2015年4月15日 ルナロッサの怒り その2

2015年04月15日 | 風の旅人日乗

© Carlo Borlenghi


ニューヨークヨットクラブに限らず、
アメリカズカップの防衛側が
どんな振る舞いをする傾向があるか、
最近の例をふたつ見てみよう。

2007年の第32回アメリカズカップで、
当時の防衛者だったアリンギが、
防衛側である自分たちの意のままになる
傀儡(操り人形)チャレンジャーを
挑戦者の中に紛れ込ませようとした。

アリンギは、
自らがコントロールできるヨットクラブを
スペインで探し出し、
そのヨットクラブから
自分たちが自作自演する挑戦チームを
送り出すことを企んだのだ。

そのときは、
その防衛者の企みに気が付いた
幾つかの挑戦チームが、
総力を挙げてその企てを阻止することに成功し、
防衛側のその思惑は
実現直前で潰されることになった。



防衛者に踊らされたヨットクラブは、
哀れな結末をたどった。


ふたつめの例は、
お隣の国で起きたこと。

前回2013年の
第34回アメリカズカップに参加を表明し、
AC45のワールドサーキットにも
鳴り物入りで参加しながら



突如表舞台から姿を消し、
今もその後の消息不明の
隣国からの挑戦者に起きたことについて、
そのチームの元幹部から聞いた話をそのまま、
以下に伝えよう。

そのチームを率いたのは
母国でのセーリング普及を願う
個人資産家だった。

彼は自己資金の不足を承知の上で
チームを船出させたが、
それには次のような、
防衛側(オラクル)との口約束があったからだった。
そしてそれは、
彼の方から依願したのではなく
防衛側からの申し出だったという。

その申し出とは、
アメリカズカップ挑戦者シリーズで
そのチームが使うAC72クラス艇の
開発と建造にかかる費用を
すべて防衛側が支払う。

さらに、
カップ本番に先立ってAC45クラスで行われる
アメリカズカップワールドシリーズへの
参戦にかかる費用についても、
一部を防衛側が負担する。

そして、その見返りとして
防衛側がそのチーム・オーナーに求めた条件は、
カップ本番までに防衛側がプロトコルや
レースルールの変更を提案する際に、
防衛側の立場にくみすること、
であったという。

しかしその後、
第34回アメリカズカップ運営における
防衛側の強い立場が確立し、
この件でそのチーム存在が必要でなくなった時、
防衛側は
そのチームにAC72を提供するという話を反故にし、
その他のすべての資金提供もストップした。

元々がスポーツの世界であるまじき、
舞台裏でのアンフェアな口約束だったため、
そのチームのボスは防衛者のその約束違反を
どこにも訴えることができず、
結果として、そのチームは
アメリカズカップの表舞台から唐突に姿を消し、
さらに悲劇的なことに、
そのチーム・ボスは数億単位の負債を抱えたまま、
破産した。



ここ最近のアメリカズカップの
いくつかの挑戦チームの言動を見ていると、
アメリカズカップの未来を
自分たちの思いのままに変えていこうとする
ラリー・エリソンとラッセル・クーツに、
強い不満を持っていることが垣間見えてくる。

この二人の、
ルールや倫理に反する
アンフェアな動きの尻尾を掴めば、
直ちにその足元を掬おうと
狙っているかのように見える。