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自国を否定する理由:自由にいいとこ取りした日本01

2012年10月28日 | いいとこ取り日本
日本文化のユニークさ7項目を8項目に変更した。8項目は次の通り。

日本文化のユニークさを8項目に変更

これに従って、これまで書いてきたものを集約し、整理する作業を続ける。

今回は新たに付け加えた(5)「大陸から適度な距離で隔てられた島国であり、外国に侵略された経験のない日本は、大陸の進んだ文明のの負の面に直面せず、その良い面だけをひたすら崇拝し、吸収・消化することで、独自の文明を発達させることができた。」に関係する記事を集約して整理する。

http://blog.goo.ne.jp/cooljapan/e/25afcfda0dc94750d4eeecb11992f627
日本人がアメリカを憎まなかった三つ目の理由とは何か。歴史学者・会田雄次の『合理主義(講談社新書)』という本を読んでいて、これもその大きな理由ではないかと思った。

彼はこんなことを言っている。『ベルツの日記〈上〉(岩波文庫)エルウィン・ベルツ』などが指摘するように、明治初期の日本人は驚くべき文化の高さをもっていた。それは明治以前から日本にあったものだという。しかし、中国やインドにもそれぞれの文化の高さがあった。ではなぜ、その当時の中国やインドに科学精神が成立しないで、日本だけに発達したのか。これが会田雄次の問いだ。

彼は、日本の文化の高さに中国やインドになかった一つの特色があったという。それをベルツが経験したこんなエピソードに触れて論じている。ベルツが東京医学校で学生に「江戸時代はどうだったのだろう」と問いかけた。すると学生は、「ぼくたちは、過去をもっていません。過去はいっさい抹殺すべきものだと考えています。これからの日本には、前途があるだけなのです。」

これは、西欧の文明に接した日本の知識人にかなり共通した反応だったのだろう。当時の日本人が過去に多くを負っていながら、その過去を全面的に否定し去ろうしていたことを示すと会田はいう。これは日本人の根深い性癖であり、思考態度の根本に横たわる傾向であり、癖なのではないかというのだ。

この性癖には、良い結果を生む面と悪い結果を生む面の両面がある。良い面は、明治の文明開化の時代のように、日本の過去をすべて否定することによって、ヨーロッパの文明を瞬く間に吸収するエネルギーに変化させてしまうという面である。中国やインドは、自分の文明へのこだわりがあったから日本のように急速に科学文明を吸収することができなかった。

悪い面は、「外国の文化をむやみに尊敬し、自分のもっているものをやたらに卑下する態度」であり、これは現代の日本の知識人も多く見られる態度だ。戦後にもそれが強く出たという。

戦後の日本人も、戦中、戦前までに受け継いできた文化を全面的に否定し、アメリカの占領と同時に入ってきたアメリカの文化を何でも良いものとして受け入れる傾向が出た。これは日本人が過去に、中国やヨーロッパとの出会いで示した態度と共通する。

ここまでが会田氏の考察だが、以上は、日本人がアメリカを憎まなかったもう一つの理由にもなっているのではないか。アメリカは、戦時体制によって抑圧された日本人の「解放者」であったと同時に、これまでの日本を全否定し、新しい日本を生み出すためのモデルにもなったのだ。そのようなアメリカを憎むことはできない。モデルを好意的に受け入れてこそ、そこから必死に学び取ろうとする情熱も生まれる。

こうしてアメリカは、憎むべき対象というよりは、自分たちがそこを目指すべき新時代もモデルとして好意的に受け止められたのだ。

日本人が日本を愛せない理由(1)
日本人はなぜ日本を愛せないのか

先に歴史学者・会田雄次の『合理主義(講談社新書)』に触れて、日本人は自分たちの過去を全否定することで、逆に海外の進んだ文明を驚くべき速さで学び取るエネルギーにしてきた面があることを確認した。

