シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」(2018年 アメリカ)

2018年08月29日 | 映画の感想・批評


 前作公開から10年、お話しの中身はおよそ数年後を設定している。
舞台はエーゲ海に浮かぶギリシャのカロカイリ島。どこまでも青い海と青い空!

母ドナ(メリル・ストリープ)の夢であったホテルを遂に完成させた娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)がオープニングパーティの準備に追われている。
夫のスカイはホテルビジネスを短期間学びに行ったニューヨークでの暮らしと将来に魅力を感じ、ソフィは母の夢にこだわり、二人は気持ちのすれ違いを感じている。
(ここの二人の演出がなかなかうまい!映画ならではのシーンの切り替えが、舞台版との違いか)

嵐の到来で飾り付けたパーティはめちゃくちゃに。
それでも招待客を迎える中で、ソフィは新しい命が宿ったことを知り、そこから母のドナの若き日の暮らしに思いをはせ・・・・・・


前作で、ドナが3人の男性と出会い、その誰かがソフィの父らしい・・・・・

「まあ、なんと破廉恥な!」
と言えなくもないお話しだった。
劇団四季の舞台版でお馴染みだったが、うちの地元の中学校では修学旅行で鑑賞したらしい。そして大好評だったと。
前作の映画を観た時に「何という話を中学生に見せたのよ!」と、半ば呆れる思いもあったが、10年前、10代半ばだった娘も大喜びでこの映画を一緒に観たっけ。
ちょっと複雑な気もしたなあ。



その若き日のドナと3人の男性、ハリー、ビル、サムとの出会いを、一人ずつ丁寧に描いていく。
若き日のドナを演じたリリー・ジェームズがとても生き生きしている。歌もうまい!それが今回の大きな収穫。
オックスフォード大学の卒業式のシーンから、ABBAの音楽が絶好調。

アマンダの歌が上手なのは「レ・ミゼラブル」でも証明済み。今回、ずいぶん大人になったアマンダを見られた。

唐突と言えなくもない、ドナの母ルビー(シェール)。しかし、圧倒的な存在感でもって登場。
シェールという大物歌手を知らなかったのは恥ずかしいが、素晴らしい歌唱力。御年72歳とのこと。
若き日のドナのセリフの中に、「ステージが忙しくて、学校には来てくれたことがない、卒業式だって期待していない」とあった。
前作ではどうだったっけ・・・・・その矛盾はちょっと横へ。

ルビーの昔の恋人だったという、ホテルの支配人をアンディ・ガルシアが。
(私にとってのガルシアは「愛と死の間で」で色気のある新聞記者役が特に印象深い)
キューバ出身のガルシアと大御所歌手シェールの歌う「悲しきフェルナンド」がまた素晴らしい。
映画のありがたいところは歌詞の日本語訳が出るところ。
ああ、こういう歌だったのかと、改めて意味を知って感動する。


若きドナがどうやってこの島に定着したのか。
やがて父親の判明しないまま、ソフィを身ごもり、一人でお産も・・・・・
そこはちょっとネタバレになるけれど、感動のシーンもありつつ・・・・・
それはドナがこの島に受け入れられていたことの大きな証であり。

笑って、歌って、踊って・・・・・ラストで大いに泣かされる。
若きドナ、ソフィ、そしてメリル演じるドナの神々しさ。
母と娘の絆を見せてくれる。

エンドロールの楽しさもたまらない。
よくぞ雰囲気の似た俳優さんを見つけてきたものよ!並んで歌う姿にしみじみ。

ミュージカル映画の真骨頂を見た思いがする。
2作目は失敗する!と、「銀魂2」の冒頭でも自嘲気味に語っていたけれど、銀魂同様、そのジンクスは大きく裏切られた。


映画館の一番後ろの席を確保すべきだったとしばし後悔。
だって、踊りたくなる!踊れないけど・・・・・体は動く
歌いたくなる!歌詞はあやしいけれど、メロディは口ずさめる!
今流行りの「応援上映」だったら、きっと歌いだしていた!
ああ、やっぱりABBA世代だったかと・・・・・
サントラ盤CDは絶対買わなきゃ。
(アロママ)




