脱ケミカルデイズ

身の周りの化学物質を減らそうというブログです。 

脱法ハーブ

2012年07月31日 | 脱法ドラッグ

朝日新聞2012年7月25日 社説 脱法ハーブ 有害薬物から若者守れ

脱法ハーブという新手の薬物汚染が、若者を中心に広がっている。夏休みも始まった。危うい実態をつかみ、有効な規制の手段を急いで整えるべきだ。厚生労働省は麻薬や覚醒剤のほかにも、危ない薬物を指定し、輸入や製造、販亮を禁じている。だが、指定が追いつかずに街に出まわっているものがある。興奮や幻覚をひきおこす物質を乾燥植物片に混ぜ込んだものが多い。それが脱法ハーブだ。

軽い語感とは裏腹に、意識障害や呼吸困難などの深刻な症例が報告されている。命の危険が指摘されているものもある。ハーブを吸った者が車を暴走させ、通行人にけがをさせる事故もたびたび起きている。そんなものが、厚労省がつかんだだけで繁華街やネット上の389店で売られている。

東京都内では今年1~5月だけで94人が救急車で運ばれた。3分の2は10~20代の若者だ。おもしろ半分に興奮や快楽を求めて手を出すのは危ない。学校と力をあわせ、若い世代にそう教えなければならない。被害の多さや深刻さを具体的なデータで示さないと、怖さは伝わらない。ところが、何がおきているか全国の実態調査はまだない。早く始めるべきだ。

脱法ハーブの取り締まりにはいくつか難題がある。薬事法には医薬品の無許可販売をじる規定がある。が、業者は吸わせる目的でないように装って「アロマ」などの名目で売っていて、適用が難しい。厚労省は5年前から指定薬物の規制を始めた。毎年指定を増やし、対象は当初の31種から現在は77種に広がっている。すでに海外で出回っていて、これから日本に来そうな薬物も数十種あるといわれる。

ひとつ指定すると、化学構造を少し変えた亜種がすぐに現れる。まるでもぐらたたきだ。そこで厚労省は、構造の似た物質をまとめて禁じる「包括指定」を検討している。医療目的の研究に支障が出ないか。刑罰を伴う規定があいまいでよいか。そんな憤重論もあるが、被害の防止を優先することに、異論はないだろう。制度の設計を工夫すればいい。いまの薬事法にも指定手続きを簡略にする「緊急指定」の制度がある。ただ、何が「緊急」かの判断が難しく、活用されていない。使える手立てを尽くして若者の体を守るべきだ。販売業者には、成分や原材料の表示を求めていく。そんな方法で汚染の広がりを防ぐことも考えよう


冷感グッズ、効果がなかったり、肌の異常や熱中症を促進する危険も

2012年07月30日 | 化学物質

朝日新聞2012年7月22日 スカーフ・フプレー・ベスト・腕カバー 冷感グッズ 効果いろいろ

猛暑の夏、節電意識が高まる中で、「ひんやりグッズ」に人気が集まっています。新しい素材やデザインも登場し、タイプもさまざま。ただし、使い方に注意が必要な場合もあるようです。

売り場にぎわう

水を吸わせて首や頭に巻く冷却タオル、冷却スプレー、霧状の風を送る扇風機……。高知市で少年サッカーチームなどを指導する寺尾隆さん(64)は東日本大震災以降、節電のためにエアコンの利用を減らし、さまざまなひんやりグッズで暑さをしのいでいる。最近「冷却ベスト」を買った。保冷剤を前後のポケットに計七つ入れ、下着やTシャツの上に着る。毎週末、サッカーをするときに愛用している。「炎天下でも2時間は冷たさが続き、体温を下げるのに有効です」

東京都内の主婦(57)はこの夏、首に巻く冷却スカーフを買うつもりだ。昨年、通信販売で買ったものはブカブカで、家の中でしか使えなかった。「もっとフィットして、外にも手軽につけて行けるものが欲しい」という。生活雑貨がそろう「東急ハンズ新宿店」(東京都渋谷区)は6月、涼感グッズ売り場を設けた。幅広い世代に売れているのは、米国で開発された「クールコンフォートテクノロジー」という高機能素材を使ったタオルやスカーフ。水にぬらして軽く絞り、強く数回振ると冷たくなる。昨年6月に発売された商品は、国内で計170万枚近く売れた。今年は腕カバーなど種類が増え、この素材を使う他杜製品も出た。千円から3千円と、比較的手頃なことも人気の理由だ。

同店では7月中旬時点で、保冷剤を背負う薄型のリュックや水を入れると噴霧器にもなる水筒が、30~40代の男性に支持されて品薄に。冷やして使う枕は絵柄が豊富になり、若い女性に人気だ。いずれも、このところの猛暑で一気に売り上げが伸びているという。

