シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

2023年度ベストテン発表

2024年01月10日 | BEST
年頭にあたってメンバー7名による恒例のベストテンを発表します。
2023年に関西において公開された新作の日本映画、外国映画それぞれのベスト作品を(事情により新作をあまり見られなかったメンバーには昨年1年間に見た旧作の中から)10本まで順位をつけて選んでもらいました。みなさんのベスト作品と比べてみてください。
題名表記、原題、製作国はKINENOTE、IMDBに依拠しています。基本的に製作年を表示しましたが作品によっては公開年となっているものもあります。(健)

♧久
【日本映画】
1位「せかいのおきく」(阪本順治)
2位「福田村事件」(森達也)
3位「怪物」(是枝裕和)
4位「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース)
5位「波紋」(荻上直子)
【外国映画】
1位「いつかの君にもわかること」(ウベルト・パゾリーニ、Nowhere Special、20年伊=英ほか)
2位「イニシェリン島の精霊」(マーティン・マクドナー、The Banshees of Inisherin、22年英=米=愛)
3位「別れる決心」(パク・チャヌク、헤어질 결심22年韓国)
4位「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン、Une belle course、仏=白)
5位「ロスト・キング 500年越しの運命」(スティーヴン・フリアーズ、The Lost King、22年イギリス)
6位「小さき麦の花」(リー・ルイジュン、隠入塵煙、22年中国)
7位「理想郷」(ロドリゴ・ソロゴイェン、As bestas、22年西=仏)
8位「蟻の王」(ジャンニ・アメリオ、Il signore delle formiche、22年イタリア)
9位「青いカフタンの仕立て屋」(マリヤム・トゥザニ、Le bleu du caftan、22年モロッコほか)
10位「燃えあがる女性記者たち」(リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ、Writing with Fire、21年インド)

♣HIRO
【日本映画】
1位「怪物」
2位「BAD LANDS バッド・ランズ」(原田眞人)
3位「福田村事件」
4位「エゴイスト」(松永大詞)
5位「せかいのおきく」
6位「こんにちは母さん」(山田洋次)
7位「愛にイナズマ」(石井裕也)
8位「君たちはどう生きるか」(宮崎駿)
9位「首」(北野武)
10位「ゴジラ-1.0」(山崎貴)
【外国映画】
1位「ザ・ホエール」(ダーレン・アロノフスキー、The Whale、22年アメリカ)
2位「フェイブルマンズ」(スティーヴン・スピルバーグ、The Fabelmans、22年アメリカ)
3位「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」(クリストファー・マッカリー、Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One、23年アメリカ) 
4位「パリタクシー」
5位「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート、Everything Everywhere All at Once、22年アメリカ)
6位「人生は美しい」(チェ・グッキ、인생은 아름다워、22年韓国)  
7位「すべてうまくいきますように」(フランソワ・オゾン、Tout s'est bien passé、21年仏=白)
8位「CLOSE クロース」(ルーカス・ドン、Close、22年蘭=仏=白)
9位「マイ・エレメント」(ピーター・ソーン、Elemental、23年アメリカ)
10位「エンドロールのつづき」(パン・ナリン、Chhello Show、21年印=仏)

♣ kenya
【日本映画】
1位「ヴィレッジ」(藤井道人)
2位「月」(石井裕也)
3位「怪物」
4位「アナログ」(タカハタ秀太)
5位「正欲」(岸善幸)
6位「ミステリと言う勿れ」(松山博昭)
7位「ラーゲリより愛を込めて」(瀬々敬久)
8位「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」(松本彩)
9位「ほつれる」(加藤拓也)
10位「市子」(戸田彬弘)
【外国映画】
1位「バービー」(グレタ・ガーウィグ、Barbie、23年アメリカ)
2位「ポトフ 美食家と料理人」(トラン・アン・ユン、La passion de Dodin Bouffan、23年仏=白)
3位「ティル」(シノニエ・チュクウ、Till、23年アメリカ)
4位「非常宣言」(ハン・ジェリム、비상선언、22年韓国)
5位「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
6位「ダンサー イン Paris」(セドリック・クラピッシュ、En corps、22年仏=白)
7位「ノック 終末の訪問者」(M・ナイト・シャマラン、Knock at the Cabin、23年アメリカ)
8位「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」
9位「ヴァチカンのエクソシスト」(ジュリアス・エイヴァリー、The Pope's Exorcist、23年米=英=西)
10位「フェイブルマンズ」

♧アロママ
【日本映画】
1位「せかいのおきく」
2位「福田村事件」
3位「怪物」
4位「君たちはどう生きるか」
5位「映画 窓ぎわのトットちゃん」(八鍬新之介)
6位「正欲」
7位「こんにちは、母さん」
8位「アナログ」
9位「ゴジラ-1.0」
10 位「BLUE GIANT」(立川譲)
【外国映画】
1位「生きる LIVING」(オリヴァー・ハーマナス、Living、22年イギリス)
2位「パリタクシー」
3位「ナポレオン」(リドリー・スコット、Napoleon、23年アメリカ)
4位「TAR/ター」(トッド・フィールド、Tár、22年アメリカ)
5位「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(マーティン・スコセッシ、Killers of the Flower Moon、23年アメリカ)
6位「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」(ケネス・ブラナー、A Haunting in Venice、23年アメリカ)
7位「オットーという男」(マーク・フォースター、A Man Called Otto、22年アメリカ)

♣KOICHI
【日本映画】
1位「福田村事件」
2位「怪物」
3位「シャイロックの子供たち」(本木克栄)
【外国映画】(昨年見た旧作のみから選考)
1位「パリ、テキサス」(ヴィム・ヴェンダース、Paris, Texas、84年仏=米)
2位「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー、Les Quatre Cents Coups、59年 フランス)
3位「サンセット大通り」(ビリー・ワイルダー、Sunset Boulevard、50年アメリカ)
4位「ラ・ラ・ランド」(ディミアン・チャゼル、La La Land、16年アメリカ)
5位「キャロル」(トッド・ヘインズ、Carol、15年米=英)
6位「ミツバチのささやき」(ヴィクトル・エリセ、El Espiritu de la colmena、73年スペイン)
7位「スティング」(ジョージ・ロイ・ヒル、The Sting、73年アメリカ)
8位「ティファニーで朝食を」(ブレイク・エドワーズ、Breakfast at Tiffany’s、61年アメリカ)
9位「欲望」(ミケランジェロ・アントニオーニ、Blowup、67年英=伊=米)
10位「バージニア・ウルフなんかこわくない」(マイク・ニコルズ、Who’s Afraid of Virginia Woolf? 、66年アメリカ)

♧春雷
【日本映画】
1位「雑魚どもよ、大志を抱け!」(足立紳)
2位「PERFECT DAYS」
3位「1秒先の彼」(山下敦広)
4位「せかいのおきく」
5位「福田村事件」
6位「怪物」
7位「正欲」
8位「エゴイスト」
9位「ヴィレッジ」
10位「658km、陽子の旅」(熊切和嘉)
【外国映画】
1位「聖地には蜘蛛が巣を張る」(アリ・アッバシ、HoIy Spider、22年丁=独ほか)
2位「ロスト・キング 500年越しの運命」
3位「トリとロキタ」(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、Tori et Lokita、22年白=仏)
4位「ぼくたちの哲学教室」(ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ、Young Plato、21年愛=英ほか)
5位「理想郷」
6位「ティル」
7位「パリタクシー」
8位「対峙」(フラン・クランツ、Mass、21年アメリカ)
9位「To Leslie トゥ・レスリー」(マイケル・モリス、To Leslie、22年アメリカ)
10位「ボーンズ アンド オール」(ルカ・グァダニーノ、Bones and All、22年伊=米)

♣健
【日本映画】
1位「PERFECT DAYS」
2位「せかいのおきく」
3位「怪物」
4位「福田村事件」
5位「アンダーカレント」(今泉力哉)
6位「愛にイナズマ」
7位「Winny」(松本優作)
8位「BAD LANDS バッド・ランズ」
9位「エゴイスト」
10位「首」
【外国映画】
1位「キラーズ・オブ・フラワームーン」
2位「バビロン」(デイミアン・チャゼル、Babylon、22年アメリカ)
3位「逆転のトライアングル」(リューベン・オストルンド、Triangle of Sadness、22年スウェーデンほか)
4位「TAR/ター」
5位「フェイブルマンズ」
6位「理想郷」
7位「アシスタント」(キティ・グリーン、The Assistant、19年アメリカ)
8位「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」
9位「対峙」
10位「崖上のスパイ」(チャン・イーモウ、悬崖之上、21年中国)

2022年度ベストテン

2023年01月18日 | BEST


今年も年明け恒例のブログ・メンバーによる2022年度ベスト(最大10本まで選考)を発表します。題名表記、原題、製作国はkinenote、IMDBを参考としました。基本的に製作年を表示しましたが作品によっては公開年となっているものもあります。(健)

◇久
【日本映画】
1位「梅切らぬバカ」(和島香太郎)
2位「土を喰らう十二ヵ月」(中江裕司)
3位「ある男」(石川慶)
4位「流浪の月」(李相日)
5位「PLAN75」(早川千絵、日・仏、比ほか)
【外国映画】
1位「ベルファスト」(ケネス・ブラナー、Belfast、イギリス、2021)
2位「ベイビー・ブローカー」(是枝裕和、브로커、韓国、2021)
3位「あのこと」(オードレイ・ディヴァン、L'événement、フランス、2021)
4位「クレッセンド 音楽の架け橋」ドロール・ザハヴィ、Crescendo - #makemusicnotwar、ドイツ、2019)
5位「白い牛のバラッド」(マリヤム・モガッダ、ベタシュ・サナイハ、Ballad of a White Cow、イラン・フランス、2020)
6位「オフィサー・アンド・スパイ」(ロマン・ポランスキー、J'accuse、仏・伊、2019)
7位「ゴヤの名画と優しい泥棒」(ロジャー・ミッシェル、The Duke、イギリス、2020)
8位「シスター 夏のわかれ道」(イン・ルオシン、我的姐姐、中国、2021)
9位「帰らない日曜日」(エヴァ・ユッソン、Mothering Sunday、イギリス、2021)
10位「LAMB/ラム」(ヴァルディミール・ヨハンソン、Dýrið、アイスランド、2021)

◆HIRO
【日本映画】
1位「土を喰らう十二ヵ月」
2位「ヘルドッグス」(原田眞人)
3位「すずめの戸締まり」(新海誠)
4位「天間荘の三姉妹」(北村龍平)
5位「ちょっと思い出しただけ」(松居大悟)
6位「線は、僕を描く」(小泉徳宏)
7位「ツユクサ」(平山秀幸)
8位「百花」(川村元気)
9位「大河への道」(中西健二)
10位「異動命令は音楽隊」(内田英治)
【外国映画】
1位「コーダ あいのうた」(シアン・ヘダー、CODA、米・仏・加、2021)
2位「ベイビー・ブローカー」
3位「ベルファスト」
4位「トップガン マーヴェリック」(ジョセフ・コシンスキー、Top Gun: Maverick、アメリカ、2022)
5位「クライ・マッチョ」(クリント・イーストウッド、Cry Macho、アメリカ、2021)
6位「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(ジェームス・キャメロン、Avatar:The Way of Water、アメリカ、2022)
7位「ウエスト・サイド・ストーリー」(スティーヴン・スピルバーグ、West Side Story、アメリカ、2021)
8位「THE BATMAN ーザ・バットマンー」(マット・リーヴス、The Batman、アメリカ、2022)
9位「マトリックス レザレクションズ」(ラナ・ウォシャウスキー、The Matrix Resurrections、米・豪、2021)
10位「ミニオンズ フィーバー」(カイル・バルダ、Minions: The Rise of Gru、アメリカ、2022)

◆Kenya
【日本映画】
1位「偶然と想像」(濱口竜介)
2位「すずめの戸締り」
3位「アキラとあきら」(三木孝浩)
4位「ある男」
5位「ラーゲリより愛を込めて」(瀬々敬介)
6位「ノイズ」(廣木隆一)
7位「7人の秘書 THE MOVIE」(田村直己)
8位「ヘルドックス」
9位「とんび」(瀬々敬介)
10位「PLAN75」
【外国映画】
1位「ハウス・オブ・グッチ」(リドリー・スコット、House of Gucci、米・加、2021)
2位「コーダ あいのうた」
3位「ベルファスト」
4位「アムステルダム」(デイビッド・O・ラッセル、Amsterdam、アメリカ、2022)
5位「オフィサー・アンド・スパイ」
6位「ドリームプラン」(レイナルド・マーカス・グリーン、King Richard、アメリカ、2021)
7位「ワンセカンド 永遠の24フレーム」(チャン・イーモウ、一秒钟、中国、2020)
8位「ソウル・オブ・ワイン」(マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー、L'âme du vin、フランス、2019)
9位「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」
10「ナイル殺人事件」(ケネス・ブラナー、Death on the Nile、米・英、2020)

◇アロママ
【日本映画】
1位「サバカン SABAKAN」(金沢知樹)
2位「PLAN75」
3位「前科者」(岸義幸)
4位「ある男」
5位「宮松と山下」(関友太郎・平瀬謙太朗・佐藤雅彦)
6位「流浪の月」
7位「線は、僕を描く」
8位「ちょっと思い出しただけ」
9位「母性」(廣木隆一)
10位「死刑にいたる病」(白石和彌)
【外国映画】
1位「ベルファスト」
2位「コーダ あいのうた」
3位「ナイル殺人事件」
4位「ダウントン・アビー 新たなる時代へ」(サイモン・カーティス、Downton Abbey: A New Era、英・米、2022)
5位「渇きと偽り」(ロバート・コノリー、The Dry、豪・米・英、2020)
6位「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」(フィリッポ・メネゲッティ、Deux、仏・白・ルクセンブルク、2019)
7位「ハウス・オブ・グッチ」
8位「ベイビー・ブローカー」
9位「カモン カモン」(マイク・ミルズ、C'mon C'mon、アメリカ、2021)
10位「ビージーズ 栄光の軌跡」(フランク・マーシャル、The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart、アメリカ、2020)

◆KOICHI
【日本映画】
1位「千夜、一夜」(久保田直)
2位「LOVE LIFE」(深田晃司)
3位「天上の花」(片嶋一貴)
【外国映画】
1位「ベイビー・ブローカー」
2位「メモリア」(アピチャートポン・ウィーラセタクン、Memoria、コロンビア・タイほか、2021)
3位「白い牛のバラッド」
4位「トップガン マーヴェリック」

◇春雷
【日本映画】
1位「余命10年」(藤井道人)
2位「マイ・ブロークン・マリコ」(タナダユキ)
3位「冬薔薇」(阪本順治)
4位「流浪の月」
5位「スープとイデオロギー」(ヤン・ヨンヒ)
6位「土を喰らう十二ヵ月」
7位「ある男」
8位「夜明けまでバス停で」(高橋伴明)
9位「ちょっと思い出しただけ」
10位「線は、僕を描く」
【外国映画】
1位「コーダ あいのうた」
2位「カモンカモン」
3位「ベイビー・ブローカー」
4位「白い牛のバラッド」
5位「オフィサー・アンド・スパイ」
6位「LAMB/ラム」
7位「クライ・マッチョ」
8位「戦争と女の顔」(カンテミール・バラーゴフ、Dylda、ロシア、2019)
9位「グリーン・ナイト」(デヴィッド・ロウリー、The Green Knight、米・加・愛、2021)
10位「メモリア」

◆健
【日本映画】
1位「流浪の月」
2位「ある男」
3位「窓辺にて」(今泉力哉)
4位「宮松と山下」
5位「ヘルドッグス」
6位「さがす」(片山慎三)
7位「土を喰らう十二ヵ月」
8位「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱)
9位「夜明けまでバス停で」
10位「LOVE LIFE」
【外国映画】
1位「ベイビー・ブローカー」
2位「ベルファスト」
3位「エルヴィス」(バズ・ラーマン、米・豪、Elvis、2022)
4位「ザリガニの鳴くところ」(オリヴィア・ニューマン、Where the Crawdads Sing、アメリカ、2022)
5位「PIG/ピッグ」(マイケル・サルノスキ、Pig、米・英、2020)
6位「LAMB/ラム」
7位「あのこと」
8位「白い牛のバラッド」
9位「ゴヤの名画と優しい泥棒」
10位「ほの蒼き瞳」スコット・クーパー、The Pale Blue Eye 、アメリカ、2022)

2021年ベストテン発表

2022年01月19日 | BEST


 新年が明け、読者のみなさまには初春のお慶びを申し上げます。
 一昨年以来の新型感染症の災厄はいっこうに衰えの様子を見せず、期待されたワクチン開発による抑制も一時的なものに過ぎなかったようで、変異の速度についていけないわれわれはオミクロン株とやらの猛威の前に為す術もなく切歯扼腕。しかし、様々な危機と脅威を克服してきたのが人間の歴史であると信じたい。
 毎年同じ台詞の繰り返しになりますが、今年こそよい年でありますようにとの切なる声が天に届くことを願って、執筆者のベスト(最大10本まで選考)を発表します。(健)

◇久
【日本映画】
1位「由宇子の天秤」(春本雄二郎)
2位「護られなかった者たちへ」(瀬々敬久)
3位「騙し絵の牙」(吉田大八)
4位「先生、私の隣に座っていただけませんか?」(堀江貴大)
5位「痛くない死に方」(高橋伴明)
6位「パンケーキを毒味する」(内山雄人)
【外国映画】
1位「私は確信する」(アントワーヌ・ランボー、Une intime conviction、フランスほか、2018年)
2位「モーリタニアン 黒塗りの記録」(ケヴィン・マクドナルド、The Mauritanian、英・米、2021年)
3位「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」(フランソワ・ジラール、The Song of Names、加・英・独ほか、2019年)
4位「グレタ ひとりぼっちの挑戦」(ネイサン・グロスマン、I Am Greta、スウェーデンほか、2020年)
5位「悪なき殺人」(ドミニク・モル、Seules les bêtes、仏・独、2019年)
6位「ファーザー」(フロリアン•ぜレール、The Father、 英・仏、2020年)
7位「1秒先の彼女」(チェン・ユーシュン、消失的情人節、台湾、2020年)
8位「茲山魚譜 チャサンオボ」(イ・ジュニク、자산 어보、韓国、2021年)
9位「名もなき歌」(メリーナ・レオン、Canción sin nombre、 ペルーほか、2019年)
10位「ブータン 山の教室」(パオ・チョニン・ドルジ、Lunana: A Yak in the Classroom、ブータンほか、2019年)


◆HIRO
【日本映画】
1位「すばらしき世界」(西川美和)
2位「ヤクザと家族 The family」(藤井道人)
3位「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介)
4位「心の傷を癒すということ 劇場版」(安達もじり・松岡一史 ・中泉慧 )
5位「梅切らぬバカ」(和島香太郎)
6位「劇場版 きのう何食べた?」(中江和仁)
7位「護られなかった者たちへ」
8位「竜とそばかすの姫」(細田守)
9位「痛くない死に方」
10位「孤狼の血 LEVEL2」(白石和彌)
【外国映画】
1位「ファーザー」
2位「ノマドランド」(クロエ・ジャオ、Nomadland、アメリカ、2020年)
3位「MINAMATA―ミナマタ―」(アンドリュー・レヴィタス、Minamata、英・米ほか、2020年)
4位「逃げた女」(ホン・サンス、도망친 여자、韓国、2020年)
5位「ライトハウス」(ロバート・エガース、The Lighthouse、アメリカほか、2019年)
6位「ブータン 山の教室」
7位「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(キャリー・ジョージ・フクナガ、No Time to Die、英・米ほか、2021年)
8位「この世界に残されて」(バルナバーシュ・トート、Akik maradtak、ハンガリー、2019年)
9位「マトリックス レザレクションズ」(ラナ・ウォシャウスキー、The Matrix Resurrections、アメリカ、2021年)
10位「グレタ ひとりぼっちの挑戦」


◆kenya
【日本映画】
1位「先生、私の隣に座っていただけませんか?」
2位「すばらしき世界」
3位「ヤクザと家族 The Family」
4位「そして、バトンは渡された」(前田哲)
5位「茜色に焼かれる」(石井裕也)
6位「孤狼の血 LEVEL2」
【外国映画】
1位「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」
2位「ノマドランド」
3位「クーリエ:最高機密の運び屋」(ドミニク・クック、The Courier、英・米、2021年)
4位「モーリタニアン 黒塗りの記録」
5位「オールド」(M・ナイト・シャマラン、Old、アメリカ、2021年)
6位「テーラー 人生の仕立て屋」(ソニア・リザ・ケンターマン、Raftis、希・独・白、2020年)
7位「アウシュヴィッツ・レポート」(ペテル・べブヤク、The Auschwitz Report、スロヴァキアほか、2020年)


◇アロママ
【日本映画】
1位「空白」(吉田恵輔)
2位「映画 太陽の子」(黒崎博)
3位「花束みたいな恋をした」(土井裕泰)
4位「劇場版 きのう何食べた?」
5位「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(大友啓史)
6位「キネマの神様」(山田洋次)
7位「街の上で」(今泉力哉)
8位「騙し絵の牙」
9位「すばらしき世界」
10位「護られなかった者たちへ」
【外国映画】
1位「モロッコ、彼女たちの朝」(マリヤム・トゥザニ、Adam、モロッコほか、2019年)
2位「ファーザー」
3位「ドント・ルック・アップ」(アダム・マッケイ、Don't Look Up、アメリカ、2021年)
4位「ステージ・マザー」(トム・フィッツジェラルド、Stage Mother、カナダ、2020年)
5位「ブラックバード 家族が家族であるうちに」(ロジャー・ミッシェル、Blackbird、米・英、2019年)
6位「ディア・エヴァン・ハンセン」(スティーヴン・チョボスキー、Dear Evan Hansen、アメリカ、2021年)
7位「レンブラントは誰の手に」(ウケ・ホーヘンダイク、Mijn Rembrandt、オランダ、2019年)
8位「シカゴ7裁判」(アーロン・ソーキン、The Trial of the Chicago 7、米・英、2020年)


◇春雷
【日本映画】
1位「街の上で」
2位「ヤクザと家族 The Family」
3位「あのこは貴族」(岨手由貴子)
4位「空白」
5位「偶然と想像」(濱口竜介)
6位「草の響き」(斎藤久志)
7位「痛くない死に方」
8位「ひとくず」(上西雄大)
9位「砕け散るところを見せてあげる」(SABU)
10位「花束みたいな恋をした」
【外国映画】
1位「少年の君」(デレク・ツァン、少年的你、中国・香港、2019年)
2位「クーリエ:最高機密の運び屋」
3位「MINAMATA―ミナマタ―」
4位「ファーザー」
5位「ミナリ」(リー・アイザック・チョン、Minari、アメリカ、2020年)
6位「羊飼いと風船」(ペマ・ツェテン、気球、中国、2019年)
7位「返校 言葉が消えた日」(ジョン・スー、返校、台湾、2019年)
8位「PITY ある不幸な男」(バビス・マクリディス、Oiktos、ギリシャ・ポーランド、2018年)


◆健
【日本映画】
1位「孤狼の血 LEVEL2」
2位「偶然と想像」
3位「ヤクザと家族 The Family」
4位「空白」
5位「護られなかった者たちへ」
6位「すばらしき世界」
7位「キネマの神様」
8位「草の響き」
9位「あのこは貴族」
10位「街の上で」
【外国映画】
1位「ノマドランド」
2位「ドント・ルック・アップ」
3位「逃げた女」
4位「ファーザー」
5位「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(ジェーン・カンピオン、The Power of the Dog、イギリスほか、2021年)
6位「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」(トッド・ヘインズ、Dark Waters、アメリカ、2019年)
7位「The Hand of God」(パオロ・ソレンティーノ、È stata la mano di Dio、伊・米、2021年)
8位「悪なき殺人」
9位「クーリエ:最高機密の運び屋」
10位「アンモナイトの目覚め」(フランシス・リー、Ammonite、英・豪・米、2020年)

編集注記:原則として2021年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには監督、原題、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Databaseを参考とした。(健)

2020年ベストテン発表

2021年01月20日 | BEST


新たな年を迎えました。昨年は新型コロナ流行という未曾有の事態に興行界も大きな打撃を受けましたが、後半には「鬼滅の刃」旋風が巻き起こってほぼひとり勝ち。興行収入ではコロナ禍の不況を吹き飛ばす好材料となったものの、シネコンのスクリーンを独占するところとなって、良心的な秀作群がその煽りを食らったのは負の一面でした。そうしたなかで、2020年も力作が揃いましたが、年末にはそれまで優等生といわれた京都市の感染数が急増するに及んで、われわれもまた外出を自粛せざるを得ず、鑑賞本数が大きく減ったのは残念のきわみでした。今年こそよい年であることを願って執筆者のベスト(最大10本まで選考)を発表します。(健)

◇久
【日本映画】
1位「罪の声」(土井裕泰)
2位「スパイの妻」(黒沢清)
【外国映画】
1位「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ、기생충、韓国、2019年)
2位「オフィシャル・シークレット」(ギャヴィン・フッド、Official Secrets、英・米ほか、2019年)
3位「ある画家の数奇な運命」(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルタ、Werk ohne Autor、独・伊、2018年)
4位「ウルフウォーカー」(トム・ムーア&ロス・スチュワート、WolfWalkers、愛・ルクセンブルクほか、2020年)
5位「少女は夜明けに夢をみる」(メヘルダード・オスコウイ、Royahaye dame sobh、イラン、2016年)
6位「コリー二事件」(マルコ・クロイツパイントナー、Der Fall Collini、ドイツ、2019年)
7位「その手に触れるまで」(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、Le jeune Ahmed、白・仏、2019年)
8位「カセットテープ・ダイアリーズ」(グリンダ・チャーダ、Blinded by the Light、英・米・仏、2019年)
9位「存在のない子供たち」(ナディーン・ラバキー、Capharnaüm、レバノン・仏ほか、2018年)
10位「82年生まれ、キム・ジヨン」(キム・ドヨン、82년생 김지영、韓国、2019年)

◆HIRO
【日本映画】
1位「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」(豊島圭介)
2位「海辺の映画館-キネマの玉手箱」(大林宣彦)
3位「MOTHER マザー」(大森立嗣)
4位「his」(今泉力哉)
5位「浅田家!」(中野量太)
6位「罪の声」
7位「スパイの妻」
8位「窮鼠はチーズの夢を見る」(行定勲)
9位「ミセス・ノイズィ」(天野千尋)
10位「男はつらいよ お帰り寅さん」(山田洋次)
【外国映画】
1位「1917 命をかけた伝令」(サム・メンデス、1917、米・英ほか、2019年)
2位「パラサイト 半地下の家族」
3位「TENET テネット」(クリストファー・ノーラン、Tenet、英・米、2020年)
4位「ジョジョ・ラビット」(タイカ・ワイティティ、Jojo Rabbit、ニュージーランドほか、2019年)
5位「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」(エミール・クストリッツア、El Pepe, Una Vida Suprema、アルゼンチン・ウルグアイほか、2018年)
6位「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」(ニコラウス・ライトナー、Der Trafikant、墺・独、2018年)
7位「スウィング・キッズ」(カン・ヒョンチョル、스윙키즈、韓国、2018年)
8位「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」(クリス・フォギン、Fisherman's Friends、イギリス、2019年)
9位「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」(ライアン・ジョンソン、Knives Out、アメリカ、2019年)
10位「パヴァロッティ 太陽のテノール」(ロン・ハワード、Pavarotti、米・英ほか、2019年)

◆kenya
【日本映画】
1位「浅田家!」
2位「罪の声」
3位「ラストレター」(岩井俊二)
【外国映画】
1位「パラサイト 半地下の家族」
2位「ソニア ナチスの女スパイ」(イェンス・ヨンソン、Spionen、ノルウェー、2019年)
3位「ニューヨーク 親切なロシア料理店」(ロネ・シェルフィグ、The Kindness of Strangers、丁・加ほか、2019年)
4位「フォードvsフェラーリ」(ジェームズ・マンゴールド、Ford v Ferrari、アメリカ、2019年)
5位「第三夫人と髪飾り」(アッシュ・メイフェア、Vợ Ba、ベトナム、2018年)
6位「スキャンダル」(ジェイ・ローチ、Bombshell、加・米、2019年)
7位「ようこそ映画音響の世界へ」(ミッジ・コスティン、Making Waves: The Art of Cinematic Sound、アメリカ、2019年)
8位「フェアウェル」(ルル・ワン、The Farewell、米・中、2019年)
9位「ブラック アンド ブルー」(デオン・テイラー、Black and Blue、アメリカ、2019年)
10位「リチャード・ジュエル」(クリント・イーストウッド、Richard Jewell、アメリカ、2019年)

◇アロママ
【日本映画】
1位「罪の声」
2位「二人ノ世界」(藤本啓太)
3位「スパイの妻」
4位「ミッドナイトスワン」(内田英治)
5位「窮鼠はチーズの夢を見る」
6位「糸」(瀬々敬久)
7位「ばるぼら」(手塚眞)
8位「望み」(堤幸彦)
9位「宇宙でいちばんあかるい屋根」(藤井道人)
10位「MOTHER マザー」
【外国映画】
1位「シェイクスピアの庭」(ケネス・ブラナー、All Is True、イギリス、2018年)
2位「ダウントン・アビー」(マイケル・エングラー、Downton Abbey、英・米、2019年)
3位「TENET テネット」
4位「82年生まれ、キム・ジヨン」
5位「ストーリー・オブ・マイ・ライフ 私の若草物語」(グレタ・ガーウィグ、Little Women アメリカ、2019年)
6位「スキャンダル」
7位「スウィング・キッズ」
8位「パラサイト 半地下の家族」
9位「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(ウッディ・アレン、A Rainy Day in New York、アメリカ、2019年)
10位「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(アグニェシュカ・ホランド、Mr. Jones、波・英・ウクライナ、2019年)

◆KOICHI
【日本映画】
1位「スパイの妻」
2位「37セカンズ」(HIKARI)
3位「おらおらでひとりいぐも」(沖田修一)
【外国映画】
1位「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」
2位「リチャード・ジュエル」
3位「在りし日の歌」(ワン・シャオシュアイ、地久天长、中国、2019年)
4位「パラサイト 半地下の家族」
5位「シェイクスピアの庭」

◇春雷
【日本映画】
1位「浅田家!」
2位「37セカンズ」
3位「子どもたちをよろしく」(隅田靖)
4位「スパイの妻」
5位「朝が来る」(河瀨直美)
6位「おらおらでひとりいぐも」
7位「時の行路」(神山征二郎)
8位「影裏」(大友啓史)
9位「海辺の映画館-キネマの玉手箱」
10位 「糸」
【外国映画】
1位「はちどり」(キム・ボラ、벌새、韓・米、2018年)
2位「燃ゆる女の肖像」(セリーヌ・シアマ、Portrait de la jeune fille en feu、フランス、2019年)
3位「リチャード・ジュエル」
4位「ジョジョ・ラビット」
5位「パラサイト 半地下の家族」
6位「マザーレス・ブルックリン」(エドワード・ノートン、Motherless Brooklyn、アメリカ、2019年)
7位「グッドライアー 偽りのゲーム」(ビル・コンドン、The Good Liar、英・独・米、2019年)
8位 「フォードvsフェラーリ」
9位「名もなき生涯」(テレンス・マリック、A Hidden Life、米・英・独、2019年)
10位「1917 命をかけた伝令」

◆健
【日本映画】
1位「スパイの妻」
2位「一度も撃ってません」(阪本順治)
3位「生きちゃった」(石井裕也)
4位「海辺の映画館-キネマの玉手箱」
5位「罪の声」
6位「his」
7位「影裏」
8位「MOTHER マザー」
9位「朝が来る」
10位「子どもたちをよろしく」
【外国映画】
1位「パラサイト 半地下の家族」
2位「Mank マンク」(デヴィッド・フィンチャー、Mank、アメリカ、2020年)
3位「マザーレス・ブルックリン」
4位「リチャード・ジュエル」
5位「シカゴ7裁判」(アーロン・ソーキン、The Trial of the Chicago 7、米・英ほか、2020年)
6位「ジョジョ・ラビット」
7位「1917 命をかけた伝令」
8位「オフィシャル・シークレット」
9位「スキャンダル」
10位「名もなき生涯」

編集注記:原則として2020年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには監督、原題、製作国、製作年を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作国・製作年はInternet Movie Database、韓国映画のハングル題名は「輝国山人Korean Movies」を参考とした。(健)

執筆者の2019年ベストテン発表

2020年01月15日 | BEST


 謹賀新年、読者の皆さまには旧年中のご愛読に感謝し、今年もまた引き続きご愛読いただきますようお願い申し上げます。
さて、恒例の執筆者によるベストテン発表です。デジタル化による映画製作の簡便化・量産化、ネットでの映像コンテンツの配信という新しい公開方法も加わり、年間1000本以上もの内外作品が公開される時代が到来しました。したがって、みんなが共通して見ている作品も少なくなっており、各自のベストテンが多様化しているのもそうしたことを反映しています。
注記:原則として2019年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Databaseを参考とした。

◇久
【日本映画】
1位「カツベン!」(周防正行)
 この作品自体が活動弁士付き無声映画のような雰囲気を持った映画。周防監督の映画愛が溢れていた。
2位「ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲」(才谷遼)
 何か事が起こっても誰も責任を取らない、水に流して曖昧に済ませてしまう。こんな日本でいいのと問われている。
【外国映画】
1位「家族を想うとき」(ケン・ローチ、Sorry We Missed You 、2019年イギリス・フランス・ベルギー)
 “Sorry We Missed You”というタイトルに込められたローチ監督のメッセージに心が震えた。いつもブレない監督の作品が好きだ。
2位「ニューヨーク公立図書館 エクス・リブリス」(フレデリック・ワイズマン、Ex Libris-The New York Public Library 、2017年アメリカ)
 世界で最も有名な図書館の舞台裏。3時間25分のドキュメンタリーが、私たちが図書館に対して持っている固定観念を打ち砕く。こんな図書館が身近にあれば、もっと利用したくなる。
3位「バハールの涙」(エヴァ・ウッソン、Les filles du soleil 、2018年フランス・ベルギー・ジョージア・スイス)
 ISに拉致された息子を取り戻すため、銃を取って立ち上がったクルド人女性バハール。2018年ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドの自伝と重なった。
4位「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(カビール・カーン、Bajrangi Bhaijaan、2015年インド)
 真面目なインド人青年が、声の出ないパキスタン人の迷子の少女を故郷へ帰そうと出た旅の途中で出会う様々な困難。心が通い合えば国や宗教が違っても争いごとは避けられる。
5位「マイ・ブックショップ」(イザベル・コイシェ、The Bookshop、2017年イギリス・スペイン・ドイツ)
 イギリス東部の海辺の小さな街で、周囲の反対にあいながら書店を開店した女性の物語。最近は本屋で本を買うよりも図書館で借りるばかりだが、活字の奥に広がる世界は好きだ。
6位「天才作家の妻ー40年目の真実ー」(ビョルン・ルンゲ、The Wife、2017年スウェーデン・アメリカ・イギリス)
 女性の書いた本は読まれないという言葉に小説家になることを諦めた妻と、ノーベル文学賞を受賞した夫の間の秘密。夫を“支え続けた”愛情と怒りに揺れ動く妻役のグレン・クローズが良かった。
7位「僕たちは希望という列車に乗った」(ラース・クラウメ、Das schweigende Klassenzimmer、2018年ドイツ)
 1956年、ベルリンの壁建設5年前、自分たちの人生を左右する重大な選択を迫られた東ドイツの高校生たちの苦悩と友情の物語が感動的。
8位「イエスタデイ」(ダニー・ボイル、Yesterday、2019年イギリスほか)
 地球規模の12秒間の停電で、世界中からビートルズを知っている人がいなくなってしまうなんて…。やっぱりビートルズナンバーは素晴らしい!
9位「ROMA/ローマ」(アルフォンソ・キュアロン、Roma、2018 年メキシコ・アメリカ)
 中産階級の家庭で家政婦として働く若い女性の日常を通して、1970年代のメキシコの市民生活と社会が垣間見える。
10位「ディリリとパリの時間旅行」(ミッシェル・オスロ、Dilili à Paris、2018年フランス・ベルギー・ドイツ)
 ベル・エポックのパリを満喫しながら、ディリリとオレルと一緒に誘拐事件の謎を解いていく贅沢なアニメだった。

◆HIRO
【日本映画】
1位「蜜蜂と遠雷」(石川慶)
 国際ピアノコンクールを舞台に、世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦、才能、運命、そして人間としての成長を描く。4人の若手俳優の熱演と、日本最高峰のピアニストたちの本物の演奏が、「その会場にいる」という臨場感を盛り上げる。
2位「新聞記者」(藤井道人)
 東京新聞・望月衣塑子記者の同名ベストセラー「新聞記者」が原案。メディアへの介入など、現代社会が抱える様々な問題に踏み込む。韓国の若手トップ女優シム・ウンギョンと日本のエース、松坂桃李の演技合戦も見物。
3位「愛がなんだ」(今泉力哉)
 成田凌の出世作。どこかいい加減だけれど許せちゃう、主人公テルコの片思いの相手マモちゃんを好演。いつも一緒にいたい気持ちは、ついに「相手と同化したい」気持ちまでに発展。それなら自分の場合はどうなのか、自身の恋愛観についても思わず考えさせられてしまう。
4位「半世界」(阪本順治)
 スマップを卒業して、映画や舞台等、本格的に演技の世界に入り込んだ稲垣吾郎。山奥で自然と共に生きる炭焼き職人を力演。共演の長谷川博己とも十分張り合っていける演技力を証明した。人生の半分に差しかかり、ふと立ち止まる主人公たち。さて、前期高齢者に突入した自分はこれからどう生きる?!
5位「カツベン!」
 そのユニークな発想と信念で、愉快な人間模様を描き続ける周防正行監督。映画が活動写真とよばれた頃に活躍した活動弁士が今回の主人公。まるでカラーの活動写真を見ているような展開が見ていて楽しい。八幡堀、三井寺、旧豊郷小学校等、滋賀のロケ地がうまく生かされているのもうれしい。
6位「よこがお」(深田晃司)
 身に覚えのないことで不利な状況に陥り、気がつけば日常が崩壊するという、誰にでも起こりうる不条理に呑み込まれていく訪問看護士の市子と、すべてを失い、自由奔放に生きるリサという違った人格(よこがお)を持つ主人公を筒井真理子が熱演。その復讐劇から、希望は見えるか?!
7位「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清)
 中央アジアのウズベキスタンを舞台に、巨大な湖に棲む幻の怪魚を探すためにやってきたバラエティ番組のリポーター役を、元AKB女優前田敦子が挑む。言葉も通じない異国に放り込まれた女性が、いかに自分の殻から踏み出し、勇気を手に入れるか、初めて目にするウズベキスタンの景色とともに新鮮な感覚の作品。
8位「長いお別れ」(中野量太)
 自分の家族がかかることで認知症が身近な存在になり、この作品の父親とオーバーラップして、考えさせられること多々あり。現実はこんなに甘くないと思いながらも、前向きに生きようとする娘や孫たちに希望を与えられた。
9位「人間失格 太宰治と3人の女たち」(蜷川実花)
 世界でもっとも売れている日本の小説「人間失格」、その誕生秘話をドラマティックに映画化。主人公の太宰治に小栗旬、正妻に宮沢りえ、愛人に沢尻エリカ、最後の女に二階堂ふみと、役にぴったりの俳優陣。本物の太宰も、こんな風にかっこよかったんでしょうね。
10位「キングダム」(佐藤信介)
 続編を早く見たい!と思わせる、上手い演出。売れっ子になってしまった吉沢遼のスケジュールを確保するのは、至難の業か?!
【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」
 やっぱりこの作品以上の衝撃と感動は現れなかった。ドキュメンタリー風の白黒画面も一段と印象を深くする。
2位「ジョーカー」(トッド・フィリップス、Joker、2019年アメリカ)
 貧しい道化師アーサー・フレックが、あの「バットマン」の悪役、かつゴッサムシティの英雄ジョーカーにどのような形で変身していったのか、そのパフォーマンスに震える!!アーサーに扮するホアキン・フェニックスの熱演が見事。
3位「グリーンブック」(ピーター・ファレリー、Green Book 、2018年アメリカ)
 1936年から66年まで毎年作成・出版されていたグリーンブック。黒人旅行者を対象としたガイドブックで、黒人たちが差別、暴力、逮捕を避け、車で移動するために欠かせないツールとして重宝がられたそうだ。人種のるつぼといわれるアメリカならではのヒューマンコメディが感動を呼ぶ。
4位「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(クエンティン・タランティーノ、Once Upon a Time ...in Hollywood、2019年アメリカ)
 クエンティン・タランティーノ監督自身が幼少期を過ごした60年代のハリウッド黄金期最後の瞬間を、郷愁とリスペクトを込めて脚本を執筆し、過去8作品の集大成として監督。ロマン・ポランスキー監督とシャロン・テートも登場し、あの事件が起きるきっかけを描く。ブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオの初共演もそれぞれ見せ場があり、見事に成功。タランティーノらしい暴力描写も健在だ。
5位「イエスタデイ」
 今年一番の「拾いもの」。同世代ダニー・ボイル監督も大のビートルズファンだったそうだ。とにかく出てくる曲をよく知っていて、その場の状況にぴったりなのだから嬉しくなってしまう。主役の二人も庶民的で好感が持てる。
6位「運び屋」(クリント・イーストウッド、The Mule、2018年アメリカ)
 クリント・イーストウッドの次回作は「リチャード・ジョエル」。90歳にして衰えることのないバイタリティはこの「運び屋」でも証明済み。
7位「真実」(是枝裕和、La vérité 、2019年フランス・日本)
 「万引き家族」でカンヌに旋風を巻き起こした是枝監督の世界進出作品。フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュにアメリカの演技派イーサン・ホークを絡め、「真実」という名の自伝本を出版した大女優とその娘の、心の中の<真実>を問う。この作品でも子役がうまく使われていて、是枝監督らしい家族愛に一役買う。
8位「アド・アストラ」(ジェームス・グレイ、Ad Astra、2019年アメリカほか)
 宇宙旅行も夢ではなくなってきた昨今だが、近未来、地球から遙か43億㎞、太陽系の彼方で行方不明となってしまった父を追いかけ、その謎を解こうとする宇宙飛行士にブラッド・ピットが扮する。撮影監督にホイテ・ヴァン・ホイテマを起用したのは大正解。「インターステラー」に続き、宇宙空間を見事に表現。ブラピの演技にも貫禄が出てきた。
9位「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(J・J・エイブラムス、Star Wars: Episode IX - The Rise of Skywalker、2019年アメリカ)
 よくぞ納得いくようにまとめてくれました。42年に渡るサーガの集大成。レイア姫演じる故キャリー・フィッシャーの映像もいっぱい残っていて大感激。
10位「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」(マイケル・ラドフォード、La musica del silenzio、2017年イタリア)
 久しぶりに見たイタリア映画。使われていた言語は英語だったが、幼少時代や歌のシーンになるとイタリア語に。本国ではどのように上映されているのでしょう?!アンドレア・ボチェッリについて詳しく知れたのがよかった。そして何といってもその歌声に感動!!

