脱ケミカルデイズ

身の周りの化学物質を減らそうというブログです。 

がん新薬で皮膚障害 分子標的薬 治療効果高いほど副作用も

2012年05月20日 | 

朝日新聞2012年5月8日 がん新薬で皮膚障害 分子標的薬 治療効果高いほど副作用も

 

 がん細胞をねらって攻撃する新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」。従来の抗がん剤より副作用が少ないと考えられてきたが、ニキビのような発疹や乾燥、爪の周りが炎症を起こすなどの皮膚障害が出やすいことが分かってきた。がんの効果的な治療をするためには、副作用のコントロールが課題になっている。

毛穴も攻撃発疹に

 昨年8月中旬、干葉県柏市の男性(62)は、大腸がんの手術を受けた。腫瘍は取りきれず、退院後にさらに大きくなった。今年1月、紹介先の国立がん研究センター東病院で、分子標的薬、セツキシマブの点滴による治療を始めた。

 2月に、ほおにニキビのようなぶつぶつができ始めた。手の指先は乾燥し、爪の周りがはれ、ひび割れた。ぶつぶつや乾燥は首や胸、背中へも広がった。3月、足の指も炎症を起こし、靴がはけずにサンダル履きの日々が続いた。

 炎症を抑える薬ミノサイクリンを飲み、寝る前には軟膏や保湿ローションを手足に塗る。足の指にテーピングをすると楽になるという。腫瘍の大きさは半分になった。

「想像以上の痛みですが、治療効果が出ていると聞き、うれしい。なんとか続けたい」と男性は言う。

 なぜ、皮膚に異常がでるのか。分子標的薬は、がん細胞を増やす役割の分子、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的にして、がん細胞を攻撃する。ただ、毛穴などにも、この標的と同じものがあり、皮膚がダメージを受けてしまう。

 国立がん研究センター中央病院の山崎直也・皮膚腫瘍科長によると、個人差はあるが、薬を始めて約2週間でニキビのような皮疹が出るという。3週間~1カ月で乾燥とかゆみ、6週間で爪の周りがはれて肉が盛り上がるなど「爪囲炎」の症状がでることが多い。一方で、皮膚の副作用がひどいほど、がんの治療効果が高いという報告も出ている。米国臨床腫瘍学会で発表された研究では、パニツムマブを使って重い皮膚障害が出た大腸がん患者の生存期間の中央の値は27・7ヵ月で、軽かった患者の2・4倍だったという。山崎さんは「セルフケアや適切な治療で、皮膚の副作用を軽くし、がんを治すことが目標だ。皮膚障害が出れば、早めに担当医に伝えてほしい」と話す。

保湿やステロイドを

 通常のニキビは、主に毛穴の中のニキビ菌によって炎症が起きる。薬の副作用では、毛穴に皮脂が詰まり炎症を起こして、ニキビそっくりの状態になる。

 副作用による無菌性の皮疹には保湿剤のほか、炎症を抑えるステロイド、細菌感染を防ぐ抗生物質が有効だ。殺菌効果のあるニキビ向け抗菌薬は、細菌感染を起こした場合に使われる。

 国立がん研究センター東病院の吉野孝之消化管内科医長は「保湿剤とステロイドの塗り薬、抗炎症作用のある飲み薬の3種をセットで処方する。それでも眠れないほどかゆいなど、生活に支障が出れば、皮膚科医が診る」と話す。

 だが、がん治療医と皮膚科医との違携がうまくいかないことも多い。川島眞東京女子医大教授(皮膚科)は2011年12月、全国の皮膚科医を対象にしたインターネット調査をした。勤務医の揚合、分子標的薬が原因の皮膚障害のある患者の87%は、がん治療医からの紹介だった。一方、開業医では68%が患者の自発的な受診で、がん治療医からの紹介は多くなかった。また分子標的薬による皮膚症状への主な治療薬を聞くと、開業医では、ニキビ治療の第一選択である抗菌薬が最も多く、副作用治療に使うステロイドの塗り薬を上回っていた。

 日本皮膚科学会理事でもある川島さんは「通常のニキビと、副作用のニキビに似た皮膚障害では治療法が違うことが十分に伝わっていない。皮膚科医への啓発やがん治療医との連携をもっと進めたい」と話す。日本皮膚科学会中部支部学術大会は昨年、適切な対処法を広めようと「分子標的薬皮膚障害対策マニュアル」を5千部つくった。大会長だった水谷仁・三重大教授(皮膚科)は「テーピングの仕方などセルフケアにも役立つので参考にしてほしい」と言う。同学会中部支部学術大会のホームページ(http://www.jdac2011.jp/dl.html-)からダウンロードできる。(辻外記子)

