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今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

マンガ・アニメの発信力の理由01

2010年08月12日 | マンガ・アニメの発信力の理由
今日から何回かに分けて「マンガ・アニメの発信力の理由」というテーマで連載する。その理由をまとめた以下の4項目は、すでにどこかで触れたり、紹介したりした論点を整理しなおしたものである。これもあくまで暫定的なものなので、今後、修正をするかも知れない。すでに触れたことをこうして整理しなおすのは、「日本文化のユニークさ」論と関連付けたいからである。

1)アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映する

2)宗教やイデオロギーによる制約がない自由な発想と表現

3)子ども文化と大人文化の明確な区別がなく、連続的ないし融合している

4)民族や言語、階級などによって分断されない巨大で知的な庶民を基盤にする

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まずは、1)「アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映するについて。

この点については、呉善花が『日本の曖昧力 (PHP新書)』で触れている。彼女は、日本のポップカルチャーが世界で受け入れられる理由を、縄文文化という歴史の根っこにさかのぼることで見事に解き明かしている。

今、静かな日本ブームが世界的にひろがり、「日本風に恋する」層が着実に拡大している。今世界に広がる、自然環境や伝統的な生活と現代文明との間の軋みに対して、日本風が示す伝統とモダンの調和が注目されるようになっている。

著者は、日本を体系的に理解するには三つの指標が必要だという。欧米化された日本、中国や韓国と似た農耕アジア的な日本、そして前農耕アジア的(縄文的、自然採集的)日本だ。日本文化と特色は、アジア的農耕社会である弥生時代以前の歴史層に根をもち、それが現在にも生きていることにあるのではないかと著者はいう。

日本の神道は、強烈なものを排除する傾向が強い。強烈な匂いや音、色、血などを嫌い、静かで清浄な雰囲気を好む。その内容はアニミズムであるが、強烈な刺激や生贄の血や騒然たる踊りや音響を好まないという点では、世界のアニミズムとは正反対である。著者はこうした日本のアニミズムの特色を「ソフトアニミズム」と呼ぶ。他のアジア地域では、アニミズムそのものが消えていったが、日本ではソフトな形に変化しながら、信仰とも非信仰ともいいがたい形をとりつつ、近世から現代へ、一般人の間から文化の中央部にいたるまで残っていったのでる。

著者は、かつての「たまごっち」というサイバー・ペットの世界的な流行を、日本的なソフトアニミズムが世界に受け入れられる普遍性をもっていることの現われだととらえる。劇画やアニメはさらにはっきりと、こどもたちの柔らかなアニミスティックな世界から立ちおこった芸術表現だという。

「いけばな、サイバー・ペット、劇画やアニメなどの世界的な人気は、そうした自然な生命(アニマ)への聖なる感性が、やはり人類すべてに内在し続けていることを物語るものといえるのではないだろうか。現代世界にあって、日本的なソフトアニミズムの感性が多くの人々に迎え入れられることはたしかだと思われる。」

以上を町田宗鳳の『人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)』によりながら、やや別の視点から論じよう。近代化とは、西欧文明の背景にある一神教コスモロジーを受け入れ、男性原理システムの構築することだともいえる。ところが日本文明だけは、近代化にいち早く成功しながら、完全には西欧化せず、その社会・文化システムの中に日本独特の古い層を濃厚に残しているかに見える。それは一神教的なコスモロジーに染まらない何かを強烈に残しているということであろう。他のアジア地域では、アニミズムそのものが消えていったが、日本ではソフトな形に変化しながら、それが残っていったのでる。

日本列島で一万年以上も続いた縄文文化は、その後の日本文化の深層としてしっかりと根をおろし、日本人のアニミズム的な宗教感情の基盤となっている。日本人の心に根付く「ソフトアニミズム」は、キリスト教的な人間中心主義とは違い、身近な自然や生物との一体感(愛)を基盤としている。日本にキリスト教が広まらなかったのは、日本人のアニミズム的な心情が聖書の人間中心主義と馴染まなかったからではないのか。

アニミズム的な多神教的コスモロジーは、一神教よりもはるかに他者や自然との共存が容易なコスモロジーである。もし、アニミズムや多神教的コスモロジーという言葉を使うことに抵抗があるなら、「宗教の縛りが少なく、多様化をよしとする価値観と文化」(伊藤洋一『日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化! (講談社プラスアルファ文庫)』)と言い換えてもよい。

世界がマンガ・アニメに引かれる背景には、現代文明の最先端を突き進みながら一神教的コスモロジーとは違う何かが息づいていることを感じるからではないか。日本のソフト製品に共通する「かわいい」、「子どもらしさ」、「天真爛漫さ」、「新鮮さ」などは、自然や自然な人間らしさにより近いアニミズム的な感覚とどこかでつながっているのではないか。そして、そのような感覚は今後ますます大切な意味をもつようになるのではないか。
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2 コメント

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カワイイについて、 (阿部明)
2010-09-08 23:47:46
クールジャパンの方にコメント欄が無かったのでこちらに、
私も以前から、なぜ西欧にはカワイイが無かったのか不思議に思っておりました、
ところが、最近ある海外フォーラムの萌えの項目でハッとする投稿を読みました、それは、
十戒にある、姦淫してはならない(情欲を持って見た時点で、これは姦淫である)という定義です、
 小児性愛好者という者を忌むのは当然として、この定義を当てはめるなら、子供を見て可愛いと思う時、そこに性愛の要素を1%も入れずに見ている、また、周りの人間にそのような誤解を招かないで可愛がれるかという事を考えると、子供を可愛いと思う感情は、抑圧せざるを得なくなるのではないでしょうか?


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ユニークな観方 (cooljapan)
2010-09-16 20:06:22
>子供を見て可愛いと思う時、そこに性愛の要素を1%も入れずに見ている、また、周りの人間にそのような誤解を招かないで可愛がれるかという事を考えると、子供を可愛いと思う感情は、抑圧せざるを得なくなるのではないでしょうか?


なるほど、この視点もとても参考になりました。こうしてブログを書いていると、こうしてコメントで、ユニークな観方を提供していただけるので、とてもありがたいです。
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