Sさんへの手紙

2007年08月10日 | 風の旅人日乗


拝啓
S様、

K君と電話が繋がり、やっと話ができました。

横浜からハワイまでの、25日間もの長い航海のこと、彼もいろいろと話したいことあるようで、ぼくとしても是非聞いてあげたいです。
辛かったんだろうな。

長い航海(=陸上の場合に例えれば、ゴールがなかなか見えない長いキャンペーン)の間、自身のモチベーションを、どのように努力して、どのように個人のプライドに結びつけながら、高い位置で維持するか・・・。
このことは、その人間の航海者としての資質(=陸上の場合は、一緒に長く一つの目標に向かって組織の一員として行動できるか否か)に直結していることなので、私自身がその能力を備えているかも含めて、とても興味深いテーマなんですよね。

また一緒に海でビール飲みましょう、との由。
ここのところ『海でビール』は、ぼくにとっては、逗子のプールで自分にきついノルマを課した後の最大の楽しみになってますよー。

この地域に住んでいる者としては、渋滞でイラつく原因になる夏場の車は封印して、正しい日本の夏の、いっそ嬉しいくらい激しい太陽の直射光線とセミ時雨の中を、エイヤエイヤの徒歩で移動し、海辺のスーパーに立ち寄って冷えた奴を仕入れ、一色か森戸の浜の隅っこで、グイーッとやってます。
またいつでも行きましょう。

Sさんの言葉に触発されて以来、今年はおかげさまで日本の夏を身体と心で感じながら、深く楽しませてもらっています。
セミの声、台風、土用波、くらげ、原爆、戦争の終わり、お盆、しょうろう流し、吉田拓郎の『ねえさん先生、もういなあい』の夏休み・・・。
改めて自分の心に聞いてみると、日本人の心の中の夏には、いろんなものが絡み合っているんですね。

それと、改めて気が付いたことは、日本の夏は、世界のどの地域に比べても圧倒的に短い!
雑誌などに原稿を書いたりするときは、
『北欧の短い夏を思いっ切り楽しもうとしているスウェーデン人』
なんてことを平気で書いちゃって来たけど、それは愚かな書き手が書くことであったと気が付いた。
日本の本当の夏って、北欧なんかよりも断然短い。
北欧の夏の盛りの夏至時分は梅雨の真っ最中だし、梅雨が明けたと思ったら、もう日は短くなり始めてるし、くらげはやってくるし。セミ時雨の中に、紅葉を始めている桜の葉さえチラホラ見える。
『俺はここにいるぞー。早く恋をしようぜ。命短し恋せよ乙女、だぞー。早くしないと死んじゃうぞー』と狂ったように鳴いている雄セミの気持ちが、よく分かる。

ほんと、焦ります。

昨日は、浅草は吾妻橋の『藪』に行き、生前一度でもお話をしてみたかった杉浦日向子さんを偲んで、鳥ワサで冷たいビールと菊正宗をやっつけ、盛りそばを一枚たぐってきました。
灼熱のアスファルトで舗装された吾妻橋(写真)の下を流れる隅田川の水面に、江戸前の粋な涼やかさを感じました。

相模湾の海でビール、早く飲みましょ。