
先日の出石有子山登山だが、予定していたものではなかったので登山準備はしていなかった。いきなり登ることになったのである。
いちおうスニーカーは履いていたので良かった。革靴ではとても上がれません。
有子山に上がるには二つのルートがあるのですが、わたしは5年ほど前に家内と登った、とても厳しいコースしか知りません。その時、わたしも家内も何度か滑って転びました。ロープを掴んでいたので、なんとか大きなケガはしなくてすみましたが。そこを4年生のkohと71歳のジイが行ったわけです。冒険といえば冒険ではあります。よくも無事に下山できたものと。
ということで、腰にぶら下げるケモノよけの鈴も用意していませんでした。
そこでkohに話したことでした。
「他に誰も行かないから、山の中では二人だけやで。もしかしたらクマが出てくるかもしれん。鈴はないしな。だからずっと声を出しながら行こうな。予め人間がやってきたことを知らせながら行くんや。いきなり出合ったら、クマは襲ってくるからな」というようなことを。
だからずっとしゃべりながらでした。
しかし急坂の危険なところが多く、集中して沈黙する場面もありましたが、気がつけば二人でしゃべる、というようなことを続けながら。
下りも同じでした。
けど下りは登り以上に危険です。石車に乗るなどして転倒する危険があります。そして骨折というようなことが。そうなるとわたし一人では背負って降りるというようなことは出来ません。ケータイで救急隊を呼ぶというようなことになってしまいます。
それでもやはり二人は、慎重さの中で喋りながら降りて来ました。山の話。歴史の話。天狗の話。牛若丸、弁慶の話などなど。
そして降りて来た時、kohが言いました。
「話しながらやったから、思ったより早く降りて来た感じがする」と。
もし黙ったまま緊張の中で降りてきていたら、ずっと長い距離に感じたのでしょうね。
冗談のように「あそこへ登ってみるか?」と言ったジイの一言に、即座に「登る」と言ったkoh。そんな軽いきっかけで71歳のジイと9歳のkohが一大イベントを行うことになってしまったのでした。
とにかくkohにケガをさせてはいけないの一念で、慎重に慎重にを心がけての登山でした。kohもジイの言うことをよく聞いて、決してふざけるようなことなく、いい登山ができました。これはkohにとってもいい体験だったでしょうが、ジイにとっても一生忘れることのないイベントでした。