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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ファイザー:新薬研究開発のベンチャー企業設立

2008年07月03日 | 創薬
 米製薬大手ファイザーの日本法人は3日、閉鎖を決めた中央研究所(愛知県武豊町)の従業員が独立し、新薬の研究開発を行うベンチャー企業「ラクオリア創薬」を1日に設立したと発表した。製薬会社の研究開発組織が独立して新会社をスタートさせるのは国内初という。ベンチャーキャピタルやファイザーなどが計111億円を出資。ファイザーから15の新薬候補物質の知的財産権を譲り受け、毎年二つの新薬候補物質の創出を目指す。同研究所は会社の業績低迷で昨年1月に閉鎖を決めていた。

[毎日新聞 2008年07月03日]
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080704k0000m020099000c.html



ラクオリア創薬株式会社
ファイザー株式会社


旧ファイザー中央研究所、ファイザー社より独立
ラクオリア創薬株式会社としてスタート

米国ファイザー社の研究開発グループの一翼を担ってきた愛知県の中央研究所はこのたび、日欧の投資会社の出資とファイザー社の支援により、独立した新たな研究開発型ベンチャー企業であるラクオリア創薬株式会社(RaQualia Pharma Inc.)として7月1日に事業を開始いたしましたのでご報告いたします。

新会社は、自ら新薬の化合物を開発する創薬ベンチャー企業であり、世界において最も革新的な新薬を生み出すグローバル研究開発型ライフサイエンス企業を目指します。ラクオリア創薬株式会社の従業員は70人です。本社は、旧ファイザー(株)中央研究所が所在した愛知県知多郡武豊町に置き、既存の研究施設や最先端研究機器を活用いたします。

新会社は、当初3年間は、探索研究と前臨床開発研究を中心にプロジェクトを推進し、4~5年目にはPOC(Proof Of Concept:臨床効果の検証)までの臨床試験を実施できる組織へと事業の拡大を図ります。新会社は、今後も市場成長が見込まれる「疼痛」と「消化管疾患」の2つの治療領域に関する革新的な創薬研究をビジネスの中核とするとともに、米国ファイザー社との契約に基づいて取得した知的財産を駆使して、製薬企業向けのライセンス供与の展開を積極的に行っていきます。

新会社はまず、疼痛疾患と消化管疾患の領域において6つの創薬研究プログラムを推進し、2008年度から継続して臨床開発候補品を創出し、開発ステージに進めていく計画です。開発ステージのパイプラインには、前臨床から臨床第2相試験までの有望な6つのグローバル開発化合物、及び、海外で既に上市あるいは申請済の3剤の国内開発販売権を持ち、豊富な導出機会があります。また、世界中の製薬企業、大学、公的研究機関やベンチャー企業と積極的に提携・共同研究を進めていきます。このようにオープンな形でのネットワークとバイオテクノロジーのイノベーションを推し進め、患者さんにとって有益な新薬候補と薬物標的の発見に寄与していきます。

会社概要
社名:ラクオリア創薬株式会社(RaQualia Pharma Inc.)
代表取締役社長&CEO:長久厚(ながひさ・あつし)
本社:愛知県知多郡武豊町字5号地2番地
従業員:70名(2008年7月1日現在)
事業内容:医薬品の研究開発、医薬品及び臨床開発候補品に関わる基盤技術の知的財産の販売及び使用許諾
資本金:1000万円(2008年7月1日現在)
主な出資予定者:
(1)エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社
(2)コラーキャピタル(Coller Capital)(英国)
(3)ファイザー株式会社

ビジョン:私たちは、創薬を通じて健康と幸せに貢献し、人々の心に陽をもたらします
経営理念:私たちは「Life(生命、生きるもの、人生)」の尊さを最優先に考え、サイエンスとテクノロジーを追求することで、社会に貢献していく集団です
文化:私たち一人ひとりは「Life(生涯)」を通じて、常に新たな価値を創造していく「Innovator=革新者」であり続けます
コーポレートスローガン:innovators for life

ラクオリア創薬の特徴と知的財産
(1)資産
多くのベンチャー企業が、初期の研究段階にあるごく限られた数の化合物、あるいは単一のターゲットや適応疾患を基盤としてスタートします。ラクオリアは、疼痛疾患と消化管疾患の領域において、継続的な生産性をもたらす複数の化合物と多様なターゲットを有しており、それらの多くはブロックバスターとなりえる製品を生み出す可能性を持っています。

またラクオリアは、旧ファイザー中央研究所時代に自ら開発した複数のプログラム「新薬の分子ターゲット(分子標的)」を保有しており、事業開始日から効率的な研究を行うことができます。

(2)IOCN(Integrated, Open Collaboration Network)ビジネスモデル
IOCNは、ラクオリアの根幹となるビジネスモデルで、社内外コラボレーションを最大限活用することにより、創薬イノベーションを促進する新しいプロセス・モデルといえます。IOCNは、大学やバイオベンチャー企業、公的研究機関、製薬会社と連携し、お互いに長期的な信頼関係に基づいてオープンな情報交換やノウハウの開示、相互学習に近い共同研究、柔軟なコラボレーションを促進させるネットワークです。

