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「ゴジラ ー1.0」(2023年 日本映画)

2023年11月22日 | 映画の感想・批評


 自分が生まれた年、1954年に初めてスクリーンに登場して以来、日本のみならず、世界中を魅了し、衝撃を与えてきた怪獣「ゴジラ」。来年はその生誕70周年に当たり、日本で製作された実写版ゴジラの30作目ともなる記念すべき本作、-1(マイナス ワン)というタイトルが付けられたのには、何か訳がありそうなのだが、果たしてそれは・・・。
 前作「シン・ゴジラ」は現代の日本が舞台だったが、今回は第二次世界大戦末期の1945年、大戸島の守備隊基地から始まる。ここに一機の零戦が着陸したのだが、何も故障箇所が見当たらない。何か訳ありだと思っているうち、その夜には全高15メートルくらいの恐竜のような生物が基地を襲撃する。島の伝説で語り継がれる「呉爾羅」だという。いきなりの登場に面食らっていると、この怪獣、やたら強い。零戦に整備された20ミリ砲を使って反撃しようとしたのだが、結局撃てずじまいで島の整備兵達のほとんどが犠牲になってしまう。
 終戦を迎えた同じ年の冬、焼け野原となった東京へ帰ってきたのはあの零戦を操縦していた敷島少尉だ。両親が空襲で亡くなったことを知らされ、天涯孤独の身となったのだが、ひょんなことから闇市で知り合った典子と、典子が連れていた赤ん坊の明子と3人で共同生活を始めることになる。生活のため、戦時中に米軍が残した機雷を撤去する仕事に就いた敷島だったが、大戸島での悪夢は決して忘れることができず、生き残ったことに負い目を感じていた。
 1946年、米軍による核実験「クロスロード作戦」がビキニ環礁で行われ、近くにいた呉爾羅も被爆。体表の奥深くまで紛れ込んだ放射性物質により、体は巨大化し、ますます凶暴に。戦争で何もかも失いゼロになってしまった日本に、さらに追い打ちをかけるように襲いかかる。まだ国としての軍隊を持てずにいた日本、果たして戦争を生き抜いた名もなき市井の人々は、どう立ち向かってけばいいのだろうか?!
 敷島を演じるのは神木隆之介。そしていっしょに暮らす典子には浜辺美波と、NHK連続テレビ小説「らんまん」での夫婦役が好評だった二人が、今作でも息の合った共演ぶり。そしてなぜか二人とも昭和の雰囲気が似合う。特に神木は牧野博士とはまた違った、軍人らしいキリッと引き締まった姿が印象的だ。
 「ALWAYS  続・三丁目の夕日」で、冒頭にゴジラを登場させた山崎貴が監督・脚本・VFXを務めた。山崎監督のゴジラ愛は有名で、今作の前には西武園ゆうえんちで稼働中の映像アトラクション「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」も手がけ、理想的なゴジラのデザインがすでにできあがっていたそうで、満を持しての登場と言っていいだろう。
 そして何と言っても今作の主役は「ゴジラ」だ。その迫力はハリウッドで作られた大作もかすんでしまうほど。さすがCGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者である山崎監督が創り出しただけあって、映画を観て“恐怖”を感じたのは久しぶり。特に背びれが次々に伸びていって、それが一気に引っ込んでから熱線を吐くところでは、体の芯を貫かれたような感覚を覚えた。ゴジラは核の申し子だというイメージが強く表れているのも今作の特徴で、第1作へ続くオマージュ的な要素も感じられた。
 爆風で吹き飛ばされてしまった典子のその後や、ゴジラの最期を見送る敬礼など、突っ込みどころも多いのだが、あの主題曲と一緒に現れるラストの震える衝撃映像で観る者は納得。なるほど、-1(マイナス ワン)とはそういうこと・・・?!
 (HIRO)

監督:山崎貴
脚本:山崎貴
撮影:柴崎幸三
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介、


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