クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

日本文化のユニークさ17:現代人の中の縄文残滓

2010年09月20日 | 現代に生きる縄文
今回は、日本文化のユニークさのうち、

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

に関して、さらに考えてみたい。(『日本の文化力が世界を幸せにする』を続けて考えると予告したが、これまで語ってきたことと重複するので、やめる。)

今回、あらたに取り上げるのは『ケルトと日本 (角川選書)』の中の「現代のアニミズム-今、なぜケルトか」(上野景文)という論文である。

万葉から近現代まで、そして文学(志賀直哉、大江健三郎、中上健次など)、映画、絵画、音楽にいたるまで、日本文化のアニミズム的特質について、多くの専門家が語っている。しかし上野は、そうした芸術領域よりも、もっと日常的な場面でアニミズム的なものが観られるかどうかをチェックすることが大切だと考える。

そこで上野は、日本人や日本社会の思考、行動様式を以下の七点の特質にまとめる。

イ)自分の周囲との一体性の志向
ロ)理念、理論より実態を重視する姿勢
ハ)総論より各論に目が向いてしまう姿勢
ニ)「自然体的アプローチ」を重視する姿勢
ホ)理論で割り切れぬ「あいまいな(アンビギュアス)領域」の重視
ヘ)相対主義的アプローチへの志向(絶対主義的アプローチを好まず)
ト)モノにこだわり続ける姿勢

これらの特質は偶然に並存しているのではなく、それぞれの根っこに共通の土台として「アニミズムの残滓」た見て取れると、論者はいう。たとえば、ロ)やハ)についてはこうだ。自然の個々の事物に「カミ」ないし「生命」を感じた心性が、今日にまで引き継がれ、社会的行動のレベルで事柄や慣行のひとつひとつにきだわり、それらを「理念」や「論理」で切り捨てることが苦手である。それが実態や各論に向いてしまう姿勢につながる。

だた私は、これらずべてをアニミズムを根拠にして語るよりも、このブログで繰り返し示してきたような、四項目の「日本文化のユニークさ」から総合的に考えた方が無理がないと思う。異民族との激しい闘争がなかったから、宗教やイデオロギーによる絶対主義的思考で対抗する必要がなかった、というような観点も含めて考えた方が、より現実的だろう。

ともあれ、日本社会においては「西洋文明」と「土着文化」は同居し、むしろ土着文化の法が前者を大幅に薄めているのではないか。つまり、アニミズム的、縄文的心性の方が、現代日本文化のメジャープレイヤーなのではないか、と論者は主張する。

どちらがメジャープレイヤーかは、現代日本の文化のどこに基準をおいて見るかによって答えが違ってくるであろう。すくなくとも、制度や表層で自覚される価値観の深層で、自覚されにくい縄文的な心性が、かなり生き生きと活動しているのは確かだろう。その辺をはっきりと自覚することが、今後ますます重要になると思われる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする