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「首」(2023年 日本映画)

2023年12月06日 | 映画の感想・批評
 

 天下統一を目論む織田信長(加瀬亮)は、戦の最中に、村重(遠藤憲一)に反乱を起こされ姿を消され、苛立っている。信長は、羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)ら家臣を集め、自分の跡目相続をちらつかせて捜索を命ずる。秀吉の弟・秀長(大森南朋)と黒田官兵衛(浅野忠信)により捉えられた村重は、千利休(岸田一徳)を介して、光秀に引き渡されるが、光秀は村重を殺さず匿う。これはそうなることを推測した上での、仕組まれた罠だった・・・。
 北野武監督6年振りの新作である。『アウトレイジ』シリーズと似ていると思った。時代設定を変えれば当てはまる。強いものに仕え、その者の指示命令に従い、時期を見て、その者を葬り去り、自分がその地位に就く。新しく加わったのは、同性愛の部分だろうか。村重を匿ったのは光秀の性癖をベースにした上で、今の時代に合わせて、BLを付け足したのか・・・。ネットニュースでは、30年前の構想とのことだが、30年前にBLを描いてはいないかと思うので、ブラッシュアップしたと想像してしまった。
 所謂芸人の登場はテレビと同じように感じてしまう。木村祐一の登場した時には笑ってしまった。普段、テレビで見る姿と変わらない。劇場では、テレビでは見られない芸人の姿を観たいと思う。ただ、殺陣とまで言えるかどうかは微妙だが、一瞬の木村祐一の殺陣シーンは良かった。編集の力量が多いと思うが、圧倒された。
 北野武の映画への拘りは、原作から編集まで、すべて一人で行うスタイルだ。海外で評価されるのか一因かと思料する。作家性を重んじるということか。ただ、首がポンポンと切られ(しかも切られる瞬間も映される)、挙句の果てに、切られた首を並べてどれにします?で、最後はサッカーボールのようになる。駄目になったら、首をすり替える現状の皮肉と理解するが、それにしても、首を軽々と持ち上げ、「天下を取ったぞ!」と持ち上げるシーンは気持ち悪い。ファーストシーンからラストシーンまでそれらが映し出され、気分は良くなかった。
 内容とは関係無いが、本作品は「R15+」指定となっている。15歳以上は閲覧可能ということらしい。以前は、「15歳未満は閲覧禁止」で、「+」表記は無かった。「+」という表現は、何事も前向きにということで、「15歳以上は閲覧可能」というように解釈しようとことらしい。何事にも前向きは良いが、敏感になり過ぎているのではないか。「すべき」という思考の延長か。
 30年前の発想を今の時代に合わせながら、1本の作品に仕上げ、且つ、今の時代に合うように自分自身でリメイクを繰り返した苦労が伺える作品だった。ただ、グロテスクなシーンが嫌な人にはお薦めはしない。
(kenya)

監督・脚本・編集:北野武
原作:北野武『首』
撮影:浜田毅
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、六平直政、大竹まこと、津田寛治、荒川良々、寛一郎、副島淳、小林薫、岸田一徳


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