古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第五十九章 漂流外国物語 其の十四

2016年03月31日 08時02分59秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

「漂流外国物語」第四ページ、上の五~六行目

 

解読 伊豆国大安治良浦を心掛ケ航参り候処、同廿五日朝五ツ時頃

    漸々同浦へ入津いたし帆洗濯并作事有増出来候(所)

読み 伊豆の国大安治良浦を心懸け、走り参り候処、同廿五日朝五つ時頃

    漸う同浦へ入津致し、帆洗濯並びに作事あらまし出来候(所)

 

説明 「伊豆国」・・・現在の静岡県伊豆半島の全部。 「大安治良浦」・・・『おおあじろうら』。独断による推定ですが、熱海の南の網代温泉の地名と推定します。 「を心掛け」・・・を目標にして。「を」が難しい。 「航」・・・本文は「舟扁に風」と書いていますが、このパソコンには入っていませんので「航」の字を宛てています。一般の辞書には載っていません。帆船が風を受けて帆走する事。 「朝」の次の字は欠けていて読めませんが、時間的には、「五つ時頃」となります。 「漸々」・・・ようよう。 「入津」・・・『にゅうしん』。入港。 「以多し」・・・いたし。 「作事」・・・普請。建物を作ったり修理する事。 「有増」・・・『あらまし』。宛て字です。大方。大体。 「出来」・・・『しゅったい』。出来上がる事。工事が終わること。


第五十九章 漂流外国物語 其の十三

2016年03月30日 07時49分52秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

「漂流外国物語」第四ページ、上の三~四行目

 

解読 破れ又々高浪打込ミ船者勿論人命茂危く相覚へ故

    舟中申合諸神佛江心願を籠髪を切船玉江備へ

読み 破れ又々高浪打ち込み、船は勿論人命も危うく相覚え故

    舟中申し合わせ、諸神佛へ心願を籠め髪を切り船玉へ備え

 

説明 「破連」・・・破れ。 次の「冬」の様な字は「又々」。 「人命茂」・・・「命」の字は「衆」にも見えますが、やはり「命」と読んで置きます。「茂」はヒラカナの「も」。 「相覚へ故」・・・「覚へ」の次に「候」が洩れています。「故」も読みにくい。 「心願を籠」・・・心からの願いを籠めて。 「髪越」・・・「越」はヒラカナの「を」。「越」の崩しも難解。 「船玉江備へ」・・・「船玉」は船の守護霊のこと。「江」はヒラカナの「え」。「備へ」・・・「供え」の宛て字として書いています。


第五十九章 漂流外国物語 其の十二

2016年03月29日 08時23分28秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

「漂流外国物語」第四ページ、上の一~二行目

長い間勝手しました。「漂流外国物語」を再開します。

 

解読 船江打込ミ船底ニアカ四五尺程茂溜リ候故船中大きに

    驚き面々根限り相働きアカをかへ捨居候内帆三つニ

 

読み 船へ打ち込み船底にアカ四五尺程も溜まり候故、船中大きに

    驚き面々根限り相働きアカを換え捨て居り候内、帆三つに

 

説明 本章は長文の記録ですが、墨の色が濃く、読みやすい文章が続きます。後半はもっと墨の色が薄くなります。 「アカ」・・・ここではサンズイヘンに含と書いている様に見えますが、広辞苑には、サンズイヘンに金と書く「アカ」が出ています。船の底に溜まる水の事。古文書では他にも「アカ」の漢字が出て来ます。ここでは、隙間から洩れる海水ではなく、上から入ってくる海水なので、四・五尺も溜まっている事になります。 「四五尺程茂」・・・「五」、「程」が難解。「茂」はヒラカナの「も」です。 「アカをかへ捨居」・・・「を」の元字は「越」の崩し字です。「久」に見えるのは「かへ」と読み「代え捨て」。


第五十九章 漂流外国物語 其の十

2016年03月10日 08時05分33秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

 

 

「漂流外国物語」第三頁、上の七~八行目

 

解読 (房)州浮津沖迄乗下り候所、戌亥風ニ相成、浮津湊江入

    浦難出来、沖ニ漂ひ候處、同廿三日弥大風高浪強く

読み 房州浮津沖迄乗り下り候所、戌亥風に相成り浮津湊へ入

    浦出来がたく、沖に漂い候処、同二十三日いよいよ大風高浪強く

説明 最初の「州」はこのままでは読むのは困難です。本章には何度も出て来ますので、慣れで読んで下さい。 「浮津沖」・・・本行下部に「浮津湊」も出て来ます。現在の「千葉県富津市」の事か、浮津という地名が別に有ったのかよく解りません。「富津市」は「安房」の国(房州)とは言えず、浦賀との位置関係も少し問題があります。 「迄」・・・この迄は「占」にシンニョウの、異体字の「迄」です。 「乗下り」も読むのは困難です。 「戌亥風」・・・北西の風。北西の風で浮津湊へ入港が困難という事は、房総半島の東岸か。宿題にしておきます。 「難出来」・・・出来難く。 廿三日の次は、「弥」・・・いよいよ。