないために繰り返し感染する)などで、急性腎不全が出現することがあると注目され始めたのが1990年代半ば頃で、現在では使用禁止になっています。<o:p></o:p>

 

有名方剤で木通が配伍されているものに以下のような方剤があります。<o:p></o:p>

 

分利湿熱の方剤である疏鑿飲子(そさくいんし 世医得効方):羌活 秦艽 大腹皮 茯苓皮 生姜 澤瀉 木通 椒目 赤小豆 商陸 檳榔<o:p></o:p>

 

八正散(はっしょうさん 太平恵民和剤局方):効能:清熱瀉火利水通淋 主治:湿熱下注膀胱:子 瞿麦 萹蓄草 滑石 梔子仁 大黄 木通 炙甘草<o:p></o:p>

 

小薊飲子(しょうけいいんし 済生方)生地黄 小薊 滑石 木通 蒲黄 藕節 淡竹葉 当帰 山梔子 炙甘草 尿血の方剤です。<o:p></o:p>

 

それでは医案に進みましょう。消堅排石湯加減ですが、1978年の症例ですので四川省産の木通が配伍されています。<o:p></o:p>

 

患者林某 48歳 党幹部 初診年月日1978529<o:p></o:p>

 

病歴1977年冬、左側腎区絞痛出現、発作痛が甚だしく、レントゲン検査では明らかな異常は写らず、結石を疑った。発作は数回連続し、瀋陽の某病院に入院し、腎結石と診断され、ハルピン市に治療を求め氏を受診。<o:p></o:p>

 

初診時所見:脈沈、舌苔白、小便黄<o:p></o:p>

 

中医弁証:湿熱蘊結下焦<o:p></o:p>

 

西医診断:腎結石<o:p></o:p>

 

治法:清利湿熱、行気活血、軟堅化石<o:p></o:p>

 

方薬金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)50g 萹蓄(利水通淋)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 三棱(活血化瘀)15g 丹参(活血化瘀)20g 車前子(清熱利水)15g 川木通(苦/寒 泄熱利水通淋)15g 莪朮(活血化瘀)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 甘草(調和諸薬)10g 水煎服用 毎日1剤 2回に分服<o:p></o:p>

 

経過:上方服用6剤で、小便増多、コウリャン大の結石が2塊排石され、痛みは大減した。さらに6剤を服用したところ、小便に泥砂様混濁物が排出され、小便増多、疼痛の発作消失。626日(患者の希望により?)入院治療となった。さらに10剤を連用したところ、小豆大の排石があり、尖端は既にバター状で、溶解を示していた。排尿前下腹部が張り、腰酸あり、結石排出後、症状は消失。上方継続し、連日多量の泥砂様物質排出が続いた。暫くして、小便は転清、疼痛発作消失、停薬し、治癒と判定した。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

党幹部ともなると待遇も特別なのでしょう。さて木通ですが、代用はどのような生薬を用いるのかが問題です。現在の中国では、一般的にウコギ科の通草(甘淡微寒)を代用品として使用されています。アケビ科の枝の部分が木通であり、果実の方は八月札といい、理気薬に分類されます。過去の記事をご参照下さい。<o:p></o:p>

 

八月札http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121101<o:p></o:p>

 

石淋の要薬金銭草http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121102<o:p></o:p>

 

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201463日(火)<o:p></o:p>