クールジャパン★Cool Japan

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「刀を置き、花を手にしたサムライたち」(2)

2009年06月15日 | 世界に広がる日本食
◆「刀を置き、花を手にしたサムライたち:「21世紀ネオ・ジャパネスク」大解剖」(2)                                 (朝鮮日報 2008/05/25)

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◆食でなく文化を売る

「NOBU TOKYO」の蒔田浩巳マネージャーは、客がいない閑散とした午後に取材に応じてくれた。海外進出の初期は生魚に対する抵抗感をなくすため軽く火を通したり、サラダにしたりと、いろいろ工夫してみたそうだ。だが、「今は欧米でも"すし"と"刺し身"は低カロリーの健康食として市民権を得ました」と話す。

「NOBU」は日本人シェフの松久信幸氏(59)がハリウッドの名優ロバート・デ・ニーロとコラボして立ち上げたレストランのブランドだ。もともと二人はシェフと常連客という関係だった。松久氏がロサンゼルスで経営していたすし店にデ・ニーロが通い詰め、意気投合しレストラン・チェーンを作った。ミラノ支店には有名デザイナーのジョルジオ・アルマーニも参加し、話題を集めた。

西洋社会において「NOBU」は高級なイメージを持っている。米ニューヨークのマンハッタン支店はセレブが集まる店として有名だ。レオナルド・ディカプリオ、グウィネス・パルトロウ、ブルース・ウィリス、アン・ハサウェイ、サラ・ジェシカ・パーカーといった人気俳優たちもよくやって来る。世界各地に27店舗を展開する「NOBU」のチェーン店は、どこもその国の上流層をターゲットにしている。

いろいろな話の中でも、特に蒔田マネージャーの「はし文化論」は興味深かった。

「海外店ではフォークとナイフも用意していますが、常連客はたいてい、はしを使います。米国社会では、はしで日本料理を楽しむのが上流層のシンボルのようになりました。米国のエリートたちは、はしの使い方が若い日本女性よりも上手ですよ」

つまり、「NOBU」は料理そのものではなく、日本文化を売っているのだ。「NOBU」だけではない。「すしレストラン」は世界のどの国でも高級なレストランとして知られている。すしや刺し身のような日本食には、「ウェルビーイング」(健康と美容にいいライフスタイル)のイメージもある。

「食」は文化の先兵だ。マクドナルドに象徴される米国の食文化が低価格で実用的というイメージを持つなら、日本の食文化はブランド価値のピラミッド構造で上層部を占めるというイメージがしっかりと定着している。醤油メーカー「キッコーマン」の2006年統計によると、世界に日本食レストランは2万4000店あり、毎年急増しているという。ブラジル・サンパウロにはシュラスコ(ブラジルのバーベキュー)の店よりも「すしレストラン」のほうが多いというデータもある。クモの巣のように張り巡らされた飲食店ネットワークを通じ、日本は文化やライフスタイル、そして国のイメージを売っている。

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アメリカで爆発的なすしブームが起ったのは1977年あたりかららしい。この年、アメリカ上院にかけられた「栄養問題特別委員会」が、国民の食生活に関する勧告案を発表したが、その中の六つの栄養目標の中に「肉を減らしてもっと魚を食べよう」というのがあった。おりからの自然食ブームで「生魚は究極の自然食」という考え方もダブル効果となって、急にすしを食べる人が多くなったというのだ。(『お寿司、地球を廻る (光文社新書)』)

なお、「栄養問題特別委員会」のレポートは、アメリカでマクバガン・レポートとして知られるが、委員会のリーダーであるマクバガンや原案をまとめた科学者・ヘグスティッド博士は、久司道夫らと何度も話し合って、マクロビオティック(日本古来の食の知恵を生かした食養法)に沿った食事目標を作ったのである。このときからアメリカ社会の食生活は大きく変わったという。だからこのレポートそのものに日本食がブームになる充分な下地があったのである。
(『世界が認めた和食の知恵―マクロビオティック物語 (新潮新書)』や『久司道夫のマクロビオティック 入門編 (Kushi macro series)』を参照のこと。これらの本についての私の書評は→こちらを参照ください。

マクバガン・レポートの食事目標や自然食志向が、すしブームさらに日本食ブームに結びつき、さらに日本食=健康食というイメージを日本人の平均寿命の長さが証明した形となる。同時に、日本文化、日本ブランドのクールさが結びついて、日本食が高級でクールなライフスタイルと結びついていったのであろう。

「NOBU」は料理そのものではなく、日本文化を売っている、という背景には、アメリカにおける健康政策と、健康食としての日本食のブームとが重なり、それにさらに日本の伝統文化とアニメやマンガの文化が融合した形でのクール・ジャパン現象が重なっていった事情があるように見える。

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