 

分子標的薬による皮膚障害

●ニキビのような皮疹や爪に異常が出やすい分子標的薬

一般名(商品名)          対象のがん

エルロチニブ(タルセバ)      肺がん、すい臓がん

セツキシマブ(アービタックス)   大腸がん

パニツムマブ(ベクティビックス)  大腸がん

ゲフィチニブ(イレッサ)      肺がん

ラパチニブ(タイケルブ)      乳がん

 

自力でできる皮膚の主なケア

・清潔に保ち、細菌感染を予防する。

・洗う時は、こすらずやさしく

・日焼け止めを塗るなど紫外線から守る

(山崎直也さんによる。写真提供も)


浄水場からホルムアルデヒド(第三報)

2012年05月20日 | 化学物質

朝日新聞2012年5月20日 断水35万世帯に 千葉5市、給水再開へ

利根川水系の浄水場で国の基準を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、流域7カ所の浄水場が19日、取水を停止・制限し、千葉県で35万世帯が断水した。流域各県と東京都は汚染源を特定するため、利根川に注ぎこむ烏川(群馬県)などの調査を始めた。

千葉県での断水は少なくとも野田、柏、我孫子、八千代、流山の5市で約35万世帯。減水は松戸、鎌ケ谷、市川の3市で約20万世帯に達した。国土交通省関東地方整傭局や流域各県によると、千葉、埼玉両県の浄水場3カ所で、処理済みの水道水から国の基準(1リットルあたり0・08ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドが見つかった。ほかに群馬県の浄水場など各地で通常より高い値が確認され、19日タまでに群馬、茨城、埼玉、千葉の7浄水場が取水を停止・制限した。千葉県では、江戸川から取水する3浄水場で給水を停止したが、上流のダムからの放流などで数値は徐々に下がり、北千葉浄水場(流山市)は午後5時半、栗山浄水場(松戸市)も午後6時40分に取水を再開した。県によると、20日朝には全県で給水を再開できる見通しという。

 

朝日新聞2012年5月20日 化学物質と塩素反応して生成か

ホルムアルデヒド汚染源はどこなのか。群馬県と高崎市は19日、利根川に注ぐ鳥川とその支流の7地点と、汚染の原因となり得る化学物質を扱っている企業1社の排水を採水し、検査機関に送った。このうち3地点は、測定器で検出できる下限(1リットルあたり0.008ミリグラム)より小さい可能性が高く残る烏川と井野川の4地点と企業の排水は分析中という。

埼玉県も、ホルムアルデヒドを生成する物質を大量に排出する可能性がある事業所2社を調査したが、通常値の範囲内だった。

ホルムアルデヒドは通常、接着剤や塗料などに使われるが、埼玉県はこれまでの調査から「ヘキサメチレンテトラミン」と呼ばれる別の化学物質が、浄水場の塩素と反応してホルムアルデヒドが生成された可能性があるとみている。ヘキサメチレンテトラミンは化学工場で樹脂や合成ゴムなどを製造する際の硬化剤、発泡剤、医薬品、火薬などに用いられる。烏川周辺にはこの物質を扱う事業所が複数あるという。

 

毎日新聞2012年5月20日 一部抜粋

  一方、群馬県は利根川の支流にあたる高崎、藤岡市の4河川(烏(からす)川、井野川、鏑(かぶら)川、鮎(あゆ)川)の計7地点で原水を採取し、塩素を加えホルムアルデヒドを測定する調査を始めた。

 また、井野川沿いの1社がアミン類のヘキサメチレンテトラミンを年間1トン以上取り扱っていると国に届け出ており、この会社から工場排水の提供を受けた。今後原水と工場排水を分析し、発生源の絞り込みを進める。【西浦久雄、西田真季子、塩田彩】


<胆管がん>校正印刷会社の元従業員4人が死亡

2012年05月20日 | 化学物質

毎日新聞 2012年5月19日 <胆管がん>校正印刷会社の元従業員4人が死亡

 西日本のオフセット校正印刷会社の工場で、1年以上働いた経験のある元従業員のうち、少なくとも5人が胆管がんを発症、4人が死亡していたことが、熊谷信二・産業医科大准教授(労働環境学)らの調査で分かった。作業時に使われた化学物質が原因と強く推測されるという。遺族らは労災認定を求め、厚生労働省は調査に乗り出した。

 熊谷准教授によると、同社では91~03年、「校正印刷部門」で1年以上働いていた男性従業員が33人いた。発症当時の5人の年齢は25~45歳と若く、入社から7~19年目だった。熊谷准教授が今回の死亡者数を解析したところ、胆管とその周辺臓器で発生するがんによる日本人男性の平均死亡者数に比べ約600倍になった。