◆kenya
【日本映画】
1位「居眠り磐音」(本木克英)
 昔からの友人を斬らざるを得ないことになり、恋人とも別れ、浪人生活の中で、人の優しさに触れていく哀しみを抱えた主人公役に、松坂桃李が合っていて、現代にも通じるチャンバラエンターテイメント映画だった。
2位「僕はイエス様が嫌い」(奥山大史)
 小規模予算の映画だが、小学生の目線で、じっくりと人間を捉え、温かみのある映画。こんなタイプの映画がロングラン上映されてほしい。
3位「天気の子」(新海誠)
 新海誠監督の前作「君の名は」よりも、ストーリー分かり易く、前作よりも観やすかった。主題歌も良かった。
4位「よこがお」
 人と人との繋がりで人間は生きていくが、この主人公は、ある事件をきっかけに、誰の何を信じれば良いのか分からなくなってしまう。人間のドロドロした部分がよく出ていた。
5位「台風家族」(市井昌秀)
 草彅剛が悪いイメージの役は初めてではないだろうか。ピエール瀧が準主役だった為、公開が延び延びになっていたようだが、親子愛をベースにした期待以上に心温まる映画だった。演出はもちろんのこと、オリジナル脚本が素晴らしいと感じた。久し振りのMEGUMIが良かった。
6位「アルキメデスの大戦」(山崎貴)
 戦艦大和建設を予算面からの切り口にした斬新さに驚き、実際にあったのかどうか分からないが、建設にあたっての軍部の真意に驚いた。緊迫したやりとりシーンの演出が上手い。主演の菅田将暉と少尉役の柄本佑、海軍造船中将役の田中泯の3人は、ずば抜けて良かった。
7位「ひとよ」(白石和彌)
 恨みながらも、家族であることを背負い続けなければいけない状況に耐える人達。「人」って複雑。2019年12月4日アロママさんのブログにある「ひとよ」の解釈方法が本作品を物語っていると思う。ちなみに、登場時間は短いが、本作のMEGUMIも良かった。
8位「新聞記者」
 よく本作が今の日本で、公開出来たなあと感心した。関連のドキュメンタリーも公開され、かなりのロングランになっているようである。隣国では、この映画は製作もされないし、万が一、製作出来たとしても公開されないだろう。
9位「マスカレード・ホテル」(鈴木雅之)
 エンターテイメント映画の王道の中の王道。キムタクは何をやってもキムタクであることが再確認出来る映画だった。
10位「決算!忠臣蔵」(中村義洋)
 あの忠臣蔵をお金の面から切り取った映画。吉本興業がコラボしているので、全編に渡ってお笑いの流れ。堤真一の関西弁での「なんでやねん!」連発には笑った。オチ(結果)も分かっているので、安心して楽しめた。
【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」
 終始、壮絶な人生展開に圧倒させられる。白黒だが映像に力がある。2001年公開の同監督作品「天国の口、終わりの楽園。」もお薦め。NETFLIXの勢いが凄い。「映画」=「映画館」の時代が変わろうとしているのか。
2位「芳華-Youth-」(フォン・シャオガン、芳華 Youth、2017年中国)
 苦しい時期を共有した仲間が、時と共に離れ離れになる。そして、落ち着くべく時が来れば、落ち着いていく。人の一生とは儚く切ないもの。こういった作品のロングランを期待したい。
3位「帰れない二人」(ジャ・ジャンクー、江湖八女、2018年中国)
 主役のチャオ・タオが素晴らしい。ヤクザに襲撃された際に、凛とした表情で追っ払うシーンには圧倒された。自分に自信のある目・表情をしていた。刑期を終えた後との違いを見事に演じ切った力にも圧倒された。
4位「女王陛下のお気に入り」(ヨルゴス・ランティモス、The Favourite、2018年アイルランド・イギリス・アメリカ)
 女優3人の演技が観応え十分。個人的には、アカデミー賞を獲ったオリビア・コールマンより、レイチェル・ワイズが良かった。本作品には関係無いが、レイチェル・ワイズの旦那は、ダニエル・クレイグだった!ビックリ!
5位「ブラック・クランズマン」(スパイク・リー、BlacKkKlansman、2018年アメリカ)
 スパイク・リーの手にやっとアカデミー賞が渡った。ここ最近の世の風潮を忖度し、アカデミー協会が気を遣ったのか。充分、作品としては出来上がった印象があるので、気を遣ったと云われるアカデミー協会にとっては、酷な話かな?原題のスペルにも一工夫が見られますね。
6位「運び屋」
 やはりイーストウッドは監督だけではなく、画面に登場してほしい。それにしても、かなり老体にムチを打って演技している印象が強くなってきた。
7位「ホテル・ムンバイ」(アンソニー・マラス、Hotel Mumbai、2018年オーストラリア・インド・アメリカほか)
 2008年インドムンバイで起きたテロを基にした映画で、悩むリーダーや一体になる難しいさが表現されていたのが良かった。それにしても、テロの恐ろしさと、若年期の教育の重要性をひしひしと感じた。
8位「プライベート・ウォー」(マシュー・ハイネマン、A Private War、2018年イギリス・アメリカ)
 2012年シリアで命を落とす戦場記者メリー・コルヴィンを描いた映画。戦場でしか生きられない、その現場に駆り立てるパワーに身震いさせられた。
9位「エンテベ空港の7日間」(ジョゼ・パジーリャ、Entebbe、2018年イギリス・アメリカほか)
 1976年エールフランス機が4人の犯人によってハイジャックされた。向かった先は、ウガンダのエンテベ空港。犯人の目的は何か?乗客乗員を無事に助け出すことは出来るのか?犯人側と政府側のそれぞれの視点があるのが面白かった。
10位「THE INFORMER/三秒間の死角」(アンドレア・ディ・ステファノ、The Informer、2019年アメリカ)
 昨年は、ロザムンド・パイクの年だった。「プライベート・ウォー」「エンテベ空港の7日間」と本作を観た。2019年12月11日のブログにも書いたが、兎に角、美しい。彼女を観るだけで価値がある。

◇アロママ
【日本映画】
1位「男はつらいよ お帰り 寅さん」(山田洋次)
 よくぞ50作目を!山田洋次監督、主演者たちが元気で居てくれることに感謝。一つ一つ懐かしくて、歴史の厚みに感動してしまう。
2位「カツベン!」
 久しぶりの周防作品。映画への愛情をひしひしと感じ、日本映画史にますます興味がわく。成田凌は苦手だったけど、いい作品に恵まれたと思うし、頑張った。
3位「蜜蜂と遠雷」
 鑑賞後に原作を読んだが、ピアノコンクールの映像化に挑戦した作品。演奏家たちの苦悩と同時に、演奏できる喜びがあふれていた
4位「新聞記者」
 今の日本でよく作ってくれたと、制作陣に敬意を表したい。ドキュメンタリー映画の「i-新聞記者ドキュメント」も観られてよかった。日本の報道の自由度がかなり低いことも哀しいかな、現実。若い人たちが選挙に行かないのは、我々大人たちの責任なのだが。彼女の健康をひたすら祈りたい。
5位「劇場版 そして、生きる」(月川翔)
 有村架純ファンとして、観られてよかった。ラストの母親らしい笑顔がいい。「ナラタージュ」の若いカップルはここでも結ばれなかった!でも、「今でも好き!」と言える人が在ることは、それだけで生きる力になる。脚本の岡田恵和はやはり上手い!
6位「小さな恋のうた」(橋本光二郎)
 単なる青春バンド物でない、問いかけるテーマは大きいし重いが、希望を感じられた。若者の力を信じよう。
7位「アルキメデスの大戦」
 菅田将暉の数学者っぷりがカッコいいし、新しい視点の戦争もので、面白かった。歴史に「もし・・・」はないのだけれど、戦争はこうやって引き起こされていることを改めて思う。
8位「ひとよ」
 母親の究極のエゴ、田中裕子が圧巻。子どもたちは振り回されただけではないのだけれど。タイトルをひらがなで表記しているのもニクイ。
9位「人間失格 太宰治と3人の女たち」
 蜷川実花作品は初めて見る。色彩の美しさはさすが。久しぶりに友人と太宰について語り合う機会を持てた。宮沢りえと二階堂ふみがいい。沢尻がそもそも苦手なので、「ああやっぱり!」感をもったが、他の役者さんたちの仕事が傷つけられて残念。
10位「みとりし」(白羽弥仁)
 こういう仕事があるのだ!東京の有楽町で見られた貴重な体験、そこにワクワクしてるって、どんだけ田舎者(笑)。
【外国映画】
1位「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
 タランティーノ作品は初めて観た。この作品も監督自身の映画愛を感じる。土埃とタバコのにおいが漂ってきそう。ブラピのカッコよさを改めて知ったし、ディカプリオのダメっぷりもチャーミング。
2位「ある少年の告白」(ジョエル・エドガートン、Boy Erased、2018年オーストラリア・アメリカ)
 現代のアメリカでいまだに存在する、LGBT矯正プログラムに戦慄の思いがした。あの美しいニコール・キッドマンがもう十分に母親を演じきってるって・・・。
3位「天才作家の妻-40年目の真実-」
 グレン・クローズの静かな怒りが圧巻。「メアリーの総て」から時代を経てもなお・・・。
4位「それだけが、僕の世界」(チェ・ソンヒョン、그것만이 내 세상、2018年韓国)
 イ・ビョンホンも魅力的だったが、サバン症候群の弟を演ずるパク・ジョンミンに圧倒された。身につまされる話だった。
5位「ガーンジー島の読書会の秘密」(マイク・ニューウェル、The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society、2018年イギリス・フランス・アメリカ)
 第二次世界大戦中のイギリスの秘話を知った。リリー・ジェームズがいい!「ダウントン・アビー」の出演者達を見つけて、間もなく公開の劇場版に、期待が高まる。
6位「グリーンブック」
 黒人差別はもはや過去ではないのだろうが、声高にでなく、ユーモアにのせて、ふっと力を抜いて、語りかけてくれる。
7位「ベン・イズ・バック」(ピーター・ヘッジズ、Ben Is Back 、2018年アメリカ)
 「ある少年の告白」に続いて、ハードな役を演じたルーカス・ヘッジズのメンタルを心配してしまうほど、のめり込む。一口で薬物障害を片付けられないことをこの映画で感じたが、自ら手を出した人はやはりアカン。こちらも、ジュリア・ロバーツが立派なお母ちゃんやってる!
8位「イエスタデイ」
 ビートルズを誰も知らない世界にスリップしてしまったら?!ある種のファンタジー。この作品のリリー・ジェームズも可愛い!そして、ビートルズの偉大さを改めて知る。
9位「記者たち 衝撃と畏怖の真実」(ロブ・ライナー、Shock and Awe 、2017年アメリカ)
 「バイス」と同日に観たのが良かったが、正直言って難しかった。タイトルが軍事作戦名だったとは!今また中東で戦争が起きそうな気配。国内外を問わず、報道の自由を守れるのか。
10位「メリー・ポピンズ リターンズ」(ロブ・マーシャル、Mary Poppins Returns、 2018年アメリカ・イギリス)
 大好きなメリー・ポピンズが帰ってきた!それも50年前の作品へのリスペクト満載で!ファンの期待を裏切らないでくれて、ありがとう!

◆KOICHI
【日本映画】
1位「愛がなんだ」
 愛という死に至る病をコミカルに描いた作品。テーマは主人公テルコの狂気。流血騒ぎになってもおかしくないテーマを淡々とユーモラスに描いている。
2位「さよならくちびる」(塩田明彦)
 三人(ハル、レオ、シマ)の関係が1対2ではなく、1対1対1であることが関係性を複雑にしている。けれどもそれは救いでもある。愛のベクトルが交差していないからだ。音楽によってバラバラだった三人はひとつになれた。
3位「凪待ち」(白石和彌)
 ギャンブル依存の男の更生が、家族の再生や東日本大震災からの復興と呼応している。
4位「洗骨」(照屋年之)
 沖縄の離島に伝わる「洗骨」という風習を通して、崩壊寸前の家族が再生していく物語。
5位「ひとよ」
 母親は自分が犯した殺人を後悔していない。<人を救うための殺人は認められるのか>という問題提起をすれば、日本では珍しい哲学・思想映画になったかもしれない。
【外国映画】
1位「運び屋」
 アールの勝手気ままな行動が、麻薬取締局の捜査を混乱させてしまうというコミカルな展開に、作者の人生哲学が垣間見える。
2位「ROMA/ローマ」
 クレオと子供たちの絆には、時代や地域を超えた美しさがある。個人的な感動が普遍的な感動に昇華している。
3位「家族を想うとき」
 社会制度の不備によって崩壊していく家族の姿がリアルに描かれている。ケン・ローチと是枝裕和は作風に共通点が多いが、家族の問題を描く是枝裕和に対して、ケン・ローチは社会制度の糾弾に重心を置いている。
4位「ジョーカー」
 アーサーの狂気は環境(貧困やいじめ、虐待体験etc)に起因するものなのか、それとも生来の病気なのか。スリリングな展開に最後まで目が離せなかったが、主人公が殺人鬼へと変貌していく過程には共感できなかった。
5位「魂のゆくえ」(ポール・シュレイダー、First Reformed、2017年アメリカ)
 環境汚染企業の問題がトラーをテロリストへと変質させたのでなく、あくまでもきっかけに過ぎないのではないか。トラーの信仰には揺らぎがあり、揺らぎがあれば病める信者の魂を救うことはできない。

◆健
【日本映画】
1位「町田くんの世界」(石井裕也)
 イジメや妬みや傲慢、卑下とは無縁で、いつも他人を気遣い、周囲に安らぎを与えるという町田くんの存在は一種のファンタジーだが、「舟を編む」「ぼくたちの家族」と同様に全編に漂うほのぼの感が心地よい映画に仕上げた。
2位「新聞記者」
 公正中立に真実を報道するのがメディアの役割だと誤解している人が多い。それは必要条件であって、十分条件はあらゆる権力監視と批判精神である。政府高官がいう、「この国の民主主義なんて形だけでいい」と。確かにそう思っている節がある。
3位「蜜蜂と遠雷」
 映像化不可能といわれた原作のテーマ「音」をみごとに映画的に俎上にのせた手腕はとても自主映画出身の監督とは思えぬ技倆だ。石川慶は瀬々とともに私が最も期待する才能である。
4位「よこがお」
 「嵐電」を見ておもしろいと思ったが、同じ日にこれを見て「嵐電」が素人くさく思えたほどうまい映画。ほんの日常の断片を何食わぬ顔でサスペンスにしてしまうところが深井監督の名人芸。
5位「愛がなんだ」
 原作もおもしろいが、それを映画的にうまくまとめて、原作以上に登場人物のキャラを際立たせたところがこの映画の手柄だろう。
6位「さよならくちびる」
 女ふたりのデュエットコンビにマネジャー兼伴奏の男が絡むロードムービーの秀作。小松菜奈と門脇麦の魅力が全開した。
7位「火口のふたり」(荒井晴彦)
 これまでの荒井映画を眼高手低と見ていた私は目を瞠った。荒井の最高傑作ではないか。主役のふたりの身体を張った熱演に拍手を送りたい。
8位「楽園」(瀬々敬久)
 ミステリかと思ったら、かなり根深い人間の本性を抉るような骨太のドラマが展開されるのだが、結局ラストは謎に決着をつけることでミステリの定石を踏襲した。それが蛇足に思えた以外は、やはり瀬々の力量は並大抵ではないと感心した。
9位「旅のおわり世界のはじまり」
 見聞を広めるとか異文化に触れることの意味を押しつけでなく、自然に教えてくれるような秀作だった。往古に日本列島に暮らした先人たちは多様な文化を受け容れることで寛容の精神を培ったのだろう。
10位「閉鎖病棟 それぞれの朝」(平山秀幸)
 主要登場人物で唯一正気な主人公の元死刑囚を通して、国家による制度化された殺人(死刑)、被害者に一方的な非のある殺人、世のため人のためにやむなく犯す殺人を提示し、すごんで見せた平山の真剣な眼差しにたじたじとなった。
【外国映画】
1位「アイリッシュマン」(マーティン・スコセッシ、The Irishman、2019年アメリカ)
 役者もいい、演出もスタイリッシュなのに加えて実録ものだから面白くないはずがない。昨年席巻したネットフリックス旋風の秀作群のひとつ。
2位「芳華-Youth-」
 青春時代を文化大革命に翻弄され、生き延びる者、失脚する者の岐路を描き、波瀾万丈の大河ドラマに仕上がった。とにかく面白いこと請け合い。
3位「ROMA/ローマ」
 首都メキシコシティのローマ地区。そこで暮らす中流の6人家族とその下女の日常を透徹した客観性で見つめるキュアロンの作劇術はメキシカン・レアリズモとでも呼ぼうか。
4位「THE GUILTY/ギルティ」(グスタフ・モーラー、Den skyldige、2018年デンマーク)
 着想の勝利。無声で始まった映画に声が加わり果たして音声の使命は果たせているのか、と問いかけるような映画。音声だけでカーチェイスをやってしまうのだから!
5位「女王陛下のお気に入り」
 宮廷ものというジャンルがあれば、これは「バリー・リンドン」と並ぶケッサクだ。
6位「天才作家の妻-40年目の真実-」
 グレン・クローズがみごと。ノーベル文学賞に輝く夫を支え続けてきた妻が実は、という秘密の暴露も面白いが、やっぱり主演ふたりの競演が見応えたっぷりといえようか。
7位「2人のローマ教皇」(フェルナンド・メイレレス、The Two Popes、2019年イギリス・イタリアほか)
 史上初の南米出身のローマ教皇と生前退位した前任教皇の交代劇を描く実録映画。主演ふたりの名優が舌を巻く抑制した名演で圧倒する。
8位「ブラック・クランズマン」
 この映画を見て納得した。KKKに潜入したユダヤ系のFBI捜査官が「お前まさかユダヤ人ではないだろうな」と疑われる。大都市圏は別にして南部の保守的な風土では黒人と同様に差別される有色人種すなわちアジアの民なのだ。
9位「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」(ユン・ジョンビン、공작、2018年韓国)
 最近の韓国映画はアジアのトップを行くといっていい。スケールといい、おもしろさといい、小気味よいテンポといい、今や日本映画は後塵を拝する格好だ。
10位「象は静かに座っている」(フー・ボー、大象席地而坐、2018年中国)
 思いっきり間をとって、じらしてじらして台詞をいわせ、次の動作に入る独特の演出が4時間の長尺に結実した挙げ句、カットを要求された新鋭監督が苦悩の末に自死した秀作。



2019年上半期ベスト5

2019年07月10日 | BEST


 令和という新しい年号を迎え、その上半期の成果を総括するという意味で私どものベスト5を発表いたします。映画は着実に進化しているという期待に応えた品がどれほどあったか、それは読者の皆さまの体験に任せるとして、執筆者がお薦めするベスと5をどうかお遊びとはいえ、参考にして頂ければ幸いです。(健)

注記:原則として2019年1月~6月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには監督、原題、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。

◇久
【日本映画】
特になし

【外国映画】
1位「バハールの涙」(エヴァ・ウッソン Les filles du soleil 2018年フランス=ベルギー=ジョージアほか)
ISに拉致された息子を取り戻すため、銃を取って立ち上がったクルド人女性バハール。最近読んだ2018年ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドの自伝と重なった。

2位「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(カビール・カーン Bajrangi Bhaijaan 2015年インド)
真面目なインド人青年が、声の出ないパキスタン人の迷子の少女を故郷へ帰そうと出た旅の途中で出会う様々な困難。心が通い合えば国や宗教が違っても争いごとは避けられる。

3位「マイ・ブックショップ」(イザベル・コイシェ The Bookshop 2017年イギリス=スペイン=ドイツ)
イギリス東部の海辺の小さな街で、周囲の反対にあいながら書店を開店した女性の物語。最近は本屋で本を買うよりも図書館で借りるばかりだが、活字の奥に広がる世界は好きだ。

4位「天才作家の妻-40年目の真実-」(ビョルン・ルンゲ The Wife 2017年スウェーデン=アメリカ=イギリス)
女性の書いた本は読まれないという言葉に小説家になることを諦めた妻と、ノーベル文学賞を受賞した夫の間の秘密。夫を“支え続けた”愛情と怒りに揺れ動く妻役のグレン・クローズが良かった。

5位「僕たちは希望という列車に乗った」(ラース・クラウメ Das schweigende Klassenzimmer 2018年ドイツ)
1956年、ベルリンの壁建設5年前、自分たちの人生を左右する重大な選択を迫られた東ドイツの高校生たちの苦悩と友情の物語が感動的。

◆Hiro
【日本映画】
1位「愛がなんだ」(今泉力哉)
猫背でひょろひょろだけど、ちょっとイケメンのマモちゃんに出会い、一目惚れ。相手は完全に自分中心なのに、ちょっとでも関わっていたいと思う、平凡なOLテルコの究極の片思いを描く。主役の二人と友人たちのやりとりに「それってアリだよね。」と妙に納得。今時の若者の恋愛模様を複雑に交差させながら、見る者をドキュンとさせてくれる。

2位「半世界」(阪本順治)
三重の山中で、父から引き継いだ備長炭を黙々と作り続ける稲垣吾郎に役者としての成長を見た。人生の半ばにさしかかって、これからどう生きるかという心の葛藤や、家族や友人との絆、あたらな希望を阪本順治監督が崇高ともいえるレベルで映し出す。

3位「長いお別れ」(中田量太)
やがて5人に一人がかかるという認知症。ゆっくり記憶を失っていく父とのお別れまでの7年間を、新たな発見と希望を導き出しながら、ユーモアたっぷりに描く。家族の繋がりを再認識させてくれる佳作。

4位「来る」(中島哲也)
様々な役柄に挑戦する岡田准一と、独特の映像センスで注目の中島哲也監督がタッグを組み、ホラー小説大賞受賞作に挑戦。次々と現れる奇想天外な闇の世界。のれるかのれないかは見る者の心掛け次第。

5位「キングダム」(佐藤信介)
紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、大将軍になるという夢を描く少年と、中華統一を目指す若き王の友情物語。スペクタルな迫力の映像と激しいアクション、そして原作漫画や史実に基づいた世界観がしっかり描かれていて飽きさせない。次作が楽しみ。

【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」(アルフォンソ・キュアロン ROMA 2018年メキシコ=アメリカ)
政治的混乱に揺れる1970年代のメキシコを舞台に、一人の家政婦と雇い主一家の関係を、メキシコ人監督アルフォンソ・キュアロンが鮮やかに、感情豊かに描く。監督の個人的な人生の記憶が原動力となって、この上ないリアリティが生み出された。アカデミー賞外国語映画賞を争った「万引き家族」もこれにはかなわない。

2位「グリーンブック」(ピーター・ファレリー Green Book 2018年アメリカ)
本年度アカデミー賞3部門(作品・脚本・助演男優)受賞作品。ガサツで無教養なイタリア系用心棒が、孤高の天才黒人ピアニストの運転手に。コンサートツアーで同行する中で、様々な奇跡が舞い起こる。これが実話だってことが、見る者を幸せな気分に導いてくれる。

3位「彼が愛したケーキ職人」(オフィル・ラウル・グレイツァ The Cakemaker 2017年イスラエル=ドイツ)
イスラエルで生まれ育った若手監督が、国籍や文化、宗教や性差を超えてめぐり逢う男女の人間模様を繊細に描く。ドイツ人の菓子職人トーマスが愛したのは、イスラエル=ドイツの合弁会社で働くイスラエル人のオーレンだった。オーレンの不慮の事故死により彼の妻のアナトと出会うことで、新たな関係が生まれてくる。"彼”の水着を借りて泳ぎ、亡き人を偲ぶというのは、この監督だからこそなしえた発想なのでは。ちなみに「シネマ見どころ」で毎月Yasuo Shimizu氏が描くイラストのMy Best1でもあります。

4位「家へ帰ろう」(パブロ・ソラルス El ultimo traje 2017年アルゼンチン=スペイン)
ブエノスアイレスに住むユダヤ人の仕立屋・アブラハムが、故郷ポーランドに住む親友に最後に仕立てたスーツを届けに行くという感動のロードムービー。旅の途中で関わる人たちに助けられ、心を開いていく頑固オヤジがだんだん可愛く思えてくる。

5位「運び屋」(クリント・イーストウッド The Mule 2018年アメリカ)
88歳、映画界のレジェンド、クリント・イーストウッドが監督し、主演もつとめた渾身作。この名優の心を動かしたのは、「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」というニューヨークタイムズ・マガジンの記事。この作品も実話が元になっている。とても88歳とは思えないイーストウッドの行動力に脱帽だ。


◆kenya
【日本映画】
*鑑賞本数が少なかった為、2本のみとさせて頂きました。
1位「居眠り磐音」(本木克英)
昔からの友人を斬らざるを得ないことになり、恋人とも別れ、浪人生活の中で、人の優しさに触れていく哀しみを抱えた主人公役に、松坂桃李が合っていて、現代にも通じるチャンバラエンターテイメント映画だった。

2位「マスカレード・ホテル」(鈴木雅之)
1位と同じで、エンターテイメント映画の王道の王道で、普通に楽しめた。

【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」
終始、壮絶な人生展開に圧倒させられる。白黒だが映像に力がある。2001年公開の同監督作品「天国の口、終わりの楽園。」もお薦め。

2位「芳華-Youth-」(フォン・シャオガン 芳华/youth 2017年中国)
苦しい時期を共有した仲間が、時と共に離れ離れになる。そして、落ち着くべく時が来れば、落ち着いていく。人の一生とは儚く切ないもの。京都シネマで観たが、1日1回だけの上映では寂しい。

3位「女王陛下のお気に入り」(ヨルゴス・ランティモス The Favourite 2018年アイルランド=イギリス=アメリカ)
女優3人の演技が観応え十分。個人的には、アカデミー賞を獲ったオリビア・コールマンより、レイチェル・ワイズが良かった。本作品には関係無いが、レイチェル・ワイズの旦那は、ダニエル・クレイグだった!ビックリ!

