古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第十章 地震・津浪乃記・その九十五

2012年04月30日 07時17分55秒 | 古文書の初歩

 

 

 

地震津浪乃記第二十四頁、上の写真の一行目と二行目

解読 近年異国舩年々渡来、就中去ル丑六月北アメリカ軍

    舩九艘江戸海江来ル。交易願ヒ乃由、同年七月ヲロシヤ

読み 近年異国船年々渡来、なかんずく去る丑六月北アメリカ軍

    船九艘江戸海へ来たる。交易願いの由、同年七月ヲロシヤ

解説 筆者が変わったかの様に、この頁からは楷書体の様な文字になります。文字の解説は、ほとんど必要ないですね。 「異国舩」の「異」も異体字ではなく現在の文字となっています。「舩」は異体字。 「就中」・・・下から返って「なかんずく」と読みます。意味は「中でも」「とりわけ」。 「丑六月」・・・嘉永六年(一八五三年)の六月。現在では年賀状に残っているだけの十二支『子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥』だけで、その年を表しました。時の流れるのが遅かったのだと思います。これに十干『じっかん』【甲乙丙丁戊己庚辛壬癸】を組み合わせた「干支」『かんし』で表示する場合は、更にその年が特定され易くなります。 「軍船九艘」とありますが、この年に日本へ来たアメリカ船は四艘です。「ヲロシヤ」・・・ロシア国の事。


第十章 地震・津浪乃記・その九十四

2012年04月29日 07時16分35秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

地震津浪乃記第二十三頁、上の写真の七行目八行目

解読 築地ハ二三間にも厚く築キ石ヲ不用惣芝カ小竹など植タル所

    其功あり。

読み 築地は二、三間にも厚く築き、石を用いず、総芝か

    小竹など植えたる所、其の功あり。

解説 この部分特に文字が小さいので読みにくいですが、ご辛抱下さい。   「築地」・・・ついじ塀の事。 「二三間にも厚く」・・・厚さを二三間にするとは、相当頑丈なものになります。 「不用」・・・「ふよう」ではなく、「用いず」。下から返って読む。 「惣芝」・・・「惣」は「総」で、全面に芝を植えつけた状態。 「植タル所」・・・「植えたる所」、植えた所。送り仮名無し。 「其功」・・・其の効き目。 「阿り」・・・「有り」。阿は変体仮名「あ」。


第十章 地震・津浪乃記・その九十三

2012年04月28日 06時24分09秒 | 古文書の初歩

 

 

 

地震津浪乃記第二十三頁、上の写真の五行目六行目

解読 此時節に至りてハ頼む所ハ土蔵也と思ひしも地震にかべくづれ

    屋根落浪入又ハ出火にて焼亡せし所多く有之。

読み 此の時節に至りては頼む所は土蔵也と思いしも地震に壁崩れ

    屋根落ち浪入り又は出火にて焼亡せし所多くこれ有り。

解説 「此時節に」・・・「此」は形で覚える崩し字です。「節」も解読は困難です。「時節」とは「季節」の事でなく、「こういう場合には」「こんな地震の時には」という意味です。 「頼む」・・・これも崩し過ぎで読むのは困難。 「土蔵」の次ぎのカタカナのニを寝かせた様な字は「也」。何度も出ました。 「思ひしも」・・・旧仮名遣い。「思いしも」・・・思ったが。思ったけれど。 「くづれ」・・・「つ」は変体仮名の「徒」。「れ」は変体仮名の「連」です。 「屋根落」「浪入」・・・いずれも送り仮名は有りません。「落ち」、「入り」。 「焼亡せし」・・・ひらかなの「せ」の元の漢字は「世」から来ています。 「多く有之」・・・「これ有り」は下から返って読む。

 『文意』土蔵などは頑丈に作っているので、こういう場合には頼りになる所は土蔵だと思ったが、地震により壁は崩れ、屋根は落ち、浪は入り、又は火事で焼けてしまった所が多かった。


第十章 地震・津浪乃記・その九十二

2012年04月27日 06時05分54秒 | 古文書の初歩

 

 

 

地震津浪乃記第二十三頁、上の写真の三行目四行目

解読 来り候共引流し候事ハ有まじくはからひ置候所も地震にて根石迄

    吹キ返し大かべハ大破に成り其功なし。土蔵など丁寧にいたし

読み 来たり候とも、引き流し候事は有るまじく計らい置き候所も、地震にて根石迄

  吹き返し、大壁は大破になり其の功なし。土蔵など丁寧に致し

解説 「来り候共」・・・来ても。 「引き流し候事は有まじく」・・・流される様な事はあり得ないと。 「はからひ置候所も」・・・考えて作って置いた場所も。 「地震ニ而」・・・地震にて。地震に依って。「而」は変体仮名の「て」。 「根石」・・・土台の石・基礎の石。礎石。 「吹き返し」・・・強風が物を裏返す、と言う意味ですが、ここでは地震の力で、基礎の石までひっくり返すと言っています。 「大破に成り」・・・「成り」も読みにくい書き方です。「功」・・・『こう』、ききめ。 「奈ど」・・・「奈」は変体仮名の「な」。 「丁寧にいたし」・・・「いたし」の「た」は変体仮名の「多」。 『文意』・・・大壁・築地などで囲み、たとえ津浪が来ても流される事はあり得ないと、よく考えて作って置いた所も、地震により基礎の石までひっくり返され、大壁も大破になり、其の効き目はない。


第十章 地震・津浪乃記・その九十一

2012年04月26日 07時13分57秒 | 古文書の初歩

 

 

 

地震津浪乃記第二十三頁、上の写真の一行目二行目

二十二頁の次が二頁分欠落していますので、やむなく飛ばします。

解読 平日用意勘辨しヲケル事も天地の大変に至りてハ意

   外に出る事多し。土蔵、大かべ築地等にて立圍ミ、假令津浪

読み 平日用意勘弁しおける事も、天地の大変に至りては、意

 外に出る事多し。土蔵、大壁、築地等にて立ち囲み、たとえ津浪

解説 「平日」・・・普段の日。常日頃。「用意勘辨」・・・用意し、考えて置くこと。 「意」の崩し字はこの様な形になります。 「辨」・・・この崩し字もちょっと読めません。現在は「弁」と略して書きます。 「しおける事」・・・して置いた事。 「意外」・・・「意」もこの様な形です。右に「意」と楷書で書いてくれています。 「築地」・・・「ついじ」。ここの築地とは、土を盛り上げて固めて作る土手の様な物を言っている様な感じがします。「つきじ」と読めば、埋め立て地の事。  「立圍ミ」・・・立てて囲む。「圍」は「囲の旧字体。 「假令」・・・たとい。たとえ。もし仮に。「假」は「仮」の旧字体。 「津浪」・・・「津」の崩し字は久し振りに出ました。