原題:MAMMA MIA!-HERE WE GO GAIN-
監督、脚本:オル・パーカー
撮影:ロバート・イェーマン
出演:アマンダ・セイフライド、リリー・ジェームズ、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド、シェール、メリル・ストリープ他

「ビューティフル・デイ」    (2017年 イギリス フランス アメリカ)

2018年08月22日 | 映画の感想・批評
 軍隊を退役後にFBI捜査官をしていたジョーは、現在は行方不明となった少女たちの捜索と奪還を仕事にしている。上院議員から売春組織に囚われている娘ニーナの救出を依頼され、彼女を救い出すために娼館に向かう。ハンマーひとつで敵の館を襲い、ニーナの救出に成功したジョーは、モーテルの一室で少女の父親が迎えに来るのを待っていた。テレビを見ていると少女の父親が自殺したという速報が入り、その直後に乱入してきた悪徳警官によって再び彼女を連れ去られてしまう。
 この作品には登場人物の空間的な位置関係を示すエスタブリシュメント・ショットというものがない。いきなり冒頭からクロース・アップでつないでいるため、見ていて息苦しさを覚えるが、これは監督の狙いなのだろう。アクションシーンはバイオレンス描写が省略されているので、流血の場面が多い割には残酷な印象はあまりない。作品の随所に監督の個性が現れている。
 一見、クライムサスペンス映画のように見えるが、実は重いトラウマを描いた作品。ジョーは子供の頃の虐待やFBI時代の過酷な任務の記憶に苛まれていて、しばしばパニック発作や自殺願望に襲われる。パニックになると過呼吸になるのだろうか、ビニール袋を頭からかぶり、内なる魔物が通り過ぎて行くのを待っている。ジョーの過去がフラッシュバックで何度も描かれ、観客は苦しみの源泉を垣間見るが、トラウマのくわしい説明はされていない。ニーナは幼少の頃から性的虐待を受けていて、虐待の苦しみを紛らわすために、数をカウントダウンするシーンが何度も出てくる。ジョーとニーナは共に過酷な体験を引きずっている似た者同士で、会った瞬間にお互いが同種の人間であることを嗅ぎ分けたに違いない。
 ジョーはニーナと出会うことによって初めて自分のトラウマと向き合うことができた。殺された母を水葬する時に自分も死のうとするが、ニーナのことが脳裏をよぎり自殺を思い止まる。再びニーナの救出に向かった際に初めて過去と対峙し、「自分は弱かった」と涙を流す。ジョーはニーナに勇気づけられるように、生きる意欲を取り戻していく。
 1960年代に「シベールの日曜日」というフランス映画があった。虐待やバイオレンスはないが、少女と男の関係はこの映画に似ている。あの映画は悲劇的な終わり方をしたが、この作品はハッピーエンドとは言えないまでも、ある種の希望を感じさせる。ラストは昼間のコーヒーショップ。夜のシーンが多い中で、昼の光にはすがすがしさがある。再び自殺衝動に駆られたジョーに、ニーナは「ビューティフル・デイ」と語りかける(邦題はこの台詞に由来する)。この作品は男が少女を悪の巣窟から救出する映画というよりも、少女がトラウマに苦しむ男に寄り添う映画。ジョーはニーナにリードされるように旅立ちを決意する。(KOICHI)

原題:You Were Never Really Here
監督:リン・ラムジー
脚本:リン・ラムジー
撮影:トーマス・タウンエンド
出演:ホアキン・フェニックス
   エカテリーナ・サムソーノフ


ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018年アメリカ映画)

