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慢性腎炎 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療4(腎病漢方治療288報)

2014-03-08 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日も参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療をご紹介します。( )内に私のコメントを随時いれます。本案は九診でやや長いです。

医案に進みましょう。

患者朱某 39歳 女性

初診年月日2004113

病歴

患者は1年前、妊娠3ヶ月時に尿蛋白2~3+、系統的な治療は受けられなかった。

初診時所見

乏力腰痛、手足心熱、尿黄、舌質紅、苔白、脈細。尿蛋白2+、WBC0~1個/HPRBC0~1個/HP、総コレステロール8.7mmol/L336m/dL)、トリグリセリド4.41mmol/L374.8m/dL)。

中医弁証脾気虚 腎陰虚、兼湿熱内蘊

西医診断慢性糸球体腎炎

治法益気養陰 清熱解毒利湿、涼血止血

方薬参耆地黄湯加味

黄耆40g 太子参20g 熟地黄20g山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 蒲公英(清熱解毒利湿)30g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 益母草(活血利水消腫)30g 茜草(涼血化瘀止血)20g 白茅根凉血止血、清熱利尿30g 劉寄奴(破血散瘀)20g 小薊涼血止血、解毒消癰)30g 三七(化瘀止血 活血定痛)10g 地楡涼血止血、解毒収斂)20g 金桜子20g 


慢性腎炎 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療3(腎病漢方治療287報)

2014-03-07 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日も参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療をご紹介します。( )内に私のコメントを随時いれます。十一診も有りますので覚悟を決めます。

医案に進みましょう。

患者:沈某、11歳 女児

初診年月日2004121

病歴

2001年尿検査で蛋白尿が出現。咽部の感染を反復後に尿蛋白量が増加、患児は現在、既に扁桃腺を摘出。術後上気道感染後の尿蛋白は転陰した。20048月頃、再度蛋白尿が出現、朝方の尿蛋白は陰性、体動後に陽性。遂に、氏の病院を受診した。

初診時所見

咽痛有り、咽紅赤、舌質紅、苔白、脈数。尿蛋白3+、WBC6~8個/HP、顆粒円柱0~1個/LP。尿潜血(-)。

中医弁証腎陰不足、陰虚火旺

西医診断慢性糸球体腎炎

治法補腎陰、清熱涼血解毒

方薬参耆地黄湯加減

生地 熟地黄15g 山茱萸15g 山薬15g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 枸杞子20g 女貞子20g 玄参(清熱解毒養陰)15g 金銀花20g 黄耆30g 太子参15g 天花粉(養陰清熱利咽)15g 重楼(清熱解熱毒利湿利咽)30g 白花蛇舌草30g 甘草15g 桔梗(祛痰利咽 排膿 載薬上行)15g 麦門冬15g

水煎服用、毎日2回に分服。

(益気養陰 清熱解毒利咽と総括されます。)

二診 20041215

患者が述べるには、運動後に尿蛋白2+、納呆あり、活動後に乏力、咽痛、舌淡紅、苔薄白、脈細数。尿蛋白微量、他に異常なし。

(このくらいでしたら現代日本では腎病の治療対象にならないかも知れません。)


慢性腎炎 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療286報)

2014-03-06 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日も参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療をご紹介します。( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者:張某 43歳 女性

初診年月日20031217

病歴初診時所見

2002年にⅡ型糖尿病、蛋白尿が出現。珍菊降糖カプセルを服用し、血糖は基本的に正常範囲にコントロールされたが、尿蛋白は持続し2+~3+、腰痛、浮腫(-)、時に眩暈、舌質紅、苔白、脈沈。血圧正常。尿蛋白3+、RBC6/HP、尿潜血+、空腹時血糖5.5mmol/L99m/dL)、腎機能正常。

(珍菊降糖カプセルは中成薬で成分中に西洋薬の血糖降下剤が含まれている可能性があります。本案はいわゆる糖尿病性腎症ではないと思います。)

