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『ラーメンガール』と禅

2009年05月05日 | 世界に広がる日本食
◆『ラーメンガール [DVD]』(Amazon.com)

The ramen girlの予告編はこちら

The Ramen Girlの映画情報は「2007年/日本・アメリカ/カラー/102分/配給:ワーナー・ブラザース映画、監督:ロバート・アラン・アッカーマン、脚本:ベッカ・トポル、キャスティング:ビクトリア・トーマス、奈良橋陽子 出演:ブリタニー・マーフィ、西田敏行、石橋蓮司、パク・ソヒ、余貴美子」といったところ。 2009年1月17日(土)より、テアトル新宿にてロードショーされた。

前田耕一の超映画批評ではかなり辛口の厳しいレビューがなされていた。たとえば「『ラーメンガール』は、西田敏行のハリウッドデビュー作品だが、その使い方を完全に間違っているなど、作り手の認識不足があらゆる面で目立つ。」「西田演じるガンコ店主は、ヒロインが思わず訴えるとおり「虐待」の限りを尽くし、何の説得力もないイジメのような修行をおしつける。◇ それはたとえば、素手で和式の便器を洗わせてみたり、暴力を振るったりといったもろもろのこと。言葉の通じぬ外国人が突然弟子入りなどといってくれば、その本気を疑う気持ちもわからぬではないが、これはいくらなんでもやりすぎだ。最初は笑っていた観客も、みるみる引いていくのがわかる。本作はこういうやり方ではなく、もっと西田の「どこか憎めない」天性の才能を生かし、日米文化ギャップのコメディとして作るべきだった。」といった具合だ。

しかし、監督はこの映画を作るとき「日米文化ギャップのコメディ」を作る意図はなかったのだ。監督はいう、「ラーメンに注がれた愛情は、国境や国籍、文化の違いを超えて人の心の底に響く。まるで、自己中心的に他者を審判するような独善がまかり通る世界への反論にもなっているね」と。 監督は、どんぶりの中に「世界」をかいま見ているが、日本文化の真髄をも見ているようでもある。

日本文化は、剣道にしても柔道にしても茶道にしても華道にしても歌道にしても料理道にしても、すべてが修「道」となり、それぞれの道を究めることが人間の本来あるべき姿を求める修行となっている。日本人自身はあまり自覚していないが、これは禅の修業法からの影響が大きく、師から弟子へと伝授していく方法は、どのジャンルでも驚くほど共通している。

監督は、ラーメン道でガンコ店主のマエズミ(西田敏行)がアビー(ブリタニー・マーフィ)に極意を伝えるプロセスに、日本のあらゆる芸道に共通する方法を描きこんでいる。ガンコ店主は、無意識のうちに「何の説得力もないイジメのような修行」で禅の師が弟子を鍛えるような方法をとっている。店からつまみ出されても、じっとその前で待ち、チャンスをとらえて再び店にもぐりこむアビーの姿も、禅の本などにはよく出てくる修行者の姿だ。

その厳しい修行に耐えたアビーが作るラーメンには何かが足りない。マエズミは、年老いた自分の母のところへアビーを連れていって極意をつかまえさせようとする。その老婆が語る言葉は、「頭でっかち」になっているということ。アビーは考えすぎて「無心」になっていないということ。これも禅の極意そのものだ。

要するに、少し図式的すぎるくらいにラーメン道の世界に禅の修行論を当てはめている。現実には、ここまでラーメン「道」を徹底させる料理人はいないだろう。しかし欧米人の目から見ると、ラーメン作りに人生の修行のように打ち込む日本人は、驚異と賞賛の対象となる。そういう日本人を彼らが理解しようとするとき、禅仏教の影響ということがひとつの手助けとなるようだ。実際、そういう面は多分にある。

日本の食文化が世界に受け入れられるということは、こうした映画を通して日本文化の一面が受けいられていくことでもあるだろう。「日本人がこれほど料理作りや客人のもてなしにこころを込めるのは、こういう背景があるからなのか」と気づくきっかけにはなる。

2007年に完成し、一時はお蔵入りかとも言われたが、日本でも小規模ながら公開され世界の22カ国で公開決定ということだ。興味深く、また丁寧に作られた良作なので日本人にも多く見てもらいたい。

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