馬場あき子旅の歌41(11年7月)【風の松の香】『飛種』(1996年刊)P136
参加者:K・I、N・I、井上久美子、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:T・H
司会とまとめ:鹿取 未放
306 あさき夢みてゐるやうな煽情の楽湧きて食む昼餐の魚
(まとめ)
305番歌「潑溂とたのしむ心湧きてゐるわれとかがやくマロニエの実と」のように異郷を楽しんでいる作者。見るもの聞くもの、全てが珍しく酔っているような、「あさき夢」を見ているような昂揚した気分である。昼食に立ち寄ったレストランで心の中から湧きだしてきた「煽情の楽」、酔いはますます深くなっているのだろう。あるいは「楽湧きて」は食堂に入るとかなり音量のある音楽が流れていたともとれる。その場合の「煽情の楽」はうきうき楽しくなるような、食欲も増進させるような音楽ということだろう。魚も海に面したこの土地の特産品である。(鹿取)
(レポート)
今、先生は昼食の場におられる。その食堂に音楽隊が楽器を奏でながら入ってきた。それが非常に扇情的な音楽である。それを聴きながら魚料理を召しあがっておられる。「あさき夢見てゐるやうな煽情の」音楽とは、どんなメロディなのであろうか?ヨーロッパでは昼食が主餐である。そこに添えられた魚のお料理。やっと肉食から解放されてお魚のある料理に出会われた。ほっとしたような嬉しさがよく表されている。(T・H)
(当日意見)
★この楽は、心の中に湧いてきたものであろう。この章の歌は順に心が高揚してきている。(藤本)