「乍恐奉追願書附」のあらまし。
紀州・和歌山藩では、森林面積の広い事もあり、山林の保護は極めて熱心でした。現代とは異なり、産業としての山林の重要性は想像出来ないほどのものでした。特に、松・杉・桧・欅・楠・柏を六木と称して、古くから許可無く伐採を禁止していました。これが、「留木」『とめき』と言い、本文書では、「御制木」と言う言葉を使っていますが、楠木の払い下げ追加申請書という形で、再度願い出た書類です。
「文意」・・・『恐れながら、再度願い上げ奉る申請書』
①、当村領内に生えている御制木の楠木を銀180匁にて、村の小百姓どもの稼ぎ仕事にするべく、お払い下げ下さいます様、二年前の春より何度も申請して参りました。元々当村は、田畑が少なく、百姓どもは農作業の合間あいまに日雇いや賃仕事に精出して、御年貢を納めて来ましたが、近年は凶作続きの中で色々な稼ぎも難しく、更に去年の秋の二回に亘る大風・大雨で田畑とも、大変な不作で、生活に困っている状況であります。
②、ところが、去年九月に仰せ聞かされましたのは、払い下げ納付金を増額するかしないか申達する様との御趣旨を承り、承知しました。併しながら、当村は最初から申し上げている通り、取り分け険しい岩山に生えておりますので、楠木の木柄は至って悪く、長尺の製材には出来ず、中身も空ろな木が多く、板・小割り物等にしても、朽ち木の部分は捨てるしかなく、製品には何ほども出来ませんので、増し銀する件はたいへん迷惑ではございますが、お払い下げ戴きました場合は、小百姓どもの日々の暮らしも続けられると思いますので、思い切って50匁増額し、計230匁納付致しますので、早急に払い下げ願いたく御願い申し上げます。(続く)