久しぶりに「バカの壁」という本を思い出した。解剖学者の養老猛司さんが2003年に出された本で当時爆発的に売れたし、私も読んだ。 学者らしく多少理解しえないところもあったが、興味深く読んだことを思い出す。要するに「人間同士が理解しあうというのは根本的には 不可能である。理解できない相手を、人は互いにバカだと思う」というのが本旨である。
いま世界で一手に話題をさらっている人はアメリカの新大統領になったトランプさんだろう。世界のトップリーダーとして君臨してきた 自由な国の統領が、自ら向かい風を吹かせる台風の目のような存在になっていて、アメリカはいったいどこに行こうとしているのか、 注目している国や人は多いと思う。
もともと選挙期間中から彼は毎日のようにツイッターで攻撃的な発言を発信し、驚がく的な政策を打ち出していた。メキシコとの国境に壁を作り、 その支払いはメキシコに払わせる。もし拒否するなら輸入品に高い関税をかける、や、反トランプに対してはおよそ不謹慎で抑圧的な態度を 示していて、まるで敵を増殖するかのような傲慢とも思える態度に見えた。 ほとんどの人は当選しないだろうとさえ思っていたようだった。
だが就任するや否や問題になりそうな事案を次々と大統領令にサインしたことで、同盟国の指導者さえあわてさせたように思えた。 大統領令というのはどれほどの効力を持っているのか、知らなかったので一つ勉強にはなったが、実際に実行に移そうとした政策には 一見非常識とも思えるものもあった。移民の人々で成り立ったアメリカが今や移民の入国拒否し、ことにイスラム圏の7か国を指定した。
彼は今、オバマ前大統領の政策をことごとく裏返しの取り組みをしているようだ。わが宰相も近々彼と会談するそうだが、 高いハードルがあるやに見える。安倍さんもアメリカ・ファーストを念頭に置いているし、歴史を踏まえた発想をしない人なので、共通していて 案外馬が合うかもしれない。
それにしても排外主義と自国を回転軸として世界を服従させようとする「アメリカ・ファースト」は本当に成立するのか、やがてアメリカ国民も 疲れ果て、こんなトップはもう結構と排他的行動に出るのではないかとさえ危惧する。
人間関係は言うに及ばず、国との関係においてもそうだと思うが、自ら心に壁を作るようだと、よい関係などできないことは子供でも知っている。 もし養老先生の言う所詮人間は本質的に理解しあえないとすれば、ただ相手をさげすんだり、不利になると声高になったり、威嚇する態度などではなく 自らの心を冷静に謙虚に相手の懐に入って、なんとか理解し、一緒に考える姿勢が必要だ。
トランプ氏の高い目線は当分続くだろうが、竦んだり、追従や忍従せず、堂々と渡り合うスケールの大きな姿勢で臨むことが重要では、と 素人は考えるのである。
やさしいタイガー
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