4位「ブラック・クランズマン」(スパイク・リー BlacKkKlansman 2018年アメリカ)
スパイク・リーの手にやっとアカデミー賞が渡った。ここ最近の世の風潮を忖度し、アカデミー協会が気を遣ったのか。充分、作品としては出来上がった印象があるので、気を遣ったと云われるアカデミー協会にとっては、酷な話かな?原題のスペルにも一工夫が見られますね。

5位「運び屋」
やはりイーストウッドは監督だけではなく、画面に登場してほしい。それにしても、かなり老体にムチを打って演技している印象が強くなってきた。

◇アロママ
【日本映画】
5月末までの邦画鑑賞数は5本、洋画に比べて圧倒的に少なく、これというのもなく、上半期ベスト5はどうなるやらと思っていたら、6月になってようやく面白そうな作品に出会えた。さらに締め切りぎりぎりの駆け込みで「新聞記者」を見られたのは良かった。
1位「新聞記者」(藤井道人)
日本の政治の裏側をタイムリーに描いた、フィクションだけれどノンフィクションに思えるくらい、リアリティが高いドラマ。背筋の凍るようなサスペンスでもある。この国で起こっていることをしっかり見届けなければと思った。出演者、制作陣の勇気に敬意を表したい。

2位「小さな恋のうた」(橋本光二郎)
単なる青春物かと思っていたら、音楽を通じて、沖縄の現状も多面的に考えさせてくれる。理屈でないところで、若者たちは障害も国境も飛び越えていける。

3位「愛がなんだ」(今泉力哉)
こじれ系女子、あるある!恋愛って、うまくいくばかりじゃないよ、ヒリヒリする思いを乗り越えろ!おばちゃんは中原ッチの頭をワシワシしながらハグしてあげたかった。

4位「泣くな赤鬼」(兼重淳)
中年教師が教え子の死と向き合う中で再生していく。柳楽優弥と堤真一、川栄李奈がいい味を出している。上半期だけで柳楽優弥を「夜明け」「ザ・ファブル」も合わせて3作品。彼のふり幅のある演技、せつないワンこのような目がたまらない。

5位「町田くんの世界」(石井裕也)
ファンタジーだし、風船のシーンでは「プーさんか、メリーポピンズか!」と笑ってしまった。やさしさの波紋を広げる人になりたい。根底にある町田くんの両親の愛情の大きさを想う。

【外国映画】
上半期18本。5作品選ぶのが辛いくらい、良い作品にたくさん出会えた。それでもまだまだ見落としたのが多い!
1位「ある少年の告白」(ジョエル・エドガートン Boy Erased 2018年アメリカ)
LGBTの「矯正」施設を取り上げている。その洗脳ぶりの恐ろしさ。現代のアメリカの話しという事に驚かされる。主人公の少年を演じたルーカス・ヘッジズは「とらわれて夏」の息子だったのか!「ベン・イズ・バック」でも、薬物依存症の少年。重くハード役が続くので、彼自身の精神面を心配してしまう、おせっかいおばちゃんファンの私。母(ニコール・キッドマン)の強さと共に、聖職者である父親(ラッセル・クロウ)の苦悩も描かれていた

2位「天才作家の妻-40年目の真実-」
女性が作家として名乗りを上げられないのは、「メアリーの総て」の時代だけではない。現代もまだまだ!「コレット」を見られなかったので、比較はできないが。グレン・クローズに主演女優賞をあげたかったなあ。もちろん、「女王陛下のお気に入り」も良かったんだけれど。

3位「それだけが、僕の世界」(チェ・ソンヒョン그 것만이 내 세상 2018年韓国)
韓国映画をずっと避けてきたけれど、それを反省している。主演者みんな、素晴らしかったが、特にサヴァン症候群の少年役を演じた俳優さんが圧巻。

4位「メリー・ポピンズ リターンズ」(ロブ・マーシャル Mary Poppins Returns 2018年アメリカ=イギリス)
やっぱり、メリーポピンズは外せない!50年前の作品への敬意にあふれている。トラヴァース夫人も納得してくれるかな。CGに頼らず、アニメで実写との融合を図った制作陣に拍手。

5位「グリーンブック」
納得のアカデミー賞?というわけではないが、とても分かりやすくて、すっと心に入ってくる。珍しく吹き替え版でも見られた。彦根の映画館、グッジョブ!


◆KOICHI
【日本映画】
日本映画は何本か見たのですが、なかなか気に入る作品との出会いがありませんでした。6月になってようやく2本の秀作を見つけ、それぞれを1位、2位としました。
1位「愛がなんだ」
愛という死に至る病をコミカルに描いた作品。テーマは主人公テルコの狂気。流血騒ぎになってもおかしくないテーマを淡々とユーモラスに描いている。テルコはマモルに夢中になるあまり、仕事のミスが多くなって会社をクビになり、マモルから呼び出しがあればいつでも駆けつけられるようにスタンバイしている。ついにはマモルと合体してしまいたいという幻想(性的な意味ではない)すら抱くようになってしまった。けれどもマモルはすみれが好きで、テルコを「都合のよい女」ぐらいにしか思っていない。マモルが自分を愛していないことがわかったテルコは、マモルの前で他の男性が好きなフリをして二人でデートに行く。マモルとすみれを振り返って見つめるテルコの表情が切ない。ここで映画が終われば、センチメンタルな片思いの青春映画になっただろう。ところが最後に予想外の展開が待っていた。テルコのマモルへの想いは愛から執着へと変貌し、テルコはかつてマモルがなりたいと言っていた動物園の飼育員になるのだ。これは依存する相手との自己同一化ではないか。自分がマモルになって、叶わぬ愛を成就しようとしたのだ。淀川長治が「太陽がいっぱい」の解説で自己同一化について語っている。アラン・ドロンはモーリス・ロネを愛しており、ロネの服を着て、鏡の中に映し出された自分(=ロネ)にキスをする。現実の愛が成就しないことがわかると、ロネを殺して自分がロネになった。自己同一化とはかくも恐ろしい狂気である。

2位「さよならくちびる」(塩田明彦)
インディーズで人気のある2人組の女性バンド「ハルレオ」が解散を決めた。ローディ(バンドのサポータ―)のシマと共に、「ハルレオ」が解散ツアーに出るところから物語は始まる。ロードムービーにして音楽映画。恋愛映画にして夢追い物語。ハルとレオの関係は崩壊寸前であり、そこにシマが入ることで関係はよりややこしくなる。レオはシマに恋をし、シマはハルに想いを寄せ、そしてハルは同性であるレオに友情以上の感情を抱いている。三人の関係が1対2ではなく、1対1対1であることが関係性を複雑にしている。けれども逆にそれは救いでもある。それぞれの愛のベクトルがトライアングルを形成して微妙なバランスを保っている。三人が決定的な崩壊に至らないのはベクトルの向きが交差していないからだ。音楽映画は音楽を心ゆくまで観客に聴かせることが最大の目的であり、ミュージカルならダンスを観客に堪能させることが一番の狙いであるはずだ。この作品はそのあたりを心得ていて、演奏場面では十分な見せ場を作っている。秦基博とあいみょんの曲もよく、「ハルレオ」の音楽は観客の心を揺さぶる力を持っている。三人の気持ちは離れたままでも、音楽によってひとつになれる。登場人物の個々の問題に深入りせず、音楽を聴かせるという本来の目的に立ち返ったところにこの作品の成功がある。

3位「洗骨」(照屋年之)
沖縄の離島に伝わる「洗骨」という風習を通して、崩壊寸前の家族が再生していく物語。死者の骨を洗うという行為によって、生者は死という現実の過酷さをいやがおうにも認識する。「洗骨」とはメメント・モリ(死を想え)という警句をまさに体現する行為である。

【外国映画】
1位と2位は甲乙つけがたく、3位以下の作品と比べると出色の出来です。
1位「運び屋」
失意のどん底にいた90歳のアールは、ひょんなことからコカインの運び屋をするようになる。アールは華やかな生活を取り戻していき、失った家族との絆も回復させていく。アールの勝手気ままな行動が、麻薬取締局の捜査を混乱させてしまうというコミカルな展開に、作者の人生哲学が垣間見える。天真爛漫で道徳や倫理に縛られない主人公をイーストウッドが飄々と演じている。

2位「ROMA/ローマ」
1970年代初頭、メキシコ・シティのローマ地区で住み込みの家政婦として働くクレオ。クレオは雇い主である医者のアントニオと妻ソフィア、彼らの4人の子供たち、ソフィアの母とクレオの同僚と一緒に暮らしている。クレオと雇い主一家に起こった苦難のエピソードを中心に物語は展開する。クレオはフェルミンという若い男と関係を持ち妊娠するが、男は父親であることを認めず、クレオの前から姿を消してしまう。クレオはひとりで赤ちゃんを産むが死産であった。雇い主であるアントニオは若い愛人ができ、ソフィアや子供たちを残して、愛人と逃亡してしまう。基本的なストーリーはいたってシンプルであり、起伏に富んだ物語が繰り広げられるわけではない。むしろ単調と言ってもいいほど事態は動かない。警官隊と反政府勢力との衝突の場面があるが、特に社会的、政治的メッセージがあるわけではない。クレオもソフィアも運命に従順で、自分を裏切った男に復讐するとか、絶望して自殺する・・・というドラマチックな展開にはならない。悲しみを悲しみとして受け止めて、傷ついた者同士が手を取り合って生きていこうとする。悲しみを深く掘り下げることにより、悲しみそのものを表現しようとしている。万人が共感できる普遍的な悲しみを描こうとしている。高波に溺れかけた子供たちをクレオが救うシーンがある。泳げないクレオが海の中にどんどん入っていくところを移動撮影でとらえている。たすけられた子供たちとクレオは砂浜でしっかりと抱き合う。とても感動的なシーンだ。その時クレオは唐突に「赤ちゃんが産まれてこなくてよかった」と告白する。やや場違いとも思えるつぶやきだが、感極まったクレオは胸の内に秘めていた思いを吐露したのだ。クレオと子供たちの絆には、時代や地域を超えた美しさがある。個人的な感動が普遍的な感動に昇華したのだ。ここに芸術表現のひとつの理想がある。

3位「魂のゆくえ」(First Reformed ポール・シュレイダー 2017年アメリカ)
イラク戦争で息子を亡くした牧師のトラーは、重い自責の念と深い失望の中にいた。トラーはエコ・テロリストの自殺を機に、自らテロリストへと変貌していく。ラストシーンの解釈で評価は分かれる。

4位「コレット」(Colette ウォッシュ・ウェストモアランド 2018年アメリカ=イギリス=ハンガリー)
19世紀末、ベル・エポックの時代のパリで、田舎町出身のコレットが女性としての自立を獲得していく物語。コレットは夫のゴーストライターという立場に反旗をひるがえし、自分の名前で執筆することを求めるようになる。性に保守的であった時代に、性的マイノリティーである事実を世間に公表していく。「作家としてのアイデンティティーの確立」と「セクシュアリティーの自立」がコレットの人間としての自立と三位一体で描かれている。


◆chidu
【日本映画】
1位「新聞記者」
実際にリアルな政治を知らないですが、田中哲司さん演じる多田智也の「この国の民主主義は形だけでいい」のセリフが残った作品です。ただ残念なのはラストのシーンですかね。

2位「愛がなんだ」
一人の男性に生活の全てを捧げてしまう。救いようが無いけれど、ここまで一人の人に夢中になれる事の素晴らしさを淡々とした映像の中でみせてくれた作品。

3位「空母いぶき」(若松節朗)
原作を読まれた方と読んでない方とで、意見が真っ二つに分かれた作品です。個人的には少ない予算の中で頑張った作品だと思います。

4位「ザ・ファブル」(江口カン)
原作の漫画を読んではいませんが、単純にアクションコメデイーが楽しめた作品です。個人的には浜田役演じる光石研さんと海老原演じる安田顕さんやり取りが群を抜いて楽しめた作品です。

【外国映画】
1位「マイ・ブックショップ」
とにかく脚本の完成力が凄いと思わせられる作品でした。回収力が見事。意味不明なエンディングで終わりがちなムービーですが、キチンと観ている物にも分かりやすいエンディングに脱帽です。

2位「ファースト・マン」(デイミアン・チャゼル First Man 2018年アメリカほか)
2014 年からほぼ毎年制作しているデイミアン・チャゼル監督。今作は人類で初めて月面着陸した男ニール・アームストロングの実話でした。迫力ある画像といかに月に行く事が容易で無いかを丁寧に描いた作品です。

3位「22年目の記憶」(イ・ヘジュン 나의 독재자 2014年韓国)
キャスト全員演技力は上手いですが、その中でも主演のソル・ギョングさは凄いです。22 年前と 22 年後の役作りの見事さ、凄まじいです。役者魂です。


◆健
【日本映画】
1位「町田くんの世界」
周りにいるのはかけがいのない人びとであり、自分のことは二の次でかれまたはかの女が困っていれば率先して助ける、そういう町田くんのような人ばかりなら、世界には争いもイジメもハラスメントも起きない。その町田くんを育てた父がいう、わからないことを恐れるな、と。

2位「さよならくちびる」
二人組の女性同士のデュエットにマネジャー兼伴奏担当の男が絡み、微妙な三角関係を維持しながら解散コンサート・ツァーのロードムービーが進む。やがて緊張感がマックスとなってアウフヘーベンするような映画だ。

3位「愛がなんだ」
今どきの若者たちの恋愛事情を描いて秀逸なのは原作と脚本の手柄といえそう。ただ、それを視覚化して成功させるのはキャスティングも重要で、テルコ、マモちゃん、謎の年長女とどれも原作の雰囲気どおりだ。

4位「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清)
テレビの制作姿勢に対する皮肉や文明批判が利いている。前田あっちゃんがウズベキスタンに飛んで異文化紹介レポーターをソツなくこなすのが健気で、人間として着実に成長して行く姿が頼もしい。

5位「半世界」
林業主体の山村に残った者、一度は町に出て舞い戻って来た者。かつて三人組の仲良しだった幼なじみが中年にさしかかろうとする人生の岐路で迎えた悲劇を扱い、そこから新たな希望を紡ごうとする。

【外国映画】
1位「芳華-Youth-」
文化大革命を経て毛沢東の死、5人組の失脚、中越戦争と70年代から90年代にかけて歴史に翻弄され、その後の人生の明暗を分けた若者たちの大河ドラマにして青春賛歌。傑作である。

2位「THE GUILTY/ギルティ」(グスタフ・モーラー Den skyldige 2018年デンマーク)
無声を出自とする映画は音を得てトーキーにバージョンアップしたが、その音だけでスリルとサスペンスのみならずカーチェイスまで描いてしまう着想と工夫にすっかり舌を巻いた。

3位「ROMA/ローマ」
10年に1本の傑作だという触れ込みは決して大げさではない。イタリアン・ネオ・レアリズモならぬヌーボ・レアリズモ・メキシカーノの傑作である。

4位「女王陛下のお気に入り」
中世英国宮廷の権謀術数渦巻く権力闘争を見ているだけで楽しいが、キューブリック「バリー・リンドン」を彷彿とさせる絢爛豪華な絵巻物という風情が飽きさせない。

5位「天才作家の妻-40年目の真実-」
ノーベル賞作家の妻として陰で夫を支える良妻賢母のグレン・クローズがみごと。女性のゴーストライターというテーマでは「コレット」があり、後者はジェンダー論に重きを置く点で少し違うが、いずれにしても男社会が生んだ知的搾取の最たるものだ。

執筆者の2018年ベストテン発表

2019年01月09日 | BEST


 新しい年を迎え、読者の皆さまには旧年中のご愛読に感謝し、今年もまた引き続きご贔屓いただきますようお願い申し上げる次第でございます。
さて、恒例の執筆者によるベストテン発表です。ベストテンは選ばれた作品の価値を表すものではなく、選んだ人の個性を図らずも表現してしまうものだという本質を前提にお楽しみください。
注記:原則として2018年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。


◇久
【日本映画】
1位「万引き家族」(是枝裕和)

2位「羊と鋼の森」(橋本光二郞)

3位「空飛ぶタイヤ」(本木克英)

4位「日日是好日」(大森立嗣)

5位「ビブリア古書堂の事件帖」(三島有紀子)


【外国映画】
1位「サーミの血」(Sameblod アマンダ・シェーネル 2016年スウェーデン=ノルウェイ=デンマーク)

2位「ロープ/戦場の生命線」(A Perfect Day フェルナンド・レオン・デ・アラノア2015年スペイン)

3位「希望のかなた」(Toivon tuolla puolen アキ・カウリスマキ 2017年フィンランド=独)

4位「シェイプ・オブ・ウォーター」(The Shape of Water ギレルモ・デル・トロ 2017年アメリカ)

5位「ガザの美容室」(Dégradé タルザン&アラブ・ナサール 2015年パレスチナ=仏=カタール)

6位「判決、ふたつの希望」(L'insulte ジアド・ドゥエイリ 2017年レバノン=仏ほか)

7位「1987、ある闘いの真実」(1987 チャン・ジュナン 2017年韓国)

8位「ボヘミアン・ラプソディ」(Bohemian Rhapsody ブライアン・シンガー 2018年英=米)

9位「パッドマン 5億人の女性を救った男」(Padman R・バールキ 2018年インド)

10位「ローズの秘密の頁」(The Secret Scripture ジム・シェリダン 2016年アイルランド)



◆HIRO
【日本映画】
1位「万引き家族」
最近の小麦アレルギーの子のコマーシャル(アマゾン提供)を見ていると、主人公夫婦に拾われた佐々木みゆちゃんの演技が、地ではなく、本物の演技をしていたのだとわかる。さすが是枝監督、よくぞここまで芸達者たちを集めたものだ。

2位「友罪」(瀬々敬久)
主役の生田斗真は今年「いだてん」に出演、英太は昨年「西郷どん」で大久保利通を力演と、NHKの大河ドラマでも大活躍の二人。若手俳優の中でもその演技力は誰もが認めるところ。こんな難役も難なくこなせるわけだ。

3位「孤狼の血」(白石和彌)
絶対に東映で映画化しなければ・・・とプロデューサーたちから懇願された白石監督、深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズを超えた強烈な映像と、アウトローな物語の展開に胸が締め付けられた。

4位「寝ても覚めても」(濱口竜介)
同じ顔をした二人の男をどちらも愛してしまった女。しかし、一度惹かれたら、やはり生きている間はその人を忘れられないもの。人はなぜ人を愛するのか、その人の何に惹かれるのか、なぜその人でなくてはならないのか。また一つ、心を揺さぶる大人の恋愛映画の傑作が誕生。

5位「カメラを止めるな!」(上田慎一郎)
もはや社会現象となった「カメ止め」。年末年始のTV番組では出演者が出たり、様々なシーンでその手法(ワンカット)が使われ、何とNHKの紅白歌合戦にも登場!!上田監督、ますます第2弾へのプレッシャーが高まっているはず。でも彼ならきっと面白い作品を作ってくれるでしょう。

6位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」(山田洋次)
日本映画の重鎮となって久しい山田監督、御年87歳。今回も安心して見られた。特に長男演じる西村まさ彦の演技には爆笑。山田監督、次の作品は「男はつらいよ」だって?!まだやり残したことがあるのでしょうか??

