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アトムと縄文(1)

2012年05月31日 | マンガ・アニメの発信力の理由
アン・アリスンの『菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力』については、かつて書評という形でとりあげたり、この本の中のセーラームーン論をとりあげたりした。

『菊とポケモン』、クール・ジャパンの本格的な研究書(1)
『菊とポケモン』、クール・ジャパンの本格的な研究書(2)
マンガ・アニメの発信力:セーラームーン(1)
マンガ・アニメの発信力:セーラームーン(2)

今回は、この本の中の鉄腕アトム論をヒントにしながら、日本人の縄文的な心性と「鉄腕アトム」との関係を考えてみたい。

現代日本人の中に縄文的な心性が流れ込んでいるといっても、では、私たちの中の何が縄文的なのかいまひとつピンと来ない。しかし、私たち日本人の多くが、楽しんで読んだり見たりした作品の中にそれが表れているとすれば、これかと納得しやすいのではないか。

『菊とポケモン』の中で著者は、縄文時代とか縄文文化とかいう言葉はいっさい使っていない。しかし、鉄腕アトムなどを例にしながら、テクノ-アニミズムという言葉を使って現代日本のポップカルチャーのある一面を特徴づけている。アニミズムとはもちろん、巨石からアリに至るまであらゆるものに精霊が宿っていると感じる心のことだ。それがテクノロジーとどう関係するのか。

鉄腕アトムでは、たとえば警察車両が空飛ぶ犬の頭だったり、ロボットの形もイルカ、カニ、アリ、木まで何でもありだ。マンガ・アニメに代表される日本のファンタジー世界では、あらゆるものが境界を越えて入り混じっているが、その無制限な融合を可能にする鍵が、テクノロジーの力なのだ。メカと命あるものの結合によってテクノ-アニミズムが生まれる。

アトムそのものがテクノ-アニミズムのみごとな具体例だといってもよい。アトムはメカであると同時に、「心」をもった命とも感じられる。正義や理想のために喜んだり、悩んだり、悲しんだりするアトムの「心」に、私たちは感情移入してストーリーに胸を躍らせる。

手塚治虫によってアトムというロボットに「命」が吹き込まれた(アニメイトされた)が、アトム誕生の背後にある道は、かなたの縄文的アニミズムにまで続いている。手塚の作品には、メタモルフォーゼ(変身)に対する憧れのようなものが強く表現されている。『メトロポリス (手塚治虫漫画全集 (44))』など初期の作品からそういう傾向が強く出ている。この作品のミッチーという中性的人間型ロボットは、スイッチを押すことで男にも女にもなれる。男女差どころか、人間と機械の差も曖昧で、こうした変身の要素は、最初から手塚作品の根幹をなしている。こうした要素の根っこを探っていくと、縄文的アニミズムに至りつくはずだ。

『「萌え」の起源』(1)
『「萌え」の起源』(2)

そして、アトムやドラえもんなどファンタジー世界の「生き生きとした」ロボットたちが、ホンダ ASIMOのような人型ロボット開発への情熱を生み出した重要な要因になっている。つまり、縄文的アニミズムは、アトムなどマンガ・アニメの主人公たちを介して、最先端ロボットへと連なっているのだ。

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2 コメント

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Unknown (pu)
2012-06-02 23:53:30
>ロボットの形もイルカ、カニ、アリ、木まで何でもありだ。

イルカとは違いますけど、鯨は日本で信仰の対象になっている地域があるみたいですね。
お米の7人の神様が宿っているは有名ですが、大きいものから小さいものまで日本の信仰は幅広い。
動物が神になる (cooljapan)
2012-06-08 22:40:53
puさんへ、

縄文時代の蛇信仰の名残りはしめ縄になって残っているし、シカもキツネも信仰の対象とされたなどは、やはりアニミズムにつながっているのでしょうね。

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