 校正印刷では、本印刷前に少数枚だけ印刷し色味や文字間違いなどを確認するが、印刷機に付いたインキを頻繁に洗うので結果的に洗浄剤を多用する。洗浄剤は、動物実験で肝臓にがんを発生させることが分かっている化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」などを含む有機溶剤。会社側は防毒マスクを提供していなかったという。91~03年当時、ジクロロメタンは厚労省規則で測定や発生源対策が求められていたが、1、2ジクロロプロパンは規制されていなかった。

 熊谷准教授は「これほど高率になると、偶然とは考えられず、業務に起因している。校正印刷会社は他にもあると聞いており調査が必要だ」と話す。

 元従業員らが労災認定を求めたことについて、会社側は「真摯(しんし)に対応させていただいている。個人情報などもあり、お答えできない」としている。

【河内敏康、大島秀利】
上島通浩・名古屋市立大教授(労働衛生)の話 大変重要な事例で、食事など地域性の要因も含め調査が必要だ。

◇胆管がん

 胆管は肝臓で作った胆汁を十二指腸に運ぶ管状(長さ約8センチ)の器官。がんは上皮からできるとされる。胆管結石との関連も指摘されるが、原因は不明。日本人男性の年間死亡率は10万人あたり10.5人(05年)で、発生率は75歳以上で最も高い。


浄水場からホルムアルデヒド(続報)

2012年05月20日 | 化学物質

朝日新聞2012年5月19日 千葉・埼玉・群馬 浄水場から化学物質 柏市・野田市で断水 利根川4地点で高数値

 利根川水系から取水する浄水場で国の基準(1リットルあたりO・08ミリグラム)を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、千葉県野田市と柏市は19日、前日から取水停止が続いていることなどから断水を開始した。19日正午までに取水停止を実施した浄水場は埼玉県、群馬県を含めて5カ所に上る。各県は原因の特定を急ぐなど対応に追われた。

 同日正午現在、取水停止が続くのは上花輪浄水場(千葉県野田市)と北千葉浄水場(同県流山市)。約6万3千世帯が住む野田市では午前9時半からほぼ全域の約4万7干世帯で断水。上花輸浄水場で前日から取水停止が続き、早朝から使用量が伸びたことなどから断水に踏み切った。市内には2カ所の給水場所が設けられ、水を求めて市民が集まった。2リットル入り容器4個を満タンにした主婦(35)は「困りました。早く復旧してほしいです」と話した。

 柏市でも正午から断水が始まった。タ方にかけて、我孫子市や八千代市、船橋市などでも断水の恐れがあるという。行田浄水場(埼玉県行田市)で基準の約2倍が検出され、給水を停止していた埼玉県は19日朝、基準を下回ったとして給水を再開。同県によると、群馬県とともに18日から、同浄水場が取水する利根川上流の計7地点で水質を調査し、埼玉県熊谷市や群馬県高崎市など4地点で通常より高い数値が測定されたという。

 埼玉県では、浄水場の塩素と反応してホルムアルデヒドが生成される化学物質が原因の可能性があるとみている。利根川支流の烏川(群馬県)周辺に、この物質を取り扱う会杜が複数あるとの情報があり、群馬県や高崎市が調査をしているという。ホルムアルデヒドは合成樹脂の原料や農薬などに使われる。シツクハウス症候群の原因物質の一つで、発がん性も指摘されている。国土交通省関東地方整備局は「これほど広範囲での検出は過去に例がない。各自治体と連携して原因の究明を急ぎたい」としている。

数日間飲んでも健康に影響ない

化学物質の人体への影響に詳しい浦野紘平・横浜国大名誉教授(環境安全管理学)の話

ホルムアルデヒドの基準値は70年間飲み続けても健康に害がないように設定されている。基準の2倍程度の水を数日間飲んでも健康には影響ない。塩素消毒による化学反応で発生したか、工場排水が原因として考えられる。

 

ホルムアルデヒドについて

塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質としては「ヘキサメチレンテトラミン」が挙げられている。

「化学物質ファクトシート2011年版 環境省」で検索できる http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html

水道法:水道水質基準値 0.08mg/L以下

室内空気汚染に係るガイドライン:室内空気濃度指針値0.1mg/㎥

国際がん研究機関の分類:グループ1(人に対して発がん性がある)

世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、気化したホルムアルデヒドを長期間吸引した場合には発がん性が認められるとするが、水溶液を飲んだ場合は発がん性は無いと考えられるとしている。