古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第二十四章 乍恐奉追願書附 其の二十六

2014年07月31日 08時01分38秒 | 古文書の初歩

「乍恐奉追願書附」のあらまし。

紀州・和歌山藩では、森林面積の広い事もあり、山林の保護は極めて熱心でした。現代とは異なり、産業としての山林の重要性は想像出来ないほどのものでした。特に、松・杉・桧・欅・楠・柏を六木と称して、古くから許可無く伐採を禁止していました。これが、「留木」『とめき』と言い、本文書では、「御制木」と言う言葉を使っていますが、楠木の払い下げ追加申請書という形で、再度願い出た書類です。

「文意」・・・『恐れながら、再度願い上げ奉る申請書』

①、当村領内に生えている御制木の楠木を銀180匁にて、村の小百姓どもの稼ぎ仕事にするべく、お払い下げ下さいます様、二年前の春より何度も申請して参りました。元々当村は、田畑が少なく、百姓どもは農作業の合間あいまに日雇いや賃仕事に精出して、御年貢を納めて来ましたが、近年は凶作続きの中で色々な稼ぎも難しく、更に去年の秋の二回に亘る大風・大雨で田畑とも、大変な不作で、生活に困っている状況であります。

②、ところが、去年九月に仰せ聞かされましたのは、払い下げ納付金を増額するかしないか申達する様との御趣旨を承り、承知しました。併しながら、当村は最初から申し上げている通り、取り分け険しい岩山に生えておりますので、楠木の木柄は至って悪く、長尺の製材には出来ず、中身も空ろな木が多く、板・小割り物等にしても、朽ち木の部分は捨てるしかなく、製品には何ほども出来ませんので、増し銀する件はたいへん迷惑ではございますが、お払い下げ戴きました場合は、小百姓どもの日々の暮らしも続けられると思いますので、思い切って50匁増額し、計230匁納付致しますので、早急に払い下げ願いたく御願い申し上げます。(続く)

 

 


第二十四章 恐乍奉追願書附 其の二十五

2014年07月30日 04時38分26秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

「乍恐奉追願書附」第三頁、上の最終行以下署名宛名欄まで

解読 幾重ニも奉願上候。以上

    文政十三年寅三月      田并上村庄屋 文右衛門

                          同所肝煎  徳蔵

         安宅 新助 殿

         浦 儀惣次 殿

読み 幾重にも願い上げ奉り候。以上 (以下読みは省略。)

解説 ここの本文は、解説は不要と思います。 「文政十三年」・・・「文」と「年」が難解です。文政十三年は、十二月に改元して、天保元年となりました。一八三0年にあたります。。「子」の跳ねが右斜め上に極端に跳ね上がっている字は、「寅」の略字で、音は「チョウ」。訓は「トラ」と読みます。寅年の三月。 「田并上村」・・・田並上村。 「肝煎・徳蔵」が難解です。 「安宅新助殿」・・・この人名の役職がわかりません。周参見代官の名前の中には見当たりません。現物では、「安宅」の次ぎに用紙を貼って、名前を訂正しています。 「浦儀惣次殿」は江田組大庄屋と推定されます。     


第二十四章 恐乍奉追願書附 其の二十四

2014年07月29日 05時32分31秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

「乍恐奉追願書附」第三頁。上の三行目

 

解読 (御憐)愍之御思召を以、右願之通

     御取曖之程、宜敷々々

読み (御憐)愍の思し召しを以て、右願いの通り

     お取扱の程、宜敷宜敷、

解説 「御憐愍」・・・『ごれんびん』、憐れむ事。(広辞苑による)。「御憐憫」とも書く。ここの「愍」の文字は、「米偏」に「千」と書いて下部は「心」と見えますので、「愍」とは異なる文字かも知れません。辞書では見つかりませんので、熟語の「憐愍」とさせて戴きます。 「御思召を以」・・・思し召しを以て。 次の「石」に見える字は「右」です。 「御取曖之程」・・・「取」も読みにくい文字ですが、次の「曖」は超難解文字です。前々章で出ました「曖済証文」の「曖」と同じ。古文書学習でもほとんど出ない、難しい字が続けて出るのは希有の事です。形で覚えましょう。然し覚えても次ぎにお目にかかるかどうかはわかりません。「曖」は正確には「口偏」に「愛」と書きます。本パソコンのソフトでは、「口偏」に「愛」は出ませんので、「日偏」に「愛」と表記しています。お許し下さい。意味は「扱」と同じです。


第二十四章 恐乍奉追願書附 其の二十三

2014年07月28日 07時21分10秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

「乍恐奉追願書附」第三頁、上の第二行目

 

解読 先達而より奉申上通全ク

    相違無御座候間、何卒御憐(愍)

読み 先だってより申し上げ奉る通り、全く

    相違御座無く候あいだ、何卒御憐(愍)

 

解説 「先達」の次の小さい字は「而」です。先だってより。 「より」の次の字は「奉」です。「奉申上通」・・・申し上げ奉る通り。本来は、「上」の次ぎに「候」が有って、「申し上げ奉り候通り」となるのが普通ですが、ここは抜かったのか「候」が有りませんので、「奉る通り」と読みます。 「相違無御座」・・・相違御座無く。 「候間」・・・候あいだ。全く間違い御座いませんので。 「何卒」・・・『なにとぞ』どうか。 「御憐愍之」・・・『ごれんびんの』あわれみの。憐れみの。可哀相だと。


第二十四章 恐乍奉追願口上 其の二十二

2014年07月27日 07時48分48秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

「乍恐奉追願書附」第三頁、上の一行目

 

解読 凌方取續、至極難有仕合ニ

    奉存候。且木数木品等者

読み 凌ぎ方取り続き、至極有り難き仕合わせに

    存じ奉り候。且つ木数・木品等は

 

解説 「凌方」・・・『しのぎかた』。やりくりして何とか生活を過ごす事。 「取續」・・・取り続き。継続出来る。「續」は旧字体。 「至極」・・・しごく。極めて。 「難有仕合ニ」・・・有り難き幸せに。「仕合」は当て字です。 「木数木品」・・・材木の数や品質。