体温下げぬ商品も 肌の異常にも注意

こうしたグッズは効果があるのだろうか。熱中症予防の専門家で横浜国立大の田中英登教授は昨年、代表的な5製品を検証した。室温35度、湿度60%の部屋で、30代の男性2人が各製品を使った時の体温変化や体感を記録した。最も効果があったのは、氷水を中に入れたアイスバッグ。首の後ろを冷やしたところ、体温が下がり、効果が続いた。一方で冷却スカーフや、肌にはる冷却シートは効果があまり続かなかった。冷却スプレーは、ひんやり感が続いても、体温を下げる効果はほとんどなかったという。田中教授は「暑い場所で使うと涼しく感じ、体温を下げる必要がないと体が錯覚するので、屋外で運動する前につけるのは間違い。体温が上がって熱中症を促進させる危険があり、使い方に注意が必要」と指摘する。

国民生活センターが注意を呼びかけているものもある。湿らせて首に巻く冷感ベルトの子ども用製品は、内部の芯の締め付けがきつく、痛みを感じることがあるという。また、水にぬらす冷感タオルで「湿疹が出た」「赤く腫れた」といった苦情があり、一部の商品からアレルギー性の接触皮膚炎を起こすおそれのある防腐剤が検出された。同センターは、初めて使う前にぬるま湯でよく洗い、異常を感じたらすぐ専門医の診察を受けるよう勧めている。(坂本真子)

 


日本伝統の接着剤、漆について

2012年07月29日 | 化学物質

日本伝統の接着剤、漆について

朝日新聞2012年7月21日 傷ついた器、よみがえらせる 漆で接着修理跡も美しく

気に入った食器の縁が欠けたり、ひびが入ったり。でも、愛着があって捨てるにはしのびない。漆を接着剤にして、よみがえらせる修理法が「漆継ぎ」だ。漆の扱いを含め、じっくり取り組みたい人に向け、文化財の修復なども手がける專門家、甲斐美都里さんに聞いた。

「修理とは、器としての使用に耐えて、なおかつ直した跡が景色として楽しめる状態にすること。天然の漆は質感がよく、直接口に触れる点でも安心感がある」と甲斐さん。大型雑貨店などでは樹脂の修理剤も売っているが、今回は本漆を使った。

まずは、小さな「欠け」や「ひび」を直すことから。初心者は陶器より硬い磁器で挑戦するのがおすすめだ。漆かぶれは個人差があるが、直接触れないよう注意し、皮膚についたらすぐサラダ油など植物油でふきとる。薄いゴム手袋で作業するのもいい。材料は漆専門店のネット販売を利用すれば手に入る。接着には、漆器の下地用で安価な「瀬しめ漆」を使う。

「欠け」の場合、食用の上新粉で作ったのりを用意する。平たい缶のふた裏などを利用して、漆とのりをへらでよく混ぜてなめらかにする。これを器の断面に均一に塗って、欠けた破片を押すようにしてつける。漆がはみ出したら綿棒やティツシュで手早く拭き取っておこう。

一方の」「ひび」は、薄くのばした瀬しめ漆を割れ目に流し込んで接着させる。溶剤の「リグロイン」は、着物の染み抜きなどにも使い薬局で手に入る。細い筆か竹串の先に漆をつけて、ひびの上に置くようにすると、毛細管現象で染みこんでいく。溶剤には引火性があるので、火のそばで作業はしないことだ。

続いて「乾燥」。漆は含む酵素が空気に反応して硬化していく特徴をもっている。室温25度前後、湿度75%前後が適した環境だ。器がゆったり入る段ボール箱を利用した「室」の中で、丸1日が目安。接着した器と別に、のり漆をびんのふたなどに塗って入れておき、そちらで乾燥具合を確かめるといい。

接善できたら「仕上げ」。茶道具などで「金継ぎ」といって表面に金粉を使う華麗な仕上げもあるが、日用の器なら黒、赤、あめ色など漆を生かす方法でも十分。欠けもひびも接着した上に、細い筆で薄く塗り、再度乾燥させれば出来上がりだ。修理を専門家に頼みたいという場合、窓口になるような場がないのが現状だ。技術料は器自体の価格より高いこともある。漆の専門店や漆器の工房に相談してみるといい。(長沢美津子)


