かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠292(トルコ)

2016年05月03日 | 短歌一首鑑賞

 馬場あき子旅の歌39(11年5月) 【遊光】『飛種』(1996年刊)P129
     参加者:K・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、H・T、鹿取未放
      レポーター:崎尾 廣子
     司会とまとめ:鹿取 未放

292 歴史とは苦しみの嵩地下都市をくだりて深く匂ふ土あり

     (まとめ)
 紀元前400年頃の資料には既に地下都市の存在が記録されているそうだが、ここは有名なカッパドキアの地下都市であろう。4世紀初め(ディオクレティアヌス帝による大迫害は特に有名である)迫害を受けてキリスト教徒達が地下に隠れ住んだといわれている。その跡を尋ねて深く深く下っていった時に匂う土の香、そこに人間の生の実体をあざやかに感じ取っているのであろう。そこの生活は信仰の喜びだけではない、さまざまな苦を伴っていたことも感じとっているのだろう。(鹿取)
 

       (レポート)
 作者は100を超えるというこの地の地下都市の一つに踏み入り、下って行った。そこで目にした光景の中で特に土から深い匂いを嗅ぎ取っている。人は生まれること、老いること、病むこと、死ぬことという四つの苦しみと向き合う。ここで一人一人が積み重ねていった年月に想いを重ねているのであろう。だが「深く」と詠っている。信仰心に充ちた日々の暮らしの中で深い喜びもまたあったはずである。との思いを抱いたであろう作者がこの言葉から見えてくる。(崎尾)
      ×××
 トルコ共和国、アナトリア半島は古来、アジアとヨーロッパが交錯する場所であった。一万年を超す歴史が謎を秘めたまま眠っている。その中央部のカッパドキアは、火山岩台地に長年の風雪による浸食作用がもたらした、見る者を驚かさずにはおかない奇観の地である。終末を予感し、この荒野に祈りの場所を求めた人々がいた。彼等は岩山を掘って洞窟修道院・聖堂を造り、信仰心に満ちた絵画を描いた。数千人の共同生活が可能な、8層に及ぶ地下都市や険しい岸壁に祈りのための洞穴を窄っている。
          (大村幸弘『カッパドキア トルコ洞窟修道院と地下都市』集英社)


      (意見)
★レポートにある生老病死という四つの苦しみは仏教の思想だから、ここではもちださない方がい
 いかなと思います。(鹿取)