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子供観の違いとアニメ

2009年09月13日 | マンガ・アニメの発信力の理由

8月28日付けの「ジャパナメリカ03」という記事に、pkさんから興味深いコメントをつけていただいた。
(ミラーブログhttp://cooljp.jugem.jp/の方のコメント欄です。)本質を突いたコメントだと思われ、コメント欄であまり人目に触れないのはもったいないので、ここでその文章を紹介しながら、私の応答も入れていきたい。

「日本のアニメと西欧のアニメは何が違うのか。たぶん、メインターゲットの「子供(未成年)」に対するスタンスの違いがかなり大きいからじゃないかな。


西欧では、子供は未完成な人間であって、教え導かなければいけない動物のようなモノ。洗礼を経て、教育で知性と理性を磨くことで、初めて一人前の「人間」に成ると考えているっぽい。」


子供観の違いというものは、かなり決定的だと私も思います。背後には、キリスト教とギリシア以来の哲学からくる人間観があるのでしょうね。幼児は、heやsheではなくてitで指すというものそういう人間観から来るのでしょう。理性をもってはじめて完全な人間であり、子どもはその意味で「人間になる途上の不完全な存在」という子供観ですね。


もうひとつ言うと、ヨーロッパ・ユーラシア的な文明の根底には、家畜・穀物文化がある。日本に、ヨーロッパ・ユーラシアに見られるような大掛かりな家畜文化を知らない。大陸の文明は、家畜を支配化において人間の手でコントロールすることを不可欠としていた。子どもも、理性と判断力をもった完全な大人になるまでは、大人に支配されコントロールされる対象と見なされる。そういう傾向が強いのだろうと思います。


大陸では、家畜・穀物文化が基盤をなしていたけれど、それに対して日本は魚介・穀物文化といわれる。魚介類は、あるものを捕るだけで、家畜のようにそれを制御して支配することはない。だから日本には、動物を去勢して飼いならすという文化も根付かなかったし、宦官も取り入れなかった。子どもも、家畜のように支配したり、完全に制御するという発想では見ない。
(この辺は『なぜ日本人は日本を愛せないのか―この不幸な国の行方』を参照してください。


「対して日本では、子供が動物(自然)に近いと考えてるのは同じだけど、むしろ成長する事で、子供が持って居る「何か」を失ってしまうと考えている。


知性と理性を持って、動物(自然)と一線を画し、神に近づく西欧と、自然にこそ神が存在すると感じ、それに近い子供に神性を見る日本と。


大人と子供、どちらが神と近いのか聞けば、間違いなく西欧は前者と、日本は後者だと答える思われ。そのせいか、日本人は大人になっても「子供のモノ」に抵抗が薄い。子供の感性を未成熟なモノとは感じてないからだろーね。西欧人は「アニメは子供のモノじゃないか」とよく言うけど。


これだけターゲット像に違いが在れば、供給する商品に差が在るのは当然。教育的、道徳的なコンテンツは大抵つまらなくなる。」


このあたりもずばり本質を突いていると思います。明治時代に日本を訪れた西洋人が、日本人が子どもを可愛がり、あるいは甘やかしそれでいて、子どもが堕落せずに大人になっていくのを不思議がる文章を書いていたのを思い出します。


そして、pkさんが指摘するような子供観の違いに関係するのでしょうが、日本には、子どもの自立的な文化がある。西洋では、マンガは親が子どもに買い与えるものだけど、日本では、子どもがある程度自由に買い求めることができる。だから子どもの反応がストレートに作品に反映していく。子どもとマンガ家の相互作用のなかで、作品が形成されていく。そんな違いも作品に大きく反映され、日本独自のマンガ文化が形成されていったのだと思います。


「もうひとつ面白いのは、「女の子向け」。JPOPのキーワードとも言える、「カワイイ」モノ(キティちゃんなど)がなぜ海外にあまり無いのか。少女マンガや、セーラームーンなどの少女アニメはJPOPが普及するまで、なぜ存在すら無かったのか。「子供」は居るけど、「女の子」は居ないみたいだ。この辺り、掘り返してみると、何か大きなモノが埋まってような気がする。(「萌え」が「カワイイ」の男性用の変化形だとするとさらに面白いかも)」


これも面白い指摘で参考になります。「女の子向け」のいくつものジャンルが確立していること自体が、世界に新鮮な驚きを与えたようですね。ヨーロッパのキリスト教的な伝統は、あきらかに文化のなかの女性的な要素を抑圧してきました。その無理やり抑圧したものが、歪んだ形で噴出すると、魔女狩りのようなものになるのでしょう。


国連で日本の女性差別が問題にされたりしているけど、表面を見ていただけでは分からない、文化の深い部分では、日本文化はキリスト教文化ほど女性的なものを抑圧していないような気がします。


いずれにせよ、pkさんのコメントで、私のなかでもいろいろなことがかなり整理されて見えてきたように思います。ありがとうございました。

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