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12日の殺人(2024年 フランス映画)

2024年04月17日 | 映画の感想・批評

 
 2022年第48回セザール賞(作品賞/監督賞/助演男優賞/有望若手男優賞/脚色賞/音響賞)を受賞した本作。ネット情報だが、セザール賞は、いわゆるフランス版アカデミー賞とのこと。確かに、とても良かった。
 実際に起きた“未解決事件”を基にしたフィクションである。フランスの自然豊かな田舎町が舞台。10月12日深夜、女子大生クララがパーティーの帰り道、一人で歩いていると、突如ガソリンを掛けられ、生きたまま焼かれ、翌朝、焼死体で発見される。事件を担当することになったのは、その前日に、警察班長を引き継いだばかりの若い男性刑事ヨアン(バスティアン・ブイヨン)。事件を担当することがあまりなかったのか、被害者感情に偏っていってしまうが、次々と男性容疑者が浮かび上がり、皆、彼女は奔放な女性だったと証言すると、決して、罪を犯した犯人は許せないのだが、被害者を見る目が変化していくのである。偏見無し、先入観無しで捜査しなければいけないが、刑事も人間である。誰が正しいのか、真実は何か。前任班長のベテラン刑事(ブーリ・ランネール)は自らの家庭の境遇と重ねてしまい行き過ぎた取り調べをしてしまう。それを止められないヨアン。「〇」or「×」では判断できない自分も居る・・・。
 後半には、女性の判事と刑事が登場し、仕切り直し捜査が始まる。偏った見方ではない捜査方法で、解決するかと思いきや、空振りに終わってしまう。作品冒頭に“未解決事件”と宣言されているにも関わらず、刑事達と一緒に捜査している気持ちになっていた。
 時折挟まれるヨアンが自転車トラックで自転車に乗るシーンが、ヨアンの気持ちを表現しているようで、映画らしい。ファーストシーンからラストシーンに繋がる。前向きな気持ちと捉えられ、良い効果が生まれていたと思う。
 殺人事件の犯人捜しなので、「サスペンス」という宣伝PRだったが、内容は人間ドラマで、自分も相手の風貌や雰囲気、自らの偏見等で、色眼鏡を掛けて相手を見ているのだろうかと考えさせられる作品だった。
 因みに、同年2022年の作品賞候補「ダンサーインParis」も、一人の女性の成長を描いた作品でとても良かった(私の2023年度ベストテンにも入れました:2024年1月10日発信「シネマ見どころ」)し、2023年第49回の作品賞を受賞した「落下の解剖学」(米アカデミー賞で作品賞含め5部門にノミネートされ、脚本賞受賞)も、夫の謎の死の真相究明する過程で、夫婦関係や幼い視覚障害の息子との関係を描いた作品で見応えがあった。「セザール賞」今後注目かも。
(kenya)

原題:La nuit du 12
監督:ドミニク・モル
脚本:ジル・マルシャン、ドミニク・モル
撮影:パトリック・ギリンジェリ
出演:バスティアン・ブイヨン、ブーリ・ランネール、テオ・チョルビ、ヨハン・ディオネ、ティヴィー・エヴェラー、ポーリーヌ・セリエ、ルーラ・コットン・フラピエ、ピエール・ロタン、アヌーク・グランベール、ムーナ・スアレム


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