胆管がんの原因物質と因果関係

2012年07月28日 | 化学物質

朝日新聞2012年7月26日 多量吸入発がんの恐れ 印刷会社の胆管がん 洗浄剤が原因か

印刷会社で働いていた人が相次いで胆管がんになった問題は、インクを拭き取る洗浄剤に含まれる二つの化学物質が原因とみられている。まだ未解明の部分が多いが、どんな仕組みでがんになるのかを探った。

問題の発端となった大阪市の印刷会社では、患者の元従業員は見本を刷る校正印刷という作業を担当していた。印刷機のインクを頻繁に洗浄剤で落とす必要があった。厚生労働省の調査によると、洗浄剤には「1,2ジクロロプロパン」が合まれていたことが確認された。また、「ジクロロメタン」も含まれていた可能性が高いという。いずれも洗浄効果に優れるが、労働安全衛生法に基づく厚労省の指針で、発がん性の恐れがあるとされる化学物質だ。ジクロロメタンは国内外で健康影響に関する研究報告があり、マウスを使った実験では、肝臓や肺での発がん性が確認されている。人間については、米国でジクロロメタンを使う繊維工場の従業員約1300人を調べた論文が1990年に発表され、胆管がん・肝がんの発症率が高いと報告した。だが、さらに長期追跡した93年の調査で、当初の結論は否定された。

ジクロロメタン因果関係、解明へ

ただ、産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)の井上和也研究員(環境工学)は「はっきりしていないが、高濃度のジクロロメタンが人間の体内に入れば、発がん物質が生まれる可能性は十分ある」と指摘する。井上さんによると、空気吸入や皮膚接触を通じて体内に入ったジクロロメタンは、血液を通じて肝臓に運ばれて分解される。吸入量によって処理される経路が異なり、少量なら通常の経路で二酸化炭素などに分解される。だが、多量になると通常の経路では処理しきれずに別の経路で分解され、その過程で発がん物質が生まれる。その発がん物質が胆管に運ばれて細胞をがん化させた可能性があるとみられている。この経路は一般的に肝臓にあるとされるが、胆管にも存在するとの研究報告もある。

どれくらいの量が体内に入れば、発がん物質を生む経路が動き始めるのか。動物実験の結果などから「空気中の濃度が約500ppm(ppmは100万分の1)以上と推定される」と井上さんは説明する。1千ppm以上では、がんの発生率は1割との推定もあるという。厚労省は大阪市の印刷会社で実施した再現実験で、約130~360ppmを検出。この数値は、米国産業衛生学術会議の許容濃度(1日8時間労働の場合)の約2・6~7・2倍だった。

一方、1,2ジクロロプロパンは洗浄剤に含まれていたことが確認されているものの健康への影響はあまり研究が進んでいない。マウス実験では発がん性が報告されているが、人間でははっきりしない。ただ人間が空気とおうといっしょに吸い込むと、嘔吐や腹痛、肝臓や腎臓の機能が低下するとの報告はある。厚労省は今後、患者調査や動物実験を実施し、両物質と発がんとの因果関係を詳しく調べる方針だ。(南宏美、編集委員・浅井文和)

 

企業は検診結果を公表せよ

産業技術総合研究所フェロー中西準子さんにきく

化学物質のリスク評価に詳しい産総研フェローの中西準子さんに、現時点での評価と今後の対策について聞いた。

1,2ジクロロプロパンは有害性の評価に関する研究が少なく、マウスで発がん性を示す報告があるくらいだ。ジクロロメタンは人間の疫学データが蓄積されていて、吸入量が少なければ健康に影響はないとみられることがわかっている。今回は胆管がんの発症率が高いことから、高濃度の状態に長時間さらされたと考えられる。厚労省の再現実験では、米国の学会による基準の約2・6~20・6陪の濃度が計測された。だが、当時の換気状況を推定すると、実際の濃度はさらに数倍高かったのではないか。

今回のことでジクロロメタンの使用が禁止されるか、手控える動きが広がって科学的知見の少ない別の化学物質が代用されることを恐れている。ジクロロメタンは適正に使えばリスクが低いことは明らかで、知見の少ない物質に乗り換える方がリスクは高い。ジクロロメタンでさえ、職場での暴露に関する疫学調査は国内にはない。海外と違って企業が濃度や暴露量、検診の結果を公表しないからだ。リスク評価の精度を高めるうえでこうした情報の公開が欠かせない。

 

胆管がん多発問題

産業医大(北九州市)の熊谷信二准教授(労働環境学)らのグループが大阪市の校正印刷会社の元従業員らに胆管がんが多発している事実を突きとめ、今年5月の日本産業衛生学会で発表した。厚労省は大阪市以外に宮城県や東京都などでも同様の患者を確認。厚労省によると、全国で少なくとも24人が発症し、うち14人が亡くなっている。