既往歴:十二指腸潰瘍、頻尿、尿の切れが悪いのが7~8年

中医診断:腰痛、脾不統摂、腎失封蔵、固摂失司、精微外泄

(中医学的には精微外泄には尿糖、尿蛋白も含まれます。)

西医診断慢性糸球体腎炎

治法脾腎双補

方薬参耆地黄湯加減

熟地黄20g 山茱萸20g 茯苓15g 澤瀉15 牡丹皮15g 黄耆30g 太子参20g 枸杞子20g 玉竹20g 莵絲子20g 金桜子15g 芡実15g 女貞子20g 五味子15g 桃仁15g 赤芍15g 丹参20g 紅花15g 益母草30g

14剤 水煎服用。

(山薬を配伍しなかった理由は血糖に留意したのでしょう。枸杞子も20g程度であれば血糖は上昇しません。熟地黄20g 山茱萸20g 茯苓15g 澤瀉15 牡丹皮15g 黄耆30g 太子参20gまでは山薬を除いた参耆六味地黄湯です。人参は補気生津の太子参を使用しています。枸杞子 玉竹は養陰、桃仁 赤芍 丹参 紅花は活血祛瘀、益母草は活血利水消腫(本案では浮腫は有りませんが)、莵絲子は補陽、金桜子と芡実の組み合わせは水陸二仙丹で益腎固渋剤で、精微外泄を意識、五味子はおそらくは生津斂陰、安神の目的で配伍されたのでしょう。)


慢性腎炎 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療285報)

2014-03-05 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

ドクター康仁流 黄耆の書き方。

黄芪黄蓍黄耆はいずれも同じ(おうぎ)です。本来は草冠が有りますが、現代日本では黄耆と記載するのが普通になってきました。現代中国では黄芪です。ことさら漢字に拘るなら黄蓍です。私は上海時代には黄芪、日本に帰ってきてからは黄蓍黄耆は半々程度、最近は専ら黄耆ですが、時々黄蓍を使います。急ぐ場合は黄芪です。

①補気昇陽②益衛固表、(衛気の衛)③托毒生肌 ④利水消腫の効能は既に紹介しました。甘/微温で帰経は脾と肺です。ざっとおさらいしておきましょう。

①補気昇陽の特徴は、脾、肺の気虚に使用され、特に脾胃気虚、中気下陥(脱肛、子宮脱)に有効で人参と一緒に使用される。生黄蓍より炒黄蓍が補気昇陽作用が強い。補中益気湯の君薬が人参ではなく黄耆である理由です。

②益衛固表、(衛気の衛)の作用とは、

衛気を養い止汗作用、抵抗力を増加させる作用であり、

喘息や気虚の寒邪の風寒に(精気不足の人のカゼに)使用される。

有名方剤:白朮と共に「玉屏風散」小児の反復性扁桃腺炎の予防治療に効果的。

③托毒生肌の作用とは、熱毒が深い所にある瘡瘍に用いる。皮下の膿瘍を早く排出させる。非感染性の「貼骨疽」に用いる。感染性瘡瘍には早期には用いない。

虚症の寒邪の瘡瘍に用いる。

④利水消腫作用:

健脾利水が機序であり、脾虚による水湿停滞などに用いる。

ドクター康仁流 参耆の読み方。

同じく補気薬の代表である人参も帰経は脾と肺です。

私は中国語人参(レンシェン)の読みに慣れていて、参耆を(さんぎ)と読む習慣がありますが、市民講座につき、ここで日本流に参耆地黄湯(じんぎじおうとう)と改めます。

医案に進みましょう。

患者某、48歳 女性

初診年月日:2000年8月30日

病歴

慢性糸球体腎炎病歴4年余、尿蛋白1~3+、軽重を繰り返し、20008月の検査にて、Cre179μmol/L2.01m/dL)、BUN9.1mmol/L54.1m/dL)、尿蛋白2+、血圧140/90mmHg。患者は病情加重によって精神的に緊張し、氏を受診した。

