今日(11月14日・土)の沖縄タイムスは、沖縄県が、識名トンネル違法公金支出で7178万円の損害賠償が確定した当時の県幹部2名に対して、それぞれ1000万円で和解する案を議会に提出すると報じた。
この識名トンネル事件では、受注した大成建設のごり押しに屈した県幹部らが工期を偽った契約書を作成したことが発覚。5億8千万円もの国庫補助金の返還が命じられた。県議会に百条委員会が設置され、沖縄県警が県庁等を家宅捜査、10数名の県職員らが書類送検される事態となった。まさに仲井眞県政時代、「沖縄県政史上最大の不祥事」とまで言われた。
県民による住民監査請求でも、監査委員会が7178万円の損害を認定。工事にかかわった職員と請負業者をあらためて調査し、損害の補填のために「必要な措置」を行うことを勧告した。
その後、県の対応が見られなかったことから、住民訴訟を提訴。8年にわたった裁判で、元県幹部2名に対して7178万円を連帯して支払う判決が最高裁で確定した。仲井眞元知事や大成建設の責任を問うことができなかったのは残念だが、県民が負担させられてきた損害額の一部が、補填されることになったのである。
元幹部2名は損害額を支払わないため、県は2名を相手に支払請求訴訟を提訴。ところが、県は今回、最高裁で確定した7178万円の支払いを求めるのではなく、それぞれ1000万円で和解しようというのである。
もともと県は、この住民訴訟の被告であり、元県幹部や受注業者に損害賠償責任はないと主張していた。最高裁で確定した損賠賠償支払命令が、何故、県と元県幹部らの間で大幅に減額して和解できるのか。これでは地方自治法で定められた住民訴訟制度は全く形骸化してしまう。
今月末から始まる県議会でこの和解案が審議される。先の議会では、野党県議から、「元県幹部に損害賠償を求めると、職員が委縮する」というような発言が相次いだ。
確かに数千万円の損害賠償はあまりに負担が大きい。しかし、最高裁で確定した2人の元県幹部らだけに責任を押し付けてしまったのはいったい誰か?
2012年当時、県が設けた第3者委員会(委員長:宮国英雄弁護士)の答申では、請負業者への返還請求を行うよう県に指摘した。監査結果でも、ほかの自治体が損害額を関係職員で補填した事例を挙げ、参考にするよう求めている。当時の職員や請負業者らによる負担の検討を県に要求していたのだ。
県議会がこの和解案を認めることのないよう要請したい。