まくとぅーぷ

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菊花の生け込み

2020-11-11 21:29:38 | 日記

三渓園の菊花展にあわせて開催される、我らが五十嵐さんの「菊花の生け込み」。外苑の奥の木立の中にそびえる旧矢箆原家住宅(きゅう やのはらけ じゅうたく)が丸ごと一軒ギャラリーになっている。五十嵐さんは去年に続いて二年連続登板で、前回見逃したわたしとしては今年はなんとしてもと思い、ガッツリスケジュール組んで出かけていった。

現存する合掌造りの家屋としては日本一の大きさを誇るこの建物は築250年、江戸後期のものと記されている。飛騨の三大豪族の一人のお家で、六十年前にダムに沈むすんでのところでここ横浜に移築された。原三渓さんはこれだけじゃなく、全国あちらこちらから同様な運命の建物を持ってきてるんだって。

五十嵐さんにオファーをしたのは菊花会の爺様方。どこでも好きなところに活けて良いよと言われたものの、いろんな条件を鑑みるに去年同様この家屋になったんだとか。囲炉裏には本物の薪が焚きつけてあり、ほんのり燻された空気が心地良い。光があまり入らない合掌造りの母屋に比べて、奥の書院造の客間は採光が工夫されている。

床の間に置かれているのは松の木に穴を穿ち色とりどりの菊をあしらった静かで美しい生け込み。「曲りくねって迫力のある松の木が欲しかったんだけど、どうにもまっすぐなものが多くて、筒切りにしてみた。」と五十嵐さん。開け放った窓から風が入って蓮が動くため、時折直している。

違い棚に置かれていたのは大輪の菊の「首だけ」。少しギョッとする風景。モノクロで撮ってみた。

隣の部屋の床の間には松三種が並んでいた。松ぼっくりと松の木の皮と松葉。白い繊細な菊が一雫の光になって落ちている。

続いてカラフルで可愛らしいアレンジ。「春と秋はいろんな色が混じってもトーンが同じだからしっくり来るんですよね。」と五十嵐さん。じゃあ夏の花の色の取り合わせで好きじゃないのは?と聞くと「うーん。赤と黄色とか。落ち着かない。」ですって。五十嵐さんのフラワーアレンジは確かにいつも、数種類の色があっても飛び出るものがなくてバランスがとても良くて、安心感があることに気づいた。

重要文化財であるこの建物の床に直接作品を置くことはできなかったため、急遽ベニヤ板を買ってきて塗装を施し、倒れては困るものをボンドで貼り付けたんだって。強力なボンドが見つかって本当に良かったとのこと。そういう情報にも日々アンテナ張ってるんだなあ。フラワーデザイナーって大変だ。そして塗装が指に残ってますけど手袋しなかったの?「いや。。してたんだけど。気づいたら素手で。」相変わらず男前。

濡れ縁には巨大な臼に生け込まれた大作が。中に大きなたらいを置いてオアシスを15個くらい投入して、花を挿しても挿してもまだ入るから買い足してきて、とすごいことになってる。かっこいい。「紅葉は、長く持つアレンジに使える品種は限られてるんです。」なるほど、多くはすぐに散ってしまうもんね。

普段からここはボランティアさんが観光客にガイドをしてくれるそうで、去年に続き通って作業してる五十嵐さんはいつの間にか聞こえてくる知識がバッチリ頭に入ってて、いろいろ教えてくれた。囲炉裏は雨で濡れた屋根を乾かしたり、害虫を燻蒸して除去したりする効果があるんだって。

外から大作をバックに一緒に記念撮影してたら、五十嵐さんのスマホが鳴った。菊花会の爺様方から、「お茶が入ったよ。」と言う呼び出しらしい。丹精込めて菊を育てる美意識高い爺様方には、美しい花を活ける美人の五十嵐さんはモテモテなんだろうね。

せっかくなので爺様方の菊も撮ってみた。菊、撮るの難しいなあ。

お茶屋で期間限定の秋の彩り団子も買ってみた。団子の撮影なら任せとけ。

五十嵐さん、お忙しいのにフルアテンドいただきありがとうございました。


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