古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第三章 五人組改連判・その四

2011年05月31日 23時13分10秒 | 古文書の初歩

 

 

 

第一ページ 一つ書きの三番目

解読

一 鉄炮御免筒之外所持仕間敷候猟師

  たりといふとも御法度之鳥類捕申間敷

  候且又無益之殺生好ミ申間敷事

読み方

一つ 鉄炮、御免筒の外、所持つかまつるまじく候。猟師

   たりと言うとも、御法度の鳥類、捕り申すまじく

   候。且つ又、無益の殺生好み申すまじき事。

解説

一つ 鉄炮は、御免筒(ごめんづつ、許可済みの銃)以外は所持しない事。  「炮」は異体字で現在の「砲」です。  「筒」・・・鉄砲、銃の事。  「間敷」・・・「まじく」と読み、禁止・否定の当て字で、こういう使い方は外にも沢山有ります。 久敷(久しく)・恐敷(恐ろしき)・新敷(新しき)等々。 「たりと」の「た」は「多」の変体仮名で、よく出ます。覚えなければならない字です。  「御法度之」・・・禁止の、違法の。   「殺生」(せっしょう)・・・生き物を殺すこと。 益のない殺生を好んでしてはいけない。


第三章 五人組改連判・その三

2011年05月30日 11時16分36秒 | 古文書の初歩

 

 

 

二つめの、一つ書きの「附り」部分

解読

  附り御高札念入可立置之若御高札破

  損候ハゝ早々訴出立替可申并雨覆

  矢来等等損シ候ハゝ是又早々修覆可仕事

読み方

  附けたり 御高札、念入り立て置くべし。もし御高札破

  損、候らわば、早々訴え出、立て替え申すべし。並びに雨覆い

  矢来等損じ候わば、是又早々修覆仕るべき事。

解説  「附けたり」・・・附則。  「可立置之」・・・これを立て置くべし、ですが、   「之」(これ)は読まなくともよい場合が多いようです。(文章構成上入れる文字)    「若」・・・もし。 「候ハゝ」・・・この形はよく出ますので、すぐ慣れると思います。「候」で終わる場合には普通「候ふ」と言う送り仮名は附しませんが、活用形になる場合は、この様に送り仮名を附します。この様に゛「ハゝ」と崩してカナで書いて、「わば」と読ませます。  「并」は並の異体字。「矢来」とは、高札を立てている周囲を簡単に囲いをした竹垣の事。

高札の維持管理も、村の庄屋等の役目だつたようです。  

  

 


第三章 五人組改連判・その二

2011年05月29日 17時21分01秒 | 古文書の初歩

 

一つ書きの二番目 上の写真の四行目から

解読

一 切支丹宗門之儀御高札之通堅く可相守

  若御法度之宗門之もの有之は早速

  可申出候尤毎年宗門改帳面差出之

  帳面之通人別念入相改之帳面済候

  後召抱候下人等は寺請状別紙取置可

  申事

読み方

  一つ、キリシタン宗門の儀、御高札の通り堅く相守るべし

  もし、御法度(はっと)の宗門の者これあらば、早速

  申し出るべく候。尤も、毎年宗門改め帳面これを差し出し

  帳面の通り人別(にんべつ)念入りにこれを相改め、帳面済み候

  のち、召し抱え候下人等は、寺請け状別紙取り置き

  申すべき事。

解説 ① キリスト教を信仰している者の事は、御高札に書いている通り、堅く守らねばならない。もし禁止の宗派の者が居たら、すぐに申し出ること。但し、毎年の宗門改めの帳簿を提出していて、帳簿の通り、一人一人念入りに確認し、帳簿提出後に雇い入れた使用人等は、寺請け状を貰って置くこと。 「キリシタン宗門」・・・クリスチャン。キリスト教を信仰している者。 「御高札」・・・禁止事項、通達などを記し、高く掲げた板札、立て札。 「宗門改め」・・・その人の信仰している宗教を確認する調査。江戸時代、特にキリスト教徒でないか確認するため、調べた。調べた事は帳簿に書き残した。現在の「住民登録」的な制度と言う事が出来る。 年一回実施したので、調査の後雇い入れた使用人等については、寺の証明書を取って置くことになっていた。


第三章 五人組改連判之事・その一

2011年05月28日 14時08分52秒 | 古文書の初歩

 

