脱ケミカルデイズ

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「もっちり泡」人気があだ 茶のしずく問題

2012年05月24日 | 化粧品

朝日新聞2012年5月10日 「もっちり泡」人気があだ 茶のしずく問題

 せっけん集団訴訟に発展した「茶のしずく石鹸」旧商品のアレルギー問題。なぜ被害が広がったのか。

 販売元の化粧品会社「悠香」(福岡県)が厚生労働省に報告した発症者数は、2月末で1567人。4月20日には全国の被害者535人が、製造物責任法に基づく損害賠償訴訟を起こした。呼吸障害など重い症状の人も多く、原告はさらに増える可能性がある。

 「茶のしずく石鹸」は、悠香が20℃4年3月に売り出した。通信販売のみ、60〃ラで1980円と高価ながら、人気女優をCMに起用して話題に。「天然成分配合」で、弾力のある「もっちり泡」が肌にいいとうたい、20~50代の女性を中心に人気を呼んだ。会社も急成長し、08~10年の洗顔料化粧品部門でメーカーシェア1位(富士経済調べ)を獲得している。

 「肌によさそうだし、泡立ちがよくて気持ちよかった。それがあだになるなんて」。千葉県の被害者の女性(53)は話す。

保水性強かった

 原因物質とされる「グルパール19S」は、小麦のたんぱく質を分解した「加水分解コムギ」の一種。水処理剤などを製造する片山化学工業研究所(大阪市)が、初めて手がけた化粧品用原料だった。「小麦たんぱくは広く使われている天然由来の素材で、将来、自社で製品化できる可能性があると考えた。保水性も強かった」(同社担当者)という。

 98年11月、「茶のしずく石鹸」製造元のフェニックス(奈良県)に出荷。同社は、当初期待したせっけんのひび割れ防止効果はあがらなかったが、「実験中に泡の感じが今までと違うことが見いだせた」ため、採用を決めた、という。2001年4月以降、薬事法の規制緩和で、せっけんや化粧品のメーカーは原料の安全性を自らの責任で確認すれば、厚労省に事前に許可をとらずに商品に配合できるようになった。

 フェニツクスは「安全性テストを社内と外部検査機関で行い、特に問題ないとの結果を得ていた。(アレルギー発症は)予見できなかった」としている。

粒子大きかった

 日本化粧品工業連合会によると、加水分解コムギは15年以上前から化粧品やせっけんの原料に使われていた。だが発症者は大半が「茶のしずく石鹸」旧商品の使用者だ。なぜか。

 一般に、粒子が大きいたんぱく質が口以外から体内に入ると、アレルギーを起こす可能性があるという。国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師によると、グルパール19Sは他の加水分解コムギと比べて分解が不十分で、粒子が大きい。洗顔せっけんという用途のため、目や鼻の粘膜から吸収されやすいことも発症の理由と考えられるという。

 自主回収の遅れも、被害拡大につながった。複数の大手化粧品メーカーは「重篤な症例の報告が1件でも来れば、出荷停止や回収を検討するのが普通だ」と口をそろえる。化粧品業界の関係者は「大手企業なら、アレルギー発症者が数百人を超す事態は考えられない」と批判する。被害者弁護団によると、東京地裁での第1回口頭弁論は6月4日に開かれる。(茂木克信、伸村和代)

 

「茶のしずく石鹸」をめぐる経緯

2004

3月 悠香が「グルパール19S」配合の「茶のしずく石鹸」旧製品を発売。製造元はフェニックス

2009

10月29~31日 国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師が日本アレルギー学会でアレルギー症例を報告 

2010

3月 福冨医師が症例を悠香に説明

7月 島根大医学部皮膚科がグルパール19Sとアレルギーの因果関係が疑われると悠香に説明

9月16日 厚生労働省に医療機関からの11人の症例報告。

9月17日 厚労省が悠香に連絡。ほぼ同時に悠香は小麦由来成分を除いた商品に変更すると厚労省に申請

10月15日 厚労省が小麦由来成分を含む石鹸や化粧品のメーカーに対し、注意喚起の徹底などを通知

10月20日 悠香がホームページで購入者に注意喚起

12月8日 悠香が小麦由来成分を除いた商品に変更

2011

5月20日 悠香が10年12月7日以前に販売した4650万個の自主回収を開始