クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

クールジャパンの根っこは縄文?

2009年05月05日 | 現代に生きる縄文
◆『日本の曖昧力 (PHP新書)

拓殖大学での「日本の歴史と文化」という講座の講義内容をまとめたものであるという。講義を元にしているので、内容はわかりやすくコンパクトにまとまっており、呉善花の「日本文化論」へのよき入門書となっている。読んであらためて感じたことは、呉善花の「日本文化論」の視野の広さだ。これまで多くの人々が日本文化の性格や特徴を語ってきたが、彼女の「日本文化論」ほど、ながい歴史的なスパンの中でその特質を論じたものはないのではないかと思う。欧米との比較ではなく、中国や彼女の出身国である韓国と比較することで、日本文化の特色を説得力をもって語ることに成功している。

そして何よりも魅力なのは、日本のポップカルチャーが世界で受け入れられる理由を、縄文文化という歴史の根っこにさかのぼることで見事に解き明かしていることだ。日本のアニメやマンガの魅力をこのような歴史と文化の視点から主張した議論はこれまでなかったように思う。その意味でももっと注目されてよい著者の一人だと思う。

最終章の特別書き下ろし講義「世界的な課題としての『日本風』」を要約しながら本書の内容を紹介しよう。

今、静かな日本ブームが世界的にひろがり、「日本風に恋する」層が着実に拡大している。日本文化は19世紀末から20世紀初頭に、フランス後期印象派絵画など欧米文化に深く広い影響を与えた。それから100年後の現在、日本ブームはいっそう大きな、地球規模での革命を誘発しているのではないかと著者はいう。今世界に広がる、自然環境や伝統的な生活と現代文明との間の軋みに対して、日本風が示す伝統とモダンの調和が注目されるようになっていると思われる。

著者は、日本を体系的に理解するには三つの指標が必要だという。欧米化された日本、中国や韓国と似た農耕アジア的な日本、そして三つ目が、前農耕アジア的(縄文的、自然採集的)日本だ。日本文化と特色は、アジア的農耕社会である弥生時代以前の歴史層に根をもち、それが現在にも生きていることにあるのではないかと著者はいう。

日本の神道は、強烈なものを排除する傾向が強い。強烈な匂いや音、色、血などを嫌い、静かで清浄な雰囲気を好む。その内容はアニミズムであるが、強烈な刺激や生贄の血や騒然たる踊りや音響を好まないという点では、世界のアニミズムとは正反対である。著者はこうした日本のアニミズムの特色を「ソフトアニミズム」と呼ぶ。他のアジア地域では、アニミズムそのものが消えていったが、日本ではソフトな形に変化しながら、信仰とも非信仰ともいいがたい形をとりつつ、近世から現代へ、一般人の間から文化の中央部にいたるまで残っていったのでる。

著者は、かつての「たまごっち」というサイバー・ペットの世界的な流行を、日本的なソフトアニミズムが世界に受け入れられる普遍性をもっていることの現われだととらえる。劇画やアニメはさらにはっきりと、こどもたちの柔らかなアニミスティックな世界から立ちおこった芸術表現だという。

「いけばな、サイバー・ペット、劇画やアニメなどの世界的な人気は、そうした自然な生命(アニマ)への聖なる感性が、やはり人類すべてに内在し続けていることを物語るものといえるのではないだろうか。現代世界にあって、日本的なソフトアニミズムの感性が多くの人々に迎え入れられることはたしかだと思われる。」

彼女の主張、「日本のポップカルチャーの中のソフトアニミズム的な要素」については、このブログでも機会のあるごとに具体的な事例に即して検証していきたい。

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