新薬開発におけるコラボレーションや提携は、1対1の限られたコラボレーションや提携であったり、自社の知的財産を守ろうとする意識が強く働くために情報の共有が阻害されたりして、多くの英知で優れた価値を生みだそうとする良い関係の構築には至っていないのが現状です。IOCNビジネスモデルでは、このモデルを実現することで1社では実現することが難しい革新的な薬の開発や社会的価値の創造、そしてラクオリアの最終目標である人々の生活を豊かにすることができるものと確信しています。

多くの企業は、新規にネットワークを作り上げなければなりません。ラクオリアは、過去数十年のファイザーで構築した多彩な国内外のネットワークを受け継いでおり、これはラクオリアの貴重な財産となっています。

(3)フラットな組織
組織は、極めて簡潔でマネジメントは一階層だけで構成されています。これは、社員間のオープンなコミュニケーションの促進、社風の強化、迅速な意思決定と行動、効率的な情報伝達、透明性と責任の明確化、これらすべてが競争優位につながっていきます。

(4)プロジェクト中心の組織
ラクオリアのオペレーションはプロジェクト単位で動くため、プロジェクト・リーダーが各部門長との相談の上、あらゆる専門の研究者や間接部門のスタッフを活用することができます。リーダーは、研究開発、臨床開発、あるいはビジネス開発の各ゴールを達成するために、集まった社員をその責任においてリードします。リーダーにはプロジェクトを遂行するための権限と責任が付与されていますが、メンバー間の上司という立場ではなく、あくまでもプロジェクトを成功に導く推進役です。

ラクオリアは、それぞれの仲間、ビジネスパートナーやステークホールダーの方々と「信頼」で結びついた関係を重視した企業活動を行います。

(5)トップクラスのプロフェッショナルな研究者集団
研究者たちは、多くの開発候補化合物を作り出してきた経験豊富な元ファイザー中央研究所の社員で、また、欧米研究所での研究経験、国内外学会発表経験や多くの論文発表など、優れた能力を有しています。

多くの新規企業は、企業立ち上げの際に優秀な人材の確保が困難であり、また生産性に影響する社風や文化の構築にその多くの時間と労力を割かなければなりません。ラクオリアでは、当初からトップクラスの人材が確保されており、その多くはファイザー以外の製薬会社での経験を持った研究者です。大手製薬企業のシステム、ノウハウ、さらには、ベンチャー企業のもつ柔軟性やスピードや情熱を、設立したその日から一体化できる集団です。

(6)最先端テクノロジーと充実した研究支援体制
ラクオリアは、設立時点から最先端の研究機器やテクノロジーを保有しており、ダイナミックな研究ができる環境です。

多くの新規企業は、その資金力の制約から研究のための十分な施設や研究設備の保有が困難ですが、ラクオリアには再購入価格で約43億円の最先端の機器類が使いやすい研究施設の中に整っています。

新規研究開発型企業の多くが保有することが困難なIT、人事、財務のインフラ機能に既に経験豊富な優秀な人材が配置されており、スタート時点からサイエンスに集中した効率的な研究活動が行える環境にあります。

[日刊工業新聞 2008年07月03日]
http://www.nikkan.co.jp/newrls/rls0704a-03.html

ファイザー株式会社 プレスリリース
 旧ファイザー中央研究所、ファイザー社より独立
 ラクオリア創薬株式会社としてスタート
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_07_03.html



突然の閉鎖のニュースはとてもショックでした。
新会社スタート、頑張って下さい! エールを送ります。

乳牛への成長ホルモン投与で温室効果ガス削減?=ニューヨーク、コーネル大学

2008年07月03日 | 生命&倫理
【7月3日 AFP】100万頭の乳牛に乳量を増加させる成長ホルモンを投与すると、自動車40万台分に相当する温室効果ガス削減が可能とする米研究チームの研究が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)6月30日号に発表された。

 ニューヨーク(New York)のコーネル大学(Cornell University)のジュディス・キャッパー(Judith Capper)氏らの研究チームは、乳牛への遺伝子組み替えウシ成長ホルモン(rbST)の投与が温暖化防止につながると主張している。

 キャッパー氏は、大規模な牛乳生産には、広大な土地に加え、水や飼料も大量に必要であることを指摘。rbSTを使用すると生産者は需要を満たす量の牛乳を生産しながら、温室効果ガスを削減することができるとしている。

 米国では約15年前からrBSTが使われており、「組み換えウシソマトトロピン(recombinant bovine somatotropin、rBST)」、「ウシ遺伝子組み換え型成長ホルモン」(recombinant bovine growth hormone、rBGH)」、「人工成長ホルモン」などとも呼ばれる。米化学大手モンサント(Monsanto)は「ポジラック(Posilac)」の商品名で販売している。