ではなぜ日本人は、自らの過去を否定したり、自分たちを卑下したりする傾向が強いのか。『日本人はなぜ日本を愛せないのか』の中で著者の鈴木孝夫は「日本人はなぜ日本を愛せないか」というこの問いに結局どう答えているのか。著者の答えはこうだ。日本は、大陸から適度な距離で隔てられた島国であり、外国に侵略されたことがない。それゆえ外国の負の面に直面せず、その文化の良い面だけを取り入れて独自の文明を発達させることができた。これを著者は「部品交換型文明」と表現する。それは、外国の文明はなんでも優れているという自己暗示を生み出し、その暗示のため、逆に日本の本当の良さは見えなくなる。欧米の文明は何でも良いとし、欧米の価値観で自己のすべてを判断するならば、自分たちの歴史や文化が劣ったものと見えてきても不思議ではない。

日本人が日本を愛せない理由(2)
日本人の中に、なぜ日本の文化や社会を否定的に見る傾向の人が多いのか。日本人には、伝統的に自文化を卑下し、海の向こうの文化を崇める性癖がこびりついているようだ。

かつては中国、明治時代にはヨーロッパと、いずれも大陸の高度な文明に接した日本人は、その負の面を見る必要がなかった。

大陸では、文化の流入は武力的な侵略とともにもたらされることが圧倒的に多い。しかし日本は、大陸から海で適度に隔てられた島国であるため、血なまぐさい侵略や抗争を経ずに、進んだ文化・制度・技術などを取り入れればよかった。自分たちの文化・社会が破壊される危険にさらされることなく、高度な文明のよい部分だけを崇めたてまつって、理想化して取り入れればそれですんだのである。そして、相手を理想化して見るほど、逆に自分たちは劣ったものとして見えてくるし、そう見えた方が、学び吸収するときの効率もよいのだ。これが、日本人が日本を愛せない一つ目の理由と思われる。

かつて日本文化のユニークさ23:キリスト教をいちばん分からない国(2)でも触れたが、猟採集や小規模な農業によって成立する社会は、自然とのかかわりや部族の社会がそれなりに調和していた。それが異民族の侵入や戦争、帝国の成立といった事情の中で崩れ去ると、そこに何らかの秩序を取り戻すために、部族を超えた「普遍宗教」が必要となった。それが一神教であり、あるいは仏教や儒教であった。これらに共通するのは、それぞれの部族が信じていた神々を否定するということであった。

日本の場合は、その地理的な条件のため「普遍宗教」による社会と文化の本格的な一元支配が必要なかった。もちろん儒教や仏教は流入したが、土着の神道的なものと融合した。土着の神々は生き残ったのである。

侵略などによる抗争がからむと、敵に対抗するためにイデオロギーの面でも熾烈な抗争が起こるはずである。侵入してきた他文明を安易に理想化することなどできない。武力による戦いと同時に、イデオロギーの面でも自文化の優位性を主張しなければならない。相手の文化を理想化して自文化を卑下していたら、戦う意欲さえ失うだろう。

しかし日本の場合は、軍隊ではなく、高度文明の文物だけが海を渡ってきたために、海の向こうの文明をいくらでも理想化することができた。その分、自分たちの文化を劣ったものとみなしても何の危険性もなかった。むしろそう思い込んだ方が、高度文明を吸収するのには都合がよかったのだろう。もちろん、吸収するとき自分たちに都合の悪いものは、おのずと排除された。

《関連図書》
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
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1 コメント

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Unknown (pk)
2012-10-28 20:28:53
井沢元彦氏は著書「逆説の日本史シリーズ」などの中で、
和、怨霊、言霊、穢れ、などの信仰を、
少なくとも仏教以前から日本人が持ち続けて来たと言ってるね。
そして現代日本人が今もそれらに強く影響されながら、自覚していないとも。
一言で言えば神道的価値観なんだろうけど、それらはやっぱり縄文的価値観という事なんだろうか。
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