7位「日日是好日」
9月に亡くなった樹木希林と黒木華の師弟コンビが織りなす「お茶」の世界。世の中にはすぐにわかるものとわからないものの二種類がある。すぐにわからないものは、とりあえず形を覚えて続けること。長い時間をかけて少しずつ気づいてわかってくるものもあるのだと諭される。

8位「止められるか、俺たちを」(白石和彌)
主人公のめぐみは白石監督自身だった!?70年安保闘争で日本中が騒然としていた中、若松孝二監督率いる若松プロに入り助監督として日々奮闘するめぐみ、ここは白石監督にとっても原点といえる場所だった。大島渚、松田政男、荒井晴彦など次々現れる映画人が懐かしい。

9位「焼肉ドラゴン」(鄭義信)
万博が開催された1970年、大阪のコリアンタウンでエネルギッシュに生きる人々を描いた舞台「焼肉ドラゴン」を映画化。何と言っても韓国人俳優キム・サンホ、イ・ジョンウンの演技に圧倒させられる。よくここまで日本語を覚え、感情を込められたものだと感心。

10位「検察側の罪人」(原田眞人)
ジャニーズ事務所の木村拓哉と二宮和也の演技合戦が最大の見物。「硫黄島からの手紙」で世界に認められたニノはさすがだが、今回ずるずると悪の深みにはまっていくキムタクもなかなか魅せる。また、二人を巡る悪役たちの濃い演技にも注目。


【外国映画】
1位「シェイプ・オブ・ウォーター」
ヴェネチア映画祭とアカデミー賞で作品賞を受賞。クリーチャーが主人公の作品で高い評価を得たのは「E.T」以来か。全く新しい形の大人のファンタジー。

2位「ボヘミアン・ラプソディ」
並みいる正月映画を蹴飛ばして興行収入を伸ばしている快作。何と言ってもその歌声がフレディ・マーキュリー本人というのがいい。そしてヴェールに包まれていた真実が明かされ、当時のクイーンの演奏で味わった以上の感動をもたらす。これぞ映画だ!!

3位「スリー・ビルボード」(Three Billboards Outside Ebbing ,Missouri マーティン・マクドナー 2017年英=米)
フランシス・マクドーマンドの存在感が半端ない!名もない田舎町の母親の格闘劇に、自分も手助けしたくなってしまう。

4位「1987、ある闘いの真実」
一人の大学生の死が人々の心に火をつける。国民が国と戦った韓国民主化闘争を描いた衝撃の実話。こんなことを映画に描ける韓国って、ある意味凄い国だと思う。日本ではこんなに直球では描けないのでは・・・。

5位「リメンバー・ミー」(Coco リー・アンクリッチ 2017年アメリカ)
メキシコ最大のお奉り「死者の日」(日本で言うとお盆)にちなんだエピソードが感動を呼ぶディズニーアニメ。今この世で楽しく生きていられるのもご先祖様のおかげ。忘れることなく、大切にしなくっちゃね。

6位「タクシー運転手~約束は海を越えて~」(택시운전사 チャン・フン 2017年韓国)
光州事件勃発の様子を取材に来たドイツ人記者を乗せ、現地に向かうタクシー。ユーモアも交えて描く道中劇は実在の人物の登場で感動へと昇華。

7位「クワィエット・プレイス」(A Quiet Place ジョン・クラシンスキー 2018年アメリカ)
生きていくためには、決して音を立ててはならない。でもどうしても起きてしまうことも・・・。静寂と恐怖の中で深まる家族の絆を描いた、緊張感みなぎる佳作。

8位「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(The Post スティーヴン・スピルバーグ 2017年米=英)
アメリカの憲法と自由を守るべく、自分が正しいと信じる行いを全うしたジャーナリストたち。社会派スピルバーグが得意とする問題作。

9位「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(ฉลาดเกมส์โกง ナタウット・プーンピリヤ 2017年タイ)
タイ映画を久しぶりに見る。何とスタイリッシュで、かっこいい作品に仕上がっていることか。タイの学歴社会もかいま見えて、世の中進んでいるんだなあと実感。

10位「ハッピーエンド」(Happy End ミヒャエル・ハネケ 2017年仏=墺=独ほか)
何とパンフレットはスマホ型。見終わったあと、現代に生きるために本当に必要なものは何か、そして幸せとは何か、ふっと考えさせられる。



◆kenya
【日本映画】
1位「日日是好日」
黒木華のラストのセリフにすべてが凝縮されている映画。人が少しずつ成長していく過程を、四季折々の風景と合わせて丁寧に描かれていた。とても前向きになれる。

2位「羊の木」(吉田大八)
人にはそれぞれ生きていく領域がある。6人の様々な経験を経た人間が、同時期に同じ場所で交錯する。映画ならではの醍醐味で楽しめた。

3位「万引き家族」
祝!是枝裕和監督。カンヌ映画祭でのパルムドール受賞。“本物”の家族とは何か。血の繋がりとは何か。重いテーマを商業ベースに乗せる技術は、素晴らしい。子役の演出力の引き出し方も素晴らしいと思う。

4位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
シリーズ三作目。山田洋二監督の定番のネタを上級ドラマに仕上げる技には感服。安定感があり、安心して観られた。

5位「コーヒーが冷めないうちに」(塚原あゆ子)
これぞ「ハートウォーミング」であった。水槽のイメージも印象に残った。また、薬師丸ひろ子が良かった。「映画女優」って感じ。そのエピソードだけで1本の作品で出来るかも。

6位「スマホを落としただけなのに」(中田秀夫)
スマホがあれば何事も解決してしまうように錯覚してしまう今の時代だからこそ出来る映画かもしれない。人と人との繋がりとは何なのか。

7位「空飛ぶタイヤ」
超豪華俳優が出演するエンターテイメント。やはり、映画がこうでなくては。もう少し、長尺でも良いので、一つひとつのテーマをじっくり描くと、更に、良くなったかも。惜しい。

8位「嘘を愛する女」(中江和仁)
「TSUTAYA」企画から映画化された、新風のサスペンス仕立ての恋愛映画という表現が一番相応しいだろうか。監督の次回作に期待。

9位「嘘八百」(武正晴)
何事にも、真面目に真剣に取り組む人間は美しい。そして、明るい。それが、仮に、人生の折り返し地点を回っていたとしても。配役がうまくハマった。

10位「孤狼の血」
役所広司の無茶苦茶な捜査に呆気に取られた。ただ、その中でも、新人への愛情は忘れていなかった。実は、人の奥底にある素直な部分だけで生きているのか?今の社会にストレスを抱えていたのだろう。


【外国映画】
1位「デトロイト」(Detroit キャサリン・ビグロー 2017年アメリカ)
キャサリン・ビグロー監督の力強い演出に感心した。タイムリーでセンシティブな人種問題を、ドキュメンタリー風に描くことで、直接的に観客に訴える。男には出来ない?男勝りではなく、真の男?終始、圧倒され続けて、上映時間を短く感じた。

2位「スリー・ビルボード」
かなり横暴な人間が徐々に変わっていく、寄り添う様を、じっくりと捉えていて、観終わった後、心が暖まる感じがした。

3位「ビガイルド/欲望のめざめ」(The Beguiled ソフィア・コッポラ 2017年アメリカ)
南北戦争時の、女性同士の恐ろしい戦いを描く。ただ、実際の戦争ではなく、一つ屋根の元で起こる戦いである。ソフィア・コッポラらしい映画だと感じた。日本語タイトルの工夫と、ソフィア・コッポラの名前をもっと前面に押し出した宣伝をすれば、もっと観客が増えたように思う。

4位「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(I, Tonya クレイグ・ギレスピー 2017年アメリカ)
ナンシー・キャラガン襲撃事件を題材に、ドキュメンタリー風に勢いよく、力強く、しかも、計算しつくされた映像だった。不器用に、そして、愚直に生きた人々。白黒に分けられない人生。真実は本人しか分からない(本人も分からなくなっているかも)編集がうまい。

5位「ファントム・スレッド」(Phantom Thread ポール・トーマス・アンダーソン 2017年米=英)
うら若き女性が、自身の親くらいの気難しい大人の男性の懐に入り込む究極の偏愛映画である。ダニエル・デイ・ルイス演じる主人公の姉役を演じたレスリー・マンヴィルが特に素晴らしかった。アカデミー助演女優賞候補(受賞には至らず残念)に納得。

6位「オーシャンズ8」(Ocean‛s Eight ゲイリー・ロス 2018年アメリカ)
オーシャンズシリーズの女性版である。分かり易い設定と勢いで単純に楽しめた。アン・ハサウェイが良かった。このシリーズはワクワクさせてくれる。

7位「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」(Mission:Impossible-Fallout クリストファー・マッカリー 2018年米=中=仏ほか)
アクション以外の部分で、人間味が感じられるイーサン・ホークに驚いた。このシリーズが成熟していたからなのか。次回作も楽しみ。

8位「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
終始、隙が全く無い演出で、「スピルバーグ劇場」ともいうべき映画だった。これが短期間で仕上げられるのも感心する。

9位「ゲティ家の身代金」(All the Money in the World リドリー・スコット2017年 米=伊=英)
ケヴィン・スペイシーがセクハラ問題で降板したことにより、クリストファー・プラマーに交代し、短期間で再撮影し完成した映画。映画の中身もさることながら、セクハラ問題と短期間での撮影技術等、今を象徴する映画だと感じた。

10位「シェイプ・オブ・ウォーター」
主人公の相手の生き物がかなりグロテスクなので、B級怪獣映画をベースに、恋愛という要素で包んだような映画。終始、懐かしい雰囲気が漂っていた。



◇アロママ
【日本映画】絶対的なベスト3が実はなかった。樹木希林さん、大杉漣さんなどを喪った淋しさを覚える。
1位「日日是好日」
日本の良さを静かに伝えてくれる。ちょっと背筋が伸びてくる。

2位「モリのいる場所」(沖田修一)
昔から山崎努のファン。樹木希林が一番彼女らしい作品だったか。

3位「散り椿」(木村大作)
映像と殺陣の美しさ、黒木華がよかった。時代劇が少なくなってしまった。

4位「羊と鋼の森」
三浦友和のこれぞ大人のありよう。森永悠希の演技が良かった。

5位「万引き家族」
いろんな意味で問題作!家族って何だろうと大きな問いかけに応えきれない。

6位「空飛ぶタイヤ」
男くささ満載!こういう骨太で社会派の作品て、実は好き!

7位「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」(吉田康弘)
有村架純の応援目的。これも家族のありようを問う。國村隼のいぶし銀の姿にしびれる。

8位「教誨師」(佐向大)
大杉漣さんの初プロデュースにして遺作。オーム真理教の処刑のあった年に、死刑制度についてあれこれ思う。ひたすらしんどかったけど。

9位「友罪」
瑛太の狂気溢れる演技と、犯罪加害者家族の重さに打ちのめされる。

10位「銀魂2 掟は破るためにこそある」(福田雄一)
2作目は不作のジンクスを破って、よくぞここまでパロディに徹した!というのと、気配を消し去って新しい役柄になり切ってる若手俳優にちょっと拍手!肩の力を抜ける、わたしには珍しい選択。


【外国映画】女性の生き方と社会派、それから熟年層の活躍に関心がいったベスト10を選んだ。かなり個人的趣味を優先。興行収入だけでははかれないものを見つけていきたい。とはいえ、田舎暮らしではなかなか名作に巡り合えないのが哀しい。
1位「女と男の観覧車」(Wonder Wheel ウッディ・アレン 2017年アメリカ)
好きな女優、ケイト・ウィンスレットの憑依型の演技にのみ込まれた。

2位「あなたの旅立ち、綴ります」(The Last Word マーク・ペリントン 2017年アメリカ)
これもシャーリー・マクレーンのカッコよさに惹かれて。

3位「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」(Mamma Mia! Here We Go Again オル・パーカー 2018年英=米)
音楽と風景の美しさ、突っ込みどころはあるものの、3人の女優の競演はすばらしい。ともかく、楽しかったし、ほろりときた。

4位「ボヘミアン・ラプソディ」
クイーンを十分に知らなかったけれど、音楽の素晴らしさが伝わる。

5位「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
メリルストリープの存在感と報道の力の大きさが素晴らしい。

6位「輝ける人生」(Finding Your Feet リチャード・ロンクレイン 2017年イギリス)
老年期にさしかかっても、まだまだ元気に生きられる!ハリポタの悪役女優イメルダ・スタウンがとてもチャーミング。

7位「1987、ある闘いの真実」
韓流映画はずっと敬遠してきたけど、こういう作品をもっと知りたい。「タクシードライバー」を見過ごしたのが残念。

8位「スターリンの葬送狂騒曲」(The Death of Stalin アーマンド・イアヌッチ 2017年英=仏ほか)
かなりのブラックユーモア。旧ソ連の一面を知る。

9位「アリー/スター誕生」(A Star Is Born ブラッドリー・クーパー 2018年アメリカ)
1976年版のバーブラ・ストライサンド主演が一番好きだが、さすがのレディ・ガガ。監督主演のブラッドリー・クーパーの歌も魅力的。

10位「オンネリとアンネリのおうち」(Onneli ja Anneli サーラ・カンテル 2014年フィンランド)
原作童話は有名らしいが、映画は意外に知られてなかったようす。北欧の暮らしを垣間見えた。続編が公開されているので、ご注目。



◆KOICHI
【日本映画】鑑賞本数が少ないために6本しか選べませんでした。
1位「寝ても覚めても」
姿を消した麦(ばく)が再び現れるのではないかと不安が、この物語を引っ張っている。不安がピークに達したときに麦は現れ、亮平の見ている前で朝子を連れ去ってしまう。まるでサスペンス映画のような展開。戻ってきた朝子を亮平は罵倒するが、わだかまりを抱きつつも愛さずにはいられない。愛の不安と苦しみという恋愛の本質的な問題に切り込んだ作品。

2位「万引き家族」
家族の愛に恵まれない者たちが集まって疑似家族を作り、祖母の年金と万引きによって生計を立てていく。本当の家族の絆は壊れている。かといって疑似家族の絆が万全というわけでもない。「本当の家族の絆は壊れていても疑似家族の絆は強い」という安易な結論にもっていかなかったところがよい。

3位「カメラを止めるな!」
ハリウッドのミュージカルによくあるバックステージものを発展させた作品。ゾンビ映画の撮影現場を舞台にして、トラブルを乗り越えて撮影が終了するまでの過程をコミカルに描いている。作品は4つの部分に分かれている。
① ノーカットのゾンビ映画「ONE CUT OF THE DEAD」(37分)
② ①のプリプロダクション(創作)
③ ①の撮影現場(創作)
④ ①の撮影現場(本物)。エンドロール。
上記の②と③は①のゾンビ映画の本当のプリプロダクションと撮影現場ではなく、本物に似せた舞台裏で、この作品のメインストーリーになっている。撮影前と撮影中のドタバタが描かれていて、①②で張られた伏線が③できちんと回収されている。撮影時のトラブルに本物と創作の両方があり、どちらもうまく作品の中に取り込んでいる。興味深いのはエンドロールで、①の本当のメーキング映像を流していること。私はこの部分が一番面白い。本当の舞台裏を最後に見せることによって、ドキュメンタリー的な面白さを作品に付与している。

4位「止められるか、俺たちを」
1970年前後の若松プロダクションを舞台にした青春映画。若者が最も熱かった時代を歴史の1ページでも見るように客観的に冷静に見ている。時代に感情移入することなく、若松孝二をはじめとする登場人物の人間模様を面白おかしく、時には哀しく切なく描いている。あの時代の熱気をあのまま現在に再現しようとしたなら、果てしない混沌に陥ってしまっただろう。70年代と距離を保てたことが、この映画の成功につながっている。

5位「きみの鳥はうたえる」(三宅唱)
原作は佐藤泰志の同名小説。主人公の「僕」はアルバイト先の書店で出会った佐知子と恋愛関係になり、ルームメイトの静雄に紹介する。佐知子が静雄の恋人になっても、「僕」は佐知子を通して静雄を感じ、静雄を通して佐知子を感じることができると喜んでいる。「僕」の不可解でとらどころのない生き方がこの作品の魅力であり、また最大の謎でもある。将来に希望を見いだせない若者の虚無的で刹那的な生き方がよく描けている。ラストが原作と大きく違うのが残念。

6位「空飛ぶタイヤ」
タイヤ脱落事故を起こした運送会社の社長赤松は、企業から提示された1億円を受け取らず、真相解明のために全国を走り回る。内部告発する大企業の社員、不正を疑う銀行の調査員やジャーナリスト、同種のタイヤ事故を起こした運送会社の社員等々の協力を得て、真相が明らかになっていくプロセスがこの作品の醍醐味。


【外国映画】
1位「女と男の観覧車」
主人公のジーンは一見破滅型の女に見えるが、ギリギリのところで理性を保っている。ここがこの作品のつまらないところでもあり、また奥深いところでもある。同じ監督の「ブルージャスミン」では女主人公は完全に正気を失い、破滅の道に一直線に進んでいった。ジーンは若い男に捨てられても狂気には至らない。子供がいて、甲斐性はないが自分を愛してくれている夫がいて、安月給だがウェイトレスの仕事がある。この微妙な立ち位置の女をケイト・ウィンスレットが見事に演じている。ただ子供の放火癖だけは不気味だ。

2位「女は二度決断する」(Aus dem Nichts ファテイ・アキン 2017年独=仏)
夫と子供をネオナチのテロによって失った妻の復讐を描いた映画。犯人をおよそテロリストらしくない若い男女にしたのは、ネオナチへの報復よりも、主人公の精神の崩壊をテーマにしたかったからではないか。壊れゆく女の心理がサスペンス調の映像でスリリングに描かれている。

3位「ロープ/戦場の生命線」(A Perfect Day フェルナンド・レオン・デ・アラノア 2015年スペイン)
「何をやってもうまくいかない」とラストでフランス人の女性がため息まじりにつぶやく台詞が原題になっている。危険な紛争地域で、泥まみれ糞尿まみれになりながら、住民の水と衛生を守る仕事に携わる活動家を描いた作品。人間生活の根幹に関わるとても大事な仕事を殊更に意義を強調することもなく、功績を称えることもなく、淡々と描いているのがいい。

4位「判決、ふたつの希望」(L'insulte ジアド・ドゥエイリ 2017年仏=レバノンほか)
民族、宗教、難民・・・という複雑な問題を抱える中東。イスラエルとパレスチナ間だけではなく、その他の民族や宗教の間にも解決されない多くの問題が横たわっている。レバノン人のトニーとパレスチナ難民のヤーセルは些細なことから口論になり、トニーが放った民族を侮蔑する発言に激高したヤーセルはトニーを殴ってしまう。トニーは提訴し、裁判はメディアに取り上げられ、国を揺るがす事態に発展していく。裁判の過程でレバノン人のキリスト教徒とパレスチナ難民の間にも虐殺の歴史があったことが明らかになっていく。トニーは幼少期にパレスチナ難民に迫害された体験があったのだ。やがてトニーとヤーセルは和解するが、裁判は個人間の争いの枠を超えて広がっていった。判決の時がきた。裁判官は「民族や宗教を侮蔑する暴言は暴力と同じである」という趣旨の発言をしている。憎しみの連鎖を断ち切る手段として、「過ちを裁かずに受け入れること(赦し)」の重要性をこの映画は伝えたかったのではないか。また「個人間の友情を育むこと」が、民族や宗教の相違を乗り越える契機であることを示唆している。裁判に負けた方が勝った方より大喜びしていたラストが印象的であった。

5位「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
映画の舞台が権力と最前線で闘うニューヨークタイムズではなく、二番手のワシントンポストであることがこの作品の特徴を物語っている。権力vsジャーナリズムの闘いがスリリングに描かれていると同時に、経営者であるキャサリンの苦悩と決断が感動的に描写されている。

6位「悲しみに、こんにちは」(Estiu 1993 カルラ・シモン 2017年スペイン)
両親が亡くなり叔父のもとに引き取られたフリダ(6歳)という少女のひと夏の物語。フリダは叔父家族に溶け込めず、母の死を受容することもできない。叔母から母の最期の様子を聞いて初めて母がもう戻って来ないことを認識する。ようやく叔父家族との距離を縮められたフリダは、自分の居場所を見つけられた安心感と母の死を知った悲しみのために号泣する。

7位「ハッピーエンド」
母親を毒殺した少女が、祖父の自殺を幇助しようとするラストシーン。少女の父や伯母が祖父を助けにいくところで映画は終わる。祖父は死んだのか、救出されたのか、結論は観客の想像に委ねられる。あのまま祖父が誰にも気づかれずに大海の藻屑と消えたなら、絶望的なラストであったろうが、そうはならずに一抹の希望と可能性を残した作品になった。原題のHappy Endは必ずしも皮肉ではない。この家族の絆は皮一枚のところでつながっている。

8位「ビューティフル・デイ」(You Were Never Really Here リン・ラムジー 2017年英=仏=米)
この作品は男が少女を悪の巣窟から救出する映画というよりも、少女がトラウマに苦しむ男に寄り添う映画。少女と男の関係は「シベールの日曜日」(62) に似ている。あの映画は悲劇的な終わり方をしたが、この作品はハッピーエンドとは言えないまでも、ある種の希望を感じさせる。

9位「ファントム・スレッド」
レイノルズにはこれまで何人も恋人がいたが、みんな彼の自己中心主義に音を上げて去って行った。アルマだけがめげずに最後までがちんこで闘った。都会派の気むずかしい独身主義者が、田舎娘の愛の熱量に圧倒され、打ちのめされて、屈服した・・そんなラブストーリーである。

10位「ザ・スクエア」(The Square リューベン・オストルンド 2017年スウェーデン=独=仏=デンマーク)
貧困層への偏見と階層間の断絶を描いた作品。現代美術に対するスノビズムや障害者に対する先入観をアイロニカルな視点でとらえている。音や台詞によって恐怖感を与える手法、説明的ではない語り口はミヒャエル・ハネケを連想させる。



◆健
【日本映画】
1位「菊とギロチン」(瀬々敬久)
関東大震災を境にして大正デモクラシーが徐々に空洞化し、やがてファシズムと軍靴の音に移り行く時代を描いて峻烈だ。「最低。」「友罪」もいいが、この1本に。

2位「万引き家族」
この映画を国辱だとする批判を聞いて「菊とギロチン」の時代が到来するような嫌な予感がした。

3位「止められるか、俺たちを」
疾走するように駆け抜けていった鬼才の半生を寄り添うように撮る白石監督の眼差しがやさしい。無名に終わるところだった女性助監督への鎮魂歌でもある。

4位「寝ても覚めても」
2018年大活躍の東出昌大が標準語と大阪弁で二役を演じる工夫もおもしろいが、その大阪弁が夢かうつつかの夢物語にリアリティを与えて大いに笑わせた。

5位「日日是好日」
茶道という日本文化のきわみ、ゆっくりとした時間の流れ、洗練された無駄のない所作。それを見ているだけでうっとりさせられる。大森監督がひと皮むけた秀作である。

6位「リバーズ・エッジ」(行定勲)
いじめられっ子でゲイの同級生男子を庇護する姉御ぶり。その女子高生を溌剌と演じる二階堂ふみがカッコいい。既成の価値観を吹っ飛ばすような青春映画の快作である。

7位「斬、」(塚本晋也)
幕末。農村に居候しながら密かに仕官を志す若い浪人。そこへ倒幕への野心を滾らせる浪士が京に上る道すがら腕の立つ同志を探していて、この浪人と出会う。淡々とスタティックな調子から閃光のごときダイナミックな殺陣まで、張り詰めた空気が漂う。

8位「鈴木家の嘘」(野尻克己)
ひきこもりの長男の自殺を昏睡から奇跡的に目覚めた母親にひた隠す一家。極めてブラックでいて切実なテーマをサラッと笑い飛ばしながら描く力量に感心した。

9位「妻は薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
このシリーズは法華の太鼓だ。現役最長老の巨匠は肩肘張らず自然体で笑いのツボを心得た手法によって現代の風俗を風刺的に描く。そうして大いに笑った。

10位「カメラを止めるな!」
決してうまい映画ではない。着想の勝利というか、まんまとやられた感で観客は満足するが、このアイデアはそうそう使えない。次作が大変だと同情してしまう。


【外国映画】
1位「スリー・ビルボード」
娘を惨殺された母親が犯人を検挙できない警察に苛立ち、自らの手で裁こうと行動に出る。被害者遺族の思い込みが冤罪を生むという現実をつき、人間の本質を抉り出した。

2位「1987、ある闘いの真実」
韓国の民主化に至る道は険しく、棚ぼたのように民主憲法を頂いた我々の想像を遥かに超える闘いがあった。怒りを忘れた日本人こそ見るべき作品だ。

3位「アリー/スター誕生」
ガガの渾身の演技と歌唱、クーパーの持てる才能を最大限に発揮した演出、これは奇跡の秀作だ。リメイク三作目のバーブラ・ストライサンドを意識したのだろうが、ガガのほうがずっと美人である!