 しかし、rbSTの使用に反対する意見も根強い。欧州連合(EU)は乳牛の健康への懸念からrbSTの使用を禁止しているし、rbSTは伝統的な小規模農家が生産する農産物価格を下げる大手企業の権益の象徴とみなされることもある。

  研究チームでは、100万頭の乳牛にrbST を投与すると、15万7000頭少ない乳牛で同じ量の牛乳が生産でき、乳牛の飼料もトウモロコシが49万1000トン、大豆が15万8000トン、飼料全体で最大230万トンの削減できるとしている。また、酪農に使う土地を最大で21万9000ヘクタール減らすことができ、土壌流出を年間で最大230万トン減らせるとしている。

 さらに研究チームは「酪農業界全体で乳牛にrbSTを投与すれば酪農の持続可能性が改善され、酸性化や藻の発生などの水質汚染の低減、地球温暖化対策への貢献にもつながるだろう」と期待を示している。

 国連(UN)の食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)が2006年にまとめた報告書によると、人間活動に起因するメタンガス(CO2以上に地球温暖化を促進する)の37%がウシの飼育によって排出されたもので、その大半が家畜の消化に伴って発生したものだという。また、人間活動に起因するアンモニア(酸性雨の原因となる)については64%がウシの飼育によって発生しているという。

 FAOのこの報告書は、ウシの飼育に起因するCO2は、人間活動に起因するCO2全体の9%を占め、世界全体では自動車が排出する量を上回るだけでなく、SO2(二酸化硫黄)などのCO2よりも有害な温室効果ガスも排出しているとしている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年07月03日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2412951/3096561


いやなニュース。
ヒトは、たとえば狂牛病から、なんにも学習していないんですね。

小笠原移送のアホウドリ北へ、人工衛星で確認=山階鳥類研究所

2008年07月03日 | 生きもの色々
 伊豆諸島・鳥島からヘリコプターで移送し小笠原諸島・聟島で人工飼育後、5月に巣立ちしたアホウドリのひなについて山階鳥類研究所は3日、人工衛星による追跡で、野生のひなと同様に北を目指して飛んでいることが分かったと発表した。

 速度は成鳥並みの時速20-30キロとみられ、聟島から約3900キロ離れたカムチャツカ半島東で確認されたひなもいた。鳥島を巣立った野生のひなと行動や進路はほぼ同じで、同研究所は「まさに本能だろう。移送は、巣立ち後の進路を狂わせるかと心配したが、影響はなく安心した」としている。

 ひなの追跡調査は初めて。移送したうちの5羽と野生の5羽に発信機を付け、発信機の故障などとみられる2羽を除き、受信が続いている。

 同研究所の分析では、巣立ったひなの多くは1週間ほど海面を漂った後に本格的な飛行を開始。当初は東に向かったり、西に向きを変えたりしていたが、6月4日ごろに進路を北に変えた。

 その後も迷走を続けながら北に向かい、成鳥なら10日ほどで到達するアリューシャン列島まで、最も早いひなで約1カ月かかった。(共同通信)

[京都新聞 2008年07月03日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008070300121&genre=G1&area=Z10

東邦大学メディアネットセンター バーチャルラボラトリー
アホウドリ復活への軌跡
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/ahoudori/index.html



 うれしいニュース。
 以前テレビで観たアホウドリの雄姿、2mをゆうに超える翼でほとんど羽ばたかず空を滑るように飛翔する姿に感動しました。 長旅、気をつけて。元気に還って来て、新しい棲家でもたくさん繁殖してほしいと思います。

ダチョウの卵で抗体、ウイルス撃破、ベンチャー設立=京都府立大学

2008年07月03日 | 創薬
 京都府立大生命環境科学研究科の塚本康浩教授が2日までに、ダチョウの卵黄からウイルス感染を防ぐ抗体を作るベンチャー企業「オーストリッチファーマ」(京都府精華町・けいはんなプラザ)を設立した。大流行の発生が懸念されている鳥インフルエンザウイルスの感染を防御するマスクの販売を年内に始めるとともに、感染症やがんなどのワクチンや治療薬開発も進める。

 抗体は、ウイルスなどの外敵(抗原)から守るために体内で作られ、抗原と結合して不活性化する。

 塚本教授は、人に極めて近い抗体を雌のダチョウで作り、卵黄から精製する世界初の技術を開発した。従来のマウスやウサギと比べ、質のよい抗体を安価に大量生産できる。この技術で、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の感染力を奪う抗体を作製した。マスクに抗体を染み込ませた実験で、ウイルス感染を完全に防ぐことができた。

 ファーマは、兵庫県内の契約牧場でダチョウを飼育しており、近く抗体の本格生産を始める。病院で使用するマスクや空調フィルターなどを生産、秋をめどに販売を開始する。さらに、他の感染症やがんなどの抗体の開発、検査キットや治療薬への応用も進める。

 塚本教授は「インフルエンザの感染を抑えたデータは世界で初めて。1カ月ほどで抗体開発はできるので、新型ウイルスにも対応できる」と話している。

[京都新聞 2008年07月03日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008070300033&genre=G1&area=K00