胆管がん発症への取り組み

2012年07月27日 | 化学物質

NHK2012年7月25日 胆管がん患者 学会が全国調査

大阪や宮城などの印刷会社で、従業員らが相次いで「胆管がん」を発症し、死亡した問題を受け、がんなどの専門医で作る学会が、全国200余りの病院で胆管がんの患者の職業歴などを聞き取り、がんの発症と職場との関係を明らかにする実態調査を始めました。

この問題は、大阪や宮城などの印刷会社に勤務する従業員の男性ら17人が、相次いで胆管がんを発症したもので、インクの洗浄作業で使っていた化学物質が原因ではないかと指摘されていますが、詳しくは分かっていません。
このため、がんなどの専門医で作る日本肝胆膵(かんたんすい)外科学会は、学会の医師がいる全国211の病院を対象に、胆管がんの発症と職場との関係を調べる実態調査を始めました。
具体的には、過去15年間に治療を受けた胆管がんの患者のうち、50歳未満の患者について、職業歴や職場環境などをカルテや聞き取りで調べ、がんの発症との関係を明らかにするということです。
調査を担当する、大阪市立大学附属病院の久保正二病院教授は「これまで分からなかった化学物質と胆管がんとの関係を明らかにし、対策に生かせるようにしたい」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120725/k10013838051000.html

 

厚労省2012年7月25日 胆管がん発症に関する各種取組み状況について

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002g5qq.html

 

共同通信2012年7月25日 厚労省、胆管がん予防徹底を通知 印刷に加え金属加工業界にも

 印刷会社の従業員らに胆管がん発症が相次いだ問題を受け、厚生労働省は25日までに、印刷業界の団体に加え、原因として指摘される化学物質を使用する金属加工業などの業界団体にも予防対策徹底を呼び掛ける通知を出した。

 対象の化学物質は「ジクロロメタン」と「1、2ジクロロプロパン」。胆管がんとの因果関係は立証されていないが、専門家が危険性を指摘している。

 厚労省の通知は23日付。通風が不十分な屋内作業場での換気の徹底やマスク、手袋など保護具の着用を求めている。

http://www.47news.jp/CN/201207/CN2012072501001314.html

 

時事通信2012年7月25日 新たに7人、計24人に=全国1万6000カ所調査へ―印刷会社の胆管がん・厚労省

 印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省は25日、新たに7人の発症が判明し、全国11事業所で計24人になったと発表した。うち14人は既に死亡している。
 厚労省は、有機溶剤を扱う全国の印刷事業所約1万6000カ所に調査票を送付。胆管がん発症者の有無や、有機溶剤の取扱規則を守っているかなどについて、8月末までに回答を求める。
 7人のうち1人は、最も多くの発症者が出た大阪市の印刷会社に勤務していた。他6人の地域について、厚労省は「仕事が原因と判明していない段階で、事業所が特定される恐れがある」として公表していない。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120725-00000155-jij-soci

 

朝日新聞2012年7月26日 印刷業胆管がん死者が増え14人

印刷会杜で働く人に胆管がんが多発している問題で、厚生労働省は25日、これまでに把握した発症者が24人、うち死亡者が14人に上ることを明らかにした。全国561事業所の調査結果を発表した今月10日時点から、発症者は7人、死亡者は6人増えた。ただ、引き続き大阪と宮城以外では、同一事業所で複数の発症例はないという。24人のうち労災申請しているのは18人で、うち11人が死亡している。

10日時点では、発症者は大阪府12人、宮城県2人、東京都・静岡県・石川県各1人の計17人で、うち8人が死亡したとしていた。今回は、その後の労災申請などを加えた。増えた発症者7人のうち60代の1人は存命で、それ以外の人は、1人は40代、2人が50代、1人が60代、2人が70代でいずれも死亡していた。7人のうち1人は、胆管がんが大量発生している大阪市の印刷会杜に勤めていた。

 

時事通信2012年7月11日 600の化学物質分析へ=患者の職種調査も-印刷会社の胆管がん・厚労省

 大阪市の校正印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省は11日までに、発がん性物質による職場の健康被害を防ぐため、10年かけて約600の化学物質について調査する計画をまとめた。
 職場で規制されず使用されている約6万の化学物質のうち、年間の製造・輸入量が1トンを超えるものについて発がん性を検討。文献などで危険性を絞り込んだ約600の化学物質について、発がんの危険性を調べる。危険性が確認されれば、防毒マスクの着用や排気装置の設置といった規制措置を取るとしている。
 また、印刷会社以外にも胆管がんを多く発症する職種がないか、病院を通じて患者の職種も調べる。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201207/2012071100047&rel=y&g=soc