4位「運命は踊る」(פוֹקְסטְרוֹט‎ サミュエル・マオズ 2017年イスラエル=独ほか)
息子が戦死したという誤報を受け怒り狂った父親が、軍の上層部に手を回して帰還させる。息子はその帰途に事故死する。父は茫然自失、母は悲嘆に暮れ家庭は崩壊。国境でフォックストロットを踊る警備兵の場面にゾクゾクさせられた。

5位「シェイプ・オブ・ウォーター」
性愛は人間同士の異性間においてのみ正当に成立するという古い倫理観を嘲笑うかのようなこの映画。多様性の肯定に賛同し、物語の展開は爽快だった。

6位「30年後の同窓会」(Last Flag Flying リチャード・リンクレイター 2017年アメリカ)
それぞれに脛に傷持つ帰還兵が戦死した戦友の弔問を決意し遺族に真実を話して開放されようとするが・・・ユーモアと哀切と皮肉。戦争の傷痕は深い。

7位「スターリンの葬送狂騒曲」
独裁者の頓死で恐怖政治の終焉かと思いきや、新たな権力闘争が始まり、道化者のフルシチョフがいつのまにか主導権をとって狡猾なベリヤを陥れる恐さ。黒い笑劇のケッサクだ。

8位「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(The Florida Project ジョン・ベイカー 2017年アメリカ)
陽光溢れるフロリダの安モーテルに悪戯好きの幼い娘を抱える売春婦が住み、管理人も手を焼いている。この管理人(ウィレム・デフォー)が時には厳しく、時には暖かな目でかれらを見守る姿が素敵だ。

9位「SEARCH/サーチ」(Searching アニーシュ・チャガンティ 2018年アメリカ)
全編パソコンとスマホの画面で構成された特異な作品。妻を病気で亡くした主人公は高校生の愛娘とふたり暮らし。その娘がある日消息を絶つ。警察の捜査と平行して父親は独自に手がかりを探す。そうして意外な結末。

10位「ウィンド・リバー」(Wind River テイラー・シェリダン 2017年アメリカ)
ネイティブ・アメリカンの妻を亡くした白人の男がネイティブの若い女の変死事件を白人女性捜査官と追う。保守的な中西部の山あいに残る差別と偏見に立ち向かう姿が凛々しい。

2018年上半期ベスト5発表

2018年07月11日 | BEST


本格的な夏がやって来ました。5月にはカンヌ国際映画祭で日本出品作の金賞獲得の朗報が伝えられ、是枝監督が時の人となったのもご同慶の至りですが、ほかにも多くの力作、問題作が公開された前半。執筆者6名による上半期ベスト5の発表です。(健)

注記:原則として2018年1~6月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。


◆久
【日本映画】
1位「万引き家族」(是枝裕和)
血の繋がっていない“家族”を通して、現代日本が抱えている様々な問題や矛盾が浮かび上がってくる。カンヌ映画祭パルムドール受賞も納得、見ごたえがあった。

2位「羊と鋼の森」(橋本光二郎)
ピアノの調律師という職に就いた青年と、彼の成長を見守る人々の何とも言えない温もりのある世界で綴られる物語にほっとする。

3位「空飛ぶタイヤ」(本木克英)
大企業の横暴・理不尽に挑む中小企業の経営者。大企業や系列銀行側にも不正を潔よしとしない人間もいると描かれているが、人はどこまで自分の信念を貫くことができるのだろうと、考えさせられる。

  
【外国映画】
1位「サーミの血」(Sameblod アマンダ・シェーネル 2016年スウェーデン=ノルウェー=デンマーク)
劣等民族として差別されてきたサーミ人として生きることを捨てた、少女エレ・マリャを演じたレーネ=セシリア・スパルロクの眼差しが印象的だった。

2位「希望のかなた」(Toivon tuolla puolen アキ・カウリスマキ 2017年フィンランド=ドイツ)
最近のヨーロッパ映画は難民問題を扱った映画がふえてきたが、アキ・カウリスマキ監督が描くと、どこかとぼけていて、でも深刻さが伝わってくる。

3位「シェイプ・オブ・ウォーター」(The Shape of Water ギレルモ・デル・トロ 2017年アメリカ)
ヒロインのイライザは声を失った人魚姫、半魚人は彼女を連れ戻しに来た水の世界からの使いだったのでは…。デル・トロ監督のいう「つらい時代のおとぎ話」は、不思議な感覚の映画だった。

4位「ローズの秘密の頁」(The Secret Scripture ジム・シェリダン 2016年アイルランド)
キリスト教はつくづく未婚の母とその子どもの幸せを奪うものだなと思ってしまう。ジュディ・デンチが主演した「あなたを抱きしめるまで(2013 英・米・仏)」も同じようなテーマだったなぁ…。

5位「ダンガル きっと、つよくなる」(Dangal ニテーシュ・ティワーリー 2016年インド)
娘たちのレスリングの才能に気づいた父親が、男子レスリングよりも競技環境の悪い女子レスリングのために娘たちと共に闘っていく姿に感動。



◆Hiro
【日本映画】
1位「万引き家族」
アジア最高の先進国だと思っていた日本で、こんな生活をしている“家族”がいることに世界は驚いたことだろう。こども達の魅力を引き出すのがうまい是枝監督、今回も最高でした。

2位「友罪」(瀬々敬久)
かつて許されない罪を犯した男と、癒えることのない傷を負った男が出会い、心を許しあう中でやがてその真相を知ることに。『友情』の危うさと、信じることの大切さを考えさせられた。

3位「孤狼の血」(白石和彌)
東映の代表作「仁義なき戦い」を彷彿とさせるヴァイオレンス・アクション作品。役所広司の破天荒な捜査を学びながら成長していく広島大出身の松坂桃李の刑事ぶりがいい。呉でのロケも広島とは少し違った魅力が。

4位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」(山田洋次)
「男はつらいよ」が終わってからもう20年以上がたち、山田洋次監督といえば「家族はつらいよ」とイメージする人も多いだろう。エンドタイトルには4,5の数字も確認できた。続編の期待大ですね。

5位「祈りの幕が下りる時」(福澤克雄)
滋賀のいいところをしっかり撮ってくれた功績に1票。小日向文世・松嶋奈々子父娘の境遇には泣かされました。今年一番出た涙の量が多かった作品。


【外国映画】
1位「シェイプ・オブ・ウォーター」
魅力的なモンスターに惹かれていく女性の心を、ギレルモ・デル・トロ監督が優しく描く。さまざまに変化する“水の形”にも注目。

2位「スリー・ビルボード」(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri マーティン・マクドナー 2017年イギリス=アメリカ)
アメリカの田舎町の名もない母親の格闘劇。住んでいる方には失礼だが、ミズーリ州って、今世界で“最も行きたくない場所”らしい。そこで生き延びていくには、これくらい強い心でないと。ミズーリ、半端ない!!

3位「リメンバー・ミー」(Coco リー・アンクリッチ 2017年アメリカ)
泣きました。メキシコって、こんなに先祖を大切にする国だったんですね。家族の絆を再確認するいい機会となった作品。「死者の国」が美しくあってほしいと願うのは世界共通かも。覚えやすい歌曲も魅力的。

4位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(The Post スティーブン・スピルバーグ 2017年アメリカ=イギリス)
「レディ・プレイヤー1」のような娯楽作もいいけれど、やっぱりスピルバーグには世界の矛盾を突いてほしい。ジャーナリストとして真実を語ることの大切さと、その代償について考えさせられる。メリル・ストリープ、まさに適役。

5位「ハッピーエンド」(Happy End ミヒャエル・ハネケ 2017年フランス=オーストリア=ドイツ)
今年76歳になるミヒャエル・ハネケ監督の新作。「愛、アムール」から3年がたったが、ますます発想がお若い。家族をテーマに、背景には難民問題やSNSの功罪についても取り入れて、衝撃的なラストは観るものの心を動揺させる。本当にハッピー??!



◆kenya
【日本映画】
1位「羊の木」(吉田大八)
人にはそれぞれ生きていく領域がある。6人の様々な経験を経た人間が、同時期に同じ場所で交錯する。映画ならではの醍醐味で楽しめた。

2位「万引き家族」
祝!是枝裕和監督。カンヌ映画祭でのパルムドール受賞。“本物”の家族とは何か。血の繋がりとは何か。重いテーマを商業ベースに乗せる技術は、素晴らしい。子役の演出力の引き出し方も素晴らしいと思う。

3位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
シリーズ三作目。山田洋次監督の定番のネタを上級ドラマに仕上げる技には感服。安定感があり、安心して観られた。

4位「嘘を愛する女」(中江和仁)
「TSUTAYA」企画から映画化された、新風のサスペンス仕立ての恋愛映画という表現が一番相応しいだろうか。監督の次回作に期待。

5位「空飛ぶタイヤ」
超豪華俳優が出演するエンターテイメント。やはり、映画がこうでなくては。もう少し、長尺でも良いので、一つひとつのテーマをじっくり描くと、更に、良くなったかも。惜しい。


【外国映画】
1位「デトロイト」(Detroit キャサリン・ビグロー 2017年アメリカ)
キャサリン・ビグロー監督の力強い演出に感心した。タイムリーでセンシティブな人種問題を、ドキュメンタリー風に描くことで、直接的に観客に訴える。男には出来ない?男勝りではなく、真の男?終始、圧倒され続けて、上映時間を短く感じた。

2位「スリー・ビルボード」
かなり横暴な人間が徐々に変わっていく、寄り添う様を、じっくりと捉えていて、観終わった後、心が暖まる感じがした。

3位「ビガイルド/欲望のめざめ」(The Beguiled ソフィア・コッポラ 2017年アメリカ)
南北戦争時の、女性同士の恐ろしい戦いを描く。ただ、実際の戦争ではなく、一つ屋根の元で起こる戦いである。ソフィア・コッポラらしい映画だと感じた。日本語タイトルの工夫と、ソフィア・コッポラの名前をもっと前面に押し出した宣伝をすれば、もっと観客が増えたように思う。

4位「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(I,Tonya クレイグ・ギレスピー 2017年アメリカ)
ナンシー・キャラガン襲撃事件を題材に、ドキュメンタリー風に勢いよく、力強く、しかも、計算しつくされた映像だった。不器用に、そして、愚直に生きた人々。白黒に分けられない人生。真実は本人しか分からない(本人も分からなくなっているかも)編集がうまい。

5位「ファントム・スレッド」(Phantom Thread ポール・トーマス・アンダーソン 2017年アメリカ=イギリス)
うら若き女性が、自身の親くらいの気難しい大人の男性の懐に入り込む究極の偏愛映画である。ダニエル・デイ・ルイス演じる主人公の姉役を演じたレスリー・マンヴィルが特に素晴らしかった。アカデミー助演女優賞候補(受賞には至らず残念)に納得。



◆アロママ
【日本映画】
上半期は日本映画をけっこう見てきた。とはいえ、17作品。ランクをつけるのは難しかった。最近見たものが印象に強く残っているのは仕方ないとしても、劇場数が少なかったり、公開時期が短かったりした作品のうち、もっと知ってもらえたらなとランクに入れたくなるのもあった。今期、最大の話題作「万引き家族」をどうするかも迷った。

1位「羊と鋼の森」
山崎賢人は苦手な若手俳優の一人だったが、今作は脇役にも恵まれて、いい味を出していた。音楽が何より素晴らしかったし、一言のセリフもない分、森永悠希の表情の変化はすばらしかった。音楽の力を目で表現していた。年長者としてのあるべき姿を三浦友和に学びたい。原作をぜひ読んでみたい。

2位「空飛ぶタイヤ」
豪華キャストと大宣伝に踊らされるまいと思いつつ、けっこう骨太だったかと。「公文書偽造」などなど、何を信じたらいいのやらという今の時代、それでも自分のよって立つ所を見失わず、真理を追究する姿勢は貫きたい。「ザ・男!」感が強かった。それも何だか新鮮な気がする

3位「友罪」
これも重い作品。瑛太の演技力は群を抜いていると思う。1月に見た「光」も狂気をはらんだ役どころだった。生田斗真、食われてたか!
佐藤浩市扮する加害者家族の立場も見ていて、苦しくなる。特に交通事故のような、誰にでも起こりうる加害者側への転落。「犯罪者は幸せになってはいけないのか!」の言葉が突き刺さる。

4位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
やっぱり、山田洋次監督の王道コメディ。安心してみていられるし、シリーズ化も楽しい。

5位「blank13」(斎藤工)
今年も大人気の高橋一生、何本か見たが、この作品の高橋一生が一番美しいと思える。斎藤工監督のこれからに期待して。


【外国映画】
日本映画に比べると、今期は少なめ。全部で11作品。社会派作品が多かった。見逃しもたくさん。年末までに丁寧に拾って観ていきたい。

1位「あなたの旅立ち、綴ります」(The Last Word マーク・ペリントン 2017年アメリカ)
シャーリー・マクレーン健在!若い人たちを巻き込んでの終活は圧巻!こんなふうに最後まで変化を起こしていくパワーを持ちたい?う~ん、まあ静かに消えたいかな、私は。

2位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」
やっぱり、メリル・ストリープ!外せない!普通の主婦から責任者として覚悟を決めていく瞬間は観ているこちらの背筋も伸びてくる。

3位「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(Darkest Hour ジョー・ライト 2017年イギリス=アメリカ)
1、2位と女性目線の作品を挙げたけれど、チャーチルも人の子、奥さんの掌の上で転がされている姿を見ると、この作品の隠れた主人公はチャーチル夫人?
タイピスト役のリリー・ジェームズも可愛かった。

4位「スリー・ビルボード」
実は選ぶのをかなり迷った。ちゃんとこの映画を理解できたのかしらと。
娘を殺された母の強い怒りの向かった先は地元の警察。あまりに過激な攻撃の表現に周囲の理解も離れてしまう。これでは被害者家族が可哀そう・・・な話が、そういうふうにも転ばず、でも結局は「怒りだけでは人間は生きられない」ことを伝えている・・・・・のかな。

5位「ピーターラビット」(Peter Rabbit ウィル・グラック 2018年オーストラリア=アメリカ)
どうしても硬派な作品が上位を占めるのだけれど、今期の洋画の中では気楽に楽しめた。見た目の可愛さに騙されそうになる、シュールな作品。ウサギのCGの出来栄えも素晴らしいけれど、「人間はグリーンシートの前でひたすら一人芝居を続けていたのだろうな」と、制作現場を想像したら、頭が下がる!ピーターラビットにボコボコにされるマグレガー氏に一票。



◆KOICHI
【日本映画】
日本映画の鑑賞本数が少ないために、2本しか挙げられませんでした。旧作はけっこう見ているのですが、新作を見る機会が少なくてこのような結果になりました。

1位「万引き家族」
家族の愛に恵まれない者たちが集まって疑似家族を作り、祖母の年金と万引きによって生計を立てていく。本当の家族の絆は壊れている。かといって疑似家族の絆が万全というわけでもない。リリーフランキーが少年を置いて逃げようとしたことに、少年は不信の念を抱いている。JKビジネスをしていた少女は、樹木希林が少女の両親からお金をもらっていたことにショックを受けている。少年は年下の少女をかばって自分が捕まるような行動をとったが、そもそも少年の心にはこの疑似家族に対する違和感が芽生えていたのではないか。少年や少女にとって安住の地はどこにもない。「本当の家族の絆は壊れていても疑似家族の絆は強い」という安易な結論にもっていかなかったところが、この映画の深いところ。

2位「空飛ぶタイヤ」
ややありきたりな展開ではあるが、大企業内部の組織構造をよく描いている。タイヤ脱落事故を起こした運送会社の社長赤松は、企業から提示された1億円を受け取らず、真相解明のために全国を走り回る。赤松の孤軍奮闘ぶりは素晴らしいが、中小企業の社長一人の力では大企業のリコール隠しを暴くことはできない。内部告発する大企業の社員、不正を疑う銀行の調査員やジャーナリスト、同種のタイヤ事故を起こした運送会社の社員等々の協力を得て、初めて真相が明らかになっていく。お互いの存在は知らなくても、同じ志を持った者たちが同時発生的に現れて、変わるはずのないものが変わっていく。


【外国映画】
1位「女は二度決断する」(Aus dem Nichts ファテイ・アキン 2017年ドイツ=フランス)
テロの犯人であるネオナチが、およそネオナチらしくない若い男女のカップルであることに意外な気がする。海岸を二人でジョギングしている姿はまるで青春映画の主人公のようだ。何故、監督はこのようなキャスティングをしたのか。何故、主人公のカチャは一度目の爆破を中止したのか。この作品は復讐をモチーフにしているが、報復がテーマではなく、主人公の精神の崩壊を描くことに重きを置いている。壊れゆく女の心理をサスペンス調のサイレント的な映像で描いている。

2位「ロープ/戦場の生命線」(A Perfect Day フェルナンド・アラノア 2015年スペイン)
「何をやってもうまくいかない」とラストでフランス人の女性がため息まじりにつぶやく台詞が原題になっている。危険な紛争地域で、泥まみれ糞尿まみれになりながら、住民の水と衛生を守る仕事に携わる活動家を描いた作品。PKOや国境なき医師団のように世間の注目を浴びることもなく、地味で危険できつい任務に従事する要領の悪い人たち。人間生活の根幹に関わるとても大事な職務だが、殊更に意義を強調することもなく、功績を称えるわけでもなく、淡々と仕事ぶりを描いているのがいい。

3位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」
映画の舞台が権力と最前線で闘うニューヨークタイムズではなく、二番手のワシントンポストであることがこの作品のテーマを物語っている。権力vsジャーナリズムという構図はこれまでにも多くの映画で描かれているが、この作品にはもうひとつのテーマがある。経営にも報道の仕事にも素人であった専業主婦のキャサリンは、父親と夫の遺志を受け継ぎ、ポストの社長となる。経験の浅いキャサリンに重大な決断を迫る事件が起こる。現場で働く記者たちとは違い、経営者は背負っているものがあまりにも多い。キャサリンの苦悩を描くために、舞台をポストにしたのではないか。キャサリンの決断と報道の自由の勝利は感動的である。

4位「ハッピーエンド」
ロラン家は各人が深刻な問題を抱えていて、相互のコミュニケーションは乏しく、家族関係は完全に崩壊しているように見える。母親を毒殺した少女が、祖父の自殺を幇助しようとするラストシーン。少女の父や伯母が祖父を助けにいくところで映画は終わる。祖父は死んだのか、救出されたのか、結論は観客の想像に委ねられる。あのまま祖父が誰にも気づかれずに大海の藻屑と消えたなら、絶望的なラストであったろうが、そうはならずに一抹の希望と可能性を残した作品になった。原題のHappy Endは必ずしも皮肉ではない。この家族の絆は皮一枚のところでつながっているのではないか。