2018年08月15日 | 映画の感想・批評


 人気シリーズ6作目で、常連メンバーも勢揃いで、ワクワク感“半端ない”(もう古い?)最新作である。トム・クルーズがプロデューサーも兼務して、意気込み十分である。観客が期待している以上を、あれでもかこれでもかと繰り広げるアクション映画である。
 登場人物の設定は、ダブルスパイもあり、最初は、やや複雑に思えたが、話が進む内に分かってくる。そこは、勢いに任せて、突っ走るのみである。更に、アクション映画に付き物のスタントは、CGの部分が多いだろうが、スカイダイビング、殴り合いの決闘、バイクでのチェイス、ビルの屋上から屋上へ全速力(撮影中に、ビルからビルに飛び移るシーンで骨折したそうだ)の追走、ヘリコプターでの追跡&死闘、ボルダリングでの死闘が続き、手に汗握るシーンが途切れることが無いのである。トム・クルーズ本人が演じていることにも驚かされる。
 一方、元妻との再会シーンでは、「あなたとの出会いがあって、紆余曲折はあったが、今は、私がいるべき場所に居る」と言わせる等、意外と(失礼!)、人間味のあるイーサン・ハントが垣間見られた。今まで会った人に感謝するや、罪の無い人間は殺さず、無意味な殺人も意に介しない悪人は、迷いなく消してしまう等、自分の中に、はっきりとした軸を持った強い人間を協力に打ち出していたと思う。
 この手の映画は、アクションが先行してしまいがちだが、それは、あくまでも宣伝優先であって、本作は、アクションだけでは無く人間味溢れるイーサン・ホークが随所に観られた。これは、是非、劇場の大きな画面で、迫力ある音響の元、観て頂ければ、「アクション」も「人間愛」も楽しんで頂けるのではないでしょうか。但し、人間味溢れると言っても、スタントに関しては、人間味溢れていては、あのアクションでは生き延びられていないのは間違い無い。そこは、「映画」(=作り物)なのである。
(kenya)

原題:「Mission:Impossible-Fallout」
監督・脚本:クリストファー・マッカリー
撮影:ロブ・ハーディ
出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、レベッカ・フォーガソン、ヴィング・レイムス、ヘンリー・カヴィル、ショーン・ハリス、アレック・ポールドウィン、ヴァネッサ・カービー、ミシェル・モナハン、アンジェラ・バセット他

ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年ドイツ)

2018年08月08日 | 映画の感想・批評
 

 第2次世界大戦下、ナチスに殺されたヨーロッパのユダヤ人は約600万人と言われている。そのうちドイツ国籍を持っていたドイツ系ユダヤ人は17万人だった。
 1941年10月、ユダヤ人のドイツ国内から海外への移住が禁止され、「東」への移送(実態は全財産を没収され、死が待つ絶滅収容所に送られることだった)が開始された。1943年2月、強制労働のためにベルリンに残されていたユダヤ人が逮捕され、6月19日ナチスの宣伝相ゲッペルスは首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言した。しかし、実際には7000人ものユダヤ人が収容所送りを免れてベルリンに潜伏し、1500人が終戦まで生き延びた。
 クラウス・レーフレ監督は別のドキュメンタリー番組を製作した時に、ベルリン出身の一人のユダヤ人女性が偽の身分証明書で隠れていたということを知り、他にも「違法」に隠れていたユダヤ人ベルリン市民がいたのではないかと調べ始めた。そして綿密な調査をし、その中から潜伏開始時に16歳から20歳だった4人の若者の興味深いストーリーを選び出した。数多くのドキュメンタリーを手がけてきた監督らしく、ドラマの主人公たちのモデルとなった生還者4人へのインタビューと、戦時下のベルリンの様子を収めた記録映像を挿入して、感動のドキュメンタリー・ドラマに信憑性を与えている。
 20歳だったツィオマは、出征をひかえたドイツ人兵士になりすまし、市内の空室を転々とし、ユダヤ人の命を救うための身分証偽装を行っていた。20歳だったルートは戦争未亡人を装い、ドイツ国防軍将校邸のメイドとして働いた。両親を亡くした17歳のハンニは、彼女に思いを寄せる戦地行きを控えた青年の母親に匿われた。16歳のオイゲンは匿われていた家族のもとに、テレージエンシュタット収容所から脱走して来た男にユダヤ人虐殺の実態を聞き、反ナチのビラ作りを手伝った。彼らは、ユダヤ人であることがばれないか、ゲシュタポに逮捕されないか、不安を抱えながら必死に生き延びたのだ。
 それぞれの状況は違っていたが、4人の話に共通するのは、ユダヤ人同士の強い絆は当然だが、彼らを助けてくれた人々の中には反ナチの立場にあった人たちだけでなく、ごく普通の善意のドイツ人たちがいたことだ。すべてのドイツ人がナチに共感していたのではないのだ。強い信念を持っていたわけでもなく、密告されたら自分の命が危なかったかもしれないけれど、とっさに目の前の困っている人を助けたドイツ人がいたことに驚嘆した。(久)

