古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第八章 レディ・ワシントン号・その五

2011年10月11日 09時41分56秒 | 古文書の初歩

 

淑女ワシントン号第一ページ(上の写真の九行目と十行目)

解読

(南)風少吹走出がたく趣にて、まきれ候趣ニ相見へ候由

夕方少し追風ニ相成走登候躰ニ相見へ候得共

読み方

南風少し吹き走り出がたく趣にて、まぎれ候趣に相見え候由、

夕方、少し追い風に相成り、走り登り候体に相見えそうらえども、

解説 『レディ・ワシントン号』と言う船名ですが、『ワシントン夫人』ではないように思いますし、『淑女・ワシントン』としました。冒頭の記念碑を見て戴いても分かるように、その優美な姿から『レディ(淑女)』と冠したのではないかと推察します。『ワシントン』は地名か人名か不明です。なお、申し遅れましたが、この古文書作成当時は、勿論二隻の舟の船名も国名も分かりませんでした。戦後アメリカ側の史料によって、判明したものです。

「走り出しがたく」・・・「た」は知らない人は読めませんが、「多」の変体仮名です。よく出てくる字ですから、慣れて下さい。 「趣にて」・・・「にて」も合成字のようなものです。「より」と似たところがあります。 「まきれ」・・・向かい風に向かって斜め方向に進む帆船の走り方。『間切る』。 「れ」の中に「候」があります。 最後の行の頭の字は読めませんが、先生は「夕方」と読みました。 その次は「少し」。  「走登」・・・この字も難しい字です。「登る」とは大坂・京都方面に行く方角で、この場合は西行き。「登」の次ぎに「候」。 「体」・・・「躰」を崩して「体」に見えます。 この一ページに「相見へ」と言う言葉が五回出て来ました。「相」には特に意味は有りませんが、言葉を強調し、改まった意を表し『広辞苑』丁寧さも意味します。