5位「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(The Square リューベン・オストルンド 2017年スウェーデン=独=仏=デンマーク)
5/23の映画の感想・批評のところでも述べたが、この作品は貧困層への偏見と階層間の断絶、現代美術や障害者への先入観、スノビズムを意地悪でアイロニカルな視点で描いている。シニカルで斜に構えた態度や音や台詞によって恐怖感を与える手法、説明的ではない語り口はミヒャエル・ハネケを連想させる。映画の中に出てくる『スクエア』という作品は鑑賞者の参加を求める参加型アートで、インスタレーションというカテゴリーに入る現代美術。キャッチフレーズは「この四角の空間の中では誰しもが平等で・・・」というものらしいが、この文言にはあまり意味はなく、関心を引くために作られたものとしか思えない。参加させることが目的なので、キャッチフレーズはセンセーショナルなものがいいと考えたのだろう ・・そんなふうに思う私もかなりシニカルなのかもしれない。



◆健
【日本映画】
1位「万引き家族」
現下の為政者の目にはきょうの米を心配する貧困家庭など見えないらしいが、国民を分断して確執を生ませようという権力者の施策に敢然と異を唱える是枝の現実直視に勇気をもらった。

2位「リバーズ・エッジ」(行定勲)
彼氏がいじめの対象にするゲイの男子を母性愛的に守る女子高生。そのいじめられっ子を慕う腐女子が現れて、3人である秘密を共有するのはまるで「スタンド・バイ・ミー」だ。

3位「友罪」
上司と衝突して記者をやめた青っぽい若者、かれと同じ町工場で働く得体の知れない友人。幼い女の子をはねて死なせた息子の贖罪を引きずる初老の男の話が並行して語られ、心の闇の深淵を覗くようだ。

4位「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
法華の太鼓のような連作もの。「万引き家族」とはまた違った意味での家族の在り様を描き、人情を絡めた老練な山田演出が冴え渡って要所でウルウルとさせる。

5位「空飛ぶタイヤ」
財閥系メーカー製トレーラーで致死事故を起こした中小運送会社が整備不良を責められる。しかし、車の欠陥がもたらした事故ではないかとの疑惑が膨らみ、やがて社長自らが足を棒にして事故調査に乗り出す。正統派社会派の秀作。


【外国映画】
1位「スリー・ビルボード」
娘を殺された母親がその一因を自分に求めるが故に、憎むべき犯人を早く特定したいと願う遺族心理(実はこれが冤罪を複雑化するのだが)を描いて秀逸。主演女優が抜群にいい。

2位「シェイプ・オブ・ウオーター」
異形の者のラブロマンスがスリリングかつ興味津々。少数者の側に立って、ありふれた男女の恋など犬にでも喰わせろとでもいいたい心意気に胸がすく思いがした。

3位「ラッキー」(Lucky ジョン・キャロル・リンチ 2017年アメリカ)
ハリー・ディーン・スタントンという希有の逸材を得たキャロル・リンチは肩肘張らない自然体で、奇跡ともいうべきのどかな日常を紡ぎ出す。冒頭とラストに登場する亀が悠然と歩く姿がおかしい。

4位「30年後の同窓会」(Last Flag Flying リチャード・リンクレイター 2017年アメリカ)
ベトナムとイラクでの大義なき戦争で国に裏切られたと感じる主人公。国家の体面に押しつぶされそうになりながら個の良心を貫き通そうとする男たち。一寸の虫にも五分の魂だ。

5位「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」(택시운전사 チャン・フン 2017年韓国)
光州事件を扱って前半コミカルに後半は打って変わったドキュドラマで見る者を圧倒する。「君の名前で僕を呼んで」「フロリダ・プロジェクト」も捨てがたく、ほぼ横一線だった。

執筆者の2017年ベストテン発表

2018年01月03日 | BEST


あけましておめでとうございます。2017年も日本・外国映画合わせて1000本余という大量の作品が関西で封切られました。映画がデジタルとなったことで映画づくりが身近なものとなり、フィルム撮影ほどのコストと専門的な技術を要しなくなったこと、観客のニーズが多様化したことなどが主な要因でしょう。昨年もまた、素晴らしい映画の数々に出会いました。執筆者のベスト10を発表します。ことしも素晴らしい年でありますように。(健)

注記:原則として2017年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。

◆久

【日本映画】
1位「三度目の殺人」(是枝裕和)
真犯人は誰なのかというモヤモヤした疑問が最後まで続いたが、犯罪の背景や死刑制度など、いろいろ考えさせられた。
2位「エルネスト」(阪本順治)
ゲバラが主人公ではないけれど、映画冒頭のゲバラの広島訪問のエピソードが心に残ったので…。
3位「幼な子われらに生まれ」(三島有紀子)
離婚が増え、子連れ再婚も増えてきて、血の繋がらない家族が暮らす難しさや、家族それぞれの心情に納得。
4位「火花」(板尾創路)
東京進出に夢を懸けるお笑い芸人の夢と挫折を、菅田将睴と桐谷健太の熱演で面白く、しんみりと観た。
5位「標的の島 風かたか」(三上智恵)
つい最近も小学校の校庭に米軍ヘリから窓が落下する事故があったばかり。基地の島“沖縄”を撮り続ける三上監督の怒りと情熱に敬意を表して。
※2017年も日本映画の鑑賞本数はやっぱり少なかったので、上記のとおりベスト5を選んだ。


【外国映画】
1位「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」(Eye in the Sky、ギャヴィン・フッド、 2015年イギリス・南ア)
上半期にベスト1に選びそのまま、年間を通してもベスト1に選んだ。戦場から遠く離れた会議室でドローンから送られてくる映像に葛藤する軍や政府の高官たちの姿はやはり滑稽だ。
2位「わたしはダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake、ケン・ローチ、2016年イギリス・フランス・ベルギー)
常に社会的弱者の立場に立った映画を製作するケン・ローチ監督の作品が好きである。病気で失業してしまったダニエル・ブレイクにそそぐ温かい眼差しがよかった。
3位「ローサは密告された」(Ma' Rosa、ブリランテ・メンドーサ、2016年フィリピン)
マニラのスラム街で雑貨屋を営むローサは麻薬の密売を密告され、警察に逮捕される。しかし、押収麻薬の横流しや密売人の恐喝などなど、警察の腐敗が逆に恐ろしい。
4位「女神の見えざる手」(Miss Sloane、ジョン・マッデン、2016年フランス・アメリカ)
ラスベガスで銃乱射事件が起きて間無しに観たので、アメリカで進まない銃規制問題を扱った映画の進展に引きこまれた。
5位「否定と肯定」(Denial、ミック・ジャクソン、2016年イギリス・アメリカ)
相変わらず繰り返されるホロコーストの否定。でも大っぴらに否定する輩より、“FAKE”を見抜けない人々、同調する人々とどう向き合うべきかの方が難しい。
6位「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」(The Zookeeper's Wife、ニキ・カーロ、2017年チェコ・イギリス・アメリカ)
ナチスドイツからユダヤ人を救ったのは、シンドラーや杉原千畝だけではなかった。ナチ占領下のポーランドのワルシャワ動物園の園長夫妻やその仲間の勇気ある行動が描かれているが、こういう映画が作り続けられていることに感動する。
7位「婚約者の友人」(Frantz、フランソワ・オゾン、2016年フランス・ドイツ)
オゾン監督の作品はいつもドキドキしながら観てしまうが、今回もヒロインと婚約者の友人という男がどういう関係になっていくのかと思っていたら期待通り、ありふれた結末でなく嬉しくなった。
8位「タレンタイム 優しい歌」(Talentime、ヤスミン・アフマド、2009年マレーシア)
多様な民族や宗教の違う人々が暮らすマレーシア社会。そんな中でいろいろな問題を抱えながら生きる3人の若者の愛と友情のストーリーが爽やかだった。
9位「ヒトラーの忘れもの」(Under sandet、マーチン・サントフルート、2015年デンマーク・ドイツ)
第2次大戦後、戦争中にナチスがデンマークの海岸線に埋めた地雷撤去作業に、捕虜となったドイツ人少年兵たちが駆り出されたという事実に驚きと怒りを感じる。しかし、戦争の犠牲は様々な形をとって人々を苦しめるものだとつくづく思う。
10位「ムーンライト」(Moonlight、バリー・ジェンキンス、2016年アメリカ)
アメリカ南部で黒人、ホモセクシュアルという最も攻撃の対象となる存在だった主人公が選んだ生き方がやるせない。ベスト10ぎりぎりに残すことができた。

【プロフィール】病気でしばらくお休みしていましたが、ようやく復帰できました。どちらかと言えばいわゆるアート系の作品の方が好きなのと、シネコンではなかなか見られない世界各地の映画が上映される京都シネマが、私のお気に入りの映画館です。



◆HIRO

【日本映画】
1位「三度目の殺人」
容疑者は本当に殺人を犯したのか。真実は最後まで画面に出てこない。しかし、全編にいろんな伏線がちりばめられ、観客は否応なしに想像力を掻き立てられる。映画にのめりこむとはこういうこと。
2位「エルネスト」
キューバの英雄ゲバラに魅入られた日本人がいたことを初めて知った。最後はボリビアで志半ばであえなく殺されてしまうのは何ともいたたまれないが、キューバで一緒に学んだ本物の学友たちが花を手向けるところで涙。
3位「人生フルーツ」(伏原健之)
年をとったらこんな風に生きてみたいと思わずにはいられない。夫婦で仲良くいろんなものを育て、収穫する。そのすべてが喜びに繋がっていることが、人生を楽しくしてくれると教えてくれる。
4位「三月のライオン」前後編(大友啓史)
2017年は藤井四段の大活躍で、全国民から注目を浴びた将棋界。映画もグッドタイミングの公開となったのだが、やはり対局は本物のほうが面白い?!
5位「君の膵臓がたべたい」(月川翔)
彦根城の入場者が2017年はグンと増加したとか。少しはこの作品が貢献したのも間違いないだろう。実写映画では2017年度観客動員数ベスト2に入った。彦根城も、豊郷小学校も、俳優たちも、ストーリーも、みんな綺麗。
6位「DESTINY 鎌倉ものがたり」(山崎貴)
医院の待合室で見かけた「漫画アクション」に連載されていた西岸良平の原作漫画。そのほのぼのした雰囲気がうまく映像化されていた。高畑充希はTVドラマ「過保護のカホコ」のカホコから抜け出ていないような気もしたが…。
7位「家族はつらいよ2」(山田洋次)
くすくす笑いながらも、少子高齢化社会のひずみを考えさせてくれるのは、さすが社会派山田監督。第3弾の製作も確定したようで楽しみだ。
8位「ミックス。」(石川淳一)
卓球の楽しさを思い出させてくれた嬉しい作品。出演者たちも練習の成果がしっかり出ていた。
番外「この世界の片隅に」(片渕須直)
2016年11月公開作品だが、1月に初見。超ロングランヒットとなったのも頷ける、誰もが見たくなる良心的な作品。原爆の恐ろしさ、戦争のはかなさ、そして生きることの大切さをしみじみ訴えかける。
番外「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太)
この作品も2016年公開だが、多くの賞を受賞したおかげで見る機会を得る。宮沢りえがとにかくいい。ラストで銭湯の煙突から出てきた煙が赤かったのは非現実的だが、非常に印象に残った。


【外国映画】
1位「ムーンライト」
やっぱりこの作品がアカデミー賞!!と納得。月の光は確かに明るくはないけれど、太陽の光を受けて淡く妖しく美しい。様々な差別を味わい、ストイックに生きてきた主人公が最後に報われるところでグッと来た!!
2位「ベイビー・ドライバー」(Baby driver、エドガー・ライト、2017年アメリカ)
イケてる音楽とカーアクションが見事にコラボ!!エドガー・ライト監督の才覚を肌に感じる。アンセル・エルゴートの新鮮演技に加え、悪の脇役にケヴィン・スペイシーを配したのも監督のセンスの表れ。
3位「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea、ケネス・ロナーガン、2016年アメリカ)
つらい過去を背負った主人公を演じたケイシー・アフレックを、思わず支えてあげたいとおもえてくる。この演技でアカデミー賞主演男優賞を受賞。舞台の港町(マンチェスター・バイ・ザ・シー)の鄙びた風景もグッド。
4位「ブレードランナー2049」(Blade Runner 2049、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、2017年アメリカ・香港・ハンガリー・カナダ)
今回もまた救われるのは人間。人間が生み出したレプリカントの悲哀を斬新な映像とともに観客に投げかける。30年後は土で育った新鮮な野菜なんて、確かにないんだろうなあ。
5位「パターソン」(Paterson、ジム・ジャームッシュ、2016年アメリカ・フランス・ドイツ)
バスの運転手をしている詩人の1週間の日常を描いた、往年のジム・ジャームッシュ監督作品を思い出させる愛すべき作品。永瀬正敏が最後の1日に登場して、詩を書くことの意味を教えてくれる。
6位「ラ・ラ・ランド」(La La Land、デイミアン・チャゼル、2016年米・香港) 
夢の国LA LA Land を目指す若者たち。冒頭の高速道路での新感覚の歌と踊りから、往年のハリウッドミュージカルの世界へ!弾む心の中に「もしあの時…」と、自分の青春時代の苦い思い出をほろりと思い出させる演出が何ともニクイ。
7位「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン」(Dancer、スティーヴン・カンター、2016年イギリス)
バレエに特別関心はなかったのだが、劇場に張られたポスターに魅了されて入場。セルゲイ・ポルーニンというダンサーについて詳しく知ることとなった。名声を得た後、幼い時に通ったバレエ学校の先生との再会場面が感動的。
8位「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(Star wars/The last Jedi、ライアン・ジョンソン、2017年アメリカ)
待ってました!!残るはあと1作のみ!完結編を前に40年前に公開された第1作「エピソード4/新たなる希望」で活躍したマーク・ハミル、キャリー・フィッシャーが、最後の力を振り絞っての大熱演。この40年を一緒に生きてきたファンたちを魅了する。
9位「ダンケルク」(Dunkirk、クリストファー・ノーラン、2017年英・オランダ・仏・米)
第二次世界大戦で、連合軍が苦戦したのがこのダンケルクの戦いだったそうだが、陸海空の3つの場面で展開していくエピソードを徐々に1点に集中させていく演出が出色。英仏両軍の葛藤場面が面白い。
10位「わたしは、ダニエル・ブレイク」
イギリスの年金制度のことが少しわかった。日本同様、厳しい規制、条件があって、なかなか『ゆりかごから墓場まで』とはいかないようだ。自分のことはさしおいて、偶然知り合った母子に優しく手を差し伸べるダニエル。こんな爺さんになれたら…。
番外「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(Rogue one、ギャレス・エドワーズ、2016年アメリカ)
昨年のお正月作品。スター・ウォーズの3と4のエピソードを繋ぐこんな感動的な裏話があったのかと、思わず身を乗り出して見てしまった。この作品で活躍するメンバーは、最後には使命を果たしてほとんどいなくなってしまうのだが、スピンオフの作品としてはこうなるのが定石?!

【プロフィール】
滋賀県長浜市在住。現在地元の「まちづくりセンター」に勤務しております。近くに映画館がないうえ、仕事の関係で休みがとりにくく、なかなか好きな映画を見に行けないのが悩みの種。そろそろ自由の身になって、思う存分映画を見たいところなのですが…。




◆kenya

【日本映画】
1位「映画 夜空はいつでも最高密度の青空だ」(石井裕也)
主演の石田静河が良かった。漠然とだが、自分と世間にイライラを募らせながらも、生きていかなくてはいけない不条理感、やるせなさを身体全体で表現して、彼女のおかげで、この映画が成り立っている。池松壮亮を凌ぐ圧倒的な演技だと思った。今年の新人賞候補かな。
2位「本能寺ホテル」(鈴木雅之)
想像より、面白かったので2位にした。京都が舞台でもあるし、綾瀬はるかが抜群に可愛かった。「海街diary」と違う面が観られた。
3位「追憶」(降旗康男)
降旗監督と佐藤大作撮影による、「ザ・昭和映画」で、安定感に対して3位にランクイン。岡田准一の演技は真面目過ぎて、疲れたけど・・・。
4位「恋妻家宮本」(遊河和彦)
全編軽いタッチだが、セリフがよく考えられていて、心に響く部分(共感?)する場面が多かった。
5位「家族はつらいよ2」
教科書通りで、映画製作を目指す人は、お手本とすべき映画では。橋爪功の息子の事件があって、パート3は出来るかな?(余計な心配?)でも、実生活でも「家族はつらいよ」
6位「アウトレイジ 最終章」(北野武)
第3作目の完結編。舞台はヤクザの世界だが、描いている根本は人間社会そのもの。北野武の人情味を感じた。塩見三省さんの次回作に期待。
7位「彼女がその名を知らない鳥たち」(白石和彌)
珍しい男性向け恋愛映画と思う。俳優陣も生き生きと演じていて、惹き付けられた。

【外国映画】
1位「ムーンライト」
昨年・一昨年の白人優位のアカデミー賞、そして、今年のアカデミー賞のハプニングに至るまで、年度を跨ぐ演出なのか?中々、スポットライトが当たりにくいテーマを扱う複雑な映画がアカデミー賞を受賞した。歴史的快挙かもしれない。主人公二人が、久し振りの再会をするシーンや、ラストシーンが忘れられない。
2位「マンチェスター・バイ・ザ・シー
とても地味だが、生きていく勇気・希望・覚悟を与えてくれる映画だと思う。主人公のケーシー・アフレックがアカデミー賞主演男優賞を獲得したが、助演女優賞候補になったミシェル・ウィリアムズもとても良かった。
3位「LION/ライオン~25年目のただいま~」(Lion、ガース・ディヴィス、2016年英・オーストラリア・米)
親が子供の誕生をどれだけ嬉しく迎え入れたのか。ラストにテロップで、生みの親が付けた「サルー」という名前の意味が明かされる。涙なしでは観られない。
4位「ブレードランナー2049」
35年前の「ブレードランナー」を初めて観た時は、「こんな映画があったのか!」と圧倒された記憶がある。その続編で、製作側はかなりのプレッシャーがあっただろう。前作に引き続き、世界観に魅了された時間を過ごした。実際の2049年はどんな世界なのか?
5位「メッセージ」(Arrival、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、2016年アメリカ)
最近、AIや人工知能がよく話題に挙がる。この映画は、人間本来の「生」や「知能」に対する警鐘なのか。監督の次作「ブレードランナー2049」にも通じる作品である。今年も、ヴィルヌーブ監督に脱帽。次回は「砂の惑星」の続編だとか。楽しみである。
6位「ラ・ラ・ランド」  
私は、ミュージカルは苦手だが、音楽が最高に良かった。今でも思い出し、身体が動き出す。アカデミー賞主演女優賞受賞のエマ・ストーンはもちろん良かったが、ライアン・ゴズリングが最後までしっくりこなかった。
7位「バイオハザード ザ・ファイナル」(Resident Evil:The Final Chapter ポール・W・S・アンダーソン、 2017年英・仏・米・独ほか)
ミラ・ジョヴォヴィッチのはまり役だと思って、シリーズは全部観ている。シリーズ物の特徴で、ゾンビの数がどんどん増えているような気がする。「ファイナル」ということだが、無理矢理でも、続編を期待する。
8位「バーニング・オーシャン」(Deepwater Horizon、ピーター・バーグ、 2016年米・香港)
2010年に起きたメキシコ湾沖の石油掘削施設内の事故現場を舞台に繰り広げられる人間模様。大きな組織の論理と現場の人間との葛藤を描く。つい先日、日本でも、同様の事故が発生した。他人事ではない感じがする。
9位「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(The Founder、ジョン・リー・ハンコック、2016年アメリカ)
会社の「創業の理念」というものは、世界のどの会社も、純粋で無垢な精神で出来上がっているものと思い込んでいたが、「マクドナルド」はそうでは無かった。印象が変わってしまった。
10位「こころに剣士を」(Miekkailija、クラウス・ハロ、2015年フィンランド・エストニア・独) 
小粒な映画だが、人間の成長をじっくりと捉えた作品で、寒い国が舞台だが、心温まる映画であった。

【プロフィール】
京都市西京区在住の47才会社員のkenyaです。中学生の頃に、アイドル映画に夢中になったことから、映画の世界に魅了されるようになりました。学生時代や独身時代は、時間があれば、映画館に通いましたが、今は、中々そこまで時間が取れず、見逃す機会が多く、フラストレーションが溜まる一方です。ハリウッド大作からマイナー作品まで、幅広く観ますが、特に、サスペンスやスリラーが好きです。映画を観た感動を、少しでも伝えられたら幸いです。



◆アロママ

【日本映画】
1位「三度目の殺人」
今年は役所広司の圧倒的な演技力を堪能できた。「関ケ原」でも、嫌らしさ全開の家康役で、主演の岡准を吹っ飛ばした感がある。是枝監督の新しい分野への挑戦がうれしい。
2位「しゃぼん玉」(東伸児  2016)
市原悦子に「坊はよい子」と頭をなでらたくなる。林遣都の目の演技が良かった。日本の現風景を堪能できた。
3位「3月のライオン前後編」
神木隆之介君の代表作になるかな。我が双子と同じ日の誕生日ということもあって、応援の気持ちを込めて。前編と後編で大きく成長した主人公の背中が頼もしい。加瀬亮の透明感にしびれる。将棋はわからないが、迫力ある対局シーンに緊張した。
4位「ナラタージュ」(行定勲)
有村架純も今年の成長株、これからがとても楽しみな役者さん。「関ケ原」では良さが発揮されないままだったが、高校生の初々しさからしっとりした大人の女性への成長を見せてくれた。切ない表情に胸がときめく、そんな自分自身にも驚いたし、珍しく2回も見た。
5位「ビジランテ」(入江悠)  
同じ監督で2本めを見た。圧倒的な迫力、圧力を感じた。地方の矛盾も噴き出ていて、今年の作品では一番重い。桐谷健太の代表作かと。「火花」も良かったが、本作は熱量を感じた。
6位「君の膵臓を食べたい」
若い世代を演じた二人だけでも十分だった。タイトルの異様さにしり込みしたけれど、原作が良かったのと、滋賀が撮影舞台とあって、鑑賞。期待しなかった分、心に残った。
7位「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(廣木隆一)  
全てがつながったときに、ああそうだったんだ!と、ホッとした。まさに奇跡の話し。尾野真千子が時代をわたって、彼女と気づかせないでの熱演。贅沢な役者陣の共演を見る。
8位「22年目の告白」(入江悠)
テレビドラマ「リバース」とうって変わっての藤原達也を見たくて。ストーリーに無理やり感はあったけれど、退屈させない。大衆心理の危うさをうまく描いていたと思うし、そら恐ろしさを感じた。
9位「デスティニー 鎌倉ものがたり」(山崎貴)
CG多用の作品は実は苦手だけれど、さすがにきれいな映像。前半がちょっと長すぎたかな。田中泯さんの貧乏神の可愛らしさが新鮮。
10位「泥棒役者」(西田征史)
舞台を見ているような、こじんまりした話。市村正親、ユースケ・サンタマリア、ベテラン脇役に支えられて、主人公の人の良さがにじみ出てる、ほのぼのとした作品。拾い物をした気分だった。