初診時所見

腰痛腰酸、倦怠乏力、夜間尿23回、尿色清長、時に眩暈あり、大便溏、脈沈、舌淡胖歯痕有り、苔薄白。

中医弁証:脾腎両虚、固摂失司、精微外泄の証

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:益気健脾、補腎填精

方薬参耆地黄湯加味

熟地黄20g 山茱萸15g 山薬20g 茯苓20g 澤瀉15 牡丹皮15g 肉桂7g 附子7g 黄蓍30g 党参20g 菟絲子20g 金桜子20

水煎、毎日2回に分服。

二診

前方を基礎として加減治療2ヶ月、腰痛腰酸皆好転、全身有力、夜間尿は(やや減少し)1~2回、大便正常。尿蛋白―~±、腎機能検査は回復して正常範囲になる。血圧基本的に安定。本院自家製の清心蓮子丸を服用させ治療効果を固めた。

三診

2002年3月、尿蛋白±、血圧130/80mmHgCre106μmol/L1.19m/dL)、BUN6.6mmol/L39.6m/dL)。精神体力共に好転し、既に仕事に復帰一年余。

ドクター康仁の印象

熟地黄から附子までは桂枝を肉桂に変えてありますが、肉桂八味地黄丸で補腎陽に作用、さらに参耆で益気健脾(人参は益気養陰の党参を使用しています)、莵絲子は薬性が平ですが補陽、さらに固渋精気の金桜子の組み合わせです。

最終的には清心蓮子丸で益気養陰、清利湿熱で緩解に導くのは張琪氏の得意とするところですね。

細かいようですが、補腎填精の「填精」といえば血肉有情の動物性薬剤(阿膠、亀板膠、鹿茸、鹿角、鹿角膠、海馬、海参など)を指す場合が多いと認識していますが、本案では見当たりません。莵絲子を以って填腎精とするのは少し言いすぎではないのかと常々思っています。

2014年 3月5日(水)


慢性腎炎 知柏地黄湯(ちはくじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療284報)

2014-03-04 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日も、昨日に引き続き知柏地黄湯加減による慢性腎炎の症例報告です。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者某 42歳 男性

初診年月日:2005年8月15日

主訴:腰痛、軽重を繰り返すこと6ヶ月、ここ2ヶ月尿中(泡)沫有り。

病歴

半年前腰痛、乏力、頻尿を伴う。ここ2ヶ月尿に泡沫あり、時に腰痛あり、乏力。その前後にハルピン医科大学付属第二病院で検査を受け、尿蛋白3+、RBC30~40個/HP、慢性糸球体腎炎の診断を受け、黄葵カプセルの治療を受けたが無効。張琪氏の中薬湯を服用し、明らかな好転を見ず、その後、氏を受診した。

(付記、黄葵カプセルは中成薬で慢性腎炎治療薬であり、蛋白尿に効果があるとされ、1日15カプセルを5カプセルずつ日に3回服用し、8週間で1クールとしています。効果は清熱解毒利湿消腫です。)

初診時所見

腰痛、倦怠乏力、尿中泡沫有り、納可。舌体大、舌質紅、苔薄白、脈沈。尿蛋白3+、尿潜血2+、尿RBC50/μL、尿WBC2~3個/HP

腎陰欠虚、湿熱の邪を感受し、膀胱に下注、膀胱気化不利、故に尿中の泡沫を見る;腰は腎の腑、腎陰虚、腰失所養、故に腰痛が生じ;腎精不足にて周身を充養できず、即ち乏力を見る、舌紅苔白、脈沈は全て腎陰欠虚、湿熱内蘊の象である。

中医弁証診断:腰痛(腎陰欠虚、湿熱内蘊)

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:滋陰補腎、利湿涼血止血を主とする。

方薬:知柏地黄湯加味

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 知母15g 川黄柏15g 黄耆30g 党参20g 石蓮子15g 地骨皮15g 血余炭止血散瘀、補陰利尿)15g 棕櫚炭(収斂止血)20g 地楡炭涼血収斂止血)20g 貫仲(貫衆)(清熱解毒 止血)20g 枸杞子20g