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バチカンで逢いましょう(2012年ドイツ映画)

2014年06月01日 | 映画の感想・批評
 「バグダッド・カフェ」のミステリアスなジャスミン役で観客を虜にしたマリアンネ・ゼーゲブレヒトが、ローマとバチカンを舞台に元気でチャーミングなおばあちゃんマルガレーテとなって、スクリーンに帰って来た。原案を書いたクラウディア・カサグランデのおばあさんの実話だそうだ。
 若い頃共にカナダに移住した夫が亡くなり、娘一家と暮らすことになったマルガレーテ。娘は母親を老人ホームに入れる計画を立てていた。しかし彼女の願いはたったひとつ、バチカンに行き、ずっと隠してきた秘密を法王の前で懺悔することだった。娘たちとの同居も老人ホームへの入居も拒否し、マルガレーテはバチカンを目指して孫娘が暮らすローマへと旅立つ。
 昨年史上初アメリカ大陸出身の法王が誕生したばかりだが、この映画が製作された2012年のローマ法王は、ドイツ出身のベネディクト16世。マルガレーテも法王もバイエルンの出身ということで、彼女は尊敬と親しみをこめて「ベネディクト」と呼び、彼にこそ懺悔を聴いてほしかったのだろう。
 「バグダッド・カフェ」のジャスミンがシャイで静かなムードで周りの人々を癒していってのとは対照的に、マルガレーテはバイタリティあふれる行動力で、ローマで出会った人たちを幸せにしていく。ジャンカルロ・ジャンニーニ扮する老詐欺師ロレンツォとの出会いも彼女のローマでの滞在に刺激を与えてくれた。目が見えないと偽った彼に仕返ししようとして、誤って法王にスパイススプレーを振りかけたせいで捕まった彼女を助けようと、警官の前で繰り広げる大芝居、女を口説かせたら右に出るものはいないイタリア男の面目躍如といったシーンでは観客も爆笑。
 前向きに生きるマルガレーテには懺悔なんか似合わない、自分の問題は自分で解決できる、ドイツ映画だけれどイタリアの陽気さが溢れる楽しい映画だ。(久)

原題:OMAMAMIA
監督:トミー・ヴィガント
脚本:ジェーン・エインスコー
撮影:ホリー・フィンク
出演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト、ジャンカルロ・ジャンニーニ、アネット・フィラー、ミリアム・シュタイン、ラズ・デガン


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