シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(2012年/日本)

2013年05月21日 | 映画の感想・批評

 獄中から無実を訴え続ける死刑囚、奥西勝。1961年(昭和36年)、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、犯人として逮捕された。自白のみで物的証拠がなく1審では無罪になるが、2審で逆転死刑判決、1972年最高裁で死刑が確定した。戦後唯一の逆転死刑判決である。
 映画は東海テレビの長期取材をベースに、「死刑弁護人」の齊藤潤一監督が、報道フィルムと再現ドラマで綴る。警察の取り調べに心ならずも自白し、裁判で無罪を主張するというパターンは、小説やドラマではよくあるが、奥西の場合も自白を強要され犯行を認めてしまった。その時点から、奥西の犯行となるように村の住人たちの証言が変わっていき、辻褄合わせが始まり、冤罪が作られたのだ。TVドラマなら、正義感の塊のような弁護士、あるいは刑事、裁判官、新聞記者などが登場し、無実の被告を救い出してくれるのだが、現実はそんなにうまくはいかない。だからどんなに苦しくても、やっていないことは決して自白してはいけないのだ。
 弁護団の努力で突き止めた新証拠を提出して何度も再審請求を繰り返すが、司法の厚い壁に阻まれ棄却され続ける。「徳島ラジオ商殺し」事件で再審の道を開いた元裁判官は「裁判官は序列に縛られ、先輩や上級裁判が一旦出した判決を覆すことは非常に困難だ」と語る。
 現在奥西は、名古屋拘置所から八王子医療刑務所に移され収監されている。事件からすでに50年以上経って、奥西の両親と息子、特別面会人(死刑囚には、普通は家族、弁護士しか面会できないそうだ)、弁護士、村の住人、裁判官など、少なからぬ関係者が亡くなっている。司法は奥西の獄中死を待っているのだろうか。(久)

監督:齊藤潤一
脚本:齊藤潤一
撮影:坂井洋紀
出演:仲代達矢、樹木希林、天野鎮雄、山本太郎、(ナレーション)寺島しのぶ


L.A.ギャングストーリー(2013年アメリカ)

2013年05月11日 | 映画の感想・批評
 戦後間もない頃にボクサーからのし上がりロサンゼルスを牛耳った実在のギャング、ミッキー・コーエン。その一味を一掃しようと立ち上がった警察官たちの物語である。コーエンはイタリア系のマフィアとは一線を画するユダヤ系だ。地元の判事、警察幹部や保安官を買収し、ますます増長する中で、警察本部長は主人公のオマラ巡査部長に組織の壊滅を命じる。ただし、あくまで非公式の隠密作戦だから警察バッジをはずして黒子として任務に当たれというのだ。何しろ警察内部はほとんどコーエンの息がかかっているため、秘密裏にことを進める必要がある。オマラが独自に選別した5人の警官はそれぞれひとクセもふたクセもある連中で、「七人の侍」をベースにしたのではないか(本部長を入れると7人になる)。
 それにしても、だ。久々に痛快なギャング映画を堪能した。とりわけ、驚いたのはカーチェース場面である。麻薬取引の現場を押さえた面々が逃走する車列を襲撃するシーンで、カメラは上空から2台の車を追い、徐々に追跡する車に近づくや、車のサイドに回り込み助手席から顔を出して前方の車を銃で狙い撃ちする警官を斜め前から捉える。その華麗なるカメラワークに唸ってしまった。この映画は、クレジットタイトルで確認したところ、カメラ3台で撮っていることがわかった。いったいこのルーベン・フライシャーという監督はどういう人だろう。既に2作ほど撮っているらしいが、この映画がメジャーのデビューといっていい。その演出のキレは鋭い。
 オマラ役のジョシュ・ブローリンもいいが、稀代の顔役に扮するショーン・ペンの悪逆非道ぶりは「犯罪王リコ」のエドワード・G・ロビンソン、「暗黒街の顔役」のポール・ムニ、「白熱」のジェームス・キャグニーに匹敵するほどだろう。それに正義の鉄槌を振り下ろそうとする本部長役のニック・ノルティが渋くていい。 (ken)

原題:Gangster Squad
監督:ルーベン・フライシャー
原作:ポール・リーバーマン
脚色:ウィル・ビール
撮影:ディオン・ビーブ
出演:ジョシュ・ブローリン、ライアン・ゴスリング、ショーン・ペン、エマ・ストーン、ニック・ノルティ

「映画クレヨンしんちゃん バカうま!B級グルメサバイバル!!」(2013年 日本映画)

2013年05月04日 | 映画の感想・批評


 子どもだけでなく、大人のファンも多い「クレヨンしんちゃん」の劇場版最新作。あの「~大人帝国」でドキッとし、「~戦国大合戦」で涙した人たちも、今回は思いっきり笑ってください。
 A級グルメとB級グルメの対決!?と聞いただけで思わずヨダレが出てきそうだが、B級グルメの「伝説のソース」を目的地まで届けることを任されたしんのすけたち「カスカベ防衛隊」の大活躍を見ていると、一人じゃできないことでもチームワークを発揮して頑張れば実現も可能になるのだと思わず元気がわいてくる。
 何といっても見どころは、グルメッポーイ率いるA級グルメ機構の面々とカスカベ防衛隊員とのキャラのぶつかり合い。キャビアを愛するロシア美女との車の中での対決や、フォアグラ錦との吊り橋での対決は、お腹が痛くなるくらい笑えます。それにマサオ君の言動には、的を得ているなあと思わずニヤリ!
 大人の観客を楽しませることも忘れていません。B級グルメのエース“ソースの健さん”のモデルはやっぱりあの“健さん”!?それに健さんと“しょうがの紅子”との関係は、まさに東映任侠映画の世界なのだ!!
 大人も子どもも楽しませてくれる「クレしん映画」の醍醐味を十分に味わって、SEKAI NO OWARIが歌う主題歌を聞きながら劇場を後にする幸せ。♪~空は青く澄み渡り 海を目指して歩く 怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない~♪ さあ、明日も頑張ろう!!              
 (HIRO)


監督・橋本昌和
脚本・浦沢義雄、うえのきみこ
声の出演・矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、一龍斎定友、コロッケ、渡辺直美、川越達也 中村悠一