原題:DIE UNSICHTBAREN
監督:クラウス・レーフレ
脚本:クラウス・レーフレ、アレハンドラ・ロペス
撮影:イェルク・ヴィトマー
出演:マックス・マウフ、アリス・ドワイヤー、ルビー・O・フィー、アーロン・アルタラス

「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(2018年 アメリカ映画)

2018年08月01日 | 映画の感想・批評


 「スター・ウォーズ」ファンのお楽しみ、「ローグ・ワン」に続くスピンオフ作品第2弾は、宇宙の運び屋にして反乱軍の英雄となったハン・ソロの若き日々を描いた物語だ。ハン・ソロといえば、かつて日本で行われたアンケートにおいて、主役のルークやレイア姫、ダースベイダーなどを押さえて人気NO1を獲得したキャラクターだったとの記憶があるが、そんなハン・ソロの生い立ちや、相棒チューバッカとの出会い、愛機ミレニアム・ファルコン号を手に入れた方法など、多くのファンが知りたかった謎が今作でついに明らかになる。
 この作品、最初「LEGOムービー」のフィル・ロードとクリス・ミラー両監督によって撮影が進められていたのだが、なんと撮影終盤において監督交代という激震が襲う。ルーカスフィルムが目指した演出やカスダン親子の脚本からあまりにもかけ離れた“コメディ”になりすぎていたというのがその理由らしいが、新しい監督に起用されたのが今や巨匠の域に入ったロン・ハワード監督である。ロン・ハワードといえば、往年の映画ファンには懐かしい青春映画「アメリカン・グラフィティ」で主役を演じていたことが思い出されるが、なんとその作品の監督は「スター・ウォーズ」製作前のジョージ・ルーカスだったというのも、何か運命のようなものを感じてしまう。ロン・ハワードはあの時の真面目な高校生がそのまま監督になったような感があり、斬新な映像や新しいキャラクター、機器等を加えながらも、「スター・ウォーズ」シリーズが持っている品格や「宇宙西部劇」といったテイストを大切にしていて、決してファンを裏切らない作りとなっている。
 若きハン・ソロを演じるのは、若手のホープ、オールデン・エアエンライク。ハン・ソロといえば、ハリソン・フォードの名前がすぐに思い出されるが、失礼ながら今のハリソンに若かりし頃を演じていただくのはちょっと無理というもの。そこで抜擢されたのがオールデンなのだが、少しスケールは小さくなったように感じるものの、お調子者で自信過剰なスピード狂、ちょっぴり女ったらしなところまで、しっかり同じDNAを感じさせながらソロを演じきった。所々で見せるハリソンに似せた仕草や笑顔が何とも微笑ましい。
 残念なのは興行の方で、アメリカ本国でも期待通りとはなっていないようだ。前作の「エピソード8」から半年しかたっておらず、ファンの枯渇感が少なかったからか、大スターの起用がなかったからか、原因はいろいろ考えられるが、続編が期待されているのも確か。2019年の公開が決まっている「SW最終章・エピソード9」の後でもいいから是非実現を望みたいものだ。「ブレードランナー」の時のようにハリソン・フォードが出てくれれば最高なのだが、いかに。
 (HIRO)

原題:SOLO:A STAR WARS STORY 
監督:ロン・ハワード
脚本:ジョナサン・カスダン&ローレンス・カスダン
撮影:ブラッドフォード・ヤング
出演:オールデン・エアエンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー、タンディ・ニュートン、ヨーナス・スオタモ、ポール・ベタニー