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今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

マンガ・アニメの発信力と日本文化(5)庶民の力

2010年12月23日 | マンガ・アニメの発信力の理由
マンガ・アニメの発信力の理由、5項目のうち最後⑤番目の「民族や言語、階級などによって分断されない巨大で知的な庶民を基盤にする」が、日本文化のユニークさ四項目とどうかかわるかを見ていこう。この項目は、コンテンツそのものがもっている発信力というより、発信力が生まれてくる基盤といっていいかもしれない。むしろ、日本文化のユニークさのひとつと言えるかもしれない。今後検討が必要だ。

この特徴についても、これまで折に触れ記事にしてきた。以下がそれだ。

日本の庶民文化の力
欧米にない日本の大衆社会のユニークさ
日本のポップカルチャーの魅力(2)

なお、その具体例といった感じで書いた記事も挙げておこう。

世界一の「一般人」がいる日本
平凡な日本人のレベルの高さ
自分の仕事に誇りをもつ日本人
日本の長所10:仕事への責任感、熱心さ、誇り①

「民族や言語、階級などによって分断されない巨大で知的な庶民を」が存在する日本文化のユニークさは、その四項目のうち次に関係が深い。

(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。

異民族との闘争のない平和で安定した社会は、長期的な人間関係が生活の基盤となる。相互信頼に基づく長期的な人間関係の場を大切に育てることが、日本人のもっとも基本的な価値感となり、そういう信頼を前提とした庶民文化が江戸時代に花開いたのだ。

江戸の庶民文化が花開いたのは、武士が、権力、富、栄誉などを独占せず、それらが各階級にうまく配分されたからだ。江戸時代の庶民中心の安定した社会は世界に類をみない。歌舞伎も浄瑠璃も浮世絵も落語も、みな庶民が生み育てた庶民のための文化である。近代以前に、庶民中心の豊かな文化をもった社会が育まれていたから、植民地にもならず、西洋から学んで急速に近代化することができたのである。(中谷巌『日本の「復元力」―歴史を学ぶことは未来をつくること』)

以下は、私の見解だが、幕末から明治初期にかけてヨーロッパとくにフランスを中心としてジャポニズムと呼ばれる現象が巻き起り、日本の浮世絵などが印象派の絵画に大きな影響を与えた。これもまた、江戸時代の豊かな庶民文化が背景にあり、庶民の生活から生み出された浮世絵や工芸品だったからこそ、当時のヨーロッパ市民階級の共感を呼ぶものがあったのである。

現代の日本も、江戸時代の庶民文化のあり方を引き継いでいる。世界中のほとんどどの国にも大衆をがっちり支配する知的エリート階級が存在する。しかし日本ではそのような階級はすでに崩壊してしまったか、崩壊寸前だという。何とか自分たちの失地を回復したい日本の知的エリートは、日本について悲観論を繰りかえし、大衆を脅しつけることで支配したいのだ。あらゆる格差の中で知的エリートと大衆との間の格差ほど深刻で、根絶するのが難しい格差はない。ところが日本では、この知的能力格差が消滅寸前に近いという。政治家を一種の知的エリートと捉えれば、そのお粗末さは誰もが納得するだろう。 (増田悦佐『格差社会論はウソである』)

日本のマンガがここまで受け容れられた背景には、欧米のコミックとのマンガのストーリーづくりの違いにある。顕著な相違点は、「強くもなく、特別でもない主人公が、試練と努力を重ね、強く成長していく」というところだ。 欧米のコミックの主人公は、特別な才能を持っていたり、タフだったりと、いかにもヒーローらしい主人公が多い。無敵の主人公に憧れるタイプのストーリー展開になっている。

その点、日本のマンガの主人公は、落ちこぼれだったり、不良だったり、ごく普通の学生だったり、と最初からヒーローでない場合が多い。普通の人間として、マンガに登場する主人公に共感できる。

日本の社会は、階層性のきわめて少ない、巨大な中間層が中心をなし、大衆を形成している社会だ。そのような大衆が生み出す価値観が、マンガの中に自ずと反映されており、それが日本のマンガが受け入れられるひとつの背景になっているかも知れない。マンガは、そうした巨大な「中間層」に消費され、そのような普通の日本人の意識や希望や挫折や喜びや悲しみを反映している。日本人には意識しにくいが、マンガには、外部から見た日本の社会の魅力が、自ずと反映している。だからこそ、それはクールと感じられ、好感ももって受け入れられるのだろう。

現代の庶民文化は、マンガ・アニメを代表とするポップカルチャーを生み出し、それらが世界に影響を与え始めた。ヨーロッパでフランスを中心にマンガ・アニメブームが起こったことは、第二のジャポニズムになぞらえることができるかもしれない。

なお、日本文化のユニークさ四項目の他の項目との関連はうすいと思われるので、ここでは取り上げなかった。

《関連図書》
★『日本の「復元力」―歴史を学ぶことは未来をつくること
★『格差社会論はウソである
★『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
★『日本の曖昧力 (PHP新書)

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