【外国映画】
1位「オリエント急行殺人事件」(Murder on the Orient Express、ケネス・ブラナー、2017年米・英・マルタ・カナダ) 
有名作品のリメイクに果敢に挑戦しつづけているのはすばらしい。名優たちの競演と、65ミリフィルムを使っての撮影は見ごたえあった。謎解きはわかりにくかったかも。監督のお茶目さや、ファンにはたまらない仕掛けがいっぱい。M・ファイファーの若々しい歌声も良かった。英語が苦手なので、歌詞の内容をしっかり知りたい。
2位「ダンケルク」(Dunkirk、クリストファー・ノーラン、2017年英・オランダ・仏・米)
「インセプション」など時間軸と空間軸を操るのが得意な監督らしい作品。船のきしむ音や波の音、そして飛行機の爆音、実写の迫力、緊張感のある展開。海と空の映像はこれが戦争映画であることを一瞬忘れるくらいに美しい。そして、敵軍を描かない、70年たって今一度敵感情を掘り起こすことなく、しかし、戦争の愚かさを描いている。
3位「否定と肯定」
日本でも同様のことがいっぱいあり、よそ事ではない。歴史から何を学ぶかを問われている。レイチェル・ワイズの「スターリングラード」、ジュード・ロウとの極限でのラブシーンは忘れられない。今作はきりっとした学者役が似合っている。原作者の当時の衣装を使って。その気持ちも引き継いでの演技に感銘する。
4位「未来を花束にして」(Suffragette、セーラ・ガヴロン、2015年イギリス)
20世紀初頭のイギリスの女性参政権運動。名もない女性たちの大きな犠牲の上に、今の参政権があることを若い人たちは忘れないでほしい。当時の活動を弾圧する首相だった曽祖父をもつというヘレナの、この作品に対する思いの強さを知って、ますますファンになった。
5位「沈黙 -サイレンス-」(Silence、マーティン・スコセッシ、2016年メキシコ・台湾・米)       
信仰をもたない人間にとって、改めて宗教とは何なのかと考えさせる。イエズス会が背景にあるヨーロッパ諸国の経済的野望に思いをはせると、宗教のベールに包まれたきれいごとだけではない事実も思い起こしたい。音の使い方が秀逸。無音と効果音のメリハリが素晴らしかった。音楽が邪魔をすることの多い邦画は見習うべき。
6.「LION/ライオン~25年目のただいま~」
ニコール・キッドマンが最近とてもいい。この日、モナコ公妃グレースケリー展を見ながら、キッドマンの映画を思い出し、あの時の美しさと、今回は老け役も違和感を感じさせず、深くて大きな母性を演じていた。ラストでタイトルの意味を知り、思わずうなってしまう。
7.「ラ・ラ・ランド」   
ミュージカルの楽しさと、過去の名画へのオマージュが重なり、これぞ映画!を実感させてくれる。「セッション」の監督とは思えない、ふり幅の大きさ。アカデミー賞は残念だったけれど、「ムーンライト」が受賞したのはトランプ大統領就任という年だからこその配慮だったのかもと、ムーンライトを見ながら深読み。
8位「素晴らしきかな、人生」(Collateral Beauty、デビッド・フランケル、2016年アメリカ)   
ウィル・スミスの静かな演技は初めて見た気がする。ケイト・ウィンスレット、ヘレンミレン、キーラ・ナイトレイなど、大好きな女優さんの競演もうれしかった。個人的には大事な人を見送った後だけに、じんわりくる。邦題がなあ・・・・・「幸せのおまけ」が原題だそう。興行的にはあまり芳しくなかったようだけれど、私は好きな作品。
9位「美女と野獣」(Beauty and the Beast、ビル・コンドン、2017年アメリカ)
実写版「シンデレラ」にはかなわないけど、音楽も良かったし、吹き替え版も字幕版も楽しめた。エマ・ワトソンとエマ・トンプソン、そして「ララランド」のエマ・ストーン。3世代のエマの活躍が見られた。
10位「こころに剣士を」    
体制の激動の中で家族を奪われ、希望も失いそうななか、主人公とフェンシングに出会って、生き生きしてくる子どもたちの表情が素晴らしい。まだまだ世界で起こっていること、「かつて」だけでなく、今現在起こっていることも「知らない」で済ませちゃいけないと思えた。

【プロフィール】
はじめまして。今年から参加させていただきます。お気楽なノリで書かせてもらいます。みなさん、よろしくお願いいたします。
滋賀県湖北地方在住。深刻な重い映画を観て、その世界に同調することでストレス解消をはかるのが得意。ケネス・ブラナーとケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェットが好き。日本では役所広司、原田美枝子、宮本信子、宮沢りえ。若い俳優では神木隆之介、志田未来、有村架純に期待しています。
苦手なジャンルはホラーとSF、こてこての青春物。映画館が近くにないことがたまらなく苦痛。
「見たい映画のためなら寸暇を惜しまず!」をモットーに、今年もたくさん楽しく見ていきたいです。




◆健

【日本映画】
1位「愚行録」(石川慶)
石川監督は今後が楽しみな逸材だ。自主映画出身とは感じさせない正攻法の演出、どっしりと安定した画面づくり、映画的スリル、これらはいずれも一流だ。
2位「三度目の殺人」
ミステリ映画としてもおもしろいし、人間の倫理や生き方、業といった観点から見ても興味尽きない秀作である。役所広司が抑制の利いた演技で、ささやくように話すのが臨場感を出してよかった。
3位「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」
一編の詩からインスピレーションを得て創造された今どきの若い男女の関係が危うくもいとおしい。とにかく見て欲しい。みごとだ。
4位「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一)
原発事故で漁師の仕事を奪われ腑抜けのようになった父親は毎日補償金でパチンコ通い。役場に勤める娘は週末になると夜行バスに乗って都心へ風俗のバイトに出かける。震災の後遺症を引きずる人々の痛ましい日常を描いてむしろ清清しい。
5位「幼な子われらに生まれ」
女性の監督には二つのタイプがあって、とても女性とは思えない男性的な作風の人と女性らしさや母性を感じさせる人。キャスリン・ビグローや西川美和が前者だとすれば、三島有紀子は明らかに後者の人だ。
6位「彼女がその名を知らない鳥たち」
ジャンル映画として見れば、ある意味で鮮やかなどんでん返しともいえるミステリだが、普通映画として見ても人間の内に潜む善と悪をあぶりだしておもしろい。
7位「帝一の國」(永井聡)
最初から最後まで飛ばしっぱなしの痛快な学園もの。生徒会長選挙をめぐるかけ引きや策略、友情がおもしろおかしく描かれ、今をときめく菅田将暉が暴走する。そうして、最近売り出し中の竹内涼真もいい。
8位「光」(大森立嗣)
幼なじみ三人の三すくみの支配関係が宿命のような悲劇を呼ぶ。幼少時に被虐体験をもつタスクが歓喜の表情で兄貴のように慕うノブユキによって殺される場面は衝撃的だ。
9位「光」(河瀬直美)
河瀬直美らしい実験的精神にあふれた異色作である。「あん」の非の打ちどころのない安定したオーソドックスなつくりよりも私はこちらの野心を買いたい。視覚障害者のための映画用音声ガイドを作る珍しい職種を扱った。
10位「家族はつらいよ2」
これはもう名人芸の域に達した山田洋次の熟練のなせるワザである。正編よりも的を絞った家族の一大事がおかしい。その笑いにもまた芸術院会員としての風格が漂う。


【外国映画】
1位「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」
テロリストの隠れ家にミサイルを撃ち込む英米共同作戦が、その家の前で突然パンを売り始めるいたいけな少女の出現で中断され、断行派と中止派が議論を尽くす過程をスリリングに描いて見事だった。
2位「パターソン」
ジャームッシュのいかなる技巧やケレンミも用いないこの自然なスタイルが、ほとんど奇跡としか言いようのない詩的世界を紡ぎだした。脱帽するしかない。
3位「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
人生とは時に残酷な救いのない仕打ちを強いるのだが、それでも人は前を向いて歯を食いしばって生きて行くしかないと、この映画は一見絶望ともとれる描写の裏で、そういうエールを送っているように感じた。
4位「ブレードランナー2049」
リドリー・スコットのカルト映画の続編として作られたにもかかわらず、私はこちらの方が数倍好きだ。「瞼の母」ならぬ「瞼の父」の物語だ。
5位「立ち去った女」(Ang babaeng humayo、ラヴ・ディアス、2016年フィリピン)
4時間になんなんとする長丁場をワンシ-ン・ワンカットの、しかも殆ど固定されたキャメラのロングショットで風景を眺めるような、遅々として進まない描写がむしろ見る者を圧倒してやまない、この底力は何だろう。ヴェネチア金賞の秀作である。
6位「女神の見えざる手」
銃規制法案を成立させようという側と否決に持ち込もうという勢力がそれぞれにコンサルを雇って熾烈な闘いに挑む。まんまと一杯食わされました。
7位「セールスマン」(Forushande、アスガル・ファルハーディー、2016年イラン・フランス)
旧態依然とした倫理感に縛られたイスラム社会。そこでは強姦の被害者が責めを負わされ社会から蔑まれ、苦しまなければならない現実がある。かくいう日本もまた強姦罪がつい昨日まで親告罪であった事実を思い返したい。同じ発想である。
8位「婚約者の友人」
このハラハラドキドキ感は半端ではない。さんざん観客をじらして、イマジネーションを刺激しておきながら、ごくささやかな嘘に収束させてしまう手法は鮮やかだ。みごとにはぐらかされた。
9位「お嬢さん」(パク・チャヌク、2016年韓国)
イギリスの名作ミステリを換骨奪胎して舞台を日本統治下の朝鮮半島に置く。韓国の俳優が四文字言葉を日本語で連発するおかしさ。母国語を奪って日本語を強制した恥ずべき歴史を忘却してはならない。
10位「ノクターナル・アニマルズ」(Nocturnal Animals、トム・フォード、2016年アメリカ)
トム・フォードはガラス細工のような心理的サスペンスを得意とする。神経症的な作家志望のダメ男がしっかり者の前妻に復讐するかのように送りつけた後味の悪い風変わりな小説を主題として、物語は深い闇の淵からただひたすら落ちて行くようだ。

【プロフィール】
フェデリコ・フェリーニと淀川長治さんを何よりも尊敬し、ヒッチコックとワイルダーが大好きな還暦を過ぎたオヤジです。年末に見た「リュミエール!」の中で引用されるラオール・ウォルシュの言葉「カメラの位置は1カ所である」に共感した。カメラ・ポジションは必然でなければならないという極意だ。宮崎駿曰く「映画のおもしろさはストーリーではなく、すごいと思わせるワン・ショットだ」。うーん、映画は奥深い。映画と格闘する毎日です。

2017年上半期ベスト5発表

2017年07月11日 | BEST


 2017年も早くも半分が過ぎ去りました。九州を中心とする西日本の豪雨、水害には心を痛めるばかりです。亡くなられた方々には心中より哀悼の意を表します。
 恒例の執筆者によるベスト5の発表です。しばらくお休みされていました紅一点「久」さんが復帰されました。下半期から4人体制で当コラムを充実させるべく奮闘いたしますので、読者の皆さまのご支援を今後ともよろしくお願い申し上げます。(健)
注記:原則として2017年1~6月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。

◆久
【日本映画】
1「標的の島 風(かじ)かたか」(三上智恵)
母の故郷、京丹後に関西初の米軍基地「経ヶ岬通信所」ができた。松山善三監督の『喜びも悲しみも幾歳月』にも登場する経ヶ岬灯台が近くにある。「沖縄ではまだ戦争は終わっていない」という声が胸に響く。
2017年上半期、日本映画はたった4作品しか見ていない。他の3作品はベストにあげるほど感動しなかったので選べなかった。

【外国映画】
1「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」(Eye in the Sky、ギャヴィン・フッド、2015年イギリス・南ア)
テロリストの隠れ家の前でパンを売る少女。自爆テロを防ぐために少女の生命を犠牲にするのか。戦場から遠く離れた会議室でドローンから送られてくる映像に葛藤する軍や政府の高官たちの姿が滑稽だ。

2「わたしはダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake、ケン・ローチ、2016年イギリス・フランス・ベルギー)
病気で失業を余儀なくされたダニエル・ブレイクは、人と人との対応ではなくパソコン相手の諸手続きに怒りを爆発させる。番号や記号ではなく、一人の人格を持った人間としての扱いを求める世界中のダニエル・ブレイクにエール!

3「タレンタイム 優しい歌」(Talentime、ヤスミン・アフマド、2009年マレーシア)
多様な民族や宗教の違う人々が暮らすマレーシア社会。そんな中でいろいろな問題を抱えながら生きる3人の若者の愛と友情のストーリーが爽やかだった。

4「ヒトラーの忘れもの」(Under sandet、マーチン・サントフルート、2015年デンマーク・ドイツ)
第2次大戦後、戦争中にナチスがデンマークの海岸線に埋めた地雷撤去作業に、捕虜となったドイツ人少年兵たちが駆り出されたという事実に驚きと怒りを感じる。しかし、戦争の犠牲は様々な形をとって人々を苦しめるものだとつくづく思う。

5「ムーンライト」(Moonlight、バリー・ジェンキンス、2016年アメリカ)
アメリカ南部で黒人、ホモセクシュアルという最も攻撃の対象となる存在だった主人公が選んだ生き方がやるせない。



◆Hiro
【日本映画】
今年は本当に見ていない…。「この世界の片隅に」「湯を沸かすほどの熱い愛」は、BEST1級だが、昨年度対象作品。わずかに感動を得たのは「三月のライオン」の前編。ちょうど将棋ブームが始まったころで、ちょっとタイミング的には早かったか…。それにしても藤井4段、14歳にして29連勝とはすごいですね。
ということで、残念ですが今回のベスト5は棄権させていただきます。

【外国映画】
1「ムーンライト」
静かだけれど強い衝撃と溢れる感動で、何かを叫ばずにはいられないような衝動に駆られる力作。アカデミー賞作品賞受賞も頷ける。ほとんどの人は友達のケヴィンと同じ道を歩むことだろうが、それだけに一途な主人公シャロンの生き方に深い感銘を覚える。

2「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea、ケネス・ロナーガン、2016年アメリカ)
ケイシー・アフレックはこの作品で見事に演技力が開花。あの虚ろな目に、自信無げな話し方に、背負っている深い悲しみがそのまんま表れている。対照的に元気にふるまう甥っ子とのこれからに、明るい日が差し始めるラストもいい。

3「ラ・ラ・ランド」(La La Land、デイミアン・チャゼル、2016年アメリカ)
やっぱり映画は楽しくなくっちゃ!!というメッセージが、軽やかな音楽とともに伝わってくる。映画が存在する限り、ハリウッドはいつの時代もあこがれの場所なのだ。

4「わたしは、ダニエル・ブレイク」
『ゆりかごから墓場まで』のはずのイギリスでも、こんな厳しい現実があるとは。超高齢化社会に突入した日本も他人ごとではない、しっかり先を見通して、だれもが幸せになれる社会を目指したいものだ。

5「メッセージ」(Arrival、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 、2016年アメリカ)
突如現れた宇宙船の形がユニーク。言語学者のエイミー・アダムスと、物理学者のジェレミー・レナーが、協力し合いながら異星人からのメッセージを解読していく。未来を予想できるという主人公の能力が、観客の想像力を無限大に広げてくれる。



◆kenya
【日本映画】
1「映画 夜空はいつでも最高密度の青空だ」(石井裕也)
主演の石田静河が良かった。漠然とだが、自分と世間にイライラを募らせながらも、生きていかなくてはいけない不条理感、やるせなさを身体全体で表現して、彼女のおかげで、この映画が成り立っている。池松壮亮を凌ぐ圧倒的な演技だと思った。今年の新人賞候補かな。

2「本能寺ホテル」(鈴木雅之)
想像より、面白かったので2位にした。京都が舞台でもあるし、綾瀬はるかが抜群に可愛かった。「海街diary」と違う面が観られた。

3「追憶」(降旗康男)
降旗監督と佐藤大作撮影による、「ザ・昭和映画」で、安定感に対して3位にランクイン。岡田准一の演技は真面目過ぎて観ていて疲れたけど。

4「恋妻家宮本」(遊河和彦)
全編軽いタッチだが、セリフがよく考えられていて、心に響く部分(共感?)する場面が多かった。

5「家族はつらいよ2」(山田洋二)
教科書通りで、映画製作を目指す人は、お手本とすべき映画では。橋爪功の息子の事件があって、パート3は出来るかな?(余計な心配?)でも、実生活でも「家族はつらいよ」

【外国映画】
1「ムーンライト」
昨年・一昨年の白人優位のアカデミー賞、そして、今年のアカデミー賞のハプニングに至るまで、年度を跨ぐ演出なのか?中々、スポットライトが当たりにくいテーマを扱う複雑な映画がアカデミー賞を受賞した。歴史的快挙かもしれない。主人公二人が、久し振りの再会をするシーンや、ラストシーンが忘れられない。

2「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
とても地味だが、生きていく勇気・希望・覚悟を与えてくれる映画だと思う。主人公のケーシー・アフレックがアカデミー賞主演男優賞を獲得したが、助演女優賞候補になったミシェル・ウィリアムズもとても良かった。

3「LION/ライオン ~25年目のただいま~」(Lion、2016年イギリス・オーストラリア・アメリカ)
親が子供の誕生をどれだけ嬉しく迎え入れたのか。ラストにテロップで、生みの親が付けた「サルー」という名前の意味が明かされる。涙なしでは観られない。

4「メッセージ」
最近、AIや人工知能がよく話題に挙がる。この映画は、人間本来の「生」や「知能」に対する警鐘なのか。監督の次作「ブレードランナー」の続編に注目。

5「ラ・ラ・ランド」
私は、ミュージカルは苦手だが、音楽が最高に良かった。今でも思い出し、身体が動き出す。アカデミー賞主演女優賞受賞のエマ・ストーンはもちろん良かったが、ライアン・ゴズリングが最後までしっくりこなかった



◆健
【日本映画】
1「愚行録」(石川慶)
冒頭のバスの場面で主人公の青年の屈折した性格を鮮やかに描写するあたりの手腕は手練れともいえるが、石川慶は今後大いに期待できる異才というほかない。

2「光」(河瀬直美)
目の不自由な人が映画を鑑賞する。その手助けとして制作される音声ガイド。主人公の女性はその原稿を書く仕事をしており、かつては将来を嘱望されたプロ・カメラマンでありながら視覚を失った失意の男との出会いがスリリングに描かれる。河瀬の最高傑作ではないか。

3「帝一の國」(永井聡)
呵々大笑、大いに楽しませてもらった。名門男子高校の生徒会長選挙に青春をかける今風の若者たちの生態をリアルに描写する。選挙に落ちたら死ぬという菅田将暉を彼にいつも寄りそう親友の志尊淳が「死んじゃ、やだ!」と抱きつく場面には笑ってしまった。

4「家族はつらいよ2」
第一作よりはるかにおもしろい社会風刺劇として、またほのぼのとした家庭劇(シットコム)として、山田洋次は松竹伝統の人情喜劇を熟練の技で紡ぎ出した。

5「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」
最果タヒの詩をベースにイメージが際限もなく拡がる恋愛のスリルとでもいおうか。日雇いで糊口をしのぐ青年と看護師でありながらガールズバーでアルバイトする女性の日常が淡々と描かれ、やがてふたりが出逢う。石井の映画作家としてのメルクマールとなる一編だ。

【外国映画】
1「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」
英米軍が自爆テロの準備をするテロリストの隠れ家にミサイルを撃ち込もうとするそのとき、ひとりのいたいけな少女がその前でパンを売り始める。攻撃か否か、観客は固唾を呑んでその決断を見守るのであるが、生命の尊厳の究極に迫る問題作だ。

2「セールスマン」(Forushande、アスガー・ファルハディ、2016年イラン・フランス)
貞操観や女性の立場が文化の相違によってかくまで異なり、性的被害者が加害者以上に苦しみを味わうことを強いられるイスラム社会が、とんでもない悲劇を生む。相互に敬愛する知的な夫婦の亀裂が、ある事件を境にもはや修復不能となるのだ。

3「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
取り返しのつかない過ちを犯してそのトラウマで生きる屍となった無気力な男。生きるとは試練でもあり償いでもある、だから逃げずにひたすら生きよ、苦しめ!といっているような、極めて厳かな叱咤を浴びせられた思いがする。

4「カフェ・ソサエティ」(Café Society、ウディ・アレン、2016年アメリカ)
ニューヨークからハリウッドの叔父を訪ねて映画界の仕事に就くアレンの分身のような若者が、やがて失恋してニューヨークに戻り事業家として成功する成長物語をアレンは実に心地よく楽しく粋に撮っている。山田洋次同様、熟練の味だ。

5「ムーンライト」
黒人、貧困、母子家庭、性的少数者・・・と何重苦に苛まれる若者がこれが同じ国かと見まがうほどのアメリカ南部の差別、偏見の中で徹底的に自己を抑圧し、本性を隠してマッチョに生きようとするが、ラストの旧友との再会にせめてもの救いを見た。