五人組改連判之事

今日から第三章に入ります。五人組と言う制度は、江戸時代各村の末端組織で、百姓町民を隣組のような組織に組み入れて、徴税や通達が円滑に行き届く様にした制度です。

 表題と最初の一つ書き

 解読

 五人組改連判之事

一 前々従 公儀度々被仰出候御法度之

  書之趣者不及申ニ御仕置之儀不相背様ニ

  堅く相守村中下々迄可申付事

読み方

一つ 前々公儀より、度々仰せ出され候、御法度の

   書の趣は、申すに及ばず、お仕置きの儀、相(あい)背(そむ)かざる様に

   堅く相守り、村中下々まで申し付くべき事。

説明① 前々から公儀より、たびたび発せられて来た御法度の書の内容は言うまでもなく、お仕置きの件に背かない様、堅く守り、村中下々まで申し付ける事。 

② 「従」は~よりで、この場合下から返って、「公儀より」と読みます。 公儀・・・幕府。 法度・・・禁令。 御法度之書・・・御法度書き。 趣・・・内容。 御仕置・・・刑罰。

③ 欠字・・・文中で敬意を表すため、そのすぐ上を一字分空けて書く事。この場合は、公儀の上と、仰せ出の上が一字空いています。闕字(けつじ)とも書きます。

④ 政府の条例や禁令・通達等は、藩→代官→大庄屋→庄屋→組頭→百姓・町民と言う流れで、末端にまで届き、末端の組織が「五人組」と言う隣保組織でした。 五人組は、五戸を一つの組とし、火事や盗賊・キリシタン宗徒の密告・納税や犯罪の連帯責任等まで課しました。「連判改め」とは、連帯で捺印した書面の再検査という意味だと私は解釈しています。 

表題の最初の「五」の字の崩し方を覚えて下さい。五の崩しの基本はこの形です。これはまだ読みやすい方です。もっと分かりにくい五もあります。


第二章 異国舩・その十四(まとめの②)

2011年05月26日 19時51分40秒 | 古文書の初歩

異国船のまとめ②

一つ書きの三番目

庄屋は、異国船発見の報告を受け次第、異国船の進行方向を見届けるため、信頼出来る舟を二、三艘仕立て、報告してきた舟についてあとをつけ、他の組の湾までついて行ったら、その浦の庄屋に連絡して、その浦から見とどけの舟が出次第、確実に引き渡して、帰ること。

一つ書きの四番目

異国船が浦の近くを通っても、停泊しないうちは、こちらから舟を出してまで停船させる必要はない。但し浦々に人や舟を集めて準備しておくこと。異国船が停泊したら、組の人々や舟並びに弓・鉄砲を定めの通り用意し、その外何でもよいからあり合わせの道具(武器になるような)を持ち、弁当を出来るだけ多く腰につけて、駆け集まること。 附則、馬は家に残して置き、大庄屋の指図を待つこと。

 附則、異国船は言うに及ばず、日本の舟でも、不審な舟が来た時は、右の通りに心得る事。

異常で、異国船に関する規定は終わります。引き続きキリシタン関係の定めに入ります。

一つ書きの五番目

キリスト教の教えを勧める者、又は金銭をくれて人をだますような事が有ったら、先ずこころよく聞いて、受け入れて置き、早々に報告する事。公儀(幕府)から規定の倍のご褒美が下される事になっている。また、藩からもご褒美が下される。 現在では、「倍」と言いますが、当時は、「一倍」と言ったようです。

一つ書きの六番目

キリスト教徒を隠して置く者が居れば、当人はもちろん、親類や遠縁の者まで重い罪に処せられ、その上、その村の者すべてが処罰される事になる。

あとがき

右の(以上の)事は、前々から数度に亘り仰せ出されていたが、猶又この度、改正されて仰せ出されたので、常時すべての百姓どもに、この定めを読み聞かせ、油断する事のないよう申し付けるものである。

正徳六年 申三月

一から四までが、異国船を発見した時の心得で、五と六がキリスト教徒関係の禁止規定となっています。いずれも、鎖国時代の事とて、外国の影響や干渉を怖れ、極力排除しようとした幕府の政策が端的に表れている規定だと言えます。

重複しますが、正徳六年は一七一六年で、今からおよそ三百年前の江戸時代中期に当たり、元禄・宝永・正徳・享保とつづく時代で、この当時から外国の船が日本近海に出没し、キリスト教の影響が出ていた事がこの定めで解ります。

宝永四年十月四日には「宝永地震」が起こり、東海道・紀伊半島を中心に死者二万人、倒壊六万戸、流失二万戸の大被害がありました。串本の「無量寺」は当時袋地区に有り、津波で流失し、このあと串本の現在地に移転新築されました。正徳六年は、改元されて享保元年に変わっています。

第二章 異国船 終わり。