馬場あき子旅の歌42(11年8月)【キャラバンサライにて】『飛種』(1996年刊)P139
参加者:N・I、崎尾廣子、T・S、曽我亮子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子
司会とまとめ:鹿取 未放
308 駱駝の背の意外なる高さ東洋の絹発(た)ちゆきしキャラバンサライ
(まとめ)
キャラバンサライに観光用の駱駝をおいているのだろうか。あるいは、古いキャラバンサライの建物を利用して駱駝を飼育している所もあるらしいからそれを見ての感想かもしれない。キャラバンは駱駝に荷を積んで移動したわけだが、駱駝を身近で見てみると意外なほど背が高い。荷は振り分けにするようなので荷を積んでもこれ以上に高くなるわけではないが、その存在感の大きさに圧倒されたのだろう。そして東洋の絹が東西の中継点であるここトルコから、更に西洋まで運ばれていったのだなあという感慨をもつ。「東洋の絹」はもろもろの文物が発っていった中のひとつを例示しているのではあるが、ここはどうしても「絹」でなければいけなかった。シルクロードという名称だからというだけでなく、透明な秋の空気の中で遙かな昔を偲ぶには、柔らかい光沢をもつ絹のはかなげなイメージがどうしても必要だったからである。(鹿取)
(レポート)
なんであれ「キャラバンサライ」を「発ちゆきし」ものがあって、「東洋の絹」はそのひとつなのだが、駱駝を詠い込みながら、その背に乗せて、とは言っていない。「背の意外なる高さ」に心を寄せている。(体高2メートル)2句「意外なる高さ」と3句「東洋の絹」を「に」で繋ぎたいところであるが、実に心憎くそれを避けている。しかし読者は「東洋の絹」が背に積まれていると暗黙に理解し、効果的なことに「駱駝」の「発ちゆきし」様の悠然たるを想像する。(慧子)
(当日意見)
★「意外なる」の語はなかなか使えない。作者の力。(T・S)