古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第八章 レディ・ワシントン号・その十五

2011年10月21日 09時16分07秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

 

淑女ワシントン号第四ページ(上の写真の三行目と四行目)

解読 大庄屋中西理左衛門より注進申出候由、右付

    又々いつれ之浦へ漂流いたし候儀も難計

読み方 大庄屋、中西理左衛門より注進申し出で候由、右に付き

     又々、いずれの浦へ漂流いたし候儀も計り難く、

解説 「大庄屋」も読みにくいですが、よく見ていると何とか見えてきます。『おおじょうや』と読みます。 「中西理左衛門」は既出、古座組大庄屋です。「より」・・・合成字。 「注進」・・・既出。 「申出」の次ぎに小さく「候」があります。 次は「由」。 「右ノ付」・・・「ノ」は書き誤りと思われます。「右に付き」。 「いつれ之」・・・古文書では、濁点・半濁点は使いません。「いづれの」=「いずれの」。 「漂流」の次は「いたし」です。「た」は「多」の変体仮名です。 「し」の下部のかすかに止めた点が「候」。 最後の二文字は「難」と「計」で省略過剰で難解。『計り難く』。


第八章 レディ・ワシントン号・その十四

2011年10月20日 09時46分09秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

淑女ワシントン号第四ページ(上の写真の一行目と二行目)

解読 先達而、段々相通有之候、唐ら舩躰之舩

    西風少し吹出候故哉、下筋へ乗行候由

読み方 先だって、段々相通しこれ有り候、唐『から』船ていの船

    西風少し吹き出し候故か、しも筋へ乗り行き候由

解説 「先達而」・・・せんだって。「而」は「て」、下方に長く伸びています。 「段々」・・・読めと言われても難しい、回数で慣れる字です。 「相通 有之候」・・・相通しこれ有り候、お知らせして来ました様に。 「吹出」の次は「候」。その次は「故」の崩し字です。極端な形です。 次は「哉」・・・「や」とか「か」と読み、疑問を表す助詞です。「故にや」、「故か」。 「下」の次の「筋」も難しい。 「乗行」・・・乗り行き。 縦の棒は「候」です。 「由」も難解。 これを書いた書記方は、達筆で相当なスピードで書く方で、古文書の中でも難しい部類に入ると思います。 これを解読するのは、相当年数を積んだ人でなければ出来ない、それほどの文書『もんじょ』です。 


第八章 レディ・ワシントン号・その十三

2011年10月19日 09時19分39秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

淑女ワシントン号第三ページ(上の写真の五行~六行以下)

解読 (静)ニ而右之外、異変成義ハ無之由、大嶋浦より

     申来候旨、中西理左衛門より注進出候。仍之申入候。恐惶謹言。

          三月晦日   稲葉七左衛門

              西川松蔵殿

読み方 (静か)にて右のほか異変成る義はこれ無き由、大嶋浦より

 申し来たり候旨、中西理左衛門より注進、出候。これに依って申し入れ候。

 恐惶謹言。 三月みそか、稲葉七左衛門、西川松蔵殿

解説 文意 (大砲、十五六発打ったが、空砲の様で、船中は静か)で、他に変わった点は無かったと、大嶋浦より言って来た旨、中西理左衛門から注進が出たので、申し入れます。敬具。三月三十日。稲葉七左衛門。 西川松蔵殿。

「異変」・・・「異」は「己の下に「大」と書いています。異体字です。 「成義」・・・なる義。 「無之由」・・・これ無き由。 「大嶋浦」の次は読めませんが、文の流れから「より」。 「申来」の次の点は「候」。 「注進」・・・前に出ました。 「仍之」・・・これも読むのは無理ですが、常套句です。 「恐惶謹言」も簡略化し過ぎです。 「中西理左衛門」は古座組大庄屋。 「稲葉七左衛門」は和歌山藩の古座在勤目付の一人だと推定されます。 西川松蔵は木ノ本組大庄屋。(前述) 役人はなるべく事を荒立てしないような報告を書いている様子が分かります。

 

 


第八章 レディ・ワシントン号・その十二

2011年10月18日 09時18分09秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

 

淑女ワシントン号第三ページ(上の写真の三行目と四行目)

解読 今夕七ツ頃大筒躰之鉄砲拾五六ならし

    右筒音ハ薬計之様ニ相聞候由、尤舩中静

読み方 今夕七つ頃、大筒『おおづつ』ていの鉄砲、十五、六ならし『鳴らし』

     右つつおとは、薬ばかりの様に相聞こえ候由、尤も船中静か

解説 一番上の字は「今」の崩しです。前回にも出ました。 「夕七ツ」・・・午後四時。明け七つは午前四時。 次は「頃」。 「「大筒」・・・大砲の事。大の左の点はキズと思われます。 「躰之」・・・ていの。大砲の様な、大砲ふうの。 「筒音ハ」・・・大砲の音は。 「薬計」・・・薬ばかり、空砲の事か。 「相聞」・・・相聞こえ。「聞」は読むのは難しい。


第八章 レディ・ワシントン号・その十一

2011年10月17日 17時12分21秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

 

淑女ワシントン号第三ページ(上の写真のはじめから)

解読  一筆令啓達候。然者、唐ら舩躰之舩、古座組

    大嶋口少し上ミ手へ綱繰上、汐掛り致候由、然処

読み方 一筆啓達せしめ候。しかれば、唐『から』船躰『てい』の船、古座組

    大嶋口少しかみ手へ、綱繰り上げ、汐掛かり致し候由。然る処、

解説 はじめの書き出しは第一ページと同じです。「一」が大きく「筆」が長くなっています。 「令啓達候」・・・これも一ページと同じ。 「唐ら舩躰之」・・・唐船体『てい』の。 「上ミ手」・・・古文書では送り仮名は普通付けませんが、特に「上」と「下」は読み方が色々有るので、送り仮名を付けるケースが多いようです。 「上ミ手」・・・「上ミノ」に見えますが、「ノ」は「手」の最初の「ノ」です。 「綱繰り上げ」はよく分かりませんが、「綱を張って」と言うようなことでしょうか。 「汐掛かり」・・・